ToLOVEる~氷炎の騎士~   作:カイナ

48 / 67
第十三話 恭子と大騒動

「――というワケで、特別に現役高校三年生にして人気アイドルの霧崎恭子さんをお招きして!! 芸能界のお仕事についてお話していただきましたーァ!!!」

 

「どうも、ありがとうございました~♪」

 

彩南高校の体育館。生徒教職員が全員集まっているここでステージに立ち、満面の笑顔を浮かべながら挨拶するのは霧崎恭子。その挨拶に大勢の拍手が応え、さらに「キョーコちゃーん!」と声援まで飛び交った。

 

 

 

「……エンザさん。恭子さんに講演の依頼でも出したんですか?」

 

「俺が出すわけねえだろ。キョー姉ぇ、何のつもりで来たんだ?」

 

講演が終わって教室に戻る途中、モモは炎佐の姿を見かけると彼に駆け寄り、もしや今回の講演は炎佐が恭子に依頼したのではないかと思ったのか炎佐に質問。しかし炎佐は何も知らない様子であり、彼も何故恭子が突然彩南高校で講演を行ったのかと疑問を持っていた。

 

「お、炎佐。お前は行かなくていいのか?」

 

「行くって? どうしたの、サル?」

 

すると猿山が炎佐に声をかけ、彼の言葉に不思議そうに聞き返す炎佐に猿山も首を傾げた。

 

「いや、なんか恭子ちゃんがリトを呼んでるって話でさ。てっきりお前も呼ばれてるのかと思ってたんだけど。違うのか?」

 

「知らないけど……ま、行ってみるよ。サンキュ。じゃあな、モモ」

 

「お~」

「はい。恭子さんによろしくお伝えください」

 

どうやら恭子がリトを呼んでおり、猿山は従姉弟である炎佐も呼ばれているものだと思って声をかけたらしく、炎佐は呼ばれていないものの自分が聞き逃しているだけかもしれないと思うと猿山に一言お礼を言って列を抜け出した。

 

 

 

「失礼しま~す」

 

職員室。炎佐は一言挨拶をして入るが、講演が終わって後片付けのためか職員室に人手は少なく、講演をした恭子と彼女のマネージャー。そして教員のティアーユと生徒のリトだけだった。

 

「あ、エンちゃん! 会いに来てくれたんだー!」

 

恭子は炎佐の姿を見た瞬間ぱっと顔を輝かせて彼に駆け寄ってその勢いのまま抱きつき、「エンちゃん成分補給~」とか言いながら頬ずりをする。

 

「は、な、れ、ろ!」

 

しかし炎佐は恥ずかしいのか顔を赤くしながら恭子を押しのけ、呆れたような目で恭子を見る。

 

「で、俺やリトを呼んで何の用事なんだ?」

 

「え? 私エンちゃん呼んだ覚えないんだけど……ま、いっか。せっかく来たんだし、校内を見て回ろうかな~って思って。リト君に案内お願いしようと思ったの。ルンは今日新曲のレコーディングでいないしさ」

 

「なるほど。んじゃ暇だし俺も同行するけど、いいか?」

 

「もちオッケー♪」

 

どうやらそもそも恭子が炎佐を呼んでいるという事自体猿山の勘違いだったようだが、炎佐は恭子の彩南高校見学に同行すると言い、恭子も嬉しそうににぱっと笑って了承した。

 

「すみません、氷崎さん。私も同行したいんですが、一度事務所に戻らなくてはいけなくて……」

 

「あ、大丈夫ですよマネージャーさん。いつものように上手くやります」

 

顔見知りらしいマネージャーに対して炎佐はそう答え、マネージャーは「よろしくお願いします」と返すと荷物を手に職員室を出ていく。

 

「んじゃ行こうか。結城君、よろしくね」

 

「うん」

 

恭子は炎佐の隣に立ちながら、しかし元々呼んでいたリトによろしくと挨拶。リトもこくりと頷いて返した。

 

それからリトと炎佐は恭子を連れて校内を歩き回る。と言っても元々案内を頼まれていたリトがメインであり、隣同士で歩いている二人の数歩後ろを炎佐がまるで護衛のように歩いている形だ。

 

「……ホントに俺でよかったの? 顔見知りって言うならレンだっているし、何より家族の炎佐がいたのに……」

 

