ToLOVEる~氷炎の騎士~   作:カイナ

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第十三話 はたらく騎士さまオーバーラン

「う~ん……なんていうか、本当にコメントに困る味ですね……初めて来てなんですけど……」

 

「あはは……」

 

洋菓子店ストレイキャッツ。そこにやってきていた少女――美柑の言葉に炎佐は苦笑し、それを聞いた、商品を入れているガラスケースの上に寄りかかっている少年――都築巧も苦笑する。

 

「ところで炎佐さん、その子は?」

 

「ああ。僕の親友の妹の美柑」

 

「結城美柑です」

 

巧の言葉に炎佐は美柑を紹介、美柑も挨拶すると巧とこの店のバイト――文乃も「どうも」と笑顔で挨拶を返した。それから炎佐はふとガラスケースを見る。

 

「ねえ巧君、ケーキがやけに少ないけどどうしたの?」

 

「あぁ……姉さんがちょっと出かけてて。今はどうにか日持ちするものでカバーしてるんですよ……」

 

炎佐の言葉に巧は苦笑しながらため息を漏らしてそう呟き、思わず炎佐と美柑は「ご苦労様です」と唱和する。

 

「それにしても、妹さんが来てるのにその親友さんは来ないんですか?」

 

「ああ、リト……その友達は今日別の友達と一緒に海に行っててさ。で、僕は行かなくって、美柑ちゃんが暇だったみたいだから連れてきたんだ。少しでも売上貢献にね」

 

「はは、ありがとうございます」

 

巧と炎佐はそう話し合い、美柑がケーキを食べ終えると二人は席を立つ。

 

「はい、お持ち帰り用のクッキーです」

 

「ありがと、芹沢さん」

 

しっかり笑顔で接客する文乃に炎佐も微笑を浮かべて挨拶を返し、二人はストレイキャッツを出ていった。

それから二人はただ単に炎佐がストレイキャッツを美柑に紹介したいだけだったため彩南町へと戻ってくる。

 

「あ、美柑じゃん」

「こんにちは」

 

「サチ、マミ」

 

と、駅を出た辺りで美柑の友達の二人組に出会い、美柑は二人の方に走り寄ると一言二言話し、炎佐の方に戻ってくる。

 

「あの、すいません。私これから二人と一緒に遊ぼうかと……」

 

「ああ、いいよいいよ。もう用事は済んだし……」

 

美柑の申し訳なさそうな言葉に対し炎佐はあっさりとそう言い、ついでにとさっきストレイキャッツで買ったクッキーを渡す。

 

「これ、皆で食べなよ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

炎佐がそう言って渡してきたクッキーを美柑は嬉しそうに受け取ってお礼を言い、友達二人と一緒に歩き去っていく。それを見送ってから炎佐は適当に町内を歩き始めた。

 

 

 

 

 

「……どうしてこうなった」

 

それから数十分経った頃、炎佐は呟く。場所は床が木の板となっておりというよりも全体的に木造建築の剣道場。炎佐はそこに剣道の胴着と袴姿で正座させられていた。その目の前には綺麗な黒髪をポニーテールに結った長身のクールビューティこと九条凛――なお彼女も胴着と袴姿に、剣道の防具面と籠手除いて完全装備、ちなみに炎佐もだ――が立っている。町内を散歩していると突然凜に絡まれ、なんやかんやでここに連れてこられたのだ。

 

「……それで、九条先輩? 何かご用ですか?」

 

「何か用とは白々しい……貴様、何者だ?」

 

引きつった笑みを浮かべながらの炎佐の言葉に凜は鋭い視線を彼にぶつけながら問う。去年のクリスマス以来出会うたびに投げかけられる質問、それに炎佐はにこりと笑みを見せた。

 

「ですから僕は彩南高校二年の一般生徒で、先輩の一年後輩ですよ?」

 

「……」

 

炎佐の逃げるような回答に凜は強い視線をぶつける目を崩さず、彼に竹刀を投げると自分も竹刀を持つ。

 

「勝負だ。私が勝ったら教えてもらう」

 

「はぁ……分かりました」

 

凜の一方的な申し出を炎佐はしょうがないとため息をついて承諾し、凜は頷くと面を被って紐を締め、炎佐もそれに習う。

 

