ToLOVEる~氷炎の騎士~   作:カイナ

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注意:今回のお話は前回のお話[第三王女のお泊り会]のパラレルストーリーです。なお、[ToLOVEる~氷炎の騎士~]の全体的なストーリーの時間軸としては前回のお話を正史として進めていきます。今回のお話は所謂分史であり、この後のストーリーとは絡まないものとしてお考えください。
以上のことを踏まえた上で、今回のお話をお楽しみください。


第三十話 第二王女のお泊り会

「…………」

 

とある土曜日。ピンク色の髪をツインテールにした美少女――ナナ・アスタ・デビルーク。彼女は今、ある家の居間で、ややふてくされた様子でクッションを抱き枕にしてごろ寝をしていた。

 

「……で、何の用事なんですか? プリンセス・ナナ。ああ、荷物客間に放り込んどいたから後で確認しといてくれ」

 

と、この家の家主である炎佐が呆れた様子でナナに問いかけた。この家は現在ナナが居候をしているリトの家ではなく、炎佐の家だ。

 

「……モモと喧嘩した」

 

「……で、泣いて俺のとこに来たってか? 変わんないよな」

 

「な、泣いてねー!」

 

ナナの言葉に炎佐があっさりとそう返すとナナはクッションから顔を上げて八重歯を牙のように剥き叫ぶ。デビルーク星で炎佐が彼女らの護衛兼遊び相手を住み込みでしていた頃も、ナナとモモは毎日のように喧嘩をしていた。大抵はララがなんだかんだを起こして喧嘩の空気をぶち壊し仲直りしてしまうのだが、そうもいかない時は大抵ナナが炎佐に泣きついて彼の部屋に泊まり込んでいたものだ。と彼は思い返していた。

 

「へいへい。ほれポテチやるから泣き止め」

 

「アタシを何だと思ってんだテメー!」

 

めんどくさそうにポテトチップスのうすしお味を渡してくる炎佐にナナは怒りながらも袋を奪い取って開け、ポテチをバリバリと貪り食う。

 

「へいへい。今から軽く菓子でも作ってやっからそれ食って大人しくしてろ」

 

「作れんのか?」

 

「我儘な姉ちゃんがアポなしで来ることも珍しくない独り暮らし舐めんな」

 

「あー、キリサキキョーコか」

 

炎佐のお菓子を作る発言に驚くナナだったが、彼の言葉を聞いてこくこくと頷いた。それから炎佐はキッチンに入り、一時間経つか経たないか程待っていると戻ってくる。

 

「ほれ、チョコチップ入りのマフィンだ」

 

そう言っていくつかのマフィンを乗せた大きな皿をナナの前にあるテーブルに置き、自分も適当な一個を取ると齧りつく。

 

「お、いっただっきまーす!」

 

ナナもマフィンを見て嬉しそうに微笑み、手を伸ばした。

それから二人はテレビで適当なバラエティ番組を見ながら黙々とマフィンを取っては齧っていく。

 

「あはははは! ん~……ん?」

 

ナナはテレビを見ながら笑い、横にある皿に手を伸ばす。が、その手は空を切り、ナナは不思議そうに横を見る。そこには炎佐が最後のマフィンをその手に持っている光景があった。

 

「あ、ずりぃぞエンザ!」

 

「うお!?」

 

それを見た途端ナナはテーブルから身体を乗り出してマフィンを奪い取らんと手を伸ばす。が、炎佐も流石元宇宙を駆ける傭兵といわんばかりにその不意打ちに対応、マフィンを持っている手をナナから遠ざける。

 

「それあたしのために作ったんだろ! よこせよ!」

 

「は!? 確かにそうだけど俺のおやつでもあるんだよ!」

 

炎佐は高々とマフィンを持つ右手を挙げながら、マフィンを奪い取らんとぴょんぴょんジャンプしながらよこせと要求してくるナナに文句を返す。元々炎佐の方が背が高い上に手を掲げられてはナナに届くわけがなく、ナナは唇を尖らせた。

 

「ぬ~……でりゃっ!!」

 

「っと、そうはいくか!」

 

ナナはデビルーク星人の地球人離れした身体能力をフル活用し、大ジャンプ。が、炎佐もマフィンを奪われないように左手でガードしながら体勢を後ろに持っていくが、その時足元にあった座布団に躓いてしまった。

 

「「うわぁっ!!??」」

 

バランスを崩した炎佐と一緒にナナも倒れてしまった。形的にはナナが炎佐を押し倒したような格好になっている。

 

「やっほーエンちゃーん!! あっそびに来たよー!! サプライズ、びっくりしたー!?」

 

そこに絶妙なタイミングで、満面の笑顔をした恭子がドアをばぁんっと開いて入ってくる。

 

「「「…………」」」

 

そして空気が固まった。

 

 

 

 

 

「ふんふん……つまりこの子は、エンちゃんが宇宙にいた頃のお友達。と」

 

「そ、そうです。まあなんていうか、幼馴染っていうか、妹分っていうか……」

 

