「ふんっふふんっふふ~んっ♪」
休日の朝早く、彩南町のとある道。ララは鼻歌を歌いながら楽しそうにスキップをしており、彼女はその道の先に誰かの姿を発見。嬉しそうに頬をほころばせてぶんぶんと手を大きく振った。
「お待たせーエンザー!」
「ああ、ララちゃん。僕も今来たとこだよ……」
ララの呼びかけに、呼ばれた相手――炎佐も軽く右手を挙げながら返し、そう思うとララより向こうの何かを見るように視線を動かす。
「ん?」
「あーいや、なんでもないよ。ところでララちゃん、何か用なの?」
しかし微妙な動きだったためララは若干違和感を感じただけらしく、炎佐は誤魔化すようにララに用件を尋ねる。
「うん、あのね。リトにプレゼントを買いたいの! エンザ、協力して!」
「え?……リトに?」
「うん! 秘密にして、びっくりさせたいんだ。だから今日は誰にも知らせずに黙ってこっそり出てきたんだよ!」
そう言い、えっへん、とララは胸を張る。
「へー……あー、そうなんだ……」
それに対して炎佐はどこか気まずい様子で頷いていた。それにララが不思議そうな顔で首を傾げると、炎佐はまた誤魔化すようににこりと微笑む。
「うん、分かった。協力するよ……じゃ、じゃあその、行こうか」
「うん!」
どこか気まずそうな様子でそう言う炎佐に気づかずララは満面の笑顔で頷き、歩き出す。もう前しか見ていなかったためか、やや後ろを歩くような位置取りになっていた炎佐が後ろに向けてひらひらと手を振っていたことに彼女は気づいていなかった。
「で、その服装もこっそりリトへのプレゼントを買う作戦の一環なの?」
「え? あ、うん。そうだよ? リサが教えてくれたんだ~」
「あいつはまたララちゃんに余計な事を教えて……」
炎佐はララの隣で携帯をカチカチと操作し、やる事が終わったのか携帯を閉じてポケットに入れてからララに質問。にララはそう言ってくるりんと回転、スカートがひらひらと翻る。彼女が着ているのは純白のややフリルがついたワンピース。清楚なイメージだがララに妙にマッチしていた。
「リサがね、いつもと違う服を着れば一気に印象が変わるって!」
「いや、まずララちゃんは尻尾を隠す努力から始めようよ。どんな格好してても尻尾見たら即ララちゃんだって分かるって」
「はっ!」
変装のつもりなんだろうワンピースをくるくると回って見せるララに炎佐が冷静にツッコミを入れ、そこで初めて気が付いたのかララは純白の服の中に映える黒い尻尾を見てはっとした表情になり、尻尾も動揺を示すようにふりふりと揺れる。
「ん~……ま、いっか」
だがララはちょっと考えると面倒になったのかまあいいやで終わらせ、炎佐の腕を掴む。
「じゃあ早く行こう! リトをびっくりさせるんだ~」
「はいはい」
ララのお願いを炎佐は断る理由もないため二つ返事で引き受ける。
「とりあえずザスティンから宇宙船借りて、どこの星で買おうか?」
「地球限定でお願いします。っていうか日帰りでよろしく」
だが宇宙規模でプレゼント購入作戦を考えている事に対しては流石にツッコミを入れるのであった。
それから二人がやってくるのは、同じ町だとリトと鉢合わせするかもしれないからと電車に乗って来た、高校生が休日にちょっと足を伸ばす程度の距離にある繁華街だ。
「ん~……何買えばいいと思う?」
「リトだったらララちゃんからのプレゼントなら余程でない限り喜んでくれるとは思うけど……」
ララから根本的な質問を受け、しかし炎佐は優しいリトなら大抵のものは喜んでくれるだろうと答えて二人は繁華街を歩いていく。
「……ん?」
と、歩いている途中で炎佐は自分達に向けられる視線に気づく。いや、自分達、というよりも視線は彼の隣へと注がれていた。
「おい、あの子めちゃくちゃカワイくね?」
「ああ、ホントだ……清楚なお嬢様って感じ」
「けど、なんだあの尻尾? アクセサリー?」
