プロローグ
「ひ、ひいぃっ!!」
どこかの通路。一人の白衣を着た男性はここを必死の形相で走っていた。そこには大勢のヒトや獣が例外なく氷漬けになり絶命していた。
「ば、馬鹿な……」
男性は声を漏らし、適当な部屋のドアを開けるとその中に逃げ込み内部から鍵をかける。
「やほー♪」
「!?」
しかし突然部屋の中から聞こえてきた声に男性はびくっとなって振り返る。
「こんにちは」
そこにいるのは一人の少年。小柄な体格に女性的な整った顔立ちをしており今は目を閉じて微笑みを見せているがその微笑を見た男性は凍りついたように固まっていた。
「残りはあなただけです」
少年はそう言うと微笑んだ表情を崩さずにすたすたと男性に歩き寄り、それを見た男性はひぃっと悲鳴を上げると再度ドアを開けようとする。しかしドアは微動だにせず、男性は混乱したようにドアにすがりつく。とそこで男性はドアが冷たくなっているのに気づいた。
「あ、逃げるのは無理ですよ? あなたが入ってきた直後ドア凍らせといたので」
「な……」
少年の言葉に男性は絶句し、ゆっくりと近づいてくる少年を見て震え出し、背中を冷たくなったドアにくっつける。そして恐怖と寒さに震えながらゆっくり近づいてくる少年を目を見開いて見ていたが、突然思い出したように白衣に手を入れると目の前に近づいてきていた少年目掛けて白衣の中に入れていた手を振り回す。
「っ!?」
と少年の顔を横一文字に血が流れ、少年は痛みに顔をしかめる。しかし咄嗟に顔を後ろに逸らしたため致命傷は避け、少年は素早く自らの顔を傷つけた何か――ナイフを振るった腕を左手で握り締める。
「あ、あああぁぁぁぁっ!!??」
直後、突然男性の左腕が凍りつき、彼は悲鳴を上げてナイフを取り落とす。そして少年は手を離すと左手で男性の首を掴む。
「あ、が、ぁ……」
それから少しずつ男性の身体が首から凍り付いていき、ほんの十秒程度で男性の全身が氷漬けになる。それを確認すると少年は一度手を離し、右手でさっき切られた傷口を押さえて手についた血をぺろりと舐め左手を数回ぐーぱーさせてから、既に氷像と化した男性を掴んで無造作に部屋内に投げ飛ばす。そして右手をドアに押し当てて念じるように目を閉じる。とドアが開き、少年が出て行くとドアは無感情に閉まっていった。ある宇宙犯罪組織、その本部はたった一人の少年によって壊滅した。
日本全国どこにでもあるようなごく普通の通学路。ここを一人の少年――黒色の髪をショートヘアにしており、少し小柄なイメージを与える体格をしている。顔立ちは整っており女性的とも言えるが鼻の上部分を通るように顔を横一筋に引いている切り傷が目立っている――が学校に向けて自転車をこいでいた。
「んお? おーい炎佐!」
「ん?」
少年が曲がり角を通り過ぎた辺りで突然そんな声が聞こえ、少年は自転車を止めて振り向くと赤い右目と青色の左目の所謂オッドアイで曲がり角を見る。と穏やかに微笑んだ。
「ああ、おはよう。サル」
「猿山だっつの」
炎佐と呼ばれた少年は声をかけてきた相手に挨拶を返し、それに声をかけてきた相手――サルと言われたようにサル顔をしている――は笑いながら自分は猿山だと返す。それに炎佐はくすくすと微笑んだ。
「いやいや、ほらかつて日本統一した豊臣秀吉も昔はサルと呼ばれていたんだよ? 僕は友人の猿山君がそんな立派な人間になってほしいという願いを込めてこう呼んでいるんだ」
「嘘つけ」
「まあねー」
炎佐の言葉に猿山は笑いながら返し、炎佐の方も軽く笑って返す。それから二人は一緒に学校に行き、炎佐は学内の駐輪場に自転車を止めると玄関で待っていてくれていた猿山と合流、一緒に教室まで歩き始める。と猿山が何かに気づいたように足を止めた。
「お、リトだ」
「あ、ほんとだ」
猿山の言葉に炎佐も足を止めて猿山の見ている方を見る。彼らから見て次に曲がる側の廊下の曲がり角、ちょうど炎佐達から背中が丸見えの場所にまるで曲がり角の先を見ている、というか事実見ているだろう少年がいた。
「また西連寺さんかな?」
「どうせそーだろ」