「あ、うん。エンちゃんは忙しいかな~って思ってね」

 

「ふ~ん……あ、そこが図書室で――」

 

リトの疑問に恭子は慌てたように笑いながら答え、リトは首を傾げながら図書室を指す。

 

「ね、休みの日とか何してるの?」

 

「え? 俺?……別にこれといって、家の掃除とかゲームとか……」

 

「ふむふむ。休みは結構ヒマってことね」

 

唐突に出された質問にリトは正直に答え、恭子はそれをメモする。

 

()()()()?」

 

その瞬間やけに他人行儀な炎佐の声が聞こえ、恭子がびくっと震える。

 

「あ、リトごめん。ちょっと離れていい?」

 

「お、おう」

 

リトからやや距離を取り、炎佐は恭子を訝しげな目で見た。

 

「キョー姉ぇ、お前本当に何しに来たんだよ?」

 

「あ、あはは……ルンのために、ルンが好きなリト君の情報収集と思って……」

 

声を潜めて尋ねる炎佐に恭子も苦笑しながらそう答え、思っていた以上に馬鹿らしい理由に炎佐は頭を抱える。

 

「あの……氷崎君……」

 

「あ、古手川さん」

 

するとそこに唯が声をかけ、炎佐も顔を上げて彼女の姿を確認すると思い出したように恭子の方を向いて唯を手で指し示した。

 

「キョー……霧崎さん。こちら古手川唯さん。前に会ったよね?」

 

「うん。あなたが前に私のファンだって言ってた――」

「しー! しー!!」

 

炎佐は人前だからか他人行儀に名字呼びを使い、前に会ったという部分は声を潜めながら恭子に唯を紹介。その名前で合点がいった恭子が確認のように言おうとすると唯は顔を真っ赤にして人差し指を口に当てて静かにするようジェスチャーを行う。

 

「ん? あ、古手川。どうしたんだ?」

 

「ゆ、結城君には関係ありませんっ!!」

 

「ご、ごめんなさいっ!」

 

そこに唯が来ていることに気づいたリトが声をかけると唯は咄嗟に彼を睨んで怒号で反撃、リトは怯みながら謝罪の言葉を口にした。

 

「あ、あの、恭子さん……」

 

唯は辺りの目をはばかりつつ、恭子の手を握る。

 

「マ、マジカルキョーコ、いつも見てます……が、頑張ってください」

 

周りに聞こえないようにと必要以上に配慮している結果か声は小さく、さらに震えている。

 

「うん。応援ありがとうね、唯ちゃん」

 

しかし恭子は満面の笑顔でそれに応え、そのキラキラを見た唯は「はわわ」と声をさらに震わせる。だが周りの目に気づくと唯ははっとした顔になり、ごほんごほんと誤魔化すような咳払いをした。

 

「え、ええっと、その……き、恭子さん……よかったら、その……」

 

「……ああ。そうだ、古手川さん。よかったら霧崎さんの校内案内について来てもらってもいいかな?」

 

どこか恥ずかしそうに何か切りだそうとしている唯を見た炎佐は何かを察したように微笑を浮かべた後、唯に校内案内の同行を申し出る。

 

「霧崎さんも男子ばっかりよりは一人くらい女子が一緒の方が気が楽だよね? 古手川さんは風紀委員で校内にもそれなりに詳しいし」

 

しれっと周りの男子組に「これ以上男子の同行者を無駄に増やす気はない」と牽制しつつ、あくまでも恭子も女子が一緒の方がいいんじゃないかという建前と唯の風紀委員という役職を利用して唯に同行をお願いする。その言葉を聞いた唯は嬉しさに頬を緩ませそうになりつつ、それを耐えて真面目な顔つきでこくりと頷く。

 

「わ、分かりました。彩南高校の風紀委員として、責任持って霧崎さんをご案内します」

 

こほんと咳払いをし、背筋をピンと伸ばして真面目な雰囲気を見せながら、唯は同行のお願いを受け入れた。

 

 

 

 

 

「いいな~。リト、キョーコちゃんと一緒で!」

 

一方2-A。ララは羨ましそうに話し、里紗も「アイドルからわざわざご指名とは、結城もやるねぇ」とここにいないリトをからかう。

 

