「…………………」
「それでは後日、我らと一緒に『魔法世界』に連行させてもらう。では、失礼……」
と、騎士風の二人組は颯爽と去って行った。その背中には大きな☨が書いてあり、英語で『正義』と書かれていた
「……逃げようとも無駄だからな」
「早くいかんか、政府の犬共」
「…行くぞ」
一人の威勢がいい騎士が振り返り、兜の隙間から密かに俺を睨む。スタンの爺は嫌味をいい、奴らは今度こそ去っていった
緊張の糸が途切れ、体が操り人形の糸が切れたように座り込んでしまった
『ドタン』
「はぁはぁ……チッ。やってくれんじゃん」
「大丈夫か右京!」
「どうしたの急に…! 顔色が青いわよ!」
「ちくしょう…! ほんと、運が悪いぜ。まさかこの俺が『呪い』をくらうなんてよ……!!!」
わき腹が青く光っているのをスタンとネカネが見てしまい、ひん剥かれてしまった
「な、なんじゃこの複雑で邪悪な『呪い』は!?」
「ひ……酷い………」
それは一見ただの『魔法陣』に見えるが、よく見たらそれはただの陣ではなく、中心に青い目の模様があり、陣を作るための線は微妙にだが青い火で書かれている
体を蝕み、気をぬくと全身が焼かれてしまう。それを二人に伝えたら、急に顔つきが変わりやがった
それは心配であろう……この俺の
「なんで黙っておったんじゃバカ者!!!!」
「そうよ!! あなたはいつも一人で抱え過ぎなのよ!!? どうしていつも……!! ネギだって泣きますわよ!!」
ネギ…………俺は、いつもあいつに迷惑をかけちまう。歯を思い切り食いしばり、咄嗟に口を開く
「うるせぇ!!! それでも俺はお前らを助けたことを『嬉しい』と思った!!! お前らが生きるためには仕方ねぇんだよ!」
『生きるためには仕方ない』。このフレーズはよく、俺の身近な人物が言っていた。生きるためには手段を択ばない人だった
俺は自らの『力』を使ってこいつ等を助けたのは、とても誇りに思う。そして、本当に『嬉しかった』
壁を使って自力で起き上がり、そのまま脚を進める
「ネギは……俺の『炎』だ。だから、例え台風の雨でも街を水没させる水でも、俺はあいつを守る『盾』になる」
「ッ!!!」
首を後ろに向け、目線を合わせる。あぁ、俺は今どんな目つきをしているんだろうか
スタンの爺は驚き、ネカネは怯えている
「あいつの『炎』が消えてしまう程の涙を、流しちゃいけねぇんだ」
「右京………」
行先もないもも、俺もここを去った
ただ残ったのは、静寂な一時と無音の空間だけ
「あなたは……それで満足なの?」
「あ…………もう夜か」
気が付けば、俺は噴水場でただ一人ボーッとしていた。空は真っ黒、辺りは真っ暗。
耳に響くのは噴水の音。俺はその音を聞いて、なんて思ったんだろうか……
どうやら明日、俺はあのテンプル騎士の連中に連行されるらしい。奴らが何故俺を連れ出すのか、何故俺だけなのか
それが疑問であるが、もうどうでもいい。一体俺は何がしたいんだ
それもどうでもいい……ただ、この無音が俺の癒しである。何も感じず、何も考えないこの空間が
「あっ、右京さん!!」
「ぶち壊れたわ、一瞬で」
「??」
頭を抱え込んでしまった
本当にネギは空気を読めないのか、読めるのか……いわば鈍感だな。ネギはトコトコと俺に近づいてきた
「つかネギ、部屋で大人しくしてろ。先生に言われたろ?」
「う~…でも、夜眠れなくてこっそり出てきちゃった。なんか、動かないとそわそわしちゃって」
「あのな~。こわ~い幽霊が出るかもしれないんだぞ~」
両手を上にあげて、自分でも思う怖い顔をする。だが、ここはさすがネギである。全く怖がらない
むしろ笑顔になりやがった
「あはは、右京さんが居るから平気だよ!」
「ウッ!? お前な~~………」
今度は空を見上げてしまった。あぁ~あ、本当に変わった奴だよ。こんな変わった奴を、見殺しに出来なかった俺も変わってるのかな?
