カンピオーネ!---譲られた神殺しの力---   作:auslese

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原作主人公登場、ただし空気と化しています。

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11話 会合

 

 「ん・・・」

 

 カーテンの間から差し込んできた日の光を感じ眼を覚ました。

 

 「んーーーーーーーはぁ・・・・」

 

 ベットから起き上がり、時計を見ると6時を指したところだった。 オレは隣に寝ているティナの肩を揺すった。

 

 「ティナ起