カンピオーネ!---譲られた神殺しの力--- 作:auslese
6/6 修正
先生と会った翌日、僕たちはエルおじさんに頼んでいた食材を置いてある場所に居た。
「・・・・・・エルおじさん」
「なんだね、晃徳くん」
「用意してってお願いしたけど、これはないんじゃないかな?」
「・・・・・・・・・言わないでくれ、わたしもそう思っているから」
僕とエルおじさんは、目の前に山と詰まれたレシピと食材見て唖然としていた。
「準備しすぎたかしら?」
「ママ・・・・・・いくらなんでもこれはやりすぎでしょ!?」
ティナ、もっとシルヴィアさんに突っ込んであげて。 いくらなんでもこの量はないでしょ! 常識的に考えて!
「でも、神への供物はこれくらいしないと、ねぇ?」
「と、取り合えず昨日の場所へ持っていこう。 先生に聞いてみるから」
メイドさんにも手伝って貰って食材を門の場所へ持っていった。 しかし、これはどう見てもトラック一台分はあろうと言う量だった。
昨日の場所に着くとネックレスを握り締めて先生に呼びかけた。
(先生、先生)
(おお、晃徳か、来たか)
(うん、だけど・・・・・・)
(どうした?)
僕は言いよどんだが、意を決して事の詳細を話した。
(昨日、アンドフリームニルさんに食材もって行くって約束したけど、量がすごいことになってて・・・・・・)
(そんなに用意したのか)
(お世話になってるティナの両親がいっぱい準備してくれたから)
(構わんぞ、門を開くぞ)
(うん)
僕は先生との会話を終了した。
「先生が門を開いてくれるって、ティナいこ」
「ええ、パパ、ママ行って来ます」
「くれぐれも粗相のないように」
「「はーい」」
僕とティナは門をくぐって行った。
門を出ると先生が居た。
「先生おはよー」
「おはようございます」
僕とティナはなるべく食材の方を見ないように先生に挨拶した。
「うむ、おはよう・・・・・・ところでその後ろの山になっているのは食材か?」
「うん、ティナのお父さんが用意してくれたの」
「そ、そうか」
うわー、先生が引いてるよー。 ティナもなんか遠い眼してるし・・・。 やっぱりこの量は異常みたいだ・・・・・・と言うか異常だ。
「カラスにアンドフリームニルたちに持っていくように伝えよう」
「あ、これレシピです」
レシピの入ったナップサックを先生にわたした。
「ところで先生、迎えに来てくれたの?」
「それもあるが、紹介した者たちがいての」
「紹介したい者?」
ここにはオーディンさんとアンドフリームニル以外にも人(神)がいるみたいだ。
「昨日勉強した部屋に待たせているから行くぞ」
「はーい・・・・・・って、ティナどうしたの」
「まさか・・・・・・」
僕たちは先生の後について昨日勉強した部屋へ行った。 どんな人(神)が居るのか僕はわくわくしたがティナは考え込んでいた。
勉強部屋に着くとそこには男の人が3人と女の人が1人の4人の人(神)がいた。 昨日、エルおじさんに聞いたから4柱かな?
「紹介しよう、右から順にウル、テュール、ミーミル、エイルだ。」
「・・・・・・・・・」
あ、ティナが崩れた。 崩れた状態で頭を抱えるって器用なことをしていた。
「やっぱり、神々なのね」
「ほら、ティナ、立って」
「ええ」
崩れたティナを取り合えず抱き起こす。 また、崩れないように手は離さなかったら、ティナの顔が少し赤い。
「昨日、わしが勉強を教えていると話し、参加するように勧めたのじゃ」
先生が経緯を教えてくれた。
「はははは、オーディン殿、一人で面白そうなことを独り占めするのはよくないぞ」
先生より体の大きい金髪碧眼のおじさんが笑いながらこちらを見ていた。
「ウル・・・・・・」
「ティナどうしたの?」
ティナの方を見ると昨日先生の時になったように眼が蒼く輝いていた。
「ウル(古ノルド語:Ullr、「光輝」の意)は、狩猟、スキー、決闘の神。 シヴの息子で、トールの義理の子にあたり、ユーダリル(「イチイの谷」の意)というところに住む。 彼は呪文を刻んだ骨を船とし、海を渡る魔術師とされている。豊穣を司る神であり、元来は狩猟や決闘に留まらず、より高い地位にある天空神だったとされている。彼の地位の高さを裏付けるものとして「ウルとあらゆる神々の恩寵を受ける」という表現がある。 また「南の太陽や勝利の神(オーディン)の岩と寝室と、ウルの腕輪にかけてしばしば誓った通りに」という表現もある。 自分と同じように弓とスキーを得意とする女巨人のスカジと出会い、彼女の父が遺した館トリムヘイムで一緒に暮らしたという伝承も残されている。」