「しっかし。大丈夫かねぇ」

 

「何が?」

 

里紗が腕組みをしながら何か考える様子で呟き、未央が首を傾げると里紗はにしし、と笑った。

 

「いやいや。そりゃそれなりに顔見知り程度の関係ではありますけども? キョーコちゃんってやっぱアイドルじゃん? 大人~な世界に結城を引きずり込んじゃったりしないかね~と思ってね」

 

その言葉に春菜がぴくりと反応。里紗はそれを目ざとく確認して続ける。

 

「例えばこう、人気のいない教室に案内してと言って引きずり込まれ~……みたいな?」

 

「リサ! 変な事言わないで!!」

 

「えへへ、冗談だってば~♪」

 

里紗の言葉を聞いた春菜がハレンチな想像を働かせたのか顔を真っ赤にし、声を上げる。しかし里紗は悪びれもせず冗談だと言った後、「あんたけっこうムッツリだよね~」と春菜をからかった。

 

「ま、そういう事もあるかもじゃん? ね、氷崎」

 

里紗はそう言って炎佐に話を振るが当然炎佐は教室におらず、しかし気づいてなかったのか里紗は「ありゃ?」と首を傾げる。

 

「あん? 炎佐だったらキョーコちゃんの案内に行ってるはずだぜ?」

 

「うえ!? あいつも呼ばれてたっけ!?」

 

「さあ? けど俺が言ったら聞いてくるつってたし、戻ってこないって事はそうなんじゃね?」

 

首を傾げながらそう話す猿山に里紗は呆然とする。

 

「ふ~ん……じゃあさ、さっきリサが話してた事。氷崎とだったらもっと起こる可能性高いんじゃない?」

 

「なっ!?」

 

「そう、舞台はさっきまで講演をしていた体育館の倉庫――」

 

すると、未央が何か興味を持ったようにそう呟き、里紗がやけに大袈裟に反応するが未央は気にせずに話し出す。

 

 

「ね、ねえ、エンちゃん……結城君とはぐれちゃったけど……どうして倉庫なんかに……ひゃう!?」

 

いきなり体育館倉庫へと連れ込まれた恭子は困惑気味に炎佐に話しかけるが、壁際にいた恭子の顔の真横に炎佐が右手を押し当てる。所謂壁ドンの体勢だ。

 

「リトなんていいだろ? そんな事より、やっと二人きりになれたな」

 

そう言い、炎佐の左手が恭子の腰へと回る。まるで恭子を抱きかかえるような格好だ。

 

「ま、待ってエンちゃん……ま、まだ外には先生達が……」

 

「物音を出さなけりゃここまで来ないさ……物音を出さなきゃ、な?」

 

慌てる恭子に対し、どこか意地悪そうな笑みを浮かべながらそう言う炎佐。その熱に浮かされたかのように恭子の頬も紅潮する。

 

 

「――そして少しずつ二人の顔が近づいていき、二人は激しく――」

「ちょっと待ったー!!!」

 

未央の妄想がハイライトを迎える直前、里紗がそれを遮った。

 

「ひ、ひひっ、氷崎がそっそんな事するわけないじゃん!?」

 

「ど、どうしたのリサ? そんなに慌てて……」

 

「な、なんでもない!」

 

顔を真っ赤にしてうろたえる里紗にララがきょとんとした表情で問いかけると、里紗はぷいっと顔を逸らす。さっきまでの春菜とどこか似た様子の里紗を眺めながら、未央はきししと悪戯っぽく笑うのであった。

 

 

 

 

 

「へっくし!」

 

「ど、どうしたんだ? 炎佐?」

「風邪?」

「体調が悪いんなら保健室に行った方が……」

 

一方三階を案内している途中の炎佐達。突然くしゃみをした炎佐にリト、恭子、唯が心配そうに声をかける。

 

「あーいや。噂でもされてるだけだろ」

 

鼻を擦りながら炎佐はそう答える。

 

「キョーコさん!!」

 

すると突然何者かが恭子を呼ぶ。

 

「サインをいただこうか!?」

 

そう続けるのは彩南高校の三年生の一人――弄光。後ろで取り巻きが「流石弄光先輩!! みんなが遠慮して言えない事も堂々と言ってのけるぜ!!」と騒いだ。

 

「あ……で、でもっ……」

 