「最近はあんなのが流行りなんじゃね?」
「隣の男、なんだアイツ?」
「可愛い子侍らせて調子乗ってんじゃねえか?」
周辺を男達の会話をざっくりと抜き出せばこんなものだろう。男達はララに見惚れており、しかしララは一切気づかない様子でルンルンと鼻歌交じりに歩いている。なお炎佐に対する嫉妬の声もやや聞こえているがとりあえずスルー安定である。
「どうしたの、エンザ?」
すると炎佐の様子がおかしいのに気づいたかララが足を止め、こてんと首を傾げて炎佐に問いかけてくる。それに炎佐も微笑を浮かべて彼女の頭の上にぽんと手を置いた。
「なんでもないよ。さ、行こっか」
「うん!」
頭の上に手を置き、よしよしと頭を撫でながらそう答える炎佐。ララもにこにこと微笑んで頷くと再び歩き始め、炎佐もその数歩後をついて歩いて行った。
「ん~……クッキーとか喜ぶかなぁ?」
ララはお菓子屋に展示されているクッキーの袋を見ながら考え込む。
「あれ、ララちぃに氷崎!?」
するとそこにぎょっとしたような声が聞こえ、ララは声の方を見るとぱっと顔を輝かせた。
「あ、リサ!」
「や、やっほーララちぃ、偶然だね……」
きゃっきゃっと無邪気に笑いながら挨拶するララに対し里紗は唖然としながらゆっくり交互に炎佐とララを見る。
「え、えっとララちぃ、その格好って……」
「あ、これ? リサが教えてくれたでしょ? いつもと違う格好をしたら印象が変わるって! 変装なんだ!」
「へ、変装?」
「あ~、実はね、かくかくしかじかで……」
どこか慌てた様子で問いかける里紗に対しララが無邪気な笑顔で答え、呆けた声を出す里紗に炎佐が説明。ララはリトへのプレゼントを買う中で彼にばれないよう変装しているつもりなんだ、という事を理解した里紗は呆れたように額に手を当てる。
「ところで、これって……」
「結城とデートになった時用にギャップ萌えを狙ったつもりなんだけどさ……変装と勘違いするとは思わなかった」
「やっぱり」
炎佐の質問に呆れた様子の里紗はそう答え、炎佐も小さなため息を漏らす。そして彼は苦笑気味の表情でお願いするように右手を顔の前に立てた。
「ま、そういうわけでさ。これリトには秘密って事になってるから、籾岡さんも黙っといてくれない?」
「はは、りょーかい。この店のクッキー一袋で手を打ってあげよう」
「はいはい」
ちゃっかり口止め料を要求する里紗に炎佐も再び苦笑。おススメのクッキーを一袋買って店から出るとテキトーな通行人の邪魔になりそうにない道路の脇にあるガードレールに腰を落ち着けた。
「ほい、氷崎とララちぃの分」
「サンキュ」
「ありがとー」
流石に独り占めはせずに中央に座っていた里紗が両隣に座っている炎佐とララにクッキーを差し出し、自分の分も取ると三人でクッキーを齧る。
「あ、おいしー!」
ララは美味しいクッキーに頬をほころばせ、里紗も「ふむ、まあまあじゃん」とクッキーを評価する。
「ん~、このクッキーならリトも喜んでくれるかな~」
「なるほど、悪くないね……だけどさララちぃ、ここは付加価値ってのをつけた方がいいんじゃない?」
ララの言葉に里紗はニヤリ、とイタズラっぽい笑みを彼女に向ける。それにララはきょとんとした表情で首を傾げた。
「確かにこのクッキーは美味しい、それはこの里紗様も保証してあげよう。だけどさらにインパクトを与える事が簡単に出来るのだよ」
「ホント!?」
里紗の言葉にララが目を輝かせ、炎佐が呆れた目を二人に向ける。すると里紗はフフフ、と微笑んでやや大きなクッキーを一枚袋から取り出す。
「いい? こうやってクッキーの端を銜えて」
言葉通りそのクッキーの端っこを銜え、何を思ったか炎佐の方を向いた。
「
イタズラっぽい笑みはそのままに、里紗は上目遣いで炎佐に銜えたクッキーを差し出す。からかっている様子の彼女に炎佐はまた呆れたように小さくため息をついた。
