ToLOVEる~氷炎の騎士~   作:カイナ

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第二話 幼き頃、親衛隊員と第三王女

「いっやー大量大量! 掘り出しもんたっくさんあったねー」

 

にゃはは、と笑いながらそう言い、ハンバーガーをぱくっと一齧りするのは籾岡里紗。その向かいに座り、注文したシェイクをすするのはモモ・ベリア・デビルーク。だが里紗が何をかは分からないものの大量と評している割に二人とも持っている荷物は今時の女の子がちょっとしたお出かけに使いそうなバッグぐらいだ。

 

「にしてもすごいね、モモちぃのデダイヤル? だっけ? あんなに買ったのにほぼ手ぶらじゃん」

 

「ええ、まあ便利ですよ」

 

ポテトをサクリ、と齧りながらの未央の言葉にモモもふふっと笑い、デダイヤルをいじる。本日この三人は互いに暇を持て余して出かけていたところ偶然出会い、一緒にちょっと遠出して買い物に洒落込んでいたのだ。そしてその戦果はモモのデダイヤルに放り込まれて三人は某ファーストフード店で一休み中というところだ。

 

「いいなー。それララちぃが作ったんだよね? あたしもララちぃに作ってもらおっかなー」

 

「止めといた方がいいと思いますよ? エンザさんがどれだけ怒るか……」

 

「そんな大袈裟な……」

 

里紗の何の考えもなく、単純に羨ましいから頼もうかなと考えただけで発したような言葉にモモが注意を促し、だが未央は大袈裟だと笑う。が、モモは「甘い」と一言だけ言って空になったシェイクからストローを抜き、その先端を里紗と未央へと突きつけるように向けた。

 

「エンザさんのクソ真面目さは舐めてはいけません。特にエンザさんはお姉様をデビルーク王の後継ぎになるための道具とか、その宇宙一と言っても過言ではない頭脳を兵器運用に悪用しようだの企む連中には厳しいですからね……と、まあそれは前置きで。そんなトンデモ発明を一般地球人に持たせたらどうなるか分かったもんじゃないですよ? 下手をすればその発明を狙う異星人に狙われるかも?」

 

「あはは……分かった、遠慮しとく……」

 

モモの言葉に里紗は苦笑交じりにデダイヤルの所有を諦め、自分の分のシェイクをずずっとすする。

 

「つーかモモちぃ、氷崎の事分かってんだね。さっすが幼馴染」

 

「ええ……まあ」

 

未央の褒め言葉にモモはやや照れたようにぷい、と顔を背けてポテトをぱくっと一口食べる。その視線の先では一番忙しい時間帯故か店員が慌ただしく動いており、店長らしき凛とした雰囲気の女性が「まーくん、レジに回ってくれ!」と指示を飛ばし、穏やかな風貌の青年が「はい!」と返してレジに入り、満面の笑顔でお客様を出迎え隙のない接客を見せていた。

 

「つーかさぁ、モモちぃたちの親衛隊? だっけ? そういうのやってた氷崎ってどんなんだったの? やっぱ“お帰りなさいませ、お嬢様”とかやっちゃってたの?」

 

「いえ、執事じゃないんですから……でもそうですね。私達が生まれて、物心ついた時にはエンザさんはいましたね。なんでもおじさんつまりエンザさんのお父様がお父様の古い知り合いで、おばさんつまりエンザさんのお母様がデビルークでエンザさんを出産。エンザさんの両親は賞金稼ぎで子育てには安全な環境じゃないからお父様が預かった。と聞いています」

 

ボケなのか真面目なのか分からん里紗の言葉にモモは呆れ気味にツッコミを入れた後、炎佐との出会いについてそう説明。エンザとララが生まれたのは同時期だったので同い年の遊び相手に丁度いいとか思われたんじゃないだろうか、とギドの考えを予測する。

 

「なのでエンザさんは血筋としてはフレイム星人とブリザド星人のハーフであり、デビルーク生まれデビルーク育ちという事になりますね。それに実際、ザスティン達と同じ親衛隊っていうよりは……本当にお兄様のようでしたね……」

 

そう言い、モモは遠い昔のある日のことを回想し始めた。

 

 

 

 

 

「むー」

 

デビルーク星の王宮。デビルークの第一王女――ララ・サタリン・デビルークはそこの食堂だろう場所のテーブルに肘をついて頬杖をつき、ほっぺを膨らませて目も細めて分かりやすいほどにぶすくれた様子を見せていた。まだ幼さの残る、というか幼いながらも綺麗な顔が台無しである。