あ、昨日の託宣って言うのが出たみたいだ。
「ほぉ、ワシの由来を説いたか、この娘もなかなかの逸材よな」
ウルさんはどこか嬉しそうにしていた。
「そうですとも、なかなかの逸材のようですしな」
今度はウルさんより若い男の人がティナのことを誉めた。
「テュールは、ドイツ神話や北欧神話における軍神。 勇敢な神とされる。 ギリシャ神話のゼウス、ローマ神話のユーピテルなど印欧語族の多くが天空神として信仰する神々と同語源と考えられ、テュールも本来は天空神だったらしいが、概ね軍神とされている。 これは本来は法と豊穣と平和をつかさどる天空神であったのが、激しい戦乱の時代をむかえ、戦争の神であるオーディンへの信仰が台頭し、テュールは最高神の地位を追われて一介の軍神に転落したからとされている。こうした経緯もあり、「テュール」というのは、古くは古ノルド語で「神」をあらわす一般名詞でもあった。 絵画などでは隻腕の戦士の姿で表され、これはフェンリルに片手を食いちぎられたことを示す。 またルーン文字のティールは軍神テュールの象徴で勝利を意味する。 戦いの際にこのルーンを剣に刻み勝利を祈ったとされる。 軍神という点でローマ神話の軍神マールスと同一視された。 雷神トールとは別の神である。」
「おお、なかなか詳しい託宣だな。 概ね合っているな」
「だのぉ、先が面白そうな童たちよな」
今度はローブをまとったお爺さんが話しかけてきた。 しかし、ティナの託宣いってることが全然分かりません・・・。
「ミーミルは、オーディンの相談役となった賢者の神。 オーディンの伯父にあたる巨人といわれている。 アース神族とヴァン神族との戦争が終わり和睦した際、アース側からの人質としてヘーニルとともにヴァナヘイムへ送られた。 ヴァン神族はヘーニルを首領にしたが、彼が期待したような人物でないことが判明すると、ミーミルの首を切断してアース神族の元へ送り返した。その後、オーディンが首が腐敗することのないように薬草を擦り込み、魔法の力で生き返らせ、大切なことは必ずこの首に相談したと伝えられている。 ラグナロクが到来した際も、オーディンは真っ先に首の助言を仰いだ。彼が非常に賢いのは、彼が守っているミーミルの泉の水をギャラルホルンで飲んだためだといわれている。 ミーミルは水を飲む代償としてオーディンの眼球を抵当に入れるよう求めた。 ミーミルは霜の巨人と考えられるが、ミーミルは水にまつわる自然現象の象徴でありいわば「水の巨人」である。」
「ふむ、荒筋ではあっとるのぉ」
「なかなかよい霊視を持っていると思いますわ」
「エイルは、古ノルド語で「援助」や「慈悲」という意味のある、アース神族の女神である。 「最良の医者」とされ、死者を蘇らせる能力があるとされている。 彼女は全ての治療に精通しているが、特に薬草に詳しく、死者を復活させることもできたという。 また彼女はリフィア山に住み、フリッグの召使もしていた。 医師の長として、エイルは医療従事者の後援者となっていた。 彼女は、肉体的な治療だけではなく、精神、感情、霊的な治療も行っていたとされ、訪ねてくる全ての女性に治療を施したが、秘術を授けたのは女性だけだった。 そのため、スカンディナヴィアでは女性だけが治療術を知ることとなった。 彼女は、女神が列挙される中でも3番目に名前を挙げられ、「すぐれた医者」だと紹介される。」
「よい説明ですね」
ティナの託宣にウルさん、テュールさん、ミーミルさん、エイルさんの答えだ。
「そこで、この者たちもお前たちの教師にしようと思ったのだ」
「あーーーーー、居たーーーーー」
いきなり扉が開き若い男の人が部屋に駆け込んできた。
「いたずら者が戻ってきたか」
「じいさん酷いよ。一人だけで食い物の運搬させるなんて」
「いつもいつもいたずらしている罰だと思え」
「ぶーーーーーーーー」
「取り合えずお前も自己紹介しろ」
「ふんだ! オレはロキだよ」
「ロキは悪戯好きの神で、その名は「閉ざす者」、「終わらせる者」。 神々の敵であるヨトゥンの血を引いている。 巨人の血を引きながらもオーディンの義兄弟となってアースガルズに住み、オーディンやトールと共に旅に出ることもあった。 男神であるが、時に女性にも変化する。 美しい顔を持っているが、邪悪な気質で気が変わりやすい。 狡猾さでは誰にも引けを取らず、いつも嘘をつく。北欧神話最大のトリックスターという説もある。」
「おお、オレの託宣もあるのか!」
ロキさんはなんかとっても喜んでいた。 でも、託宣の内容がかなり笑えないような気がするのは気のせいかな?