「……ん? あれ?」

 

しかし初めての為上手くいかず、紐がこんがらがる。

 

「…………もういい、手を離せ」

 

結局凜が一度自分の面を外して炎佐の背後に回り面の紐をしっかりと締めて再び自分の面を着けてから、二人は竹刀を手に向かい合う。

 

「はぁっ!」

 

凜がダンッと踏み込んで素早く、加速し炎佐の目の前まで移動すると鋭く竹刀を振り下ろす。が、炎佐はその瞬間まるで同じ極の磁石が近づいた時の磁石のように凜から距離を取り、直後素早く凜の背後に回ろうとする。

 

「させんっ!!」

 

しかし凜は素早く振り向きざまに竹刀を薙ぎ、炎佐の接近を阻むと竹刀の切っ先を炎佐に向ける。

 

「せああぁぁぁっ!!!」

 

直後、鋭い連続突きを炎佐目掛けて放ち、炎佐はそれを竹刀を器用に動かして突きを弾き自らも動いて凜の突きをかわしていく。

 

「っと!?」

 

と、いきなり炎佐の身体がふらつく。うっかり自分の袴の裾を踏んづけてしまい、それに気づかないまま動こうとしてバランスを崩したのだ。

 

「隙あり!」

 

多少ふらついたもののすぐバランスを取り戻すが、その一瞬の隙をついた凜が鋭い一閃で炎佐の手から竹刀を弾き飛ばす。

 

「めえええぇぇぇぇんっ!!!」

 

刃を返し身体を後ろに引きながら竹刀を炎佐の面目掛けて振り下ろす。

 

(取った!)

 

一般人ならば反応も出来ず、多少腕が立つ相手でも丸腰ではどうしようもない。かわすこともできないはずだ。そこまで自信がある一撃に凜は知れず笑みを見せていた。

 

「っ!?」

 

直後、凜の竹刀が弾き飛ばされた。

 

「っと、思わず少し本気出しちまった」

 

炎佐は、まるで獲物を捉えた獣のような目をしながら呟く。炎佐は凜の攻撃の軌道を見切り、右手に作った手刀の一閃で竹刀の側面を叩き弾き飛ばしたのだ。それに凜は驚き、身体が硬直してしまう。

 

「九条凛、一つ良い事を教えてやる」

 

炎佐が素早く凜の懐に入りながら彼女に囁く。

 

「戦闘中、相手に余計な情報を与えるべきじゃない」

 

その言葉の意味する事、それがそのまま凜が敗北した理由だ。凜が得意とし今回持ち込んだ武道――剣道。それには相手の頭頂部を打つ“面”、前腕を打つ“籠手”、相手の基本右脇部分を打つ“胴”、そして文字通り喉を突く“突き”の四つの打突があり、一本をとるためには踏み込み、打突、そしてその打突の名を叫ぶ必要がある。だが、それは炎佐からすれば“自分が今からどこを狙い攻撃をするのかわざわざ自分から言っている”だけに過ぎない。そして、どこを狙っているかさえ分かれば防御、反撃はたやすい。

 

「ぐふっ!?」

 

凜の腹を炎佐の左手による中段逆突きが襲い、その衝撃は胴の防具を突き抜けて凜の身体にダメージを与え凜は思わず前かがみになる。

 

「ほいっ」

 

「つぁっ!?」

 

そこに炎佐は足払いをかけて完全に凜のバランスを崩させ、しかし面があるとはいえ女性の顔を地面に当てさせないよう身体を支えて少しスピードを抑えながら彼女を地面に倒させる。

 

「僕の勝ち」

 

そして静かに凜に宣告した。たしかに凜は既に倒れており逆に炎佐はほとんど立っている状態、お互い丸腰とはいえ武器を取りに走るのは炎佐の方が早いし、そもそも体勢を崩させられた今自身は負けたようなもの。それを理解し凜はぐぅっと唸った。

 

「まあ、あの攻撃は咄嗟に本気で対処しちゃったし……一瞬とはいえ本気を出させたことに敬意を評して教えてあげますよ」

 

「なに?」

 

