ToLOVEる~氷炎の騎士~   作:カイナ

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特別編 IFプロローグ~もしもララがやってきたのが炎佐の家だったら?~

「ふぅ……」

 

 ある日、炎佐は一人でお風呂に入っていた。

 その日もいつもと変わりなく、友人の猿山と駄弁ったり親友のリトが想い人である春菜に今日こそ告白すると息巻きつつも結局出来なかった事をからかったり家に帰ってきたら突然従姉弟の霧崎恭子がやってきたりと慌ただしい一日だった。

 とお風呂に浸かってリラックスしながら思い返していた、そんな時だった。突然お風呂に溜められていたお湯が泡立ち始める。

 

「なんだ?」

 

 異変に気づいた炎佐がぼやくが、泡立ち始めたとはいえ沸騰ではない。しかもその泡立ちの部分からバチリと電流と思しきエネルギーが流れ、さらには光を放ち始める。

 続けてヒィィィィという風切り音にも似た音が聞こえ出したと思ったら突然お風呂が爆発したかのようにお湯が天井まで届くほど舞い散った。

 

「なんだ!?」

 

 あり得ない程の異変の連続に炎佐は仰天、咄嗟に湯船にしがみつきつつ爆発地点を見る。その両目の瞳は赤色に染まっていた。

 

「んーっ、脱出成功っ!」

 

 その爆発の中心に一人の少女が立っていた。ピンク色の髪をお尻まで届くほどに伸ばした少女、愛くるしい顔立ちをしており、何故か素っ裸の身体も大きな胸や逆にくびれたウエスト、そしてはちきれんばかりのヒップを炎佐の目に映している。

 総じて絶世の美少女と言っても過言ではない相手を目にした炎佐は驚愕に目を見開いていた。

 

「ラ……ララ?」

 

「ふえ?……あ、お兄ちゃん!」

 

 ぽかんとした様子で漏れ出た声にララと呼ばれた美少女は反応し、炎佐を見る。とぱっと顔を輝かせて彼を兄と呼ぶと突然ぎゅっと抱きついた。

 

「お兄ちゃん久しぶりー! まさかこんなところで会えるなんて思わなかったよー!」

 

「それはこっちの台詞だ。お前こんな辺境の星で何やってんだよ」

 

 嬉しそうに顔をほころばせて炎佐に抱きつき、そのまま抱きしめるララの大きな胸が炎佐の胸の辺りに押し付けられてふにゅりと柔らかく押し潰されるように形を変える。

 ナイスバディの全裸美少女に同じ全裸の状態で抱きつかれるという、年頃の男子にとっては目に毒というか理性へのダイレクトアタックと言っても過言ではない行動だが、炎佐は平然としながらむしろ呆れた様子でララに声をかけていた。その一切の動揺のない姿はいっそのこと慣れさえも伺わせる。

 

「まあいい。詳しい話は風呂を上がってから聞くとするか」

 

「あ、うん。いいよー」

 

 しかし風呂の中でするような話ではないかと考えたか、とりあえず風呂を上がってから詳しい話をしようと提案する炎佐にララも同意。二人は風呂を上がって身体を拭くと炎佐がさっさと寝間着に着替え、ララにはテキトーに準備したシャツでも着せてやってから浴室を後にした。

 

「……えーと……どちら様?」

 

 そして居間へとやってきてから、そこでリラックスした様子でテレビを見ていた美少女──霧崎恭子がララを見てきょとんとした顔をしてそう問いかけてくるのだった。

 

 

 

 

 

「んっと、つまりその子はエンちゃんが地球に来る前、ってか小さい頃お世話になってた人の娘さんで、エンちゃんの幼馴染?」

 

「うん。ララ・サタリン・デビルーク。よろしくね!」

 

「私は霧崎恭子、エンちゃんの従姉弟でお姉ちゃんみたいなものだね。よろしく」

 

 炎佐からさっと説明を受けた恭子が短くまとめるとララが自己紹介をしながら挨拶、返答で恭子も自己紹介と挨拶を行った。

 