 

「そう怒るなよ、ララ」

 

黒い髪を短髪に切り、黒服を着た少年――エンザがララを諌めつつ紅茶を飲む。彼は呆れたような苦笑を漏らしているが、ララは「だってー」と言いながらテーブルに突っ伏して両手両足をじたばたさせる。

 

「今日は折角のお出かけの日なのにー、またお見合いだもーん」

 

「ま、突然でザスティンもブワッツもマウルも大慌てだけどな。親衛隊長とその右腕達は大変だな、新人の俺は気楽なもんだ」

 

「でもエンザ、籍だけならまあまあ長いって聞いたぜ?」

 

「やかましい。生まれた頃から親衛隊に入ってたとか知るか」

 

ララはお出かけの日に急にお見合いが入った事に対しぶすくれており、エンザはのんびり紅茶を嗜み、テーブルに置いていたサングラスを弄びながら他人事な様子で返す。それをナナがまぜっかえすが、エンザは自分の記憶にない事なんか知るかと言い返した後ララを見る。

 

「ララ、今度こっそり抜け出して散歩に付き合ってやるから。今回は我慢しろ? な?」

 

「ん~……うん、分かった。約束ね?」

 

エンザが苦笑交じりに返すとララは渋々と頷いて返す。

 

「ララ様。そろそろ出発のお時間です」

 

「は~い」

 

と、デビルーク親衛隊隊長のザスティンがララを呼び、ララも渋々席を立つ。それからザスティンはエンザを見た。

 

「エンザ。急な話で私とブワッツ、マウルはギド様とララ様の護衛に回る事になったが……ナナ様とモモ様を頼む」

 

「へいへい任せとけって。いつも通り城下町をテキトーに遊び回るだけだろ?」

 

ザスティンの言葉に対しエンザはややおざなりな返答を見せる。今日はプリンセス三人の英才教育の中数少ない息抜きである城下町へのお出かけの日、そんな日にララはお見合いが入ってしまい不機嫌になっていたのだ。ザスティンはナナとモモにも「お気をつけて」と言葉を残すとララを連れてその場を去っていく。

 

「んじゃ、俺らも行くか」

 

「おう」

「はーい」

 

ララを見送った後、エンザもサングラスを装着しながらナナとモモに呼びかける。二人も頷いて席を立ち、彼らは他の親衛隊メンバーとの待ち合わせ場所に歩いていった。

 

 

 

「ひゃっほーい!」

「相変わらず、賑やかですわ」

 

デビルーク王宮すぐ近くの城下町。人通りの多いここでナナがぴょんぴょんと飛び跳ね、モモが辺りを見回しながらそう呟く。二人とも目を輝かせ、満面の笑みを浮かべている。

 

「へいへいナナもモモも、俺達の目が届かないところに行くなよ?」

 

「わーかってるって! あたし、ボーナムへのお土産探してくる!」

「お姉様へのお土産も探さないと、ですわね」

 

エンザの注意を受けつつもナナとモモはてててっとそこら辺の露店に走っていく。エンザはそれを呆れたように細めた目で見た後彼女らの後を追い、残るデビルーク親衛隊メンバーは辺りの警戒へと回る。

 

「ふんふんふ~ん♪」

 

モモは上機嫌で露店を回り、綺麗なペンダントや指輪などのアクセサリーを興味津々の様子で見ていく。

 

「あ、これ可愛い……ナナとお姉様とお揃いに……」

 

モモはそう考え、顔を上げて辺りを見回しナナと相談するため彼女を探す。

 

「なーなーエンザ! これ、これ買って! 美味そう!」

 

「自分で買え。小遣い持ってきてるだろうが」

 

そのナナは露店で売っている料理をエンザにねだっており、エンザにあしらわれているが「けちー」と言いながら食い下がっているところだ。多分しばらくしたら根負けしたエンザが買う羽目になるだろう。

 

「……もうしばらく待ちましょうか」

 

ナナへの相談ついでにナナが買ってもらうだろう食べ物をネタにして自分もエンザに何かねだろう。そう考えながらモモは別の露店を見に行く。

 

「……う~ん、なんだか色々ありますねぇ」

 

「えぇ。様々な星の名産品を集めております」

 

次の露店にあるのはモモの呟き通り統一性のないラインナップ。露店の主は様々な星の名産品と言っているが、ガラクタ星の前衛芸術みたいな物体にダサール星の派手すぎて引く服などどうにも食指が動くようなものはない。

 

「モモ」

 

「!」

 