炎佐の言葉に猿山は肩をすくめて返した後にししと意地の悪い笑みを浮かべてすぅっと息を吸う。
「よォリト! 今日も朝っぱらからストーカーかァ!?」
「!?」
その言葉にリトと呼ばれた少年はびくっと跳ね上がった後真っ赤な顔になって猿山に掴みかかる勢いで近づいていく。
「だ、誰がストーカーだクルァー!!」
「お、違うっての?」
少年――リトの怒号に対し猿山はまだ意地の悪い笑みを見せていた。
「いつも通りあこがれの春菜ちゃんを見てたんだろ?」
「うぐ……」
猿山の言葉にリトはうぐっと声を漏らした後、腕を組んでふいっと彼らから顔を逸らす。
「う、うっせーな。今日はただ見てたわけじゃねーよ。タイミングをうかがって――」
「あ、サル。三時間目の数学の宿題やった?」
「うお、忘れてた!?」
「しょうがない。教えてあげるから教室行こう」
「うおーありがとうございます氷崎様ー!」
「――って聞けよ!!!」
リトが話を始めるが猿山と炎佐は聞き流して教室の方に歩いていき、それにリトがツッコミを入れる。
「ストーカーもほどほどにね~。嫌われたら元も子もないんだから~」
「だから俺はストーカーじゃねえっての!!」
ひらひらと手を振りながらそう言う炎佐に対しリトはまた真っ赤な顔でそう声を上げた。
とまあそんな感じで時間は過ぎていき、あっという間に放課後へと移る。
「なあ、炎佐。朝の話なんだけど」
「どうしたの? ストーカーの相談なら警察に行った方がいいけど?」
「だから俺はストーカーじゃねえってかそれは婉曲的に俺に捕まれと言いたいわけか!?」
放課後になって一番にリトが炎佐に話しかけ、その内容から炎佐が返すとリトはまたツッコミで返す。それを聞いた炎佐はくすくすと穏やかに笑った。
「冗談冗談。で、何? 今日はスーパーのタイムセールがあるから話は手短にお願い」
「お、おう」
炎佐は帰り支度をしながらリトに手短に話すよう促し、リトもこくんと頷いた後に真剣な目を見せた。
「俺、西連寺に告白する」
「へ~。まあ頑張って」
リトの真剣な言葉を炎佐は軽く流して席を立つ。とリトはその肩をがしっと掴んだ、その表情は先ほどまでの真剣さはどこへやらかなり焦っている。
「ちょ、ちょっと待て! 一緒に来てくんないの!?」
「なんで僕が? 告白は二人っきりの時すべきでしょ?」
「いや、あの、お願いします……」
リトの焦り気味の言葉に炎佐は呆れたように返すとリトはぺこりと頭を下げる。それに炎佐は間違いなく呆れたため息をつくと肩を掴んでいるリトの手を剥がした。
「タイムセールがあるから。また明日ね~」
「うあぁ~」
炎佐はひらひらと手を振って歩いていき、リトはまるで捨てられた子犬のような目をしながら炎佐に手を伸ばしていたが彼が教室から出て行くと諦めたように手を落とし、がくっとうつむいた。
それから時間が過ぎて炎佐は自分の家――立派な一軒家に戻ってくると鍵のかかっている玄関のカギを開け、ドアを開けて家に入る。
「ただいまー」
一応挨拶をするが返事はなく、炎佐は真っ暗な家を明るくするため電気を点けてまずスーパーのタイムセールを使って買ってきた食材――ちなみににんじん、じゃがいも、たまねぎなどだ――を置くために台所に向かい、食事テーブルの上に食材を入れた袋を置く。
「おっかえりー!」
「!」
とその瞬間背後からそんな声が聞こえ、反応した炎佐は振り返りながら右手を掌底の形にして声の方に突き出そうとする。しかしその相手は炎佐の右手首を取って上に向けさせ、直後炎佐の掌から数センチくらいがポンッと小爆発。同時に何者かが炎佐に抱きついた。
「おかえりーエンちゃーんっ!」
「キョ、キョー姉ぇっ!? わ、わっ!?」
かけられた声に聞き覚えがある炎佐は驚いたように声をあげ、同時に顔を赤くする。女性特有の良い匂いに柔らかい二つの感触、それらが炎佐を襲っていた。
「ちょっはなっ、離れてってばっ!」
炎佐は顔を赤くしながらじたばたと暴れ、どうにか相手を左手で押し離す。その時むにゅっという感じの柔らかい感触が左掌に感じられたが彼は気のせいだと必死で自分に言い聞かせる。
「ちぇっ、驚かせたかったのに」