「お兄ちゃんのお姉ちゃん……じゃあ私にとってもお姉ちゃんだね!」

 

「はいはい、それでいいから……ララ、お前地球で何やってんだ?」

 

 ララは勝手な理屈で恭子をお姉ちゃん認定し、姉が出来て嬉しいのかきゃっきゃっとはしゃぐ。それに付き合っていたら時間がかかると理解しているのか炎佐が本題をララに問いかけ、その瞬間ララがぷくぅと頬を膨らませた。

 

「私、家出したの」

 

「……キング・ギドか?」

 

 ララの少ない言葉から原因を見抜き、問い返す炎佐にララも頷く。

 といっても彼からすれば家出するようなことが起きる原因なんて彼女が可愛がっている妹のナナとモモはありえず、母親のセフィに至っては日々銀河を飛び回っての仕事の毎日でララ達とは滅多に会えないか会えたとしても通信機越し。仮に喧嘩になっても家出まで発展するとは思えない。

 そうなると原因は消去法でたった一つ、彼女の父親であるギドしかあり得なかった。

 

「だってもうコリゴリなんだもん、後継者がどうとか知らないけど毎日毎日お見合いばっかり」

 

 頬を膨らませてテーブルに突っ伏すララ。分かりやすいほどにふてくされている様子を見た恭子が炎佐にそっと寄って口元を彼に近づける。

 

「ねえ、後継者がどうとかとかお見合いとか……もしかしてララちゃんってすごいお嬢様?」

 

「まあ、デビルーク星っていうここから遠く離れた銀河を統一した星のお姫様だしね」

 

「マジで?」

 

 ひそひそと囁くように先ほど面倒だからと省略していた情報を改めて教え、それを聞いた恭子も目を丸くしていた。そしてその情報交換を終えてから炎佐はララを見て一つため息を漏らす。

 

「まあ、事情は理解した……それで──」

[ララ様ー!]

 

 まだ他に問うことがある。そんな様子の炎佐だが、その言葉は突然聞こえてきた別の声に遮られ、同時に開いていた窓から何者かが侵入してきた。

 

[ご無事でしたかララ様ー!]

 

「うわ、何アレ!?」

「お、ペケ」

 

 入ってきたのは二頭身程度の大きさの小型ロボット。その姿に恭子が驚き、炎佐が名を呼ぶとペケなるロボットは炎佐を見て[やや!]と驚きの声を出した。

 

[これはエンザ殿、お久しぶりでございます。何故ここに?]

 

「ここ俺んちなんだよ……ところでペケ、お前は何やってんだ?」

 

[ララ様がぴょんぴょんワープくんで脱出しましたので、私もララ様に続いて脱出を]

 

「なるほど」

 

 ペケから話を聞いた炎佐はおもむろに立ち上がると歩き出し、部屋の壁に取り付けていたまるでエアコンのコントローラーにも見える装置を操作し始める。

 

「何してるの?」

 

「いや、念のため」

 

 恭子が首を傾げて問い、そう答える炎佐は最後にコントローラーのスイッチらしいボタンを押す。僅かにぶぅんという音が家の外から聞こえた気がする。

 

「「ふぎゃっ!?」」

 

 その僅かに後、そんなまるで全力疾走していたら壁にぶつかったような衝撃音と悲鳴が外から聞こえ、何かを察したララがうげっというような表情を見せ、炎佐は部屋の出入り口へと向かう。

 

「どしたの!?」

 

「ちょっと来客対応してくるから。ペケ、今のうちにララのコスチュームチェンジしといてやってくれ、流石にずっとシャツ一枚は寒いだろうし」

 

[分かりました]

 

 恭子の悲鳴をよそに炎佐は平然と対応、ペケもこくりと頷く。ララは大きくため息をついていた。

 

 

 

 

 

「く、なんだ!? エネルギーシールドだと!?」

 

「数年前の旧式みたいだが、何故こんな発展途上惑星にこんなものが……」

 

 家を出てきた炎佐の前には黒ずくめのスーツにグラサンという明らかに怪しげな風貌の男が二人、何もない個所を殴り続けるという光景があった。何も知らない人が見れば通報待ったなしの奇行であり、流石にそれは面倒な炎佐が声をかける。