突然後ろから聞こえてきた男の声。モモは驚いたように反応をして振り返り、首を傾げた。

 

「どうしたんですか、エンザさん?」

 

「ああ、ナナが走り回って怪我をしたんだ。悪いけどちょっと来てくれないか?」

 

「ナナがですか?」

 

エンザの説明を受け、しょうがないなぁと立ち上がるモモ。そのままエンザの先導で歩いていくが、エンザが入っていくのは人気のない裏路地だ。

 

「……エンザさん、本当にナナはこっちにいるのですか?」

 

裏路地を進みながら、モモは前を歩くエンザへと問いかける。と、その時ローブで身体を隠した男達が裏路地の入口を塞ぐように現れる。

 

「っ! エンザさん……」

 

自分の身柄を狙ってきた者かと、モモは怯えた様子でエンザに縋りつく。

 

「あ、う……」

 

が、直後モモの顔に何か気体状のものを吹きかけられ、驚いて反射的に吸ってしまったと同時に身体中が麻痺し、いう事を聞かなくなる。誰がそんな事をしたか、言うまでもない……エンザだ。

 

「エ、ンザ……さん?……」

 

「――様、成功しました」

 

がくん、と膝をつき、エンザを見上げようとするモモ。だが身体がいう事を聞かず、意識も朦朧とする。近くにいるエンザが何を言っているのかすら聞きとりづらい。

 

「ククク……ララのやつを連れていく予定だったが、予定変更だな。ララも妹二人を人質にされたならいう事を聞かざるを得まい。この二人を助けたければ俺と婚約するしかない、と言えばな」

 

(こいつ、お姉様の婚約者候補……私とナナを人質にお姉様への婚約を強要するつもりですのね……)

 

麻痺する身体を必死に動かし、下手人の顔だけでも拝んでやろうと踏ん張るモモ。だがその顔はやはりローブで覆われていて確認できず、どうにか確認できるのは姿は自分達デビルーク星人と同じヒューマンタイプであること、そして手足の肌の色がピンク色であるという事くらいだ。いや、ローブから長い舌がべろりと伸びて口の周りを舐めていた。気持ちが悪い、とモモは生理的な嫌悪感を抱く。

 

「しかし、流石はララの妹だ。まだまだ幼いが、こいつも俺の側室にしてやろうか……何よりも、ララの妹って事はこの俺様のもの、って事だからなぁ」

 

(何者か知りませんが、ふざけた事を……)

 

ローブで隠れていてもなお分かるほどにいやらしい目つきでジロジロ見てくるララの婚約者の一人らしい男を睨みつけるモモ。しかし身体の方はいう事を聞かず、もはや上半身は地面にくっつき、だが腰だけは上がっているという見ようによっては男を誘うようなポーズになっていた。

 

「まあいい。すぐにこいつを連れていけ、そしてもう一人の妹もすぐに連れてこい」

 

「「「はっ」」」

 

男はそう言い、その部下らしい二人の男――裏路地の入口を塞いだ奴らだ――がモモを担ぎ上げ、エンザも敬礼を取る。

 

「は、なせ……はな、しなさい……」

 

じたばたと暴れようとするモモだが、痺れのせいでデビルーク星人の怪力も発揮できていない。男達はまったく意も介さずに彼女を縛り上げようとし、エンザはすたすたとその場を去っていこうとする。

 

(お願い、ナナ……逃げて……)

 

抵抗を諦めたモモは、せめて人質になるのは自分一人だけになるように、ナナに逃げるよう祈るのであった。

 

「え、な、なんだ、え、なんでぐばぁっ!?」

 

直後聞こえてきたのは何か狼狽した声とドゴンッという爆発音と悲鳴、直後ずがんっという音と共にモモの目の前に吹っ飛ばされてきたらしいエンザが地面に叩きつけられ、

 

(へっ?)

 

直後ぼふんっと煙に包まれたと思うとちびっこい太ったビーバーに魚の意匠をくっつけたような姿になる。いきなりの展開にモモの目が点になった。

 

「よお、テメエら」

 

(この声……)

 

直後聞こえてきた声、それにモモは信じられないというような表情になる。驚いた男達が手を離し、麻痺して身体を支えられないため地面にしたたかに打ちつけられてしまうが関係ない。モモは必死になって身体を動かし、声の方を、裏路地の入口を見る。

 

「オレの妹に手を出すってのはつまり、命はいらないって事でいいんだな?」

 

身にまとう白銀の鎧、黒い髪は燃える炎から生み出される陽炎のように揺らめき、サングラスを外したことで見えるその両目には炎のような赤色の瞳を宿している。

 