「ついでにメアドや自宅の住所も知りたい!!」

 

「すげーっ! 怖い物なしだぜこの人はァ!」

「なら俺達もサインを!!」

「そしてお友達になって!! ぜひとも!!」

 

今回サインはNGとなっているのか困る恭子に押せ押せで迫る弄光。さらに取り巻きもサインをねだり始めた。

 

「や、やめなさい! 学校の恥となる行為は風紀委員が許しません!!」

 

風紀委員として唯が注意するが聞く耳持たず、さらに他の生徒もサインを貰っていいと勘違いしたのか次々と迫り、突然の勢いにリトや炎佐までもが人ごみに押しのけられてしまう。

 

(い、息が……)

 

人ごみに巻き込まれ押し合いへし合いで恭子は息が出来なくなってしまう。その近くでは唯ももがいているがほとんどどうにもならない。

 

「「やめろ!! 苦しがってるだろ!!」」

 

だがそこに光明が差す。全く同じ怒号を上げてリトと炎佐が人ごみをかき分け、リトが唯を、炎佐が恭子を助け出すとそのままお姫様抱っこの状態で人ごみを抜け出して逃げ出した。

 

「てめー! 抜け駆けはずりーぞー!!」

「キョーコちゃん待ってー!!」

 

弄光の怒号が響くが二人は無視してその場を走る。

 

「えぇっと……どうする!?」

 

「一か八か二手に分かれよう!」

 

「おう!」

 

すぐさま作戦を決め、炎佐とリトは二手に分かれて相手を攪乱させることに決め、二手に分かれた廊下で炎佐はそのまま直進、リトは横に曲がってやり過ごそうとする。

 

『キョーコちゃん待ってー!!!』

 

そして追いかけていく全員が廊下を走っていく。リトと唯のコンビはガン無視だった。

 

「……まあ、相手の目的は恭子ちゃんだもんね……」

 

「……そりゃそうだよな」

 

全く意味のなかった作戦に唯がため息をつくとリトも苦笑。その後二人はお姫様抱っこの状態に気づき、リトは「うわっ!?」と声を上げると慌てて唯を下ろした。

 

「ごっ、ごめん、古手川! つい!」

 

「あ、いや、その……べ、別に……」

 

慌てて謝り始めるリトに、唯は照れたように顔を逸らし、長く伸びた髪を人差し指と親指でいじり始める。

 

「お、お姫様抱っこなんて……生まれて初めてされたし……」

 

「へ?」

 

「な、なんでもない! だ、だけどその……た、助けてくれてありがとう……」

 

小さな声で呟いた唯の言葉にリトは首を傾げるが、唯は慌ててなんでもないと誤魔化した後助けてくれたことにはお礼を言って歩き出す。

 

「ふ、風紀委員に連絡を取ってくるわね。特別なゲストを困らせるなんて、許せるわけがありません」

 

「お、おう……」

 

そう言ってすたすたと歩き去っていく唯を眺め、リトは頭をかく。

 

「俺も、皆に連絡取っとくか」

 

自分で出来る事はしよう。そう思い、リトはララ達に、炎佐を助けてもらえるよう連絡を取り始めるのであった。

 

 

 

 

 

「くっそ! あいつらしつこいな!!」

 

一方炎佐。恭子を下ろす余裕もなく――というか恭子を連れて走るならこれが一番早いため、恭子が狙われている今下ろすわけにもいかない――追いかけてくる弄光達をちらりと確認しながら三階を走り回っていた。

 

「エンザさん!」

 

すると突然そんな呼び声が聞こえてくる。

 

「モモ!」

 

「話はリトさんから聞きました! こっちへ! 間に合わせですが植物で校庭までの道を作りました!」

 

モモが窓を開けて指差しながらもう片方の手を振り炎佐を呼ぶ。その開いている窓からは確かに太い植物の茎が見え、炎佐はそっちに走り道を確認する。

 

「狭っ!?」

 

「贅沢言ってる暇なんてありません! 直接飛び降りるよりマシです! 強度は保証しますから!」

 

平均台よりちょっと広い程度だろう。そんな植物の茎の道に炎佐が声を上げるとモモがツッコミを入れる。確かに弄光を始め恭子のファンメンバーが追いかけてきており、一刻の猶予もない。

