カンピオーネ!---譲られた神殺しの力--- 作:auslese
主人公vsヴォパン&サルバトーレ戦です。
6/11 修正
僕はハディに乗り、エル義父さんから受け取った書類の地図にあった古城の近くの丘の上に居た。
「あそこにティナが・・・」
その古城はどんより曇った空の下、不気味に静まり返っていた。
「しかし、なんだろうこの感じ・・・」
僕は初めてなのに、何故か過去に感じたことのある気配に戸惑っていた。 その時、僕は内からの呼び声に従いワルキューレを呼び出した。
「ブリュンヒルデ、どうしたの?」
そう、僕を呼んでいたのはワルキューレの一人ブリュンヒルデだった。
「主様、貴方様が感じている気配は我が夫ジークフリードのものです。 過去にオーディン様が剣を与えた者で、その気配を感じ貴方様の中のオーディン様の力が共鳴しているのでしょう」
「そうなんだ、オーディンの関係者だったんだね」
「はい」
ブリュンヒルデは恭しく肯いた。
「あ、そうだ。 ティナを助けたい一心で勢いでここまで来ちゃったけど、ブリュンヒルデは救出に何かいい方法は無いかな」
「確認いたしますが、救出するのはティナ様だけでしょうか?」
エル義父さんが調べた内容では、今回の神降臨の儀式のために、東は日本から西はアメリカから世界から力ある少女が集められていた。
「そこなんだよね。 ティナだけ救出ってわけには行かないし・・・」
「それでしたら、まず貴方様が突入しカンピオーネを牽制している間に、私たちワルキューレが救出すると言うのはどうでしょう」
「それしかないかな」
「はい、時間がもう少しあれば他の策も用意できるでしょうが、今回は時間がございません」
そう、時間が無かったのだ。 エル義父さんが調べた内容では、まつろわぬ神招来の儀式は今日の夜に行われるのだ。 今の時間はもうすぐ18時を指そうとしていた。
「じゃ、みんなを呼んで手筈の打ち合わせをして突入しよう。」
僕は結界を張った後、自分の内にある力を解放した。
「みんな出てきて」
僕の前にブリュンヒルデ以外の8人のワルキューレが現れた。
「お呼びですか主様」
「うん、救出の手筈の確認だよ、ブリュンヒルデお願い」
そう言ってブリュンヒルデを前に押し出した。
「はい・・・」
そうしてヴォパン侯爵のまつろわぬ神招来の儀に、殴りこむ準備が整っていった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「ん・・・・・・」
あれ? わたしは確かパパと一緒に
そうだ! 使者が伏せると同時に会議室のドアが爆発したんだ!? ヴォパン侯爵の使者が強硬手段でわたしを連れ去ったのだと思いだした。
「まさか、あんな強硬手段に出るなんて・・・」
わたしは今更ながら自分の服装に気が付いた。 わたしが着ているのは白の布で出来た貫頭衣だった。 周りを見ると同じ格好をした、わたしと同い年くらいの女の子がたくさん居た。 その中にいた亜麻色の髪をした女の子と、その子の腰紐を結んでいた銀髪の女の子が目を引いたので声を掛けてみた。
「少しいいかしら?」
「はい、なんでしょう」
「・・・・・・」
亜麻色の女の子は答えてくれたが銀髪の女の子はわたしを見つめるだけだった。 そう思っていると銀髪の女の子がわたしに声を掛けてきた。
「もしや、あなたは北欧の神童と言われているユスティーナ・レア・サーラスティでは」
「ええ、他所でどう言われるかは知らないけど、わたしはユスティーナ・レア・サーラスティで合ってるわ」
「ええ!? あの有名な!?」
「申し遅れた、わたしはイタリア青銅黒十字のリリアナ・クラニチャールと申します」
「あ、わたしは日本正史編纂委員会所属の媛巫女の万里谷 祐理と言います」
わたしは、リリアナ・クラニチャールの自己紹介で青銅黒十字の天才児だと気が付いて声を掛けようとしたが、万里谷 祐理の自己紹介に出た正史編纂委員会と聴いた瞬間顔を顰めた。
「どうかしましたか?」
「いえ、なんでもないわ」