目元に影を作った冷たい目をしながら腕組み仁王立ちという迫力ある格好の恭子に炎佐は正座状態でたどたどしく説明。元宇宙を駆ける傭兵がアイドルに押し負けている光景にナナは唖然としていたが、気づいたように「あっ」と声を出す。

 

「えっと、あたし、ナナ。ナナ・アスタ・デビルーク……エンザとはその、エンザがデビルーク星にいた頃あたしらの親衛隊をしてて、遊び相手っつーか……」

 

「で、遊びのじゃれ合いの結果、押し倒し押し倒されてた、と?」

 

迫力ある恭子の静かな言葉にナナと炎佐は彼女とお互いから目を逸らしつつ気まずい様子でこくり、と頷き恭子の言葉を肯定する。

 

「……はぁ」

 

と、恭子は毒気を抜かれたようにため息をついた。

 

「えーっと、とりあえずエンちゃんもナナちゃんも、倒れた時怪我とかしてない? 大丈夫?」

 

「ん? ああ。あんくらい倒れたりナナにのしかかられたくらいで怪我する程やわな身体なんてしてねえよ」

 

「あ、あたしも大丈夫だ! 心配してくれてありがとな、キョーコ!」

 

恭子の心配そうな声かけに炎佐はあっさりと返し、ナナもにっと笑う。と、恭子が「あれ?」と返した。

 

「ナナちゃん、私のこと知ってるの?」

 

「えっ!? あ、あー、いや、その……ミ、ミーネ、そう! ミーネから聞いてたんだよ!」

 

「あ、おばさんから? てっきりエンちゃんからかと」

 

「ミーネがほら、DVDとか貸してくれてさ~! なんだっけ、姉上も見てるあれ……えーと爆熱なんとか……」

 

「あ、もしかしてマジカルキョーコ見てくれたの!?」

 

恭子が、ナナが何故初対面の自分の事を知っているのかと疑問に思うとナナは咄嗟に誤魔化しに入る。まあ確かにとらぶるくえすとという仮想現実のRPGゲームでラスボスに設定するため調べてました~とは言えまい。恭子もナナの言葉からマジカルキョーコを見てくれたのかと目を輝かせた。

 

 

 

 

 

「本日も、燃やして解決っ!」

 

それから夕食頃まで時間が過ぎ、恭子とナナはお互い社交的な性格のためかすっかり打ち解けており、今は炎佐の家にあった(というか恭子が新作が出る度にほぼ無理矢理置いていっている)マジカルキョーコのDVD視聴会を行っていた。

 

「おーい、飯出来たぞー」

 

「「はーい!」」

 

炎佐が呼ぶと女子二人は目を輝かせながら台所に突進、いい匂いのする煮込みハンバーグ(キノコととろみのついた特製ソース付き)を見て「おぉー!」と歓声を上げる。

 

「ほれ、皿持ってこい皿」

 

炎佐が言い、恭子は素早く皿を人数分準備、炎佐がハンバーグとキノコをよそうとナナがそれをテーブルに持っていくという見事なコンビネーションで食事の準備を整える。

 

「「いっただっきまーす!」」

 

そしてまだ何か準備をしている炎佐が来る前にナナと恭子はハンバーグを食べ始めた。

 

「むぐむぐ……ん? なんかこのハンバーグ、肉っぽくねえ?」

 

「はむ……あ、これ豆腐じゃん!」

 

ナナは口に入れたハンバーグから肉っぽい感じがしない事に首を傾げ、同じくハンバーグを食べた恭子が気づく。

 

「惜しい。これはおからハンバーグ。低カロリーだぞ」

 

「むぅ……まあ、ダイエットにはいいけどさ。一応体型には気を遣わなきゃだし……」

 

「そういうこと」

 

炎佐はサラダも準備しながら本日の夕食――低カロリーなおから煮込みハンバーグの説明をし、恭子は一瞬肉のハンバーグでない事に唇を尖らせるが、アイドルという職業柄体型にも気を遣うしそのためならいいかと呟く。

 

「ほら、ナナもサラダちゃんと食えよ? 健康が一番なんだからな」

 

「へーい」

 

炎佐は小皿によそったサラダをナナの前に置き、ナナも僅かに顔をしかめて呟いた。

 

 

 

 

 

それからまた時間が過ぎ、ナナは風呂に入った後今日は炎佐の家に泊まる事になったため客間に通され、ベッドに寝転んでいた。

 

「うふふ~。なんかごめんね、ナナちゃん」

 

「あ、いや、別に……」

 

ごめんねと謝りながらも嬉しそうに笑っているのは恭子。彼女の言葉に同じベッドに寝転んでいるナナはややどもってそう返す。ナナが通されたのは客間というか、恭子がこの家に泊まる時に使っている部屋なのだ。

 

「ところで、ナナちゃんってエンちゃんの家にしょっちゅう遊びに来るの?」

 

「ん? いや別に? どっちかってーとエンザがリトの家に遊びに来る方が多いしさ」

 

「へー……残念」

 