炎佐はそう言って籠手を外すと面を外し、凜を鋭く研ぎ澄ませた目で見る。

 

「俺の名はエンザ。宇宙を駆ける傭兵業を生業とする、まあ九条先輩達地球人からすれば宇宙人という存在だ」

 

「宇宙人?……」

 

エンザの言葉に凜が怪訝な目を見せると、彼は穏やかな笑みを見せた。

 

「疑うのはご勝手です。まあなるべく他言しないでいただけたらありがたいですね……これでも、戦士として九条先輩を認め敬意を表してるんですから」

 

「……ふん」

 

認められたという言葉を生意気と思ったかそれとも嬉しかったのか、凜はふんと鼻を鳴らしてそっぽを向く。

 

「じゃ、僕は帰ります」

 

そして炎佐は防具を片づけると剣道場を出ていき、凜はそれを見送った後立ち上がると、何かを考える様子でうつむいた。

 

 

 

 

 

「ふあぁ……」

 

美柑と遊び凜と剣道とは言えない何かの戦いをした翌日。炎佐はいつも通り目を覚ますと起き上がり、欠伸交じりに伸びをする。と、その時携帯が鳴り始めた。

 

「……もしもし?」

 

[あ、もしもしエンちゃん?]

 

「キョー姉ぇ? どしたの?」

 

電話に出て聞こえてきたのは恭子の声。それに炎佐が小首を傾げる様子でそう聞くと恭子はにこにこと微笑んだ。

 

[ね、今日の夕方頃って暇?]

 

「……暇だけど?」

 

[じゃさ、夕食一緒に食べない?]

 

唐突な確認に炎佐はとりあえず暇だと返す。と、恭子は嬉しそうに彼を夕食に誘ってきた。

 

「ああ、いいけど。何時頃来るの?」

 

いつものように遊びに来るわけだ。と勝手に納得し、何を作ってあげようかと考えながら恭子が何時頃来る予定なのか確認をする。

 

[あー違う違う。悪いけどエンちゃんこっちに来てね?]

 

「…………はい?」

 

その言葉に炎佐は呆けた声を出した。

 

 

それから時間が過ぎて夕方頃。

 

「あ、エンちゃんこっちこっちふぎゃっ!?」

 

日本の首都副都心、某駅の地上出口で待っていたロングヘアベレー帽眼鏡っ娘――変装状態の恭子は近くの人気のない裏路地から出てきた少年――炎佐を見つけると満面の笑顔で手を振るが、炎佐は競歩のような速さで近づくと彼女の額にチョップを叩きつけた後彼女の頭をがしっと掴む。

 

「何故にわざわざ首都圏まで晩飯食いに来なけりゃならないのか分かりやすく説明してくれませんかねぇ?……」

 

「あーいや、この近くにファストフード店のチェーン店が開店したって話聞いてね、これはぜひとも食べに行かないとと思って、でも一人は寂しいから……」

 

がしっと掴まれているせいで顔が逸らせなくなりながらも必死で目を逸らしながら言い訳を行う恭子に炎佐はため息をつくと手を離す。

 

「まあ別に本気出せばちょっと走るだけでいいんだけどさ……こういうとこにある監視カメラとかに引っかからないよう動くのめんどくさいんだよ?」

 

「ワープとか出来ないの? 宇宙の技術ならなんとかなりそうじゃん」

 

「プリンセスが発明したのがあるけど碌な事にならん」

 

炎佐の言葉に恭子が素朴な疑問を出すと炎佐はあっさりとそう返した。

 

「ま、いいよ。さっさと飯食って帰ろう」

 

「はーい♪」

 

結局説教もうやむやに終わり、炎佐のとっとと食べに行こうという言葉に恭子も嬉しそうに微笑んで、彼の腕に抱き付き、二人は近くの駅前商店街に入っていった。

恭子の道案内で連れてこられたのは建物を三階まで使った某フライドチキンチェーン店。新装開店であるらしく客は多く賑わっていた。ちなみにその向かいには某ハンバーガーチェーン店があるが、フライドチキンチェーン店に客を取られているらしく閑古鳥が鳴いている。

 

「あっちにしない?」

 

「新装開店サービスがあるんだって」

 

