不死身の不死物語   作:貧弱戦士

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伍 世界と獣

「…………………」

 

「それでは後日、我らと一緒に『魔法世界』に連行させてもらう。では、失礼……」

 

 

 

と、騎士風の二人組は颯爽と去って行った。その背中には大きな☨が書いてあり、英語で『正義』と書かれていた

 

 

 

「……逃げようとも無駄だからな」

 

「早くいかんか、政府の犬共」

 

「…行くぞ」

 

 

 

一人の威勢がいい騎士が振り返り、兜の隙間から密かに俺を睨む。スタンの爺は嫌味をいい、奴らは今度こそ去っていった

 

緊張の糸が途切れ、体が操り人形の糸が切れたように座り込んでしまった

 

 

 

『ドタン』

 

「はぁはぁ……チッ。やってくれんじゃん」

 

「大丈夫か右京!」

 

「どうしたの急に…! 顔色が青いわよ!」

 

「ちくしょう…! ほんと、運が悪いぜ。まさかこの俺が『呪い』をくらうなんてよ……!!!」

 

 

 

わき腹が青く光っているのをスタンとネカネが見てしまい、ひん剥かれてしまった

 

 

 

「な、なんじゃこの複雑で邪悪な『呪い』は!?」

 

「ひ……酷い………」

 

 

 

それは一見ただの『魔法陣』に見えるが、よく見たらそれはただの陣ではなく、中心に青い目の模様があり、陣を作るための線は微妙にだが青い火で書かれている

 

体を蝕み、気をぬくと全身が焼かれてしまう。それを二人に伝えたら、急に顔つきが変わりやがった

 

それは心配であろう……この俺の

 

 

 

「なんで黙っておったんじゃバカ者!!!!」

 

「そうよ!! あなたはいつも一人で抱え過ぎなのよ!!? どうしていつも……!! ネギだって泣きますわよ!!」

 

 

 

ネギ…………俺は、いつもあいつに迷惑をかけちまう。歯を思い切り食いしばり、咄嗟に口を開く

 

 

 

「うるせぇ!!! それでも俺はお前らを助けたことを『嬉しい』と思った!!! お前らが生きるためには仕方ねぇんだよ!」

 

 

 

『生きるためには仕方ない』。このフレーズはよく、俺の身近な人物が言っていた。生きるためには手段を択ばない人だった

 

俺は自らの『力』を使ってこいつ等を助けたのは、とても誇りに思う。そして、本当に『嬉しかった』

 

壁を使って自力で起き上がり、そのまま脚を進める

 

 

 

「ネギは……俺の『炎』だ。だから、例え台風の雨でも街を水没させる水でも、俺はあいつを守る『盾』になる」

 

「ッ!!!」

 

 

 

首を後ろに向け、目線を合わせる。あぁ、俺は今どんな目つきをしているんだろうか

 

スタンの爺は驚き、ネカネは怯えている

 

 

 

「あいつの『炎』が消えてしまう程の涙を、流しちゃいけねぇんだ」

 

「右京………」

 

 

 

行先もないもも、俺もここを去った

 

ただ残ったのは、静寂な一時と無音の空間だけ

 

 

 

「あなたは……それで満足なの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ…………もう夜か」

 

 

 

気が付けば、俺は噴水場でただ一人ボーッとしていた。空は真っ黒、辺りは真っ暗。

 

耳に響くのは噴水の音。俺はその音を聞いて、なんて思ったんだろうか……

 

どうやら明日、俺はあのテンプル騎士の連中に連行されるらしい。奴らが何故俺を連れ出すのか、何故俺だけなのか

 

それが疑問であるが、もうどうでもいい。一体俺は何がしたいんだ

 

それもどうでもいい……ただ、この無音が俺の癒しである。何も感じず、何も考えないこの空間が

 

 

 

「あっ、右京さん!!」

 

「ぶち壊れたわ、一瞬で」

 

「??」

 

 

 

頭を抱え込んでしまった

 

