カンピオーネ!---譲られた神殺しの力--- 作:auslese
今回、今まで不思議だったことが判明します。
過去最長になりました。
草薙 護堂と正史編纂委員会との会合の後、オレとティナはこっそり使い魔を残し、自宅への帰路に着いていた。
「予想通りになったな」
「はい」
正史編纂委員会のせいで、中途半端になった会合だがある程度の収穫があった。 まず、第一に草薙 護堂の性格だが表面上は、普通の日本人に良くある平和主義者のようだ。 次に正史編纂委員会だが、予想通り草薙 護堂を支配下に置きたいようだ。
と、考えているとポケットの中の携帯電話が鳴り出した。 ディスプレイを見るとそこには見知った名前が映し出されていた。
「ん、アレクから? また呪物が暴走したのか!?」
「またです!?」
ディスプレイに表示され居た名前は、アレクサンドル・ガスコイン――今から十二年前、若干十六歳で堕天使レミエルに勝利し、その権能を簒奪した神殺し。 コーンウォールに拠点を構え、自らが盟主を務める魔術結社『王立工廠』を率い、イギリスに君臨する魔王。 その気品めいた若き風貌から『
「晃徳か、すまんが至急王立工廠まで来てくれ」
「また呪物が暴走でもしたのか?」
「ああ、それで合っているが、今回は
「はあぁ!?」
どうも今回は、賢人議会の姫様アリス・ルイーズ・オブ・ナヴァールが起こしたようだ。
イギリス、ロンドンでも有数の高級住宅街ハムステッドの一角に、まるで小城と言った外観の大きな屋敷に住み、一目で男を虜にする美貌に、女性も羨む抜群のスタイル。 腰下まで届く長いプラチナブロンドの髪とした深窓の令嬢。 プリンセス・アリスの名で知られる、天の位を極めた魔女。 しかし中身はけっこうお茶目で野次馬な性格をし、また気心の知れた相手には毒舌になることもしばしばある女性だ。
ここで、結社間の話になるが、現在王立工廠と賢人議会の関係は険悪な常態ではない。 その理由は、
あと、同盟時にカンピオーネであることを明かしており、このことを知っているのは賢人議会ではアリス・ルイーズ・オブ・ナヴァールとパトリシア・エリクソン、王立工廠ではアレクサンドル・ガスコインとサー・アイスマンの4人だけだ。 その時、正体を隠蔽するよう頼み、正体不明の7人目のカンピオーネが生まれた。
その時の同盟内容は、賢人議会は
結社間での対立はないが、姫様は今までの仕返しに、よく王立工廠に忍び込み悪戯をするようになった。 アレクからは野次馬姫と書いてアリス・ルイーズ・オブ・ナヴァールと呼ぶようになった。
「さらに、今回不味いのは、
「わかった、すぐにそちらへ向かう」
そう言って、オレは携帯を仕舞った。 隣を、見るとティナも話を聞いていた真剣な顔をしていた。
「ティナ、急いで帰ってしたくしたら、ハディに乗って王立工廠へ行くぞ」
「わかりました」
オレとティナは、駆け足で自宅へ帰った。
オレとティナが王立工廠に着いて1週間がたった。 着いた当初は、危うくコーンウォール一帯が呪詛に汚染された土地になるところだった。 姫様も姫様で、干渉した呪物により一時的に閉じ込められたりした。 そして、全ての呪物を解呪し終わった翌日、賢人議会からとんでもない報告が舞い込んできた。
「はぁ!? エリカ・ブランデッリが日本にゴルゴネイオンを持ち込んだぁ!?」
「はい、しかもその後すぐにアテナが草薙さまを襲い、戦闘不能にしたあと、ゴルゴネイオンを強奪、まつろわぬアテナになったそうです」
オレとティナが、王立工廠で呪物の解呪をしていた時に、そのようなことが日本で起こっていた。
「で、アテナはどうしたんだ」