客が少ない方がめんどくさくないと思ったのだが恭子はサービス目当てでフライドチキンチェーン店を選び、重々しい押し扉を開いて入店する。

 

「いらっしゃいませ。レジへどうぞ!」

 

スマイル満開で挨拶をする店員に恭子も笑顔をサービスし返し、二人はレジに並ぶ。

 

「よろしければこちらをお手に。見やすいメニューです」

 

そう言って、小柄にサングラスをかけた男性店員が恭子に小さなメニューを手渡してきた。

 

「……なんだ、この香水……」

 

鼻にくる香水の匂い――小柄なグラサン店員からのものだ――に炎佐は一瞬顔をしかめる。

 

「エンちゃん、何にする? 奢るよ?」

 

「ん……」

 

が、恭子がメニューを見せてくると炎佐は匂いを気にする事を止めてメニューを見る。

 

「……じゃあ、チキンと、ポテトのMサイズと、ドリンクにメロンソーダを」

 

「私はチキンと、ビスケットと、コーンサラダに、ドリンクにココア」

 

「かしこまりました、少々お待ちくださいませ。こちらよろしければ、オープンフェアのクーポン券でございます。ご利用くださいませ、お会計失礼いたします」

 

「っと……あ、やば。細かいの用意してなかった……すいません、五千円札からお願いします」

 

注文し会計をしようとしたところで恭子は細かいお金を用意するのを忘れていたのに気づき、五千円札を差し出す。小柄グラサン店員もそれを受け取った。

 

「これより心を込めて調理いたします。麗しい女性に召し上がっていただけるとは、商品もさぞ喜ぶことでしょう。こちら、お返しでございます」

 

「はーい……わっ?」

 

クーポンを見ながら無造作に手を差し出していた恭子は、いきなり小柄グラサン店員に手を握られたのに驚く。手を握った上からレシートとお釣りを差し出してきたらしい、と炎佐が恭子の方を見た。

 

「キョー姉ぇ、席探してなよ。出来たら俺持ってくから」

 

「あ、うん……」

 

炎佐の言葉に恭子は驚いたように目を丸くして列を出て、二階に席を探しに行く。

 

「女性をお待たせ……あれ?」

 

一分と経たずさっきの小柄グラサン店員が注文の品を持ってやってくる。と、彼はさっきまでいた恭子が今いない事に呆けた声を出した。サングラスで隠れているが恐らく目も丸くなっている事だろう。

 

「チキン二つと、ポテトのMサイズと、ビスケットにコーンサラダ、ドリンクにメロンソーダとココアを注文した客ですが?」

 

「あ、はい……ごゆっくりどうぞ」

 

トレーを渡された炎佐は呆けた声を出す店員に目もくれずに二階へあがっていく。

 

「あ、エンちゃん。こっちこっち!」

 

そして恭子が手を振って炎佐を呼び寄せ、彼も彼女に呼ばれた席に座ると恭子に彼女の注文の品を渡していく。

 

「それにしてもキョー姉ぇ、こんなに食べれるの?」

 

「何言ってるの? エンちゃんも食べるんだよ?」

 

「……は?」

 

「あ、その代わりエンちゃんが注文したポテト分けてね」

 

なんかトントンと話が進んで恭子は炎佐が注文したポテトを一本取って齧りつく。

 

「はいはい……」

 

炎佐は一つため息をついて頷き、それから二人は食事を始める。

 

「あ、結構美味い」

 

「でしょ? 地球のファストフード舐めないでよね」

 

炎佐の言葉に恭子は嬉しそうに笑う。そのまま二人は談笑しながら食事を進めていき、その途中少し離れた席で「聞き捨てならんぞ!!」という青年の怒鳴り声が聞こえてきた事を除けば平穏に食事は終わる。まあその怒鳴り声も特に喧嘩になる事なく鎮圧したらしいが。そして食事が終わりトレーを片づけると二人は店を後にし、炎佐はその辺のタクシーを止めて恭子を乗せる。

 

「じゃ、ちゃんと送ってもらいなよ」

 

「はいはい。エンちゃんはホントに心配性なんだから」

 