「いただきます」
「!?」
そして彼はカリ、と里紗が銜えたままのクッキーのもう片端を銜えた。それに里紗がぎょっと身体を震わせ、そのせいでクッキーの欠片がパラパラと落ちる。直径数センチ程度のクッキーの端と端、それこそ少しすれば唇が触れ合うような距離で二人は向かい合う。
「……っ~」
里紗の顔が徐々に赤くなっていき、ついにパキンとクッキーが割れる音と共に里紗が炎佐から距離を取った。
「ちょ、氷崎!? あ、あんた何を!?」
「からかい返しただけだ」
真っ赤な顔での里紗の文句に炎佐は悪びれもせずにそう答えると銜えていたクッキーを齧る。里紗が小さな声で「あ、間接キス……」とか言っているがどうやら聞こえていないらしい。
「ん、っんんっ!」
しかし誤魔化す&気を取り直すように里紗は咳払いをし、ララを見る。
「ま、その、ほら、こういう感じにね! インパクトは絶大でしょ? あわよくば、その……キ、キスだって出来るかもよ?」
まだ少し頬が赤く、わざとらしいほどに炎佐から目を逸らしつつ、里紗は先ほどのクッキー銜えのセールスポイントをララへと話していた。しかしそれに対しララは「えへへ」とどこか困ったような笑い声を漏らす。
「えっとね、リサ。考えてもらって嬉しいんだけどね……私はリトにキスするつもりはないよ?」
「「え?」」
里紗の言葉に対しそう返すララ。その告白に里紗と炎佐は声を重ねた。
「この前、モモから好きな人同士の特別なキスを教わったんだけどね……その時はリトの気持ちを考えてなかったの。だから、リトが私の気持ちに応えてくれるまで待つことにしたんだ。リトからの特別なキス!」
「ララちぃ……」
「いつの間にそんな事に……」
ララの言葉に里紗が感激したように呟き、炎佐は気づかない内にリトとララの関係が進展していたことに驚く。
「あ、もちろん春菜とくっついた後でいいよって言っといたからね!」
「「……」」
だが続けての彼女の言葉には二人とも呆れの表情を見せるのであった。
「んじゃ、あたし用事あっから帰るね。ばいばーい」
「うん、またねー」
一通りからかって(炎佐には返り討ちにあったが)満足したのか里紗は用事があるからと帰宅。ララはとりあえずプレゼント第一弾兼お土産にクッキーを買い、再び炎佐と共にプレゼント探しに戻った。
「次は何を買おうかなー?」
ふんふんと鼻歌を歌いながら上機嫌で歩くララとその後を続く炎佐。相変わらずララはその美貌で人目を集めているがやはりララは気づいておらず、炎佐は苦笑を漏らす。
「……?」
が、そこで炎佐は違和感に気づく。徐々にだがララに向けられる視線が減っている。まるで彼女以外に誰か人目を引くような者がいるかのように。
「あぁ、ララちゃんにエンザ!」
「プリンス・レン!」
「レン君!」
そこに驚いたように声をかけてきた男性の声に炎佐とララも反応、エメラルドの髪を短く整えたイケメンな青年――レンが肩に鞄を担いで彼らに声をかけながら近づき、炎佐とララを交互に見る。そこで改めて何かに気づいたような表情を見せた。
「え、っと……エ、エンザ、まさか……」
「安心しろ、ララの我儘に付き合ってるだけだ」
「そうか……」
レンは炎佐とララがただならぬ関係になってしまったのではないかと危惧する様子を見せるが、炎佐があっさりそう返すと安堵の様子を見せる。
「じゃ、五分休憩でーす」
「お、休憩か」
するとそんな声が聞こえ、レンもそれに反応すると肩に担いでいた鞄のファスナーを開けて中を探る。
「はぁ~疲れた~……レン、お水ちょうだーい」
近くの人ごみ――というかテレビ局のスタッフだ――を抜けてレンに声をかける少女――ルン。動きやすそうな薄手のシャツの上に何のお洒落かネコミミパーカー、下はミニスカートと縞々のニーソックスというファッションの彼女はレンに水をくれと要求、彼も苦笑しながらはいはいと頷いて鞄からペットボトルを取り出し、ルンは「ありがと☆」と明るくお礼を言うとペットボトルのキャップを開けて水を飲み始めた。
