ToLOVEる~氷炎の騎士~   作:カイナ

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第十二話 春の名を持つ少女との逢引

「遊園地のペアチケット?」

 

御門診療所。最近色々あったため健康診断に来ていた(というか御門に「来なさい!」と怒鳴られた)炎佐は御門から二枚のチケットを手渡されていた。

 

「ええ。知り合いの経営してる遊園地がこの前リニューアルオープンしたとかなんとかで誘われたんだけど……私この日、どうしても外せない用事が出来ちゃったのよ。でもお静ちゃんがすごく楽しみにしてて……でもティアに引率お願いするのはなんか不安だし……」

 

そういえば今日はお静ちゃん、やけに元気がなかったなと炎佐は思い返した。そしてティアに引率任せるのは不安というのは彼女のどこか天然な性格を考えると否定できない。

 

「悪いんだけどエンザ、明日お静ちゃんを連れて行ってあげてくれない? 今回の健康診断の診察料タダにしてあげるし、遊園地までの交通費出してあげるから」

 

「まあ、明日は暇だし別にいいけど……遊園地、ねぇ」

 

御門が両手を合わせやや首を傾げて「ね、お願い」と言い、炎佐も特に断る理由もないのでそれを了承。チケットを受け取りながら遊園地ねぇと呟いた。

 

「あら、やっぱり遊園地は彼女とのデートで行きたい? 恭子ちゃんとか私とか?」

 

「ぶっ飛ばすぞ」

 

にまにまと笑い、しれっと彼女に自分を含める御門に炎佐はイラついた目を見せる。しかし御門は「まあ怖い怖い」と言いながら笑ってさささっと後ずさり、からかわれているだけのため炎佐もそれ以上の追撃は行わずため息をついてその場を締め、チケットを改めて確認する。

 

「遊園地か……ねえ、お静ちゃん。ちょっと相談があるんだけど?」

 

炎佐は何か悪だくみを思いついたように笑みを見せるとお静ちゃんを呼び、彼女に何か話した。するとお静ちゃんは目をキラキラさせながら「協力しますです!」と声高に叫ぶ。

 

「?」

 

薬の調合に戻っていた御門はそれを見ながら首を傾げていたのであった。

 

 

 

 

 

「ふんっふふんふふ~んっ……ん?」

 

一方結城家。リトは庭の花壇の雑草抜きを終え、水やりをしていた。するとポケットに入れていた携帯が振動し始め、リトはジョウロを置くと携帯を取り出す。

 

「はいもしもし。なんだよ炎佐? また美柑に用事か?」

 

[違う違う。ねえリト、明日って暇?]

 

「明日? ああ、暇だけど? どうしたんだ?」

 

[うん、悪いんだけど。明日お静ちゃんを連れて遊園地に行ってもらえないかなって]

 

「はあ、遊園地?」

 

リトは炎佐からのお願いに呆けた声を出し、彼から説明を受ける。元々御門がお静ちゃんを連れて遊園地に行く予定だったが、明日はどうしても外せない用事が出来てしまった事。代わりに自分が連れていくことになったのだが、なんと炎佐も用事が入ってしまったとのことだ。

 

[そういう訳でさ。了解しておいてやっぱり無理でした。とかお静ちゃんが可哀想でしょ? リト、悪いけど連れて行ってあげられないかな?]

 

「ああ、分かった。任せといてくれ」

 

[ありがと。遊園地の場所とかは後でメールするから。交通費は後で御門が払ってくれるってさ。あと、ララちゃんとかに言わないでね? チケット二枚しかないのに面倒な事になるから。チケットは後で届けるね]

 

「分かった」

 

リトと炎佐はそう明日の事を話し合い、電話を切る。

 

「どうしたの、リト?」

 

「ああ、いや、ちょっとな」

 

ひょこっと顔を出して声をかけてくるララにリトはやや引きつった笑みで返すのであった。

 

 

 

 

 

それから翌日の日曜日。リトは現地集合という話になったため遊園地にひと足先にやってきて、待ち合わせ場所の入り口モニュメント前で待っていた。お静ちゃんを待たせるわけにもいかない、という判断である。

 

(……ん? だけどお静ちゃん、一人で電車とか乗れるのか?)