 

「ブワッツ、マウル。少し落ち着いてくれ」

 

「ん?……おぉ、エンザじゃないか!?」

「久しぶりだなぁ! なんでこんな辺境の星にいるんだ?」

 

 声をかけられた時こそ警戒していたが、炎佐を見た瞬間旧友にあったように顔をほころばせてフレンドリーに声をかけてくる二人。

 デビルーク王族親衛隊というエリートの中でもその隊長の側近に選ばれるほど腕は立つのだが相変わらずな二人に炎佐は苦笑を覗かせながら、玄関の横にあるコントローラーを操作して先ほど発生させたバリアを消滅させる。

 

「二人とも、ペケを追ってララを追いかけてきたんだろ? ララなら家にいるぜ」

 

「そうか、協力感謝する!」

「今すぐ連れて帰るから安心してくれ。それとたまには帰ってこいよ、ナナ様とモモ様も喜ぶぞ」

 

 炎佐からララの居場所を聞いた二人はこくりと頷いて炎佐の家に入ろうとするが、炎佐はそれを右手を突き出して制止させる。

 

「悪いけどそうはいかない……どうせザスティンもいるんだろ? 呼んできてくれ、少し話そうぜ」

 

「……分かった」

 

 炎佐の睨んでくるような鋭い目つきにブワッツは何かを感じたか、頷くと通信機らしい端末を取り出して誰かに連絡を取り始めた。

 

 

 

 

 

「もーこのマヌケロボ!! 全部水の泡じゃないのっ!!」

 

[ゴメンナサイ~]

 

 地球人からすればやや前衛的なデザインのドレスに身を包むララが怒りの声を出し、ペケの頭部のような形の帽子からペケの謝罪の声が返ってくる。コスチュームロボであるペケがララのドレスにチェンジしている姿であり、恭子は「これがあれば色んな衣装が思いのままじゃん……」と目を輝かせていた。

 そんな二人を隣に置いた炎佐はテーブルを挟んで反対側に座る銀髪のイケメン男性──だが髑髏のようなデザインの鎧というコスプレじみた格好が現代日本では浮いている──を見る。

 

「久しぶりだね、ザスティン」

 

「ああ。久しぶりだな、エンザ……傭兵業を休んでどこかの星で静養を始めたとは聞いていたが、まさかこんな辺境の星にいるとは思いもしなかった」

 

「そーだよー。お城に帰ってくればよかったのにー」

 

「ま、色々あってね」

 

 ザスティンと呼ばれた男性は言葉こそ旧友でありかつての部下に等しい相手との再会を喜んでいる様子だが目は厳しさを見せるように鋭く研ぎ澄まされており、対してララはどうせ静養するならデビルーク星に戻ってくればよかったと呑気に頬を膨らます。ちなみに恭子は「初めましてー、炎佐の従姉弟の霧崎恭子ですー」「あ、どうも初めまして。デビルーク王族親衛隊のブワッツです」「同じくマウルです」とブワッツとマウルと挨拶を行っていた。

 ザスティンとララの言葉に対して炎佐は肩をすくめて返すのみで話を終わらせ、ザスティンも本題はそこではないと理解しているのかララを厳しい目のままで見る。

 

「ララ様、デビルーク星に帰りましょう」

 

「やだ!!」

 

 一刀両断の勢いでザスティンの言葉を拒否するララ。ザスティンはふぅと小さなため息を漏らす。

 

「エンザ、君からも言ってくれないか? 兄である君の言葉なら聞く耳も持つだろう?」

 

「悪いけど、俺はララ側だ」

「そうそう! 事情はよく知らないけど、本人が嫌がってるじゃん!」

 

 困ったように顔をしかめて炎佐に援護を要請するザスティンだが、炎佐はララ側だと明言し、続けて恭子も援護する。

 

「はぁ~……」

 

 そんな反応にザスティンは目を瞑ると今度は大きくため息をついた。

 

「交渉決裂だな」

 