万里谷 祐理は何とか誤魔化せたが、リリアナ・クラニチャールはどこか覗うような目をしていた。 リリアナ・クラニチャールがわたしに声を掛けようと瞬間、大広間の壇上の扉が開き一人の老人が歩み出てきた。
「ようこそ巫女の諸君。 このヴォパンの召集に良く答えてくれた。 これより神招来の儀を執り行う」
こいつがヴォパン侯爵みたいだ。 あんなことをしておいて抜け抜けとした物言いにわたしは自分の怒りを抑えることが出来なかった。
「召集に答えていないのに、無理やり誘拐した痴呆が進んだ老人が何を言ってるのかしら」
「「!!??」」
隣に居たリリアナ・クラニチャールと万里谷 祐理が、わたしの物言いに目を見開いていた。
「ほぉ、このヴォパン相手にそのもの言い見上げたものだ、名を聞いておこうか」
どこまでも偉そうな物言いだ。 この手の人種は人を見下し、自分の欲求のためなら他人を何とも思わないヤツだ。
「北欧の結社
「見知っておいてやろう、だがその先達に対する物言いは看過できんな」
わたしはふと後ろに感じた気配に、反射的に伸びてきた腕を掴み、引き倒して腕の間接を破壊し、首を踏み抜いた。
「我が死せる従僕をこのような娘子が倒すとは驚きよ」
「こんな弱いの誰でも倒せるわよ」
わたしは答えた後、とっさに呪力を高めた。 ヴォパン侯爵を見ると目が翡翠色に輝いていた。 あれって確かソドムの瞳だったかしら。
「その年でソドムの瞳まで耐えるか。 ではこれではどうだ?」
そう言ってわたしの周りから狼が無数に現れた。
「くっ・・・」
「わはははは、神招来の儀の前の余興には良かったぞ」
ヴォパン侯爵が笑った後、狼たちがわたしに向かって駆け出そうとした瞬間天井が崩壊した。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
僕はハディに跨り、突入の準備をしようとした瞬間、ティナが狼に囲まれているビジョンが脳裏を過ぎった。
「ティナ!!」
咄嗟に祭儀場の天井をぶち破り、祭儀場に飛び込んだ。 祭儀場ではティナが今まさに狼に飛びかかられるところだった。
「グングニル!」
僕が投げたグングニルは一瞬のうちに狼を刺し貫き、僕の手の中に戻ってきた。
「なにやつだ!」
ヴォパン侯爵は突然のことに慌てた様子だ。
「いまだ! グングニルよ! 貫け!」
僕はグングニルを力の限り、祭儀場の中央にあったアーティファクトに向けて投げた。
「なんだと!?」
「ワルキューレ!」
ヴォパン侯爵の気がアーティファクトに逸れた瞬間、僕の中で待機していたワルキューレを解き放った。 僕の周りに9つの魔方陣が浮かび上がり、その上にペガサスに乗り鎧を纏ったワルキューレたちが現れた。
「いけ!」
『はい!』
ワルキューレたちはそれぞれ数人ずつ女の子を乗せ飛び立った。
「おのれ! よくも我が儀式を邪魔してくれたな!」
ヴォパン侯爵は怒りの余り巨大な狼に変身した。 それと同時に周りに無数の狼が湧き出てきた。
「人の巫女を勝手に奪っておいて何を言っているんだか」
「なんだと! このヴォパンになんと言う物言いか!」
「王が他の王のモノを勝手に持ち出して、許されるとも思っているのか!」
「どう言うことだ!」
ヴォパン侯爵は自分の矜持が傷つけられたと思い焦っているみたいだ。 ヴォパン侯爵と話していると、突如数匹の狼が切り捨てられた。
「あっれー。 ここって神招来の儀式してたんじゃないの?」
やたらと軽い金髪の青年が、壇上の扉から入ってきたと同時にグングニルで貫いたアーティファクトが爆発し、鎧を着た青年が立っていた。
「オレを呼び出したのはどいつだ」
「ちっ! キチンとキャンセル出来て無かったのか!」
僕はアーティファクトからジークフリードと分かった。
「そこに居るのは我が主神オーディン様の力を持つ者か」
「・・・・・・」
青年は、僕の方を向き問いかけてきたが、僕はあえて答えなかった。 ここで肯定するには周りの連中が邪魔過ぎた。
「なんだと!」