 

だがリトはそこでそんな事を考える。元が幽霊、電話でさえ絡繰は苦手と言いつい最近御門診療所の黒電話がやっとこさ使えるようになったと聞いている。そんな彼女がちゃんと切符を買って電車に乗り、目的地までやってこれるだろうか。とリトはやや不安になった。

 

「ご、ごめんなさーい、遅くなっちゃって……」

 

「ああ、俺も今来たとこ……え?」

 

そんな不安に考えていたところに突然聞こえてきた知り合いの声にリトは反応、そう返すがそこで気づく。聞こえてきた知り合いの声、それは女性の声。それはいい。しかし……お静ちゃんの声ではなかった。

 

「さ……西連寺!?」

 

「ゆ、結城君!?」

 

やってきていたのは紫色に近い黒髪を綺麗な短髪に切ったお淑やかな雰囲気を漂わせる少女、西連寺春菜だった。その姿にリトがぎょっとした声を出すと春菜の方も驚いたように叫ぶ。

 

「え、えっと……わ、私、お静ちゃんが急に遊園地に行けなくなったから……私と一緒に行く予定だった氷崎君と一緒に楽しんできてくださいって頼まれたんだけど……」

 

「お、俺も、お静ちゃんに同行する予定の炎佐に急用が入ったから、代わりにお静ちゃんを連れていってくれって頼まれて……」

 

春菜とリトは互いに今自分がここにいる理由を説明。春菜が「ちょ、ちょっとごめんなさい!」と言ってリトに背を向け、携帯電話を取り出す。恐らくお静ちゃん自身は携帯を持っていないため御門診療所にかけたのだろう。

 

「……だ、誰も出ない……」

 

しかし当然と言うか誰も出ず、春菜は困ったように電話を切ってリトの方を見る。

 

「ん、っと……とりあえず、入るか? チケットが無駄になっちゃし……あ、もちろん西連寺が嫌っていうなら無理にとは言わないけど……」

 

「う、ううん。別にいいよ……あ、このいいは、参加……」

 

「お、おう……じゃあ、今日はよろしくな……」

 

「う、うん……」

 

リトと春菜はこれからどうするかを決め、ややぎくしゃくした様子で遊園地の入場門へと向かう。

 

「…………」

 

その様子を空中に浮かぶ人魂が見守っており、その人魂はリトと春菜が遊園地に入ったのを見届けるとすぐにしゅんっと入場門とは反対側の植え込みへと向かう。そして自分と同じ顔の、瞳のハイライトが消えた人形の中に入ると共にその瞳に光が宿った。

 

「炎佐さん! 作戦大成功ですっ!」

 

お目目をキラキラさせながら人魂の宿った人形――お静ちゃんが言う。その横では赤色のスポーツキャップを被った炎佐がにやっと笑みを見せた。炎佐はあらかじめリトに「自分の代わりにお静ちゃんを連れて遊園地に行ってくれ」と伝言。同時にお静ちゃんは「急用が入ってしまったので、炎佐さんに悪いですから西連寺さん、代わりに行ってもらえないでしょうか」とお土産話を一緒にお願いしながら頼む。これで人の良いリトも春菜も断り切れずにそれぞれお静ちゃんを連れる、炎佐が一緒、という誤解がある状態で遊園地に向かう。さらにリトの方は春菜とデートになるなら願ったりかなったりだし、春菜の方は「お静ちゃんにお土産話を話さなきゃならない」という大義名分がある。互いに帰ろうとする事もないだろう。というのが炎佐の予想だった。

 

(それにしても、リトが西連寺さんを好きなのは知ってたけど西連寺さんもってのは知らなかったな……まさか両思いとは)

 

お静ちゃんと作戦を立てている中で炎佐は実は自分の親友とその想い人が両思いだったことを知り、それを思い出してはぁ、と息を吐いた後立ち上がる。

 

「じゃ、僕達も行こうか」

 

「あ、はい。帰りましょうか」

 

炎佐の言葉にお静ちゃんは頷き、帰ろうとする。が、炎佐は「何言ってるの」と言って入場門の方に歩いていく。

 

「別にチケットなんて誰かに貰わなくても入場口で買えるよ。お静ちゃん楽しみにしてたのを潰したお詫びに奢るよ」

 

「……あ、ありがとうございます!」

 

炎佐はそう言ってお静ちゃんを誘い、お静ちゃんはぱぁっと顔を輝かせるとぺこりと大きく頭を下げるのであった。

 

 

 

(お、お静ちゃんを連れていくはずだったのに、ま、まさか春菜ちゃんと遊園地で遊ぶことになっちまうなんて……結果的にだけど感謝するぜ、炎佐!)

 

(氷崎君と遊ぶ予定だったのが結城君とになっちゃった……お、お静ちゃん。楽しみにしてたのにごめんね、でもありがとう……お土産、たくさん買って帰るから!)