「ルンちゃん!」
「むぐっ!?」
そんな彼女にララが不意打ちで声をかけ、不意を突かれたルンは水が変なところに入ったか、けほっけほっと咳をし、息苦しさが消えてからやや涙目でララを見る。
「ラ、ララ!? そ、それにエンザも……」
疲れて気づいていなかったのか声をかけられてようやくララとエンザに気づくルン。彼女はララと炎佐を交互に見つめ、はっとした顔になる。
「え、もしかしてリト君を奪うチャンス?」
「ないよ。リトへのプレゼント探しの途中なんだ」
「なーんだ」
「ルンちゃん、この辺でリトが喜びそうなものを売ってそうな場所知らない?」
ルンはリトとララが別れたのかと興味津々の様子を見せるが、むしろ逆にララがリトにプレゼントを買おうとしていると知るや否や興味なさそうな様子になり、しかしそんな状態に気づかずにララはそうルンに質問した。
「えー、そうね……私も撮影で来ただけなんだけど……」
「あぁ、そこを真っ直ぐ行って交差点を曲がったとこにさっきまでルンが撮影やってたデパートがあったっけ。品揃え豊富だったし、いいものが見つかるかもしれないよ」
「ホント!? ありがとうレン君!」
ララのプレゼント作戦に興味がないルンが困った様子を見せると、レンがそう真面目にアドバイス。いいものが見つかりそうな場所を教えてもらったララが満面の笑顔でレンにお礼を言うとレンも「それほどでもないよ~」とデレデレした様子でララに返す。
「……」
そんなレンをルンはジト目で見ると、突然彼の尻をつねり上げた。
「いづっ!?」
「はい、もういらないからしまっといて」
「は、はいはい……」
悲鳴を上げるレンにそう言ってペットボトルを突き出すルンと、それ受け取って鞄にしまうレン。すっかり付き人みたいな真似をさせられてる彼に炎佐は苦笑を漏らしていた。
「じゃ、私はそろそろ戻るから」
「お仕事頑張ってください、プリンセス・ルン」
「当然よ。応援受け取っとくわ、エンザ」
撮影に戻るルンに一言応援の言葉を述べる炎佐。ルンもふふっと勝気に微笑むとパチリとウィンクをサービスして撮影へと戻っていった。
「じゃあ、俺達は教えてもらったデパートに行ってみるよ。サンキュー、レン」
「ああ。また学校で」
「またねー」
ルンもいなくなり、エンザ達もその場を解散、レンはルンの付き人の真似事としてその場に残り、炎佐とララは先ほどレンに教えられたデパートを探してその場を離れるのであった。
「わー……」
「普段行ってるデパートとはまた別の品揃えって感じだな……」
教えられたデパートに入り、ララと炎佐は店内を見回す。
「とりあえず適当に回って探してみようか」
「うん」
ざっくりとした方針を決め、二人は店内を歩いていく。ゲームショップでの新しいゲームや衣服店での新しい服、新作漫画やDVD――なおマジカルキョーコの新作DVDもあったためララが購入していた――など色々見て回るがどうにもリトへのプレゼントという観点ではララがしっくりくるものがないらしく、これといった収穫もないまま二人は休憩にベンチに座り、近くの店で買ったアイスを食べていた。
「このままだとリトへのプレゼントはクッキーだけになるな……」
「う~ん……」
炎佐の呟きにララが困ったように唸る。クッキーだけというのはいつもお世話になっているお礼というには少々インパクトが欠ける。しかし考え込んでいるせいでアイスが溶け始め、つぅぅ、とコーンから滴り落ち始めた。
「ララ、アイスが溶けてるぞ」
「わわっ!?」
炎佐が呆れたようにツッコミを入れるとララが慌て出すが既に溶けているアイスは止まらない。
「やれやれ」