炎佐のいつもの心配性に恭子はへらへらと笑い、炎佐が運転手に「お願いします」と言うと運転手も笑いながら頷き、それからタクシーは出発。炎佐も適当な人気のない裏路地に入る。

 

「さってと、帰るか」

 

軽く屈伸等の準備運動をしてから彼はぴょんぴょんと小ジャンプ。その直後、彼の姿が裏路地から消え去った。

 

 

 

 

 

「リト……一体どうしたんだろ……」

 

リト達が海水浴に行くと言ってから二日が経つ。が、何故かリト達は帰ってくることがなく、心配している美柑を見て炎佐も彼の携帯に電話をかけてみたが電話も繋がらない。

 

「何か事件にでも巻き込まれたか?……」

 

家の中に籠り炎佐は呟く。と、その時形携帯が鳴り始め、炎佐はそれを聞くと一気に携帯に飛びつき着信相手を見る。

 

「……はい、もしもし……」

 

そして低いテンションで電話に出た。

 

[あら氷崎君、どうしたの? 元気がないけど]

 

「なんでもありません。何かご用ですか、御門先生?」

 

電話の相手――御門は炎佐の低いテンションを不思議に思うが炎佐はなんでもないと言って用件を尋ねる。

 

[ああ、今日はドクター・ミカドから賞金稼ぎエンザへの依頼よ]

 

「……了解」

 

御門の言葉に炎佐は言葉少なく、しかし僅かに真剣味の混じったような低い声で了承の意を示した。

 

そして場所は宇宙に移る。

 

「ドクター・ミカド。依頼内容はオキワナ星での薬草採取の間の護衛、ということでよろしかったでしょうか?」

 

「ええ」

 

宇宙船の操縦をする御門の横の助手席と言える部分に座ったエンザ――既に鎧も着用済みだ――の確認に御門は慣れたように頷く。

 

「まあ、あなたの仕事はオキワナ星に着いてからだし、今はゆっくり眠ってなさいな」

 

「……」

 

「結城君に西連寺さん、ララちゃん、猿山君、レン君、古手川さんが二日も行方不明。消息が掴めないのが不安なのは分かるけど。今は休んでなさい」

 

「……了解」

 

御門の心配そうな言葉にエンザはしぶしぶ頷いて目を閉じ、眠りにつく。それを確認してから御門はふふっと微笑んだ。

 

「オキワナ星までワープ使って四時間。それまではゆっくり休みなさい、氷崎君」

 

彼女がそう呟くと同時、二人が乗っている宇宙船は目的地オキワナ星までワープを開始した。

 

 

それから四時間ほど経過した後、御門はオキワナ星に自生している薬草を採取、エンザはオキワナ星に住む危険な生物から御門を守るように剣を振るい銃を撃つ。

 

「キキッ!」

 

「おっと悪戯猿共! そう毎回毎回何か奪えると思うな!!」

 

オキワナ星の現住生物である猿みたいな生物をエンザは威嚇するように剣を振って追い返す。と、その時猿みたいな生物が何かを落とし、エンザはそれを拾い上げる。

 

「……これは、リトの携帯!?」

 

「どうしたの、エンザ君?」

 

「リト達、ここにいるかもしれません!」

 

「!?」

 

エンザの言葉に御門も驚いたような目を見せる。

 

「きゃあぁあっ!!」

 

その時、女性の絹を裂くような悲鳴が聞こえてきた。

 

「ドクター、申し訳ありませんが!」

 

「ええ、行くわよ!」

 

エンザの言葉に御門も頷き、二人は声の方に走っていく。

 

「キャアァアアァア!!!」

 

悲鳴の元、それは木型の現住生物に捕まっている春菜だった。さらにその生物の触手である蔓にはリトまでも捕まっている。それを見た瞬間エンザは素早く左手に銃を握り、右手に透明な銃弾を握る。

 

「フレイム・バレット……エネルギー充填」

 

呟くと同時に右手から熱が発され、そう思うと銃弾が赤色に変色。その銃弾を銃に装填すると両手で銃を構え狙いを定める。

 

「ファイア!!!」

 

ズドォンという轟音と同時に放たれた銃弾が木型の現住生物に直撃、一気に現住生物が燃え上がるとその炎は他の木などに燃え移る事もなく現住生物を黒焦げにして消火する。

 

