不死身の不死物語   作:貧弱戦士

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弐 弱さと強さ

右京暗殺計画からはや二ヶ月経ちました。……なんか自分で言うとイラッと来るな

 

ネギはあれからも元気一杯ワンパクッ子であり、そんな様子を見守るのが日課になってきている

 

週に一回ネカネから手紙が来るようになり、前よりか活発となっている。少々俺もそれを見て、頬が緩む

 

 

 

「プラクテ ビギ・ナル 火よ灯れ(アールデスカット)

 

『ボウっ!』

 

 

 

はいはい、アールデスカットですね。なに? デスカットって? 死の切断ですかと思いきや小さな炎が出た

 

最初は使えなかったらしいが、今では簡単に出せるらしい

 

だが、たかがマッチで点けたような火だ。この世界では生きていけないだろう………

 

しょうがない、『先輩』の力というのを見せてやろう

 

 

 

「ネギよ。お前はまだまだ魔力の練り方がなってねぇな」

 

「むっ! 右京さんだって、僕に比べればまだまだじゃないか!」

 

「ふぅ……やれやれ」

 

 

 

と、俺は欧米風に呆れている。懐から黒い棒状のものをだし、先端に小さな穴が開いたやつを持つ

 

 

 

「手本を見せてやるよ。ハァァァー……」

 

 

 

イメージで、体内にある何かを練るように。これはスタンの爺が教えてくれた方法だ

 

ネギもこれを聞いて出来た。指にだんだんと力を入れ、動き出す

 

 

 

「プラクテ ビギ・ナル 火よ灯れ(アールデスカット)!!!!』  カチッ

 

『ボウっ!』

 

「え!? 火が出てる!?」

 

「凄いだろ? ま、これが天性みたいな? 生まれ持った才能ですわww」

 

「いいなぁ~! 僕のよりちょっと大きいよ」

 

「なに、ネギももっと成長するだろう。それまで努力しろよ」

 

「うん!! よぉ~し、さらにもっと大きくするぞ~!」

 

 

 

少年少女大志を抱けってか。ネギに見せびらかすように、火を消したり点けたりを繰り返す

 

なんかこれ……凄く良いかも。バカに出来るっていいね!

 

そう思っていると、背後からズカズカと誰かが近寄ってくる

 

 

 

「このバカもんが!!!!」

 

『ドガッ!』

 

「いでっ!!!」

 

「スタンおじいちゃん!?」

 

 

 

急に頭上から鉄のような塊が降ってきたと思いきや、スタンの爺かよ…! 両手で頭を押さえ、涙目で訴える

 

ネギも俺を心配するように近寄ってくるが、スタンの爺はそれでも顔つきを変えない

 

折角ネギより優勢に立てたと思いきや、これかよ……ん? あれ? ない!

 

辺りを見渡し、アレを探す。頭を咄嗟に抑えたおかげで、何処かにやったのか

 

 

 

「お主が探しているのはこれか?」

 

「おぉ、気が利くじゃねぇか爺。これ一応ウチの家庭用必須アイテムなんだわ」

 

「ねぇ右京さん。それなに?」

 

「ん? これはだね『着火マン』と言って、この引き金を引くことで先端から火が出る代物だよ~………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

          

 

 

 

 

 

         あ」

 

「なに子供に対して意地張っておるんじゃ!!! バカもんがっ!!!」

 

『ドガッ』

 

 

 

もう一発の『愛』の鉄拳をくらい、倒れた。ネギは泣きながら俺の悪口を言って去って行った

 

くそぉ~、もうすぐで人生の壁になろうとしたのに……この爺が

 

 

 

「なんであんな『嘘』を言ったんじゃ」

 

「あん? 何でって……ネギの人生の壁になりたかっただけだ」

 

「……そうか」

 

 

 

不満のような返事だった。爺は帽子を深くかぶり、遠くを見渡す。

 

俺たちが特訓していた場所は広い草原であり、近くに泉もある。村からはちょぅと遠い距離だ

 

ここからだと村が見えて、絶景だ。俺は立ち上がり、服に付いた泥を叩く

 

 

 

「爺さん、俺は………どうすればいいんだ」

 

「…………………」

 

「ネギはだんだんと強くなってきている。当たり前か、あの伝説の息子だからな………だけどな」

 

 

 

拳に力を入れる。悔しいのだろう、俺自身が

 

 

 

「俺はネカネに約束したんだ。強くなるって」

 

「お主は何故強くなろうとするんじゃ」

 

「ネギを守るためだ! けどな、これじゃあ俺が守られちまうんだ! ネギはまだまだ餓鬼だが、何れは凄い奴になる。けれど、俺は……『弱い』」

 

 

 

初めてこの世界に来たときは、すでに最初は絶望していて。けれど、『あの事件』がきっかけで俺は決めたんだ

 

今度こそ俺が守るって―――

 

握っていた拳はいつの間にか血がダラダラ流れており、感覚がマヒしてくる

 

ネカネが俺に何回も問いかけていた。暗殺、誘拐という言葉を。そういう立場になってくるんだ、ネギは

 

だから、せめて俺は真っ当に召喚獣としてやり遂げたいんだ

 

 

 

「……何故それを使わないんじゃ」

 

「!?」

 

「それを使えば、お主は正直本当の『化け物』になるからか? 怖いからか?」

 

「爺…! 何が言いたい」

 

「まるでお主はネギを理由にしているようにしか見えんのでな。『戦いたいならそう言えよ』」

 

『ゴッ!』

 

 

 

衝撃波だ。スタンのまわりの草原が刈られ、綺麗な円状が出来上がった。怯んだが、体制を持ち直す

 

俺は咄嗟に出されたので、気に食わなく奴を睨む。すると、口元が笑っていた

 

 

 

「強くなりたいなら戦ってやるよ。この老いぼれの体がどこまで持つかの」ニヤリ

 

「…へっ! そういうことかよ」

 

 

 

俺も同じく笑い出す

 

 

 

 

爺はわざと俺を怒らせようとしてくれた。俺を鍛えてくれると……

 

 

 

 

元々俺を鍛えるために、わざわざ来てくださったんだろう。最初にこの特訓場を教えてくれたのはなによりこの爺だからだ

 

そして、わざと俺の不正行為をネギに知らせたのもだ。こいつはわかっていたんだ……俺がもっとも恐れているのを

 

体から何かが込みあがってくる。そうだ、この感じを思い出せばいいんだ

 

爺は何処からか自分より大きな杖を取出し、辺りの石などが浮かび上がる

 

俺は両手を構え、爺の目を見る。そうだ…………最初の相手にはうってつけの奴だな

 

 

 

「行くぞ小童ぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!!」

 

「こいや、クソ爺ぃぃぃいいいい!!!」

 

『ドーーーン!!!!』

 

 

 

あるイギリスの村に事件が起こった。村の近くの丘から突然の轟音が聞こえたからだ

 

村の大人たちはすぐさま子供達を家に避難させ、丘を見守り続けた

 

するとその三時間後に、丘の方面からある二人の少年とご老人が降りてきた。二人はお互いも傷も追いながら、丘の件については何も言わなかった

 

その丘は地面が割れ、一週間もの炎に包まれていたらしい……とても奇妙な物語だ




おまけ

「なぁ、ネギ。なんか入れ物ないか? 小さい袋か何かさ」

「あるけど……何入れるの?」

「ん? これさ」

「え、これ小さな石じゃん。こんなの入れて得でもあるの?」

「いいや……ただのまじないさ」

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