「へぇ」
「ジークフリード、そっちの剣士はくれてやる。 こっちの老人を倒したあと、詳しく答えてやる」
なるべく偉そうに喋って、ボロが出ないようにしようとした。
「いいだろう。 そこの剣士を倒した後、詳しく聞きだしてやろう」
どうにか四つ巴になる事だけは防げたようだ。 あの手の剣士は正面から戦いたがるから、僕はジークフリードをあえて気にしないようにしながら、ヴォパン侯爵へと向き直った。
「ふん、もう私を倒した気で居るのか、愚かな」
「これを見てもそれが言えるかな?」
僕は影からリルを具現化させた。 リルを見た瞬間ヴォパン侯爵は蔑んだ目で僕を見ていた。
「たった一匹出したところで、既に我が貪る群狼を倒した気か」
「一匹で十分だよ、貴方が従えるモノが太陽神である限りね」
「なんだと!」
「こういうことだよ、食べていいよ」
僕はリルの能力を発動させた。 リルの能力の一つに、自分の子供の能力を引き出すことが出来る。 今回リルが引き出した能力は、ラグナロクにて
「ぐおおおぉぉぉ!?」
ヴォパン侯爵の体から無数の黒い粒がリルの口の中に吸い込まれていった。 そして、吸い込み終わるとそこには人の姿に戻ったヴォパン侯爵がいた。
「なんだというのだその狼は!?」
「教えるわけはないじゃない、未知は最大の恐怖にて自分の有利だから」
僕は自分が有利になるように精神誘導した。 ヴォパン侯爵があと使用する権能は、
「グングニル!」
「がはっ!!」
僕はヴォパン侯爵に駆け寄りグングニルで貫き、そのままグングニルの能力を使用した。 グングニルは目的のモノに必ず当たる能力を持っている。 だから、ヴォパン侯爵を刺し貫いたままで発動し、ヴォパン侯爵を強制的に離脱させた。
「これでしばらくはあの爺さんも帰って来れないだろ」
そう思いジークフリードの方を向くと、ジークフリードが金髪の青年に切られたところだった。
「ふぅ、やりがいのある相手だった。 お、そっちも終わったみたいだから勝負しようか」
「断る、こっちの用はすんだから帰る」
「えーー! ツレないこと言わないで戦おうよ」
僕は、ジークフリートとは話せなかったが、ティナの救出が終わり帰ろうとしていた。
「断る」
「じゃぁ、いいよ。 勝手に切りかかるだけだから」
そう言い、金髪の青年は切りかかってきた。 僕は咄嗟に呼び戻したグングニルで受け止めた。
「いいねぇ、戦いはやっぱりこうでなくちゃ」
「くっ、
グングニルで剣を弾くと青年は何か語りだした。
「ここに誓おう。僕は、僕に斬れぬ物の存在を許さない。この剣は地上の全てを斬り裂き、断ち切る無敵の刃だと!」
不遜と言っても過言では詩だが、それと同時に青年の右腕が銀色に変わって行った。
「そう言えば自己紹介がまだだったね。 僕はサルバトーレ・ドニ。 そして、この腕は
「自己紹介は遠慮させてもらう」
「ツレないなー」
僕はカンピオーネが一人増えたことはバレても、自分のことはバレるのを避けたかった。
「いくよ」
「!?」
かなり早い踏み込みからの袈裟切りを、なんとかグングニルで受け止めたとき、グングニルから声の様なものが聞こえた。
「そうか! グングニルよ砕け!!」
僕はグングニルをサルバトーレの剣に突き刺し能力を発動させた。 同時にサルバトーレの剣に無数の亀裂が走り剣が砕け散った。
「な!? ぐは!!」
サルバトーレの気が一瞬逸れた隙に、石突きでサルバトーレの水月を下から突き上げ、その衝撃で壁まで吹き飛ばした。
「付き合ってられるか!」
僕はすぐにハディに乗りその場を後にしたのだった。
「ーーーーーーーーーー」
何か下でサルバトーレが叫んでいるが、無視してフィンランドとは違う方向へハディを駆けて行かせた。 あくまでも、
こうして、ティア救出は終わりを告げるのであった。
まともに戦わない主人公です。
権能でやり過ごしてます。
最後にサルバトーレの剣を砕いたのは、北欧神話にて魔剣グラムをオーディンがグングニルで砕いたことから、剣を砕く力があるとしました。