呟き、炎佐の青色の両眼がアイスを見る。とアイス周辺に冷気が走り、溶けていたアイスを急速に冷やして固体へと戻した。冷気を操るブリザド星人の能力だ。
「ふわ~……」
「相変わらず、世話が焼けるね」
ララがよく冷えたアイスを嬉しそうに見てかぶりつき、炎佐も苦笑しながらからかうようにララに言う。
「えへへ、ありがとね。お兄ちゃん」
それに対しララは申し訳なさそうに、しかし嬉しそうに笑いながら炎佐にお礼を言う。しかしその中の呼び名に炎佐は目を丸くし、ララもそんな炎佐にきょとんとした顔を見せた後、気づいたように「あっ」と漏らす。
「ご、ごめんごめん。つい……」
「……別にいいよ」
ララの謝罪に炎佐もまた微笑む。昔はデビルーク親衛隊をしていた炎佐、ララ達とは護衛と護衛対象という立場だったとはいえ同時に幼馴染の兄役。ナナやモモからも兄と呼ばれている以上ララからも兄と呼ばれる事は不思議ではない。
「ま、同い年だからちょっと違和感はあるけどね」
「でもエンザは私にとって頼りになるお兄ちゃんなのは変わんないよ」
「お褒めに預かり光栄です。で、ララ。アイス食べたらどうする? もうちょっと探すか、諦めて帰るか」
「ん~……」
これからどうするかと話を振られ、ふと顔を上げて辺りを見回すララ。するとその視線がある方向へと向けられる。緑色を基調にし、まるで蔦が絡まったようなデザインになっている看板が掲げられたお店、それを見たララの瞳がぱーっと輝くのを炎佐は見た。
「たっだいまー!」
「お邪魔します」
夕方。結城家に戻ってきたララは元気に挨拶をし、その後ろから炎佐も続く。
「おっ、おうっ! お、お帰り、ララ! あ、ああ炎佐も一緒だったのかー知らなかったぜー!」
それに対しリトが何故か慌てた様子でそう返していた。
「んっふふ~。あのねリト、いつもお世話になってるから、たまにはお礼をしたいの!」
「そ、そうか! プレゼントなんて嬉しいなー!」
「……」
ララの言葉にリトがあははっと慌てたように笑いながら返し、それを聞いたララがきょとんとした表情になる。
「私……まだ何も言ってないよ?」
「げっ!?」
「リト……正直で誠実なのは君の美徳だけど……こういう時は少し知らないふりをしてあげた方が……」
その言葉にリトがげっと声を出し、炎佐が呆れたように呟く。
「リ、リト! 知ってたの!? なんで!?」
それを聞いたララが驚いたように声を上げ、リトが気恥ずかしそうにうつむいてそっぽを向く。
「い、いや、だってよ。朝っぱらからこそこそと、そんな普段と違う格好をして出ていこうとしてるの見かけたら気になるし……悪いとは思ったんだけど……」
「ま、まさかついて来てたの!? じゃ、じゃあ全部知ってる……とか?」
「い、いや、違う! いや、こっそりついていったのはごめん、悪かった。謝る! けど、相手が炎佐だったし、炎佐は俺に気づいてるみたいだったから、待ち合わせの場所からは俺はついていってない! 信じてくれ!」
リトの言葉にララが声を震わせると、リトはまずこっそりララの後をつけた事を謝罪、続けて待ち合わせ場所から先については何も知らないと弁解する。しかしララはリトに後をつけられていたのが思ったよりもショックだったのかしゅんとなっていた。
「ああ、そこは俺も保証する。っていうか、あんなバレバレな尾行に気づかないララちゃんもどうかと思うけど? あと、リトをびっくりさせたいのは分かるけど、黙っていなくなったら心配するだろ? せめてモモか美柑ちゃんくらいには教えて協力のお願いと口止めしといた方がよかったな。俺がモモにメールしといたからよかったものの、誘拐とかと勘違いされたら大事だったぞ」
「うっ……」
炎佐もリトの援護に回り、ララが誰にも知らせずにこっそりいなくなったことを注意、ララもうっと唸ってさっきのショックとは別の申し訳なさから落ち込んだ様子になる。