「充分驚いたよ……キョー姉ぇ、来てたんなら言って……」
現在炎佐の目の前にいる少女――黒髪をショートヘアにしており、可愛らしい容姿をしている――は残念そうな表情で言い、それに炎佐は疲れたようにうつむいて呟いた後顔を上げながら来てたんなら言ってよと続けようとする。が彼女の姿を見ると目を点にした。
「な、なに? そのかっこ……」
そしてそう呟く。彼がキョー姉ぇと呼んでいた少女は妙な格好をしていた。いや、妙な格好というと語弊があるかもしれない。袖なしで中央部分に縦長のフリルがつき首元にリボンをつけた服に身を包んでミニスカートをはき、頭には魔女がかぶってそうな帽子をかぶり、マントを羽織っている。なんというか、女子高生アレンジされた魔女のコスプレのような格好だ。それにキョー姉ぇと呼ばれた少女はにこっと微笑む。
「これ? 今度放送される特撮の衣装よ。CM見てない? 『新番組ぃ~! 爆熱少女マジカルキョーコ!! どんな事件も燃やして解決っ、見てね~!』ってやつ」
「あぁ、やってたねそんなの……そういえばキョー姉ぇ、いつからいたの?」
キョー姉ぇと呼ばれた少女はそのCMでやっているのだろう動作を行いながらそう言い、それに炎佐が呟いた後最初の疑問をようやく尋ねる。それにキョー姉ぇと呼ばれた少女はにししと笑った。
「一時間ほど前からスタンバッてた。もう暇でしょうがなかったよ、物音立てたら気づかれるし」
「言ってよ! っていうか不法侵入!」
「合鍵あるも~ん」
キョー姉ぇと呼ばれた少女の言葉に炎佐は全力でツッコミを入れるが、その最後の言葉にキョー姉ぇと呼ばれた少女がこの家の合鍵をこれ見よがしに見せつけながら返すと炎佐はため息をつく。
「も~……ところでなんか用なの? スケジュール大丈夫?」
「ちょっと遊びに来ただけ、スケジュールは今日は空いてるよ。明日はトーク番組の収録で、その中でマジカルキョーコの番宣するからこの衣装も持ってきてるわけ。んでトーク番組が終わった後からまたスケジュールが詰まり始めるってとこかな? 今日空いてるのは奇跡ね」
炎佐の言葉にキョー姉ぇと呼ばれた少女はそう返し、それに炎佐はやれやれと首を横に振る。
「忙しいね。流石今をときめく女子高生アイドル、霧崎恭子さん」
そして放たれるその言葉にキョー姉ぇと呼ばれた少女こと現役女子高生アイドル――霧崎恭子はまあねと言ってころころと笑い声を上げた。それを見た炎佐はまったくもうと声を漏らして台所に歩いていくとハンガーにかけていたエプロンを取って着けながら恭子の方を見る。
「今日泊まるの? 明日早い?」
「え?」
「夕食。明日が早いんなら温めてすぐ食べれるものにしといた方がいいし、なんならお弁当も作っとくよ? 一人分より二人分の方が作りやすいし。まあホテルで取るっていうならそれでいいんだけど」
炎佐の問いかけに恭子が驚いたように声を漏らすと彼はそう言いながらさっき買ったにんじんを洗って包丁で皮を剥き始める。すると恭子は嬉しそうに微笑んだ。
「もちろん、エンちゃんとこに泊まる。明日はまあ、七時ちょっと過ぎぐらいに出れば収録には充分間に合うよ」
「そう。じゃあ今晩は肉じゃがね、衣装汚したらいけないからとっとと着替えて」
「は~い」
炎佐の言葉に恭子は軽くそう返してその場を離れ、炎佐はやれやれと嘆息してにんじんやじゃがいも、牛肉などを切っていく。そしてそれらを鍋に入れて煮込み始めた辺りで突然、台所に置きっぱなしにしていた携帯電話が鳴り始めた。
「ん?」
炎佐は一応今は待つだけだから携帯を取り、着信相手を見ると椅子に座りながら電話に出た。
「もしもし?」
[炎佐~]
「どうしたの、リト?」
[うー、告白……出来なかった……]
電話に出た炎佐に聞こえてきたのは浮かない声、それに炎佐が電話の相手――リトに問いかけると彼は浮かない声でそう言い、それに思わず炎佐はくすくすと笑みを零す。
「やっぱり?」
[やっぱりって何だよ~]
「まあね~」
炎佐の言葉にリトが浮かない声のまま言うと炎佐は笑みを零しながらそう返す。
「どうしたの、エンちゃん?」
「やばっ!?」
[どうした、炎佐?]