 そう呟いて立ち上がるザスティンに合わせて両隣に座るブワッツとマウルも立ち上がった。

 

「ならば、力ずくでララ様を連れ帰らせてもらう」

 

 そして再び開いた彼の目は炎佐を自らの任務を邪魔する敵として映す鋭さを見せていた。隣に座る恭子もその威圧にびくりと身体を震わせて怯えの表情を見せる。

 

「待て」

 

「今さら命乞いか? 心配せずとも我らの目的はララ様の捕縛。抵抗しなければ手出しはしない」

 

 そんなザスティンに対して、炎佐は椅子に座ったまま彼らを制止。ザスティンはそれを命乞いと思ったのか自分達がララを連れ帰る邪魔をしないのなら手出しするつもりはないと返答するが、炎佐は違うと言いたげに首を横に振った後、キリッとした目をザスティンに向ける。

 

「ザスティン、ここは俺に免じて時間を貰えないか?」

 

「……何をする気だ?」

 

 炎佐の言葉にザスティンが話だけは聞くという雰囲気で聞き返し、そこで彼は本当はしたくないと言いたげな渋々とした様子を見せながら、己の案を口にする。

 

「ギドに直談判する」

 

 

 

 

 

[おう、ザス。ララはどう……]

 

 ザスティンの宇宙船にある通信機を使ってギドに連絡を取り、通信が繋がった画面の先にいる幼児──銀河大戦で力を使い果たして子供の姿となってしまっているが、彼こそが銀河の帝王ギド・ルシオン・デビルークだ──がザスティンがいる前提で声をかけるが、片膝をついてかしこまっている炎佐の姿を見て一瞬言葉に詰まった。

 

[なんだ、誰かと思ったらセシルとミーネのせがれじゃねえか。なんでテメエがここにいやがる?]

 

「お久しぶりです、キング・ギド。プリンセス・ララは故あって現在我が家で保護しております……そこで一つお願いが……プリンセス・ララの、この星、地球への一時滞在を許可いただけませんでしょうか?」

 

[はぁ? なんでそんな事俺が許してやる必要がある? ザス、いいからとっととララを連れて戻ってこい]

 

 とりつく島もなし、当然な返答に炎佐はぐっと唸り、しかし必死の様子でギドを見る。

 

「お願いいたします。今回プリンセスはたまたま俺の家に逃げ込んだからよかったものの、一歩間違ったら宇宙人の存在が一般的でないこの星では大変な事になっていた可能性があります。それを繰り返さないためにも──」

[くどい。そもそも、今のテメエにそんな事言う権利はねえ。弁えろ、元賞金稼ぎ]

 

 ぞくり、と炎佐は身を震わせる。画面越しからも感じる圧倒的なオーラ、もし今は別室に待機してもらっている恭子がここにいたら威圧だけで失神してもおかしくはない。力を失ってなお銀河最強の名に恥じぬオーラは健在、そんな相手に炎佐の身体を汗が流れる。身体が硬直し、言葉が出ない。このままララを無理矢理連れ帰らせる事しか出来ないのか、と炎佐は己の無力さを呪った。

 

[もう、せっかくエンザがお願いしてるんだから少しくらい良いじゃないの]

 

「!?」

 

 その時、通信機の向こうからそんな女性の声が聞こえ、炎佐はぎょっとして顔を上げる。

 

[やっほーエンザ、久しぶり~♪]

 

「ク、クィーン・セフィ!? 何故そちらに!?」

 

[別にここ私の家なんだし、戻ってきてても問題ないでしょ? ところでララのチキューだっけ? その星への滞在だけど、私は別に構わないわ]

 

[おいセフィ、テメエ何勝手な事──]

[最近の貴方、さっさと王位を譲って遊びたいからってお見合い多すぎなのよ。そりゃララだって嫌になるわ]

 

 ギドに対して優位に立つ美女、彼女はセフィ・ミカエラ・デビルーク。ギドの妻にしてララの母、そしてデビルークの王妃であり、ギドに代わって銀河を飛び回り外交するデビルークの政治の要である。