「報告では互いの力尽き引き分けたそうですが、実際は草薙 護堂がアテナを見逃したそうです」
報告した姫様以外は呆然とした。 草薙 護堂はあえてアテナを放逐したという。 まつろわぬ神を放置するなど、いつ爆発するかも分からない爆弾を放置するようなものだ。
「それで今回の戦いの被害はどれくらい出たんですか?」
「・・・・・・浜離宮恩賜庭園の崩壊に、高層ビルの倒壊、首都高の落下などです」
「「「・・・・・・・・・」」」
姫様が言い淀んでから話した内容に、オレたちは呆然とした。
「幾らなんでも、それの被害は多すぎだろ・・・」
アレクですら、被害の大きさに眩暈がしたようだった。 オレとティナも無言で頷いて同意した。
「最初に会ったときは、平和主義者の様な振る舞いをしていたけど、蓋を開け見ればとんでもない暴れん坊のようだ」
「本当ですね。 しかし、この被害では正史編纂委員会は大慌てでしょうね」
「だな、過去の謝罪さえ出来ない出来ない組織には、丁度言いお仕置きだ。 これからも草薙 護堂の出す被害で胃の痛い思いをすればいい」
オレとティナの嬉しそうな様子に、アレクと姫様は引いたようだった。
余談だが、日本へ帰ってすぐ万里谷に今回の顛末を聞いてみたが、会話に集中できていないようで、ティナにちらちら視線を送っていたので何故か聞いてみると、アテナとティナがそっくりだったそうだ。 見た目で言えば、ティナの方が少し柔らかい感じで、髪の色も銀色が強めで、スタイルに関してはティナの方がいいそうだ。 草薙 護堂とエリカ・ブランデッィも同じ感想のようだ。 ティナは美人だが、まさか神とほぼ同じ容姿をしているとは思いもしなかった。
そして幾日かたったある日、我が家には変わったお客さんが訪れていた。
「久しぶりね、元気そうねリリィ」
「そちらこそ元気そうで何よりだティナ」
そう、この日訪れたお客さんはリリアナ・クラニチャールだった。
「しかし、いきなり来るなんて急なことね」
「・・・・・・・・・」
ティナの問いかけにリリアナは沈黙したままだった。
「今、私はヴォバン侯爵の騎士をしています」
「確か、リリィのおじいさまの意向だったかしら」
リリアナは静かに頷いた。 そしてティナに対して何か言おうとしては黙り込むを続けていた。 そして、意を決して話し出した。
「ヴォバン侯爵が、ここ日本でまつろわぬ神招来の儀を、再び行おうとしています」
「・・・・・・そう、侯爵が来日したのは知っていたから、まさかとは思っていたけど、まさかだったのね。 それで、リリィは侯爵にわたしを連れてくるように言われたの?」
「はい・・・」
「わかったわ、いずれお伺いしますって言っといて貰える」
リリアナはまさかの発言に眼を開いて驚いていた。 その後、一言二言話したあと、リリアナは帰っていった。
「ティナ、ケリを着けるか」
「ええ、ただし草薙 護堂が侯爵と戦ったあと乱入するつもりよ」
「そうか、じゃぁオレは仮面を付けてハディで送っていくよ」
「ありがとう」
そう言って、ティナはオレに口付けしてきた。
ヴォバン侯爵と戦っている草薙 護堂の戦い方は、なんと言うか豪快な戦い方と言う一言に尽きた。
一時退却した後に使った浜離宮恩賜庭園を崩壊させたと思われる力を躊躇いも無く使ったり、今も巨大な稲妻を周りの被害を考えずに使ったり、まぁまだ手加減して使えないようだ。
そして夜明け、ヴォバン侯爵が踵を返したところにティナの放った矢が、ヴォバン侯爵の足元に突き刺さった。
「なに!?」
「あら、約束をしていましたのに連れないですわね」
「誰だ!?」