本当にネギは空気を読めないのか、読めるのか……いわば鈍感だな。ネギはトコトコと俺に近づいてきた

 

 

 

「つかネギ、部屋で大人しくしてろ。先生に言われたろ?」

 

「う~…でも、夜眠れなくてこっそり出てきちゃった。なんか、動かないとそわそわしちゃって」

 

「あのな~。こわ~い幽霊が出るかもしれないんだぞ~」

 

 

 

両手を上にあげて、自分でも思う怖い顔をする。だが、ここはさすがネギである。全く怖がらない

 

むしろ笑顔になりやがった

 

 

 

「あはは、右京さんが居るから平気だよ!」

 

「ウッ!? お前な~~………」

 

 

 

今度は空を見上げてしまった。あぁ~あ、本当に変わった奴だよ。こんな変わった奴を、見殺しに出来なかった俺も変わってるのかな?

 

 

 

「……本当は怖くて右京さんを探したんだ」

 

 

 

ネギが突然言い出す

 

 

 

「怖い? なんか夢でもみたのか」

 

「うん…………僕以外の村の皆が石にされちゃう、変な夢なんだ」

 

「ドラマとか映画の見過ぎじゃねぇ~の?」

 

 

 

覚えている……いや、非現実的な場面を見てしまい『夢』と勘違いしているか……なら、このまま隠し通そう

 

もしやと思ったが、まさかいい方向に事が進むのは良い事だ

 

 

 

「みんな……何故か僕を守ろうと庇っているように石にされ…て……ネカネお姉ちゃんも、スタンおじいちゃんも…僕を庇って……もう何がなんだか」

 

「それほど愛されているんだよ。けど、生きているからよかったじゃねぇか」

 

「うん…………でもね、その後凄いもの見たんだ。白いローブの人と、炎に包まれた人を」

 

 

 

その二人の男性を聴き、ちょっと黙ってしまった。ネギはまだ語りだす

 

 

 

「その二人、凄いんだよ。まるで映画のような戦いで、お互い一歩も引かなかった。それに……何かを守ろうと必死に見えたんだ」

 

「それは一度会ってみたいもんだな。ま、ネギの夢のゆかいな仲間たちだけどww」

 

「うん」

 

 

 

妙に聞き分けがいい。何時もなら怒ってしまう所は、ネギはしんみりと返事をした

 

 

 

「けど、あの二人は『強かった』。憧れちゃうよ………あの『強さ』。僕も、強くなりたい。あの二人のように守れる正義のヒーローに!」

 

「ネギ…………」

 

 

 

この子はとても素直だ。正義のヒーローと軽くいっているが、実際はこの子の信念になっているだろう

 

なら、俺はどうする? この子の召喚獣としてこの世界に降り立ったなら、俺は何が出来る

 

そう悩んでいると、頭の中で『あいつ』から貰ったものを思い出した。そうだ……これを上げたら

 

 

 

「ネギ…明日の朝、もう一度ここに来てくれ」

 

「え?」

 

「そこで渡したいものがある。これからお前にとって大切なものになるだろう」

 

「右京さん……? うん、わかったよ」

 

「じゃあ、俺は明日早いからお休み。お前も早く寝ろよ」

 

 

 

背中を見せ、そのまま建物の中に入ろうとした

 

 

 

「右京さん!!!!」

 

 

 

止めてくれ……!! これ以上、俺を……!!

 

 

 

「僕、右京さんのことも守るよ!! だから、ずっと一緒に居ようね!!!!」

 

「あ……あぁ……!!! 俺もお前を守る!!! たとえ遠くても、お前が俺を呼べば駆けつけにいく!! 俺たちは……『友達』だ!!!」

 

 

 

顔中ぐしゃぐしゃに泣き、それを言い残し俺は去った……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネギside

 

 

 

右京さんの言うとおり、昨日の噴水場に行った。最初は右京さんを探したけど、気づけば噴水場の所に大きな杖と手紙が置いてあった

 

僕は最初はこの大きな杖を喜んでいたが、手紙の内容を見てみる

 

 

 