 そんな相手に滔々と説教されてはギドはどうしようもないのか押し黙るのみ。その間にセフィはザスティンにララを呼んでくるように指示を出し、ザスティンは慌てて頷くと退室、少し時間を置いてララとついでに一緒に待っていた恭子を連れてくる。

 

「あ、ママ!」

 

[ララ、無事で何よりよ。ところでエンザが話してたんだけど、ララがしばらくそっちにいること、私は許そうかなって思ってるわ]

 

「ホント、ママ! ありがとー!」

 

 セフィを見たララがきゃっきゃっとはしゃぎ、セフィから地球滞在の許しを得るとさらに喜んで万歳する。

 

[ただし、一つ条件があるわ]

 

「えー」

 

 だがセフィは条件を出し、ララがぶーと頬を膨らませる。しかしセフィは[簡単な事よ]とクスクス笑い、炎佐を見た。

 

[エンザ、あなたララの婚約者になりなさい]

 

「…………は?」

 

 セフィの言葉に炎佐が呆けた声を出し、ララやザスティン達もきょとんとした顔をセフィに向ける。

 

[あら、何かおかしい? そりゃああなたは私にとって息子のようなものだし、ララ達にとってもお兄さんだけど。何も血縁で繋がってるわけじゃないんだから、婚約者になるのも何もおかしくないでしょ?]

 

「……えー、何当たり前のこと──」

『……い、言われてみれば』

「──マジで!?」

 

 セフィのどや顔での説明に恭子が呆れ顔を見せるが、そこで炎佐、ララ、ザスティン、ブワッツ、マウルが異口同音で驚きの声を出すと、恭子はむしろそっちに驚いたように声を上げる。

 

[というわけで。エンザ、あなたがララの婚約者になれば万事解決。まあララの許嫁候補が納得するかは知らないけど、そこはそっちで頑張ってね?]

 

「ちょ、待ってくださいクィーン!?」

 

「え、じゃあこれ以上お見合いしなくていいし、お兄ちゃんと一緒にいられるの? ばんざーい!」

 

「ララー!? 事態分かってんのかお前ー!?」

 

 いきなり渦中に放り込まれたエンザが慌ててセフィに異論を挟もうとするが隣のララがむしろ乗り気になって万歳まで始めるとそっちにツッコミを入れ始める。

 

「……え? なに、エンちゃん……結婚するの?」

 

 するとその流れにいまいち乗り切れてなかった恭子が呆然と声を漏らした。

 

[……あ、あら? えーと、ザスティン? そちらの女の子は?]

 

「あ、こちらはエンザの従姉弟だそうで、キリサキキョーコと……」

 

[エンザの従姉弟……あー、もしかして私何かやっちゃいました?]

 

 そこでセフィは初めて恭子の存在に気づいたのか、ザスティンに尋ね、答えを得てから恭子の反応を見て何かやっちゃったと気づく。自分の浅はかな提案に一人の恋する乙女を傷つけてしまったとその優秀な頭脳で理解したセフィはすぐさま頭脳をフル回転、この場面をどうにかする方法を考え、導き出す。

 

[そ、そうだ! キョーコさん、あなたもエンザの許嫁になればいいのよ!]

 

「「はい!?」」

 

[大丈夫、デビルーク王は一夫多妻、ハーレムの権利があるんだから! 何も問題ない!]

 

[おいちょっと待て! 俺には散々他に女を作るなとか言っといてなんだそりゃ!?]

 

 慌ててるのかグルグルお目目で提案するセフィに炎佐と恭子が声を上げ、さらに現デビルーク王のギドも異論を挟む。それにセフィはぎくりと身体を震わせた後、ギドの方を向いた。

 

[エ、エンザはいーのよ! ギドじゃないんだもん!]

 

[なんだその理屈!?]

 

[だ、第一、その……ギドには私だけ見てもらいたいっていうか……

 

[あん? 何か言ったか? ]

 

 既に子がいる母としては似つかわしくないはずながら若々しい見た目から随分と様になっているもじもじとした仕草での言葉だが、肝心な部分が小さくなって聞こえておらず、ギドは首を傾げて問い返す。

 

[あーもうとにかく! エンザはララの婚約者になりなさい! それがララを地球で面倒見る条件!! あとザスティン達もララとエンザの護衛として地球への駐留! いいわね!? じゃあ通信切るから!]