ヴォバン侯爵は辺りに首を巡らしティナを探しているようだった。 ティナは草薙 護堂が戦っていた場所の後ろのビルの上に立っていた。 最初に見つけたのは万里谷だった。
「ティナさん!」
万里谷の声と同時に、ティナは飛翔の術で飛び立った。
「御機嫌よう、ヴォバン侯爵」
「誰だ」
「あら? そこ居るリリィを使ってわたしを呼び出そうとしたのではなくて?」
「貴様、ユスティーナ・レア・サーラスティか」
「儀式以来ですわね」
そう言って、ティナは優雅に一礼した。
「さて、後でお伺いすると言っておきましたが」
「ほぉ、ではお前がまつろわぬ神招来の儀を執り行うと言うのか?」
「ティナさん!?」
万里谷が悲鳴の様な声で叫んだ。
「あら、勘違いしているようですね。 わたしはヴォバン侯爵、あなたと戦いに来たんですが」
「あははは、あーははははは、魔女ごときがこのヴォバンに立ち向かおうなど片腹痛いわ!」
「あらあら、4年前の儀式のときに、従僕や魔眼を無力化されたのをお忘れで」
「ふん、あの時は儀式に使う巫女が死なぬよう、従僕も魔眼も加減したが、私と戦うと言うのであれば容赦はせん!」
「ふふふ、連戦で勝っても仕方ありませんので、明日の午前3時にここでお待ちしていますわ。」
そう言って、ティナは再び飛翔の術で舞い上がった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
わたしは、今夜の戦いに備えて準備をしていた。
以前、わたしの未熟な力で、何故従僕や魔眼を無効に出来たその理由は
元々、アストラル界へ行った場合、呪力で自身を覆わなければならないが、わたしと晃徳
わたしは戦装束に着替え、兄さんから貰った短剣のレーヴァンティンを身に着けた。
「ティナ準備はいい?」
「ええ、もう出来てるわ」
「じゃぁ、行こう。 ハディでておいで」
そう言って、晃徳は仮面を着け、足元に門を開きハディを呼び出した。
「ティナ」
わたしは晃徳の出した手を握り、晃徳の前に横座りで座った。
「ハディ!」
ハディは嘶くと空へ向かって駆け出した。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
少し時間は戻り、わたし、草薙さん、エリカさんが屋上で昼食を取っているときだった。 おもむろにエリカさんが話しかけてきた。
「祐理、聞きたいのだけど、4年前のヴォバン侯爵が行おうとしたまつろわぬ神招来の儀でなにがあったの。 表面上は、正体不明の7人目のカンピオーネが、儀式を無茶苦茶にしたのは知ってるけど、ユスティーナさんが何をしたのかまでは分からないのよ」
わたしは言うか言うまいか迷ったけど、正直答えることにした。
「当時、ティナさんは北欧の結社
あの時の会話を思い出し、同時にヴォバン侯爵から殺気も思い出し震えてしまった。
「万里谷、大丈夫か」
草薙さんがわたしを気遣ってくれました。
「ヴォバン侯爵は死せる従僕を出し、ティナさんを捕らえようとしたみたいなのですが、気が付いた時には従僕が倒れ消滅するときでした」
エリカさんは手を口に当て何か考えているようだった。
「その後、ソドムの瞳を使ったようなのですが、ティナさんから凄まじい呪力の波動放ちソドムの瞳を弾いたようでした。 そして、ヴォバン侯爵が狼を嗾けようとしたとき、7人目のカンピオーネが乱入し、あの方が召喚したと思われる女性たちにより、わたしたちは救出しました」
「そんなことになっていたのね。 7人目の権能も気になるけど、ユスティーナさんの力も脅威ね。 昨日のヴォバン侯爵からの会話でも分かったけど、手加減したとは言え、従僕や魔眼を無力化できる力は侮れないわね」
「はい」
