皇国の妖怪   作:寿司とまと

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オファー

彼女がまじめな話をするとき、たいがいは面倒なことが起こる。経験でそれを知っている新田だったが、

 

「・・・・・とりあえず聞きますか」

 

話は聞くことにした。

 

「100年前、私の祖父であるエイブラハム・ヴァン・ヘルシングが吸血鬼の始まりにして王ヴラド・ドラキュラを殺したことによって吸血鬼(ヴァンパイア)が滅んだといわれている」

 

「この業界では有名な話だ。俺もそれくらい知っているよ」

 

「話は最後まで聞け。・・・でも、実際は殺せなかったんだ。大きなダメージを与えたらしいが・・・」

 

「・・・・・まじで?」

 

なんか聞いてはいけないことを聞いているような気がする新田。

 

「ああ、おおまじだ。そして王が傷ついている間にやつらはワラキアという国家を作り王が傷を癒せるまで守った。そして最近、王の傷が癒えたという情報がでている。・・・もしワラキアが帝国を攻めた時、ほとんど確率で帝国は負ける」

 

「帝国が負ける。ありえないだろ、普通に考えて」

 

帝国は3大国家の中でもずば抜けて軍が強い最強国家なのだ。そんな国が負けるのは想像できない。

 

「相手が普通ならばだ。だが相手は吸血鬼だ。普通の銃は聞かないし、かみつかれたら同族になってしまう上、王のためにすべてをささげないといけなくなる。・・・だから吸血鬼に対抗する部隊が必要なのだ」

 

「・・・・・その部隊に入れってこと?」

 

ナタリアはうなずく。

新田は聞かなきゃよかったなと後悔していた。だが、聞いた以上は答えは出さないといけない。

 

「無理だ」

 

「どうして?」

 

「めんどくさい。それに今、皇国を出るわけにはいかない」

 

そう。皇国も漢国と戦争まじかである。ここで自分が抜けたらまずいし、そもそも新田は国家の所有物であり、彼に自由はない。

 

「悪いな。もう決定事項なんだよ」

 

「・・・・・・・は?」

 

が、それを見越したかのようにナタリアは笑う。

 

「実はもう皇国上層尾部に掛け合って鬼を借りる許可をもらっている」

 

さらっととんでもないことを言ってるのだが・・・。

 

「・・・・・どんなマジックをつかったんだ?」

 

「あたしの見立てでは漢国はまだ攻めない。なぜならワラキアと帝国が戦争する方が早いから。どっちが勝つにせよ疲弊している国に合理的な国である漢国が攻めないはずない。そんな感じにアドバイスしたら貸してくれたぞ」

 

「・・・・・さすがだな」

 

ナタリア・ヴァン・ヘルシング。化物狩りヘルシング家の中で最高の知能を持つといわれるだけはある。

そんな人物が鬼に握手を求めてくる。

 

「じゃあ、これからよろしく。雅人」

 

「へいへい」

 

新田はめんどくさー。と思いながらものばされた手をつかんだ。

 

「ちょっと待て、てことは森に来る必要はなかったんじゃ」

 

「細かいことは気にするな」

 

「いや、俺の休日返せよ!」

 




ナタリア・ヴァン・ヘルシング
化物狩りのヘルシング家の中で最高の知識を持つといわれる。
吸血鬼
人間の血を吸う化物。不老であり身体能力も人間より上。不老であり、体をコウモリに変えることができ、普通の銃では倒すことができない。弱点は太陽と銀。血を吸われると、吸血鬼になる。
ヴラド・ドラキュラ
吸血鬼の始まりにして王。彼が死ぬと他の吸血鬼もみな死ぬ。
ワラキア
吸血鬼の国。一般の人々には認知されていない。



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