 

「え、ちょ、セフィ!?」

 

 やけになったか一方的にまくし立てて一方的に通信を切るセフィ。エンザが声を上げるが既に通信は切れて何も映ってない画面だけが残されていた。

 

「なんかよく分かんないけど……お兄ちゃんと結婚すればもうお見合いしなくていいし、こっちで暮らしていいんだよね! やったー! お兄ちゃん、これからよろしくー!!」

 

「な、なに、えーっと……私も、エンちゃんの恋人?」

 

「な、な、な……」

 

 ぴょんぴょんと飛び跳ねて炎佐に抱きつくララと、地球の日本人の価値観としてはうまく飲み込めない事をいきなり言われてぽかんとする恭子。

 

「なんでだああああぁぁぁぁぁっ!!??」

 

 そして完全に問題の渦中へと放り込まれた炎佐。

 彼の苦難の日々がこれから幕を開けるのであった。




 オリ主×古手川の短編を書いてお茶を濁したはいいものの氷炎の騎士の方が全然浮かばずうだうだしていたらふと「もしもララが最初にやってきたのが炎佐の家だったらどうなっただろう」と思ったので掘り下げて書いてみました。(完全に思いつき)
 今回の流れだとララはリトを好きになるかは怪しいですね、原作ではララは最初リトを帰らない口実に利用しようとしたらリトの言動で勘違いして~って流れだったし。まあリトが炎佐の親友ってのは変わらないから炎佐から紹介受けてなんやかんやって可能性は捨てきれませんが。
 まあ基本的にはララは炎佐と名目上婚約者ながら実際は兄妹みたいな生活を楽しみつつ地球で暮らして、テキトーに時間経った頃に
ナナ「兄上がいると聞いて!」
モモ「お兄様がいると聞いて!」
 とナナとモモも合流(そして炎佐はまたギドにナナとモモの地球滞在を懇願)。デビルーク王族四兄妹(たまに恭子が入って五姉弟)のほのぼのとした暮らしになる……んじゃないかなぁと思ってます。


 そしてこれを書くにあたって本作の序盤を読み直してたら……改めて炎佐のキャラが大きく変わったなぁと実感した。元々「恭子メインヒロインもの書きたいなーって思ってたら本編で恭子がリトに落とされかけて慌てて投稿開始した」だから設定自体が曖昧な状態で書きながら煮詰めていったからしょうがないけど。
 最初は炎佐は地球人の前では一人称僕のどっちかというとおとなしめな口調だったのに、素を知ってるララの登場で猫被るの疲れたのか俺が書き分けるの面倒になったのか、いつの間にか常に一人称俺の少しざっくばらんな口調の初期戦闘モードのエンザ口調で統一されてるし。

 ついでに言いますと、実は本作開始の時点ではエンザとララが幼馴染という設定は存在せず、二人の関係はおおよそ「昔デビルークに雇われた事もあった傭兵と、雇い主の娘のお姫様」くらいでした。
 実際初期だと炎佐はリトと一緒に逃げてるララを見て「あれまさかデビルーク星人?」程度の認識しかしなかった上にシカトしてましたし、ララを見てメチャクチャ焦って礼を取って他人行儀に接してたし。
 今の炎佐ならリトと一緒に逃げてるララを見た瞬間「ララ!? 地球で何やってんだあいつ!?」とびっくりして追いかけるしララに対して多少の礼は取るものの初っ端から兄貴分モード発動してると思う。ついでにザスティン達親衛隊とももうちょい穏和な出会いになるはず……。(本編ではリトがザスティンに殺されそうになってるのを見て「焼き殺す!」とまでブチギレた)
 それがいつの間にか兄妹分ということにされてるんだから不思議というか自分の無計画さがにじみ出ています。


 さて今回は特別編ですが、本編がどうなるかは本当に未定です。マジでどうしよう……。
 では今回はこの辺で。ご意見ご指摘ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。

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