すると突然後ろの方から恭子の声が聞こえ、炎佐がまずいと声を漏らすとリトも不思議そうな声を漏らす。
「な、なんでもないよ! あ、いや、ちょっと今来客中なんだ! 従姉弟の姉ちゃんが来てて……」
[あ、そうなのか? 悪い。じゃあ切るな]
「う、うん」
リトの不思議そうな声に炎佐は慌ててそう返し、それにリトがすまなそうにそう言って電話を切ると炎佐も電話を切った。
「あれ? 別に私がいるからって電話切らなくていいのに」
自分が来たとほぼ同時に電話を無理に切ったのを見た恭子は不思議そうにそう言うが、それに対し炎佐は携帯を閉じて真剣な目になった。ちなみに恭子は少し大きめのシャツに半ズボンというラフな格好になっている。
「万が一にも“霧崎恭子”が従姉弟とはいえ年頃の男と同じ屋根の下二人きりなんてスキャンダルじみた情報を出すわけにはいかないよ。リト……電話の相手を信頼してないわけじゃないんだけど、どこから情報が漏れるか分からないんだから」
「まったくもう、エンちゃんは心配性なんだから……」
炎佐はアイドルのスキャンダルを起こすわけにはいかないということを心配しており、それを聞いた恭子はふぅとため息をついて返した後、思いついたようににやっと笑みを浮かべると炎佐の顔を後ろから覗き込んでコケティッシュな視線を彼に向ける。
「それとも~。エンちゃんは私と付き合ってるなんて噂になったら困っちゃうのかな~?」
「なっ!?」
その言葉に炎佐の顔が真っ赤に染まりあがり、彼は咄嗟に立ち上がった。
「ば、ばば、馬鹿言え! そんなことあるわけ……」
炎佐はそこまで言うと口を閉じ、う~っと唸ると鍋の方を向く。
「そ、そろそろ肉じゃがの味付けしないと! この話はここで終わりっ!」
「はいはい」
強引に話を終わらせる炎佐に恭子はくすくすと笑いながらそう言い、炎佐はまた少し唸った後調味料に手をやった。
そして肉じゃがが完成し、二人はそれぞれの茶碗にゴハンを入れてお皿に肉じゃがもよそうと椅子に座る。
「じゃ、いっただきまーす」
「いただきます」
恭子の元気な挨拶に続いて炎佐も静かに挨拶し、二人はそれぞれ箸を手に取るとまず肉じゃがを口に入れた。
「……うん、美味しい! エンちゃんまた腕上げたね!」
「そう? ありがと」
恭子が満面の笑みを浮かべながらそう言うと炎佐は照れくさそうに笑って頬をかきながら返す。
「うん。明日のお弁当、おかず一品はまずこれね」
「はいはい」
恭子の言葉に炎佐は肉じゃがを食べながら軽くそう返す。
それからまた少し時間が過ぎ、炎佐はパジャマを用意すると今はリビングで寝転がってのんびりテレビでクイズ番組を見ている恭子の方を見た。
「じゃあ僕お風呂入ってくるから」
「それは一緒に入ろうってフリ?」
「しばくよ?」
炎佐の言葉に恭子が振り返り目をキラッと輝かせて尋ねると炎佐は少し本気で目を研ぎ澄ませながらそう言い、恭子がけらけら笑っているのを見て一つため息をついた後お風呂場に行った。そして脱衣場で服を脱ぐと、華奢に見えながらも少し鍛えられている身体中に刻み込まれている傷跡を撫でると身体を洗ってから熱々のお湯が入っている湯船に身体を沈め、身体に染みるような熱さに気持ちよさそうに息を吐いた。