 

一方、リトと春菜は互いに想い人と思わぬところでデートになった事に困惑しつつ、きっかけをくれた友達に心の中でお礼を言いつつガッツポーズを取っていた。

 

「「あ、あのっ――」」

 

そして互いに相手の声をかけようとする。だが同時にその相手も声をかけてきた。

 

「ご、ごめん西連寺! な、なんだ?」

「あ、ううん、私こそごめん! え、えっと、どうしたの?」

 

互いにわたわたしながら、相手を優先しようとする。

 

「やれやれ、二人とも何をしているのやら……」

 

それを少し離れたところから炎佐が呆れたような、それでいて微笑ましいものを見るような視線を向けながら苦笑していた。なおその近くの物陰にはお静ちゃんが隠れ、二人とも変装のつもりなのかすぐそこのグッズショップで買った帽子を被っている。

 

 

 

 

「うおー!」

「きゃー!」

 

それからリトと春菜は丸太を模したコースターに乗ってのんびり川下りをするようなテーマのアトラクションへ移動。アトラクションの目玉である最後に急な坂を急降下、派手な水しぶきに楽しそうな悲鳴を上げる。そしてコースターが昇降口へと戻り、リトと春菜はコースターを降りる。

 

「わーい! お馬さんでーす!」

 

なおお静ちゃんはそのアトラクションの近くでメリーゴーランドを楽しみ、炎佐はお静ちゃんの様子を確認しつつリトと春菜の現在位置を確認していた。別にストーカーしている訳でもないが、万一二人に会ってしまっては説明がかなりめんどくさい&デートをぶち壊しかねないため現役時代の能力をフル活用している。

 

「ふう、夏だし丁度いい感じだよな」

 

「うん、そうだね」

 

リトは濡れた事を心地よさそうに笑い、同意をしてくれている春菜を見る。

 

「ぬえっ!?」

 

「? どうしたの、結城君?」

 

しかしその春菜は水がかかっているせいで服が若干透けており、リトには刺激が強い状態になっていた。しかも春菜自身は気づいていない。

 

「い、いや、なんでもねえよ! そ、そうだ西連寺! 土産屋見に行かないか? お静ちゃんにお土産買ってあげなきゃだろ?」

 

「あ、そうだね。お静ちゃんだけじゃなくって、ララちゃんや美柑ちゃんや皆にも買わなきゃ」

 

誤魔化すようにリトが春菜を土産屋を見に行こうと誘い、春菜もうんと頷いて二人は近くのお土産屋へと移動していった。

 

 

 

「ターゲットはショップに移動したみたいだね。しばらくこの辺で待つとしようか」

 

「はい!」

 

炎佐は二人が土産屋に入ったのを確認。その店の出入り口をすぐ確認できるところを陣取ってその近くのベンチへと座るとお静ちゃんも敬礼を取って隣に座る。

 

「……そういえば、炎佐さん」

 

「なに?」

 

「炎佐さんって……メアさんと仲がいいんですか?」

 

「はぁ?」

 

ベンチに座った後、お静ちゃんが唐突に投げかけてきた質問に炎佐が表情を歪める。

 

「あいつとどこが? ふざけて絡んでくるから適当に相手してるだけだ。ナナと仲が良くなけりゃぶっ殺してる」

 

「そ、そうですか……」

 

イライラしている様子でお静ちゃんの質問に返す炎佐。殺すという物騒な単語が出ており、お静ちゃんは引きつった笑みを見せた。

 

「……で、メアがどうしたって?」

 

「あ、いえ、別に……ただあの人……ちょっと、嫌な感じがしてまして……一度、あの人の心を覗いたんですが……一歩間違ったら取り込まれ、消滅してしまいそうな闇……だからその、メアさん相手になるとあまり踏み込めなくって……」

 

「踏み込まなくていい。あいつらがいずれ本性現してナナ泣かせたらぶっ殺すからな」

 

「あ、あはは……」

 

基本的に穏和で常識人キャラの炎佐がぶっ殺すとか言う辺り、彼の中では相変わらずメアとネメシスは好感度最底辺のようだ。

 

 

 

「あ、ありがとね、結城君……」

 

「ああ、いいっていいって。記念にさ」

 

数十分ほど時間を置いて土産屋から出てきたリトはいつも通りだが春菜はこの遊園地のマスコットを元にデザインしたパーカー付きの上着を着ており、春菜がお礼を言うとリトは笑いながらそう返す。言うまでもなくさっきの透けていた服を見えないようにしたものだ。

 

「お土産の目星もつけたし、後は帰る時に買えばいいよな」

 

「うん」

 