「うおっほん、一応この6人でお前たちの勉強を見よう」
先生、一応って何ですか・・・。 後でティナに聞くとありえないことだと言っていた。
「まず方針を話しておくかの」
「方針?」
「うむ、それぞれの得意な事をまずは伸ばす方向で行く。わしの見立てでは晃徳が槍術と体術と呪物学。ティナが弓術、短剣術、薬学だ。ここに残っている者が丁度得意な事なので分かれて教える」
「わしが教えるのはティナに弓術だ」
「オレが教えるのは晃徳には槍術がメインで、あと補助で体術などを教える」
「わしは晃徳に呪物学と二人に呪術を教えるぞい」
「わたくしはティナに薬学と医学を教えますわ」
「俺が教えるいた・・・爺さん睨むなよ。 教えるのは戦闘の駆け引きだ。 もっぱら実戦なるがな」
「まったく、お前の悪戯は洒落にならんのじゃ。 最後にワシがルーン魔術と今、カラスに一般教養の資材を集めらせているから集まれば一般教養もだ」
神々が家庭教師になると言うある意味、僕とティナの修行の日々の幕開けだった。
「「あ、ありがとうございました・・・」」
僕たちはへとへとになりながらも全ての教えを完遂した。 一番洒落になってなかったのはロキさんの時と言うのは僕とティナだけの秘密だ。 知られると後で何をされるかを考えただけで怖い。
「ふむ、二人ともルーン魔術にかなりの適正があるのぉ」
「そうなんだ」
僕はなんとかまともに座っているが、ティナは机に臥せっていた。
「みなさま、食事の用意が出来ました」
「では、行くかの。 晃徳、ティナを連れてきなさい」
「はーい、ティナいこ」
「うん」
ティナが立てれず肩を貸した状態で僕たちは先生について食堂へ向かった。
食堂に着くと昨日とは打って変わって、彩の料理が並んでいた。
「うわー・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
テーブルに並ぶ料理に僕もティナも呆然としていた。
「「「「「「・・・・・・・・・・・」」」」」」
訂正、先生たちも呆然としていた。
「・・・・・・アンドフリームニル、これは」
「・・・晃徳の持ってきたレシピに刺激を受けまして、つい作りすぎてしまいました」
そっぽを向きながらアンドフリームニルさんは答えた。 いや、見ただけで20品は料理があった。
「先生、おなかすいたから先に食べよ」
「そうじゃな」
「「「いただきます」」」
「「「「「?」」」」」
「あ、これはね」
先生に昨日した説明をした。
「「「「「「「「ごちそうさまでした」」」」」」」
あれだけあった料理は全てなくなっていた。
「お粗末さまです」
「アンドフリームニルさん、すごく美味しかったです」
「それは何より」
すごく嬉しそうなアンドフリームニルさん。 やっぱり料理を作っている人だと「美味しい」って言われると嬉しいみたいだ。
「わしも、普段気にせず食べていたものがここまで変わるとは思わなんだ」
「しかり」
「あ、アンドフリームニルさん、この料理のレシピって貰えませんか?」
「構いませんが?」
「ティナの家の料理も初めてここで食べた料理と変わらなかったから・・・・・・」
「ああ、なるほど。 ではご用意しておきます」
僕は現世での料理に不満があったので、今日の料理のレシピをティナの家の人に見せて改善することを考えた。
「ありがとー」
「では、アンドフリームニルのレシピを受け取ったら現世に戻すぞ」
「はーい」
こうして僕たちの幽世二日目が終わった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
子供たちが帰ったあと、ワシらは今後について話し合っていた。
「ワシの見立てたあの子供たち才能、どうだった?」
「まさに鬼才ですな」
「今日は槍術をメインに教えましたが、一教えて十知るといううやつですかな。2年もあれば教えることがなくなりますぞ」
「ほぉ、テュール殿もですか、ワシもそれくらいで教えることがなくなりますぞ」
「オレも似たりよったりだな」
武術をメインで教えていたウル、テュール、ロキはそれぞれ今後の教育スケジュールの相談に入った。
「呪物や呪術は1年ほどで終わりますな」
「あら、薬学もですわ」
「晃徳の家系は代々呪物の扱いに精通した家系だからの」
晃徳の実家のことをカラスで調べたが、両親はかなりの術者だったようだ。
「なるほど」
「しかし、才能溢れるよき童たちですな」
「うむ、あの子たちがどのような花を付けるかが楽しみです」
幽世に移り住み無聊を慰めるために呼んだ子供たちだが、ワシだけでなく他の者たちも晃徳たちがどう育つか楽しみだった。
次回、物語が一気に進みます。
苦手なこと(執筆者的に)も入るので頑張りたいと思います