それから十分程度時間が過ぎ、炎佐は濡れた髪がぺたりと額に張り付いている感覚を味わいながら、ほかほかと湯気を身体から出しつつ寝間着姿でリビングに戻っていく。と気付いた恭子が寝転がりながら炎佐に彼の携帯電話を見せる。
「エンちゃん、さっき携帯に電話来てたよ。留守電に入ってるはずだけど」
「出てないよね?」
「出てない出てない。なんか男の子っぽい声でだいぶ焦ってたみたいだけど」
「男の子?……サルが宿題か何かで泣いてるのかな? でも今日宿題なんて出てたっけ?」
恭子の言葉に炎佐が目を研ぎ澄ませると彼女は手を振りながら返し、相手が留守電に入れている時に聞こえてきた声を思い出しながらそう続ける。それに炎佐は首を傾げながら大方の相手を考えつつ携帯を開いて留守電を調べる。
「リト?」
その相手は夕飯を作っている時に話していた相手――結城リト。まさかの相手に炎佐はついそんな声を漏らして留守電を再生した。
[え、えんっ! 留守電!?……な、なんか分かんねえけど大変なんだ! な、なんか追いかけられ……わ、悪い、掛け直す!]
「……なんのこっちゃ?」
とりあえずかなり慌てているということは分かるのだがまったく意味の分からない内容。炎佐は首を傾げて呟いた後携帯を閉じ、それを見た恭子は足をぱたぱたとさせながら首を傾げる。
「どうすんの?」
「明日にでも聞くよ。キョー姉ぇ来てるのに外出できるわけもないし」
「え~、気にしなくてもいいのに~。ちょっとエンちゃんの部屋家探しするくらいだってー」
「だから外出したくないんだよ……それよりキョー姉ぇもとっととお風呂行きなよ」
恭子はけらけらと笑いながらそう言い、炎佐は頭を抱えながらそう呟いた後彼女にお風呂入ってきなよと言い、恭子も「は~い」と返して立ち上がるとリビングから出ていこうとし、出ていきざまに悪戯っぽく笑って炎佐の方を向いた。
「覗いちゃ駄目だからねぇ」
「とっとと行け!!!」
ふざけたようなどこか甘ったるい言葉に対し炎佐は顔を真っ赤にしてお風呂の方を指差して怒鳴り、恭子はまたけらけらと笑いながらリビングを出ていく。それを見送った炎佐は疲れたように重いため息をついた。
「まったくもうキョー姉ぇは……」
彼は静かにそう呟き、立ち上がる。
「明日の弁当のメニューでも考えよ……」
そしてそう呟くと台所に歩いていき、冷蔵庫を開けて中身を確認し、明日の昼食のメニューを考え始めた。それから明日の弁当の仕込みを行ったりしている間に時間が過ぎていき、ついでに寝る前に恭子の悪ふざけによる一緒に寝る寝ないの論争があってから彼はようやく眠りについた。
初めましての方は初めまして、こんにちはの方はこんにちは。カイナと申します。
前々からToLOVEる小説には興味があって書いてたんですがどうにも投稿の一歩を踏み出せず、そんなこんなしてたらなんかダークネスで今作ヒロイン予定である恭子がフラグ立つわ別のヒロイン候補を予定してるキャラも危険な気がしてきたわで「もうどうにでもなれ!」と若干開き直って投稿いたしました……恭子は結構好きなキャラだし安全だと思ってたんだけどなー……。
ぶっちゃけこっから先あんまり考えてない見切り発車な駄文で連載も不定期かもしれませんが気長にお付き合いいただければありがたいです。それでは。