「護堂、祐理、今日の夜、ユスティーナさんがどれだけ戦えるかきになるから、ユスティーナさんとヴォバン侯爵の戦いを見に行くわよ。 祐理、今夜迎えに行くから準備しておいて頂戴」
そう言った後、エリカさんは今までより真剣な顔つきになった。
「はっきり言って、ユスティーナさん、彼女をわたしは敵に回したくないのよ」
「エリカ、急にどうした、いつものお前らしくないぞ」
「彼女のことを調べてみて分かったんだけど、彼女は北欧の結社
「・・・・・・・・」
わたしは、エリカさんが語った内容を聞き、我が耳を疑いました。 ティナさんは自分のことを殆ど話さないため、そんなすごい人だとは知りませんでした。
「ただ気になるのが、何故彼女ほどの人物があの男に傅いているかが分からないのよ」
「あ、それは知っています。 丸田さんとティナさんは幼馴染で、両親が生まれたときに決めるた婚約者同士だそうです」
「ああ、そう言うことなのね。 と言うことは彼女をこちらに引き込むのは不可能か。 彼女ほどの戦力是非とも欲しかったのだけど。 彼女の実家を怒らせるわけにはいけないし、諦めるしかないわね」
「また、お前はそんな事を考えていたのか」
「あら、自陣の強化は必要なものよ」
そう言って、草薙さんはエリカさんに文句を言っていました。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
深夜、晃徳とハディに乗り、昨日と同じ広場に着くとそこにはヴォバン侯爵以外に祐理、リリィ、草薙 護堂、エリカ・ブランデッリ、以前会った正史編纂委員会の男がいました。
「久しぶりだな、ヴォバン侯爵」
「貴様はあの時の・・・」
わたしを乗せてきた晃徳を見て、周りは慌てだした。
「さて、ヴォバン侯爵戦いを始める前にルールを決めておきましょう」
「ルールだと」
わたしの言い出したことに、ヴォバン侯爵は訝しげな声を上げた。
「ええ、はっきり言って権能は使って構いませんが、貴方は灰から復活する権能をお持ちだそうで、それを使われると泥沼の戦いになります。 ヴォバン侯爵、貴方が貴方の勝利条件はわたしを殺すこと。 わたしの勝利条件は貴方を一度殺すこと。 と言うのはどうかしら」
「あはははは、ただの魔女がわたしに勝てるとは思えんからな、そのような無茶な賭けを言い出すとは面白い、乗ってやろう」
「では、合図の方、お願いします」
わたしは晃徳の方を向き、畏まった言い方で合図をお願いした。
「この槍が地面に着いたら始まりだ」
そう言って、晃徳はグングニルを空に向けて投げました。
わたしはグングニルが地面に着いたと同時に駆け出し、ヴォバン侯爵も狼に変身し、無数の狼を召喚しました。 同時に左手の指輪からイチイバルを呼び出し、ヴォバン侯爵に向かって無数の矢を射掛けました。
「ほぉ、我が猟犬を狩り尽くすか」
「この矢、貴方も味わいますか?」
そう言って、わたしはヴォバン侯爵に向かって連続で矢を射掛けました。
「このような子供騙し・・・グオー、なんだこの矢は、我が身を切り裂いてくる力は一体・・・」
流石にイチイバルの力は、ヴォバン侯爵の権能にも効果があるようだ。 この弓、神弓イチイバルは北欧神話の狩猟の神ウルの力の宿った弓だ。 この弓は特に、動物(主に鳥類と哺乳類)の力を持つ権能に対して強い力を持っている。
「ぐ、まさか我が狼を切り裂くとは、ではこれではどうだ」
そう言って、ヴォバン侯爵は死せる従僕を呼び出した。
「いくら貴様が聖騎士級の力を持っていようと、大騎士級の力を持つこれだけの従僕を滅ぼすことは出来まい」