「……本当は怖くて右京さんを探したんだ」
ネギが突然言い出す
「怖い? なんか夢でもみたのか」
「うん…………僕以外の村の皆が石にされちゃう、変な夢なんだ」
「ドラマとか映画の見過ぎじゃねぇ~の?」
覚えている……いや、非現実的な場面を見てしまい『夢』と勘違いしているか……なら、このまま隠し通そう
もしやと思ったが、まさかいい方向に事が進むのは良い事だ
「みんな……何故か僕を守ろうと庇っているように石にされ…て……ネカネお姉ちゃんも、スタンおじいちゃんも…僕を庇って……もう何がなんだか」
「それほど愛されているんだよ。けど、生きているからよかったじゃねぇか」
「うん…………でもね、その後凄いもの見たんだ。白いローブの人と、炎に包まれた人を」
その二人の男性を聴き、ちょっと黙ってしまった。ネギはまだ語りだす
「その二人、凄いんだよ。まるで映画のような戦いで、お互い一歩も引かなかった。それに……何かを守ろうと必死に見えたんだ」
「それは一度会ってみたいもんだな。ま、ネギの夢のゆかいな仲間たちだけどww」
「うん」
妙に聞き分けがいい。何時もなら怒ってしまう所は、ネギはしんみりと返事をした
「けど、あの二人は『強かった』。憧れちゃうよ………あの『強さ』。僕も、強くなりたい。あの二人のように守れる正義のヒーローに!」
「ネギ…………」
この子はとても素直だ。正義のヒーローと軽くいっているが、実際はこの子の信念になっているだろう
なら、俺はどうする? この子の召喚獣としてこの世界に降り立ったなら、俺は何が出来る
そう悩んでいると、頭の中で『あいつ』から貰ったものを思い出した。そうだ……これを上げたら
「ネギ…明日の朝、もう一度ここに来てくれ」
「え?」
「そこで渡したいものがある。これからお前にとって大切なものになるだろう」
「右京さん……? うん、わかったよ」
「じゃあ、俺は明日早いからお休み。お前も早く寝ろよ」
背中を見せ、そのまま建物の中に入ろうとした
「右京さん!!!!」
止めてくれ……!! これ以上、俺を……!!
「僕、右京さんのことも守るよ!! だから、ずっと一緒に居ようね!!!!」
「あ……あぁ……!!! 俺もお前を守る!!! たとえ遠くても、お前が俺を呼べば駆けつけにいく!! 俺たちは……『友達』だ!!!」
顔中ぐしゃぐしゃに泣き、それを言い残し俺は去った……
ネギside
右京さんの言うとおり、昨日の噴水場に行った。最初は右京さんを探したけど、気づけば噴水場の所に大きな杖と手紙が置いてあった
僕は最初はこの大きな杖を喜んでいたが、手紙の内容を見てみる
『ネギへ
この手紙を読んでいるなら、ちゃんと最後まで読んでほしい。この手紙と一緒に置いてあった杖は、実はお前の『親父』からお前に渡してほしいと頼まれた杖だ。お前の体調がよくなったら渡そうとしたが、急遽渡すことに決まった。
さて……まずは、すまん。俺はお前に会えない。いや……会えないでいる。俺が居たせいで世界に影響が出てしまうと言われ、一旦お前の前から居なくなる。だが、安心してくれ。俺は強くなって戻ってくる。お前が思っている以上、お前以上、そして…お前の『親父』以上…最強となって戻ってくる。手紙での約束してくれ、強くなると。ネギ…お前が俺を呼べば何時でも駆けつけてやる。
ネギも強くなれ。その『親父』の……テメェの自慢の『親父』の杖を使って、強くなれ。それが約束だ
大丈夫だ……会える。俺たちの関係は『召喚獣』と『主』だが……『友達』だ
それじゃ、また会おう。親愛なるネギ・スプリングフィールドよ』
僕は泣いた。泣いて、泣いて、泣き叫ぼうとした。あの人の名前を言おうとした……けれど、咄嗟に手で口を防いだ
このままじゃ僕は強くなれない。右京さんに迷惑をかけちゃう……僕は、決めたんだ
すると、遠くの方から突然大きな光が落ちた。あそこに、右京さんが………
杖を持ち、大きく掲げた
「右京さん!!!! いつかまた………会おうね!!!! 待っているから!!!!」
右京side
光を全身を覆いつくし、俺はこの世界を去った……空耳だろうが、ネギの声と信念が心に響いた
爺、ネカネ……後は任したぞ
そう思いを残し、新たな世界に着いてしまった。まだ光が俺たちを包んでいるが、だんだんと薄くなる
「千鳥 右京。申し訳ないが、貴様は死刑に決まった」
「……は?」
「貴様の人を越えた『能力』。それが、世界にどう影響するか……わかっているだろうな」
「そうか……俺は死刑か……」
「我ら二人では歯が立たないとわかり、急遽応援を呼んだ。その数は2000人のテンプル騎士だ。貴様でもかなわいであろう」
たしかの、この外から感じる異質な『力』。悍ましいな
「よって死刑を行う。反論を認めない」
「はは、はははははははははははは!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「「ッ!!!」」ジャキン
狂うように笑ってしまい、二人は剣を抜く。だが、振りかざしてこない。何故か?
俺が怖いからであろう
手元が震えており、俺に昨日も突っかかってきた騎士の鎧が、がたがた震えている
「お前らはわかってない。もうこの世界は新たな世界なら……俺に残すものはない」
顔の半分の形があかる。枷を無理やり外し、体を大きく表現しだす
「クッ!!!! いまだ!!!!! 全員でかか………!!!?!?!?」
「どうした!! ッッ!!!」
すでに光が消え、二人は何かに気づいた。それは俺ではなく、顔を後ろに向けその現象に驚いている
それは2000人のテンプル騎士たちの、残骸であった。まるで『喰いちぎられた』跡が、次々と残っている
こんな事をするのは…………!!!
「あぁ~あ!!! 喰いたらない、つまらない、うざってぇ!!!!!」
「「ッ!!」」
声がする方に視線を向けると、そこは屍の山を築きなお血を求める獣の姿
「だから、来ちゃった」
「びゃ…………白虎ぉぉおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」
怒号の声をあげる。喉がちぎれそうだが、それでもコイツの名前をあげてしまう
「今は白峰 虎之助だっつーの。『朱雀』…いや、弟よ」ニヤリ
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