(エンザさん……)

 

エンザだ。どうやら自分を騙したエンザは変装していた偽物だったらしい、それを理解したモモの頬に緩みが出る。

 

「く、くそう!」

 

「く、来るなら来やがれ! ただし命の保証はしねえぞガキが!!」

 

男二人がそう言うや否や、着ていた服を弾け飛ばす勢いで男達の肉体が膨張。身体中が刺々しく筋肉質になる。

 

「それがどうした?……デビルーク親衛隊見習い、エンザ。いざ参る!!」

 

しかしエンザは怯えることなく、刀の柄を取り出すと炎の力を集中、赤い刃を生み出して構える。

 

「「ひぃぃっ!!」」

 

その姿を見た瞬間、男二人から明らかな怯えの声が発された。

 

「チィッ! ここは退くぞ! その気絶した役立たずを連れて逃げろ!!」

 

「は、ははっ!」

 

リーダーの男が叫び、証拠を残さないような指示を出すと男の一人が頷いて煙玉を投げつけ視界を塞ぐ。その直後タタタッという足音が遠ざかっていった。

 

「モモ! 無事か!?」

 

「は、はいっ!」

 

エンザの呼びかけにモモは答え、エンザは煙が消えて姿を確認できたモモの方に走る。

 

「……」

 

が、直後エンザは何かに気づいたように足を止めた。

 

「エ、エンザさん?」

 

「さっきのあいつら、見る限り少なくとも俺に変装した奴はバルケ星人のようだったな……お前、もしかしてモモに化けたバルケのやつじゃないよな?」

 

「はい!? なんですかそれ! 失礼ですね!」

 

即効性の代わりに効果が消えるのも早いのか痺れが取れたらしいモモはエンザの失礼な発言に立ちあがって異論を唱える。

 

「んじゃ、本人確認だ」

 

そう言い、エンザはモモの耳に口元を近づけると何かをぼそぼそと囁きかける。

 

「っ~!!!」

 

その瞬間モモの顔がぼふんっと湯気が出る程に真っ赤に染まり上がり、

 

「そ、それは秘密だって言ったじゃないですかバカァッ!」

 

直後涙目になったモモの風を切らんばかりのビンタとバチィンという音が響いたのであった。

 

「どうやら本物のモモみたいだな」

 

納得いったのかエンザは左頬に紅葉マークをくっつけたまま、携帯電話らしい物体を取り出すと他のデビルーク親衛隊にモモの誘拐未遂事件が発生したことと相手の一人にバルケ星人がいること、モモの証言からララの婚約者候補による犯行の可能性が高いことなど、現在分かっている情報を次々に伝えて走査線を張ってもらう。

 

「ところでナナは?」

 

「お前が見当たらなかったから、他の奴に相手を任せてるよ。だから俺が探しに来たんだ」

 

今度はナナが同じように騙されるのが心配になったのか尋ねてくるモモにエンザは他に護衛がいるから心配するなと返す。

 

「しっかしバルケ星人による誘拐事件か。今度から合言葉とかによる本人確認を徹底するようザスティンに進言するかな……」

 

エンザはそう呟きながら携帯電話をしまう。

 

「さて、戻るぞ。あとナナに押し負けて食い物買わされたんだがモモは何かいるか?」

 

「いいんですか?」

 

「後で知ってナナだけずるいですって癇癪起こされてもめんどくさいからな」

 

モモの予想通りナナのおねだりに根負けして食べ物買わされたらしいエンザはモモにも同じように何か買ってやるつもりらしく、モモは自分の想定通りの展開とはいえ「いいのか」と尋ねる。と、エンザは皮肉気な笑みを浮かべながらそう返し、前例があるのかモモは目を逸らしながら苦笑を浮かべた。

 

「えーと……」

 

モモは何を買ってもらおうかと考えながら足を踏み出すが、そこで思いついたように手を差し出した。

 

「では、手を繋いでください」

 

「は?」

 

「繋いでくださいって言ったんです♪ まだ痺れが取れてないみたいで、エスコートをお願いします」

 

「へいへい」

 

にこっと微笑んでそう言うモモにエンザも了解して手を差し出し、モモの手を掴む。そして二人は手を繋いだまま裏路地を後にするのであった。

 

 

 

 

 

「という感じで、エンザさんは昔から私達を守ってくれてたんです……って、どうしました?」

 

にへぇ、という感じに頬を緩ませながら説明するモモは里紗と未央が顔を手で覆って「はぁ……」とため息をついているのに気づいて首を傾げる。

 