ヴォバン侯爵はわたしを見下した目で見ていました。 過去の儀式でしたあの目を思い出し、わたしは後ろ腰からレーヴァティンを引き抜きました。
「まさか、従僕相手にそのような短剣で立ち向かうとでも言うのか」
「ええ、そのまさかですが、これを見てまだその余裕がありますか?」
わたしはレーヴァティンを空高く放り投げた。
「レーヴァティン、汝に戦場を委ねる。 怒りに燃えてうずくまる者、その爪で引き裂き、その牙で噛み砕け、その息で燃やし尽くせ、我が声に答え招来せよ!」
レーヴァティンを中心に球状の魔方陣が構築され、その中に黒い影が産まれた。 その影は魔方陣に爪を立て、魔方陣を切り裂き現れたの10mはあろうかという竜だった。
「なんだと!?」
わたしは竜の乗り命令した。
「ブラッドベイン、従僕を切り裂き、噛み砕き、焼き尽くしなさい」
「ガァァアアアァァァ・・・・・・」
「さぁ、幕引きの時間です」
そう言ってわたしは、込めれるだけ呪力を込めて矢と放った。 放った矢は巨大な一筋の光となりヴォバン侯爵を覆い尽くした。
「グォォォオオオ・・・」
光が消えると、そこにはヴォバン侯爵が立っていた。
「まさか、魔女如きに遅れを取るとは、思いもしなかったぞ。」
そう言って、ヴォバン侯爵は顔を上げた。 その顔はどこか楽しいそうだった。
「良くぞ、このヴォバンを一度でも倒して見せた、そして、良くぞ我が無聊を慰めて見せた誉めてやるぞ」
「そう」
「今回の勝ちは譲ってやろう、しかし、次に見えるときはそこに居る7人目ともども容赦なく刈り取ってやる。 覚えておくがいい」
ヴォバン侯爵は風に巻かれたと思うと、その場か消えていた。
わたしは晃徳の方を見ると、すでにハディの準備をしていたようで、駆け寄ると引き上げてくれました。 晃徳は、周りの声に何にも言わずにハディを翔らせていきました。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
わたしは、昨日の広場でティナさんの到着を待っていました。 この場にはすでにヴォバン侯爵も着ており空気が張り詰めていました。
「来たか」
そう言って、ヴォバン侯爵は顔を上げました。 わたしもヴォバン侯爵が見た方を見ると、空を駆けてくる馬が見えました。 その姿は4年前儀式の際に見た姿でした。 リリアナさんを見ると目を開き驚いた顔押していました。 多分わたしも同じ顔をしていたんだと思います。 まさかこの場に正体不明の7人目のカンピオーネが来るとは露とも思いませんでした。
「久しぶりだな、ヴォバン侯爵」
「貴様はあの時の・・・」
ヴォバン侯爵は7人目の方を睨んでいました。
「さて、ヴォバン侯爵戦いを始める前にルールを決めておきましょう」
「ルールだと」
そんな空気を物ともしないでティナさんが話し出しまた。
「ええ、はっきり言って権能は使って構いませんが、貴方は灰から復活する権能をお持ちだそうで、それを使われると泥沼の戦いになります。 ヴォバン侯爵、貴方が貴方の勝利条件はわたしを殺すこと。 わたしの勝利条件は貴方を一度殺すこと。 と言うのはどうかしら」
「あはははは、ただの魔女がわたしに勝てるとは思えんからな、そのような無茶な賭けを言い出すとは面白い、乗ってやろう」
「では、合図の方、お願いします」
ティナさんが7人目の方に合図をお願いしていました。
「この槍が地面に着いたら始まりだ」
そう言って、7人目の方が持っていた槍を空へ向かって投げたとき、わたしに託宣が降りました。 しかし、わたしは託宣の内容を頭の片隅で聞きながら、ティナさんの闘いを見ていました。
二人の戦いは凄まじいものでした。