『ネギへ

 

 この手紙を読んでいるなら、ちゃんと最後まで読んでほしい。この手紙と一緒に置いてあった杖は、実はお前の『親父』からお前に渡してほしいと頼まれた杖だ。お前の体調がよくなったら渡そうとしたが、急遽渡すことに決まった。

 さて……まずは、すまん。俺はお前に会えない。いや……会えないでいる。俺が居たせいで世界に影響が出てしまうと言われ、一旦お前の前から居なくなる。だが、安心してくれ。俺は強くなって戻ってくる。お前が思っている以上、お前以上、そして…お前の『親父』以上…最強となって戻ってくる。手紙での約束してくれ、強くなると。ネギ…お前が俺を呼べば何時でも駆けつけてやる。

 ネギも強くなれ。その『親父』の……テメェの自慢の『親父』の杖を使って、強くなれ。それが約束だ

 大丈夫だ……会える。俺たちの関係は『召喚獣』と『主』だが……『友達』だ

 それじゃ、また会おう。親愛なるネギ・スプリングフィールドよ』

 

 

 

僕は泣いた。泣いて、泣いて、泣き叫ぼうとした。あの人の名前を言おうとした……けれど、咄嗟に手で口を防いだ

 

このままじゃ僕は強くなれない。右京さんに迷惑をかけちゃう……僕は、決めたんだ

 

すると、遠くの方から突然大きな光が落ちた。あそこに、右京さんが………

 

杖を持ち、大きく掲げた

 

 

 

「右京さん!!!! いつかまた………会おうね!!!! 待っているから!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

右京side

 

 

 

光を全身を覆いつくし、俺はこの世界を去った……空耳だろうが、ネギの声と信念が心に響いた

 

爺、ネカネ……後は任したぞ

 

そう思いを残し、新たな世界に着いてしまった。まだ光が俺たちを包んでいるが、だんだんと薄くなる

 

 

 

「千鳥 右京。申し訳ないが、貴様は死刑に決まった」

 

「……は?」

 

「貴様の人を越えた『能力』。それが、世界にどう影響するか……わかっているだろうな」

 

「そうか……俺は死刑か……」

 

「我ら二人では歯が立たないとわかり、急遽応援を呼んだ。その数は2000人のテンプル騎士だ。貴様でもかなわいであろう」

 

 

 

たしかの、この外から感じる異質な『力』。悍ましいな

 

 

 

「よって死刑を行う。反論を認めない」

 

「はは、はははははははははははは!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

「「ッ!!!」」ジャキン

 

 

 

狂うように笑ってしまい、二人は剣を抜く。だが、振りかざしてこない。何故か?

俺が怖いからであろう

 

手元が震えており、俺に昨日も突っかかってきた騎士の鎧が、がたがた震えている

 

 

 

「お前らはわかってない。もうこの世界は新たな世界なら……俺に残すものはない」

 

 

 

顔の半分の形があかる。枷を無理やり外し、体を大きく表現しだす

 

 

 

「クッ!!!! いまだ!!!!! 全員でかか………!!!?!?!?」

 

「どうした!! ッッ!!!」

 

 

 

すでに光が消え、二人は何かに気づいた。それは俺ではなく、顔を後ろに向けその現象に驚いている

 

 

 

 

 

それは2000人のテンプル騎士たちの、残骸であった。まるで『喰いちぎられた』跡が、次々と残っている

 

 

 

 

 

 

こんな事をするのは…………!!!

 

 

 

「あぁ~あ!!! 喰いたらない、つまらない、うざってぇ!!!!!」

 

「「ッ!!」」

 

 

 

声がする方に視線を向けると、そこは屍の山を築きなお血を求める獣の姿

 

 

 

「だから、来ちゃった」

 

「びゃ…………白虎ぉぉおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」

 

 

 

怒号の声をあげる。喉がちぎれそうだが、それでもコイツの名前をあげてしまう

 

 

 

 

 

「今は白峰 虎之助だっつーの。『朱雀』…いや、弟よ」ニヤリ




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