「いや、なんていうか、まあ、ねえ……」

 

「うん、その……いいお兄ちゃんでよかったね……」

 

リサミオはため息交じりにそう呟き、モモは二人が何を言っているのか分からないのか首を傾げる。と、里紗は店内をさっと見回して席を立ちあがった。

 

「さってと。お店も混んできたし、そろそろ出るかねぇ」

 

里紗は混雑してきた店で食事を終えているのに駄弁っているのも限界が来たと感じ取ったか、そろそろ出ようかと言って未央と共にハンバーガーの包み紙やポテトの箱、空になったシェイクの紙コップなどを置いたプレートを持つと手早く片づけに行く。モモもそれに倣って片づけると、店員からの「ありがとうございましたー」「またお越しくださいませー」という笑顔での言葉を受けながら店を出て行く。

 

「ん? 籾岡さんに沢田さんにモモ」

 

「あれ、氷崎。それにキョーコちゃん!」

 

と、その時向かいのファーストフード店から出てきた相手が里紗達に声をかけ、里紗もその相手――氷崎炎佐とその隣でやほーと手を振る恭子に驚いたような声を出す。

 

「え、なになにどしたの? デート?」

 

「……飯に付き合わされただけだ」

 

「だって一人で食べても美味しくないしー」

 

里紗の興味津々な言葉に対し炎佐はあっさりと返し、それに対して恭子は悪戯っぽい笑みを浮かべて返す。

 

「じゃ、そろそろ帰ろっか」

 

「へいへい。籾岡さん達も一緒に行く? 送るよ」

 

「お、さんきゅ」

「ではご一緒させていただきますね」

 

恭子のふんふんと鼻歌を歌いながらの言葉を炎佐は流しつつ里紗達にも一緒に帰ろうかと提案。里紗とモモも断る理由はないため一緒に帰る事になり、炎佐は恭子と里紗に「両手に花ー」とにやにやされながら腕に抱き付かれ、さらに未央が「背中にも花ー」とか言いながら炎佐におぶさる。モモはそれをやや後ろをついて歩くようにして見守る形になり、モモは目の前で恭子と里紗と未央に抱きつかれ、だが美少女三人に囲まれているにも関わらず照れ顔どころか呆れ顔になっている炎佐を見て頬を緩める。

 

「ふふ……」

 

自分の目の前を歩く、幼い頃から全力で自分を守ってくれた存在。彼に向ける感情、その正体は分からない。あるいは兄のような存在への親愛かもしれない、しかしあるいは今リトさんへと向けている感情と同一のものかもわからない。

 

(でも、今私の願う事は一つだけ)

 

「おいモモ、何ぼさっとしてやがる? とっとと行くぞ」

 

「はーい」

 

呼びかけに答え、私はいつの間にか距離が離れていたエンザへと駆け寄る。その心の内で祈ろう。

願わくば、お兄様(エンザ)との日々を一日でも長く共に過ごせますように。




今回は思いついてしまった炎佐×モモのお話。デビルーク三姉妹の中だとモモが一番絡ませやすいな、恋愛関係とかそういうしがらみを一切考えなくていいしモモが積極的に絡んでくれるだけでなく炎佐の方も遠慮なく苛めてくれる。(おい)
ちなみに何度も言いますが、この二人の間に恋愛感情はありませんからね!?モモがなんかちょろっとエンザさん好きーみたいな妄言言ってますけど違いますよ!この子今作のメインヒロインでもサブヒロインでもないですよ!せいぜい最近「ゲストヒロインくらいになら格上げしてやってもいいかなー。あくまで彼女にとって本命はリトってポジションは崩さずに」って思ってるだけですよ!彼女がリトから炎佐に鞍替えしたら原作的にすっげーめんどくさいもん!(本音)
まあ、そうなったらなったで「エンザさんを中心にしたハーレム計画第二弾始めましょー♪」ってモモが暴走するんですけど、そうなったらなったで最悪“炎佐ハーレム計画に気づく→「色んな人に迷惑かけてんじゃねえバカモモ!」とかでモモを拳骨&お尻ぺんぺんに加えお説教→ハーレム計画頓挫”でダークネス編・完!になりかねないんですよね……。(汗)
さて次回はどうするかな。そろそろストーリーを進めるべきか、でもストーリー進めるにも……この辺のストーリーエンザ絡ませづれえ……。
ま、その辺はまた後で考えよう。では今回はこの辺で。ご指摘ご意見ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。

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