一応次話からセリフとか増えていくと思うのでご容赦を
誤字脱字などありましたら報告お願いします。
皆さんに楽しんでいただけるようにこれからも書いていきます。
京都市街地
ビルの屋上中央部に一人の男性を中心地として放射状に広がるあさいクレーター。ちょっとした衝撃ですら崩壊しそうな建物の屋上に彼、相羽シンヤは確かに存在していた。体から多少の血が流れコンクリートを濡らしている。傍目に見たら死んだようにも見える。しかし、その胸は確かに上下し生命の鼓動を刻み、そしてその傍らには赤いクリスタルが微かな輝きを放っていた。
そしてどれ程時が流れたか、長かったのか短かったのか、流れ出た血が固まりきらない時間を掛け、相羽シンヤはゆっくりと目を開けた。
この新たな戦が蔓延る世界に産声をあげたのだ。
「・・・ここは、どこなんだ。僕はなぜ生きているんだ・・・」
軋む体に鞭を打ち辺りを見渡したシンヤは最期の瞬間を思い出していた。
兄を送り、ラダムに向けてのこる力すべてを込めたボルテッカを放ち自身は意識を失った、いや生命を散らせた筈だった。
しかし実際自分は何処だかは分からないが生きている。夢か死後とも考えたが、自身の手に握りしめたテッククリスタルがこれは現実だと教えている。
死んだのであれば憎しみしかわかない自分にとってのラダムの象徴までついてくるなど冗談ではない。
少しの時間思考に耽っていたシンヤだったが生きている以上行動をしなければ、と動き始めた。
タカヤ兄さんとケンゴ兄さんの戦いはどうなったのか、また地球のラダムはすべて倒せたのか、
ラダムの支配から解放された彼はただ一人の人間として、優しい心を持つ人間として地球を心配していた。
シンヤは崩れそうなビルをかけ降り、近くになにか目印はないかと探し始めた。また幸いというべきか、ラダムに改造されたおかげで治癒能力は常人よりはるかに高いためある程度キズがふさがっていた。
捜索に支障はない、シンヤはそう判断したゆえの行動だった。またビルがあるということはそこそこの都市なのだろうから簡単に情報も手に入る。それにラダムがいたとしても、皮肉にもテッカマンになることはできる。故に対処も可能だろう、とシンヤはそう考えていた
捜索はスムーズに進んだ。求めることが何一つ出てこずに、という意味で。
そして捜索して見つかるのはなにかおかしいものばかりだった。
廃墟には見えない街、にも関わらず人一人見当たらず、
道に落ちている新聞等に書いてあることもラダムに関してはなに一つ触れていない。
触れてないというより、ラダムではなくBETAという生物がいるというのだ。
そして西暦という年号。それはすでに旧暦であり本来連合地球暦が今の暦のはずなのだ。
今いる地名は分かった、それだけが収穫といえる。そこかしこに散乱している看板や新聞にも京都と書かれているのだから
これで分かるなというほうが無理であろう。
シンヤは京都だということを理解すると捜索中に得た新聞や雑誌を片っ端から読み漁った。
その最中、シンヤのテッカマンとしての超人的な感覚が何かが近づいていることをとらえた。
もともとテッカマンの中でも前線部隊トップといえるほどの能力を誇っているため探査能力も優れているのだ。
捉えたものをはっきりさせるため、さらに感覚を研ぎ澄ませていくと
その何かは確実に自分の所へ向かって来ていたのだ。
またその速さは人ではない、しかしだからと言って車やバイクかと思えば地面を踏み締める音がするのだ。
少なくとも人間ではない、そう考えたシンヤはテッククリスタルを構え音の正体の出現を待った。
そして、それらは現れた。醜悪な見た目をした化け物が。
像のような鼻を持つが二本足でたち血に染まっている化け物が、
蜘蛛のような見た目をしているが車ほどに大きく赤黒い見た目、歯を剥き出したような化け物が。
この世界を滅びに向かわせている元凶であるBETAが。
シンヤはそれに軽い嫌悪感を覚えた。まるでラダムを思い出させる禍々しい見た目。ある意味ラダムより生理的に気持ち悪いかもしれない。
化け物どもがこちらに向かって来たときには、シンヤは既に行動を初めていた。その手に握っていたテッククリスタルを空に掲げる。
「テックセッター!」
その掛け声と共にシンヤの体は赤い光に包まれ次の瞬間にはシンヤはより二回りほども大きい赤い魔人、テッカマンエビルが佇んでいた。
その姿をみて、一瞬動きが止まった化け物だったがすぐエビルへと向かってくる。シンヤはテックランサーを出しそれを十字に展開してブーメランのように投擲した。その進路にいた化け物は豆腐でも切るように次々に切られ体液をまきちらしその体を地面へと沈めていった。
一撃でおよそ半分程になった化け物をみてエビルはテックワイヤーでテックランサー回収した。
なるほど、耐久力はたいしたことはないな…。
万が一、自分クラスの耐久力をもつものが大量にいてはたまらない、そう考えての牽制と様子見を兼ねての攻撃だったが予想以上の結果をもたらしてくれた。
動きも特別早くなく耐久もないとなれば特におそれることもない。そう考えた。
「うおぉぉぉぉ!」
エビルは掛け声と共に距離を詰めテックランサーを横に薙ぎ払った。ただの一振り、それだけで前方の敵を切り伏せた。
そして回り込むように近づいてきていた化け物を察知し、真上に飛び上り化け物の包囲から抜けた。そして後ろに存ずる敵に向かい強襲をかける。
後ろににいた赤黒い蜘蛛等は人のような手を使いエビルを捉えようとするが、その手がエビルに触れようとすると、次の瞬間には体が真っ二つにされ二度と動きだすことはなかった。包囲されかけても独楽のように回りながらテックランサーをふるうだけで次々に死体の山が積みあがっていく。
エビルによる圧倒的蹂躙劇はものの数分で終わった。
血の池のような死体の中心にエビルは孤独な王の如く佇んでいた。
なんだ、異星生物といってもこの程度か、見た目だけでなくラダムと力も変わらない、飛ばない分弱いかもしれないな。
そう思いまた情報を集めようとしたエビルは激しい振動をとらえた。先ほどとは比べ物にならない規模であり、その数は先ほどの比ではないことが分かった。大した力があったわけではないが
どれほどの数かわからない相手と戦うべきでない、とエビルは判断しこの婆を離れようと考えた。
だがシンヤはその振動の先に化け物とは違う感覚があることに気がついた。なぜかは分からないが、ふと気になり、それを見るために空に飛び上がり何かを確かめた。それは、ロボットともいえるもので、向かってくる敵に銃撃を浴びせ続けていた。かつて戦ったソルテッカマンよりも大きくその形状からおそらく中には人がいるのだろう、とあたりを付けた。そのロボットは腕に損傷を負っておりこのままでは化け物に殺られるのも時間の問題に思われた。
そしてエビルはあのロボットを助けるべきか迷った。見ず知らずの相手、ましてやまだ自分の状況すら満足に把握出来ていない以上、下手に動くのは危険だと思っていた。
なにより自分は人間にとって恐怖の象徴ともいえるテッカマンエビルなのだから。自分の仮説が正しいかはまだ分からない以上、人間は自分を敵だと思っている可能性もある。ここは先のことを考えてまずは自身の安全を確保するべきだと思った。
しかし、ふと自分のタカヤ兄さんならばどうするか、と考えた。
迷うことなく助けるだろうな…。
と苦笑交じりに結論付け、兄さんが助けるなら僕もやらなくちゃね、と軽い対抗心を出して、人を助けるために動き出した。