「い、いや炎佐、ララも俺を驚かせたかっただけで悪気があったわけじゃないんだから……」
するとリトがララのフォローに回り、彼女に向けて優しげに微笑む。
「ララ、俺お前の気持ちすっげー嬉しかったよ。ありがとう……だからその、ごめんな? サプライズ台無しにしちまって」
「う、ううん! 私こそごめんね! リトに心配かけちゃって……」
心から謝罪するリトにララも慌てたように謝り、そこではっとなったように後ろ出に隠していたプレゼントを入れた箱を渡す。
「こ、これ、プレゼント! いつもありがとね!」
「あ、ああ」
ララから貰ったプレゼントを、「開けてもいいか」と確認を取ってからリトは開ける。その中にあったのは新しいジョウロやシャベル、そのほか所謂園芸用品のセットだ。
「えへへ、リトだったら何が嬉しいかなって思って……」
「……ああ。すっげー嬉しいよ。ありがとう、ララ。大切に使わせてもらう」
「うん。それとクッキーも買ってきたんだよ、後で皆で食べようね」
「ああ」
はにかむララに嬉しそうに笑うリト。すっかりさっきまでの気まずい雰囲気はなく、完全に仲直りの雰囲気を見せていた。
「エンザ!」
するとララは炎佐にも笑顔を向ける。
「今日は協力してくれてありがとね!」
満面の笑顔でララはお礼を言い、その横のリトも「ありがとな」と続ける。
「……当然だよ」
と、炎佐もララの頭にぽんと手を置く。
「俺はララのお兄ちゃんなんだからな。これくらいのお願いは聞いてやる」
そして優しげな笑顔を浮かべてそう答えた。
少年ジャンプでToLOVEるに変わるラブコメマンガと噂されているゆらぎ荘の幽奈さんの単行本を全巻買いしました。(挨拶)
面白いなぁと思いつつ「これにオリ主出すならどういう設定にするかな~」とか考えてしまう辺りそういう類の二次創作が染みついている……妖怪やら霊能力者やらいるなら宇宙人一人くらい突っ込んでもいいよね?(やめろ)
まあ本作とのコラボは確実に出来ないんですけども。いや、世界観が合わないとかはないよ?んなこと言ってたらニャル子やケロロ軍曹ともやってないもん。ただ……ToLOVEる世界にはお静ちゃんがいるから、幽奈と会ったら“幽奈「お静ちゃんさんみたいな身体欲しいです」→お静ちゃん「じゃあ御門先生にお願いしてみますね」→幽奈肉体ゲット”で原作ぶっ壊しかねないから怖いんですよ。直接会わなくってもララ達なら「幽霊の友達なら私達にもいるよ」でお静ちゃんと連絡取れるから間接的にも不可能だし……世界観が合わないはちょっとくらいなら屁理屈つけて捻じ曲げる。ただ原作崩壊はね、しかも幽奈に肉体を与えるとか根本からの崩壊だし、ちょっとの思い付きでやっていいものじゃない……。
やるとしたら一話だけの短編コラボですけど、これは「二次創作とは原作あってこそ。故に原作には出来る限りのリスペクトを持つ」という自分の主義に反しますので。まあ逆にこれから先何かの方法で幽奈が肉体ゲットなお話があるならそこ上手く捻じ曲げて喜んでコラボりますけど。(おい)
さて話を戻してお久しぶりです。本編の方が全然話が思いつかずぐだぐだとなっていました。
今回はララとのお買い物。最初の部分とオチは大分前から思いついて書き溜めてたので今回買い物部分を考えてねじ込みました。いつでも使える時間軸のものだったから便利。
途中の里紗やルンレンに関しては前者はついでにちょっとサブヒロインとのカップリングを書きたかった、後者は最近出番がない感じがするのでちょっと出番増やしのためだったりします。
なお炎佐はララにとってもお兄ちゃんです。ララは炎佐にとっては手のかかる双子の妹です。互いに恋愛感情としては全く見ていなかったりします。
では今回はこの辺で。ご意見ご指摘ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。