 

「しょうがない! キョー姉ぇ、しっかり掴まっててね!」

 

「へ? ひゃわー!?」

 

炎佐も諦めて窓から飛び出すとその茎の上に乗り、スピードを落とさずに走り下りる。直後追っかけが追いついたが、ここは三階。万一落ちたら死ぬ恐れがあり、どれだけよくても大怪我は免れない。流石に一般人にそんな危険を負ってまで平均台よりちょっと広い程度のスペースの道を下りる勇気はなく、逃げる炎佐を見送るのみ。モモはほっと安堵の息をついてこっそりその場を逃げ出すのであった。なお植物に関しては二階に降りてからこっそり転送回収したため問題はない。

 

「……ここまで来れば大丈夫だろ」

 

人気のない校舎裏。無事に校庭に降りた炎佐はすぐさまここに逃げ込み、そこでようやく恭子を下ろして二人隣同士で地面に座り込む。

 

「はぁ~……びっくりしたぁ」

 

「ああ。あのサイン攻めは驚いたよ」

 

いきなりのサイン攻めから逃げ切った安堵感からかそう息を吐く恭子に炎佐も同意する。だが恭子は続けてため息をついた。

 

「それもだけど。何をどうしたらお姫様抱っこ状態で巨大な植物の茎を走り下りるなんて体験するのかなぁって……ドラマでもした事ないよ」

 

「あ、うん。そうだね」

 

よっぽどのファンタジー系アクション映画の撮影でもないとそんな経験はしないだろうな。と炎佐は恭子の呟きに納得する。

 

「まあ、楽しかったからいいや。エンちゃんの学校って退屈しなさそうだね」

 

「今回の騒ぎは半分以上キョー姉ぇのせいだけどね……ま、退屈しないってのは否定しないけど」

 

けらけらと笑う恭子に対し、炎佐は今回の騒ぎに関しては主な原因が恭子のせいだと言いつつも学校生活が退屈しない事は否定しない。すると恭子はくすくすと笑い、身体を傾かせると炎佐の肩に身体を預ける。

 

「でも、あれに巻き込まれてたら本当に大変な事になってたし……助けてくれてありがとね、エンちゃん」

 

「別に。気にする事ないよ」

 

笑顔でお礼を言う恭子に対し、やや顔を背けるような格好でそう答える炎佐。どこか照れているような様子に恭子はまたくすくすと笑い、その時炎佐の携帯が鳴り始める。

 

「あ、ごめん……はいもしもし。あぁ御門先生……そろそろキョー姉ぇ戻った方がいい?……はい、分かりました。じゃあ職員室へ」

 

炎佐は電話相手らしい御門と話し、電話を切ると恭子の方を向く。

 

「そろそろ職員室に戻ってきてくれってさ。あの追っかけについては古手川さんが全員捕まえてお説教中だから安心していいって」

 

「は~い。しょうがない、行くとしますか」

 

炎佐の言葉を聞いた恭子は残念そうにそう言うと立ち上がり、スカートについた砂や埃をぱんぱんと払う。その横で炎佐もゆっくりと立ち上がると恭子に片手を差し出した。

 

「?」

 

「ほら、行くよ」

 

きょとんとする恭子に促すように炎佐が言い、恭子はそこで理解したのかにこっと微笑むと炎佐の手を取る。

 

「うん。エスコートよろしくね、エンちゃん♪」

 

「ああ」

 

二人は手を繋いで互いに微笑み合うと校舎裏を出て行き、職員室へと向かうのであった。




今回は恭子編。リトとフラグを立てる代わりに炎佐が恭子とのフラグを立て、ついでにちょいとリト×唯も書いてみました。唯に関してはオリジナルで恭子との接点が作られてましたし。
さて、次回はどうしようか。少なくともブラクティス編は書く事決定してるんですよね。現状トップクラスで絡みにくい本作のサブヒロイン、九条凛とフラグを立てられる絶好のチャンスなんですから。ただそこまで一気にすっ飛ばすのか、あるいはまたオリジナル編を挟んでおくか。で悩んでいます。その間の原作がこれまた炎佐を絡ませにくい系のストーリーなので。まあオリジナル編を挟む場合はまずそこの構想から練らなければならないのですが。
今回はこの辺で。ご意見ご指摘ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。