「リト! 西連寺さん! 大丈夫か!?」

 

炎の弾丸の着弾の衝撃で落とされ、尻餅をついているリトと春菜にエンザが駆け寄る。それにリトは「えっ」と驚いたような声を漏らして振り返り、エンザを見ると目を見開いた。

 

「炎佐!? お前、なんでここにいるんだよ!?」

 

「それはこっちの台詞だ……」

 

リトの言葉にエンザは驚きながらもどこか呆れた様子でそう言う。ちなみに春菜は御門を見て驚いていた。

 

それから彼らは海岸へと向かい、さらに別行動を取っていたらしいララ達とも合流。御門が詳しい話を聞くと「なるほど」と呟く。

 

「ミスとはいえ、こんな星まで転移しちゃう装置を作っちゃうなんてね」

 

「御門先生にエンザはどうしてこんな所にいたの?」

 

御門の呟きの後ララが問いかける。それに御門は「あぁ……」と呟く。

 

「このオキワナ星ではね、貴重な薬草が多く手に入るのよ。だから、定期的にこの星に薬草採りに来てるの」

 

「だがこの星には危険な現住生物も多いからな。ドクター・ミカドも護身用の銃とかは持っているが、俺は念のため護衛として同行してるんだ」

 

ララの質問に御門とエンザがそれぞれ答える。

 

「何にしても、これで助かるのね……」

 

「おっしゃー! 帰れるぜー!!」

 

唯が感動で涙目になり、猿山も歓声をあげる。

 

「私の宇宙船(ふね)なら四時間で地球に帰れるわよ」

 

「俺はあの悪戯猿からリト達が盗まれた荷物を取り返してくる。あいつらの巣は大体分かってるし、十分で戻る」

 

「き、気をつけろよ?」

 

御門が宇宙船を呼んでいる間に炎佐は現住生物の猿らしき生物から奪われた荷物を取り返してくると言って森の中に入っていく。

そして宣言通り十分程度で炎佐はリト達の荷物を取り返して皆に合流。全員乗り込んだのを確認してから宇宙船は地球に向けて出発した。




え~、のっけから迷い猫オーバーランキャラとの掛け合いで始まりましたが本作はToLOVEる小説です。お間違えの無いようお願いいたします。
とまあ冗談はさておき今回は、最後を見れば分かる通りリト達がオキワナ星に飛ばされていた辺りでのお話です。最初は炎佐も一緒にオキワナ星に飛んでたんですが、炎佐がいたらサバイバルも苦労しそうにないし絶対あの現住生物ぼこぼこに出来てリトと春菜のフラグが立たなくなりそうですから止めて、こういう形になりました。
とりあえず前に言っていた迷い猫オーバーランキャラとのフラグ立てと、相変わらず疑心満載の凜とやりあって、その翌日は恭子とデートして最後には御門と一緒にオキワナ星へ、です。
で、凜のとこではかっこつけて「相手に余計な情報を与えるな」なんて言いましたけど……考えてみたらこいつも圧倒的各上である金色の闇にバーストモードを懇切丁寧に説明しちゃってんだよなぁ……。(汗)
なお今回の恭子とのデートで行った場所は作者繋がりとかそう言うの全くなく、完全に心から僕の趣味です。元ネタの方の時間軸も分かる人には分かるでしょうけど……ぶっちゃけ時間軸での整合性一切考えてません。今回はこの二人とパロディ作品の相手をほとんど絡ませてませんし。というか正直な話今回のこのデート自体がリト達がオキワナ星に行って二日空いたという情景を書く際にその間が思いつかなかったから無理矢理差し込んだだけですしね。メインメンバーと完全に離れてる分、こういうメインメンバーと絡ませにくい時に恭子は便利です。メインヒロインに抜擢していながら出番少ないからこういうとこでしっかり出番を書いてあげないとね。(汗)
ちなみに最後辺のフレイム・バレットの辺りはキョウリュウジャーの[ブレイブイン!]→[ガブリンチョ!]→[獣電ブレイブフィニッシュ!]という流れをイメージしてやりましたというどうでもいい裏話で締めて、それでは。

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