そのついでにお土産の目星もつけ、しかし今買ったら荷物が多くなって面倒なため帰りに買う事に決めて二人は次はどこで遊ぼうかを考えながら遊園地を歩き回る。

 

「うおっ!? あ、あんた達はっ!?」

 

「「えっ?」」

 

そんな所にいきなりそんな驚いたような声を聞き、リトと春菜はその声に反応して振り返る。

 

「ひっ!?」

 

そして春菜が怯えた声を出した。彼らの前に立っているのはミイラ男に半魚人。手には「モンスターハウスリニューアル!」「今まで以上の恐怖をあなたに!」という看板を持っており、どうやら客引き中のようだ。

 

「や、やっぱり! ドクター・ミカドの学校の……」

 

「え?……あっ! あんたらもしかして旧校舎の……」

 

ミイラ男の言葉を聞き、リトが思い出したように言うとミイラ男と半魚人はこくこくと頷く。二年生に上がって少しくらいした頃に旧校舎で怪談騒ぎが起きた時(正体はリストラされて地球に流れ着いたはぐれ異星人だったが)に出会った異星人達だ。

 

「あ、そういえば御門先生。知り合いに遊園地の経営者がいるって……」

 

「へ、へい。俺達、今はこのモンスターハウスでお化け役をやってまして。これが結構人気なんですよ?」

 

リトが頭をかきながら呟くと、半魚人がどこか得意気に説明する。まあ、着ぐるみでも機械仕掛けでもなくガチで異形の異星人がやっているお化け屋敷だからな。とリトはふと考える。

 

「ど、どうですか、と誘いたいところですが……」

 

ミイラ男はそこまで呟き、リトの後ろに隠れて彼の服を掴み、涙目になって震えながらも、完全に隠れるのは失礼だからと思っているのかそっと顔を覗かせている春菜を見る。困っている様子の半魚人も元々青っぽい顔が余計青くなっており、彼女が暴走した結果自分達がタコ殴りにされた事を思い出しているようだ。

 

「ま、まあその、自分らはこれで……ドクター・ミカドによろしくお願いします」

 

「あ、はい。お疲れ様です」

 

ミイラ男がそう言うと二人は去っていき、リトは苦笑しながら頷くと春菜と共にその場を去ろうとする。

 

「あ、そうだ。地球人の旦那」

 

と、半魚人が何か思い出したようにリトの元に歩き寄り、なるべく前を見てモンスターハウスの方を見ないようにしているというか怖がっているあまり耳を塞いでいる春菜に気づかれない間にリトに耳打ちする。

 

「今、あっちの方でアニマルパークって催し物をしてましてね。どうせなら彼女さんを連れてそっちで遊んだらどうです?」

 

「かっ彼女って!?」

 

「なぁに、お礼なんていりませんから」

 

半魚人の言葉にリトが反論する間もなく、半魚人は健闘を祈るかのようにサムズアップをすると客引きに戻る。

 

「え、えーっと、西連寺……なんか、あっちでアニマルパークとかいうイベントをやってるみたいなんだ……せっかくだし、行ってみないか?」

 

「あ、うん!」

 

動物好きな春菜はその言葉を受けると嬉しそうに微笑んで頷き、二人はさっきリトが半魚人に教えてもらった方に向けて歩き出した。

 

 

 

「……」

 

それからアニマルパークへとやってきた時、春菜の頬は擬音をつけるならふにゃ~、というくらいに緩み切っていた。このアニマルパークは期間限定の所謂動物達と戯れる系コーナー。ウサギや子ヤギ、羊などの定番はもちろん馬や牛、さらにはサイなどの大人しい草食動物とも触れ合えるというものだ。現在春菜はウサギを思う存分愛で、手ずから渡した餌のリンゴをかじかじ齧っているのを見てさらに頬を緩ませる。幸せオーラが全開に出ていた。

 

(春菜ちゃん、喜んでくれてるみたいだ……よかった。ありがとな、炎佐、お静ちゃん、御門先生)

 

その光景を眺めつつ、リトは結果的に自分達をここに連れて来てくれた三人に心の中でお礼を言う。

 

「はいやーっ!」

 

「わー! 兄ちゃんすげー!」

「炎佐さんすごいですー」

 

なおその炎佐は馬の触れ合いコーナーで行われている乗馬体験でインストラクターそっちのけの乗馬技術を見せつけていた。観客の少年が盛り上がり、お静ちゃんがぱちぱちと拍手をしていた。

 

 

 

「はふぅ……」

 

ウサギの触れ合い時間が終了。次の人への交代のため柵から出た春菜は満足そうな表情を浮かべていた。その様子にリトも嬉しそうに微笑む。

 