ヴォバン侯爵がアポロンの権能を使えば、ティナさんはどうやったかは分かりませんが、無数の矢で狼を殲滅し、矢でヴォバン侯爵にダメージを与えていきました。 矢の方は分かりませんでしたが、弓の方にはまたもや託宣が降りました。 ここまで、連続で託宣が降りるということは、神々の力をかなり持つ神器のようです。
アポロンでは勝負にならないと分かると、次はオシリスの権能で死せる従僕を呼び出しました。 その数はエリカさんとリリアナさんが戦っていた時の倍近い人数でした。 今回はリリアナさんの方に託宣が降りました。 ティナさんが短剣を天に投げると、そこには不可思議な魔方陣が描かれ、そこから漆黒の鱗を持つ巨竜が現れました。
巨竜が従僕の相手をしている隣では、ティナさんが光り輝く矢を放ち、光がヴォバン侯爵を飲み込んでいました。
その後、ヴォバン侯爵がティナさんと話した後、風に巻かれ消えていきました。
そしてティナさんの方を見ると、甘粕さんやエリカさんが話しかけようとしましたが、無視して7人目の方と馬に乗って空へと翔けていきました。
わたしは、託宣が降りた内容を思い返し頭の中で整理していると、エリカさんが話しかけてきました。
「祐理とリリィに託宣が降りたみたいだけど、教えてもらえるかしら」
わたしとリリアナさんの恩人ですが、エリカさんは少しでも相手のことを知ろうとしていました。 わたしとリリアナさんは顔を見合わせた後、託宣の内容を話し出しました。
「最初わたしが見たのは、泉の水、自身を槍で貫いている姿、片目の魔術師、そして嵐の神」
「それって・・・」
エリカさんは託宣の内容で正体が分かったようでした。
「はい、北欧神話の主神オーディンの権能です」
「八本足の軍馬はスレイプニル、槍はグングニルかしら」
エリカさんは少し考えてからそう答えた。
「そうです」
「あと、ティナさんが持っていた弓は、北欧神話の光の神ウルの弓のようです」
「な!? あの力から神器だとは思っていたけど、まさしく神の武器だったなんて!?」
わたしも、驚きました。 託宣を元に霊視をすると神の武器とは思いもしませんでした。
「エリカ、驚いているのはまだあるぞ」
今度はリリアナさんに降りた託宣の話になりました。
「まさかあの短剣も?」
「ああ、あれは魔剣レーヴァティンそのもだ」
「なんですって!?」
これにはわたしも更に驚きました。 まさか世界を焼き尽くすと言われている物だとは思いもよりませんでした。
「あの時呼び出された竜は、言霊から見てもニーズヘッグだろうな」
「ほぼ神と言っても過言ではない神獣を呼び出すなんて・・・」
エリカさんも驚きつかれたのか、言葉少なくなっていました。
わたしたちは、ティナさんがこれほどの物を持っているとは思いもよりませんでしたが、このとき本当に肝心なことに気が付いていませんでした。
ティナが幼少の身で、何故ヴォバン侯爵の権能を避けれたというと、幽遊白書で鞍馬が酎たちにした訓練の神様版です。
神の指導+神の食事+十分な睡眠(抱き枕あり)で、それでも11歳当時で手加減ありなら何とか魔眼をキャンセルできるくらいです。
従僕に勝てたのも、ヴォバン侯爵が殺すのではなく、捕獲するために手加減したので勝てたようなものです。
一応、分かり辛い複線で、アンドフリームニルが出たのはこのためです。
ここでは言ってませんが、エイルからも解呪の法を学んでいるのもここで生きてます。
エイルの説明で「エイルは医療従事者の後援者となっていた。彼女は、肉体的な治療だけではなく、精神、感情、霊的な治療も行っていたとされる。彼女は、訪ねてくる全ての女性に治療を施したが、秘術を授けたのは女性だけだった。」って乗せてます。