ナナの言葉に恭子は「残念」と呟き、それにナナが不思議そうな表情を見せると、恭子はにまっと笑って突然ナナに抱き付いた。

 

「おわっ!?」

 

「ナナちゃんがいっつも遊びに来るんなら、こうやって可愛がるのになーって」

 

「わ、や、やめっ!」

 

「ほーら、むぎゅー」

 

ナナは恭子に抱きしめられて驚いてじたばた暴れるが、恭子は割と豊満な胸にナナの顔を押し付ける。彼女の友人である都築乙女直伝の抱擁にナナは顔を真っ赤にしてばたばた暴れていた。

 

「エンちゃんの妹分なら、私にとっても妹分同然だからね……ほら、良い子良い子」

 

「ん……」

 

妹を温かく包み込むお姉ちゃんのような恭子の抱擁となでなでを受け、ナナはまどろみを感じ始める。

 

「おやすみなさぁい」

 

恭子の言葉を合図にし、ナナの意識は遠くなっていった。

 

 

 

 

 

「んがっ」

 

ナナは妙な声を開けて目を開け、起き上がる。そこは普通のベッドではなく王族御用達に近いやわらかベッドに、見覚えのある。というか毎日見ている部屋の風景。

 

「あれ?……エンザー? キョウコー?」

 

寝ぼけ眼で辺りを見回し、泊まっていたはずの家の家主エンザと一緒に寝たはずの恭子を呼ぶ。が、その時彼女の頭の中に昨日の記憶がよみがえり始めた。

 

「そっか。あたし昨日モモと喧嘩して……で、モモが家を出ていって、それからずっと部屋に……って事は、あれは夢か」

 

ナナはそこまで考えるとはぁとため息をつく。

 

「あの、ナナ? 入ってもいいですか?」

 

「うお、モモ!?」

 

部屋の外から聞こえてきた声にナナは驚いたように起き上がって部屋の入口まで走るとドアを開ける。そこにはモモが立っていた。

 

「あ、あの、ナナ……その……き、昨日はごめんなさい。少し言いすぎました」

 

「あー、えっと、さ……あ、あたしも悪かったよ。むきになっちまった……」

 

ぺこり、と頭を下げて謝るモモにナナも頭をかいて謝り、顔を上げたモモと顔を見合わせるとにこりと笑い合う。仲直りだ。

 

「……ふう」

 

部屋の外。また喧嘩になった時のためにこっそり待機していた炎佐――なおモモはそれを知らない――は安心したように息を吐いた。

 

「なんか、迷惑かけたな、炎佐」

 

「何言ってんのさ。こんなもん、デビルーク親衛隊時代毎日レベルの恒例行事だからもう慣れっこだよ」

 

申し訳なさそうに謝るリトに炎佐はそう言って笑い、立ち上がる。

 

「じゃ、僕は帰るよ。ララちゃん達によろしく」

 

「お、おう」

 

そう言って炎佐は部屋の入り口に歩き出し、一度振り返って、笑顔で話に花を咲かせているデビルーク双子王女を見て一つ微笑むと部屋を出て行き、そのまま結城家を後にした。

 

「ん?」

 

そこで電話が鳴り始め、炎佐は通話相手を見ると電話に出る。

 

「もしもし、どしたのキョー姉ぇ……は? 急に豆腐ハンバーグが食べたくなった? うん、わかったわかった。今度遊びに来る時に作ってあげるよ……うん、じゃあね」

 

電話相手――霧崎恭子の唐突なお願いに炎佐はやや首を傾げながらその願いを了承。電話を切ると帰路につくのであった。




前話投稿した翌日、暇潰しにアクセス解析見てみたらお気に入りが投稿一時間後には三人追加されてたり二時間後には二人追加されてたりでマジビックリした……オリジナルストーリーだったからか、それともモモがヒロインだったからか!? 皆さんモモ好きすぎでしょ!? 別にこの子ゲストヒロインならともかくメインヒロイン、サブヒロインにはなりませんよ!?(困惑)
さて、今回は前回の話の感想の中にあった「ナナVerの話である『第二王女のお泊まり会』も読んでみたいですが、ナナの場合はモモ以上にからかわれそう。」という言葉を聞いて面白そうだなと思ってやってみました。
そして前書きにある通りパラレルストーリーであってこの後のストーリーには全然絡まないという事で好き放題やりましたさ♪
なんていうか、初っ端からモモに対しては晩飯嫌いなもんにすんぞって若干キレてたのに対してナナには自分の分込みとはいえおやつ作ってあげたりと甘やかしてんなぁ炎佐……。
でもって、前書きの方でちゃんと「今回はパラレルストーリーです」の注意文は入れておいたんですが。書いてる途中になんとなく思いついたのでナナの夢落ちだったというオチをつけました。もちろんその間モモ達の方は前回の[第三王女のお泊り会]の流れになってます。
さて次回はどうしようか。オリジナル二話やったし、ストーリー進めるかな。
ま、今回はこの辺で。ご指摘ご意見ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。

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