「なあ、西連寺。さっき調べたんだけどさ、あっちでモルモットの触れ合いをやってるんだけど……」

 

その言葉を聞いた瞬間春菜の目がキラキラと輝き、リトもうんと頷くと彼女を連れてさっき確認したモルモットの触れ合い広場へと春菜を連れていくのであった。

 

 

 

「……リトも西連寺さんも、楽しそうでよかった」

 

「はい!」

 

それを見守りながら炎佐とお静ちゃんはふふっと微笑む。炎佐はリト達より少し離れたところで動物との触れ合いを楽しもうかと思い、辺りを見回す。お静ちゃんも可愛い動物はいないだろうかと辺りの看板を確認する。

 

「ひうっ!?」

 

すると突然足元に何かがすりついたような感触を覚え、お静ちゃんはびくりと飛び跳ねる。

 

「おーい。この辺に触れ合いコーナーから脱走した犬がいないかー?」

 

「え? こっちには来ていませんよー?」

 

その時、そんなおあつらえ向きな声が聞こえ、お静ちゃんはまるで油の切れたブリキ人形のようなギ、ギ、ギ、といった感じの動きで自分の足元へと目を向ける。

 

「アンアンッ」

 

そこには可愛らしいチワワがお静ちゃんに懐くようにすり寄っていた。

 

「イ、イ、イ、イ、イ……」

 

しかし対するお静ちゃんは涙目になり、身体をガクガクと震わせる。

 

「ん? げっ!?」

「犬ーっ!!??」

 

お静ちゃんの様子がおかしい事に直前で炎佐が気づく。しかしもう遅く、お静ちゃんは平常心を失ってパニックに陥り、同時に彼女の能力である念力が暴走を起こす。

 

「わー!?」

「きゃー!?」

「え、これ、お静ちゃんの!?」

「う、うわー!?」

 

まるで竜巻が急に発生したように辺りのもの全てが吹き飛ばされる。しかし炎佐は僅かに吹っ飛ばされただけで耐え、地面に手を付けるとハンドスプリングの要領で前転。地面に足をつけると同時にブリザド星人の能力を解放。足を地面ごと凍結させて吹き飛ばされる事を防ぐ。

 

「さーてと……」

 

自分の身の安全を確保してから、炎佐は触れ合いコーナーを見上げる。ウサギやモルモット、牛や馬、サイまでもまるで竜巻に巻き込まれたように吹き飛んでいる。それは人も例外ではなく、リトや春菜も春菜はスカートを押さえ、リトはじたばたともがいている。

 

「……とりあえず、ニャル子を呼ぶか」

 

惑星保護機構の知り合いを呼び、その権力を使ってどうにか収めさせよう。そう押し付ける事に決めた炎佐は携帯電話を取り出す。

その後、ニャル子がクー子達を連れてぶーぶー言いながら記憶操作などの事後処理を行った後、流石に冗談じゃ済まないとお静ちゃん及び今回その保護者役だった炎佐が厳重注意という名のお説教をくらったのはまた別のお話。




ネタが思いつかず、今までの作品を読み直していて私はとんでもない事に気づいてしまいました……。
俺、ToLOVEる原作メインヒロインの西連寺春菜メイン回を一回も作ってねえ。同じリト側ヒロインと明言している古手川も一話はあるのに。(汗)
で、改めて考えますと……炎佐と春菜って接点がほとんどないんですね。せいぜいがクラスメイト且つ友達の友達。そこはこの前の古手川と全く同じだけど、古手川は恭子の隠れファンというギリギリ接点といえなくもない接点があるのに対し春菜はゼロ。さらに本人がお淑やかで控えめな大和撫子系キャラなのも相まって絡む方法がない。(汗)
しかしこのままだと「カイナって春菜をまともに話に出してないし、実は春菜ちゃん嫌いなんじゃね?」という風評被害が起きる可能性があるので、どうせ原作の方の話思いつかないし無理矢理今回の話をねじ込みました!(被害妄想を執筆意欲に変換するスタイル)
あ、ちなみに俺ToLOVEるの女性キャラは大体好きです。最近はアゼンダも自分有利な時は調子乗ってて、不利になった途端涙目になって命乞いしたり土下座したりという完全に小者なとこが可愛いなぁと思ってるくらいですし。
で、今回は遊園地デート……はい、遊園地デートだと言い張ります。相手は春菜ちゃん、と来たらリトしかないでしょうというノリで。あとはまあついでに炎佐とお静ちゃんも。なおお静ちゃんをヒロインにする予定は一切ありません。
では今回はこの辺で。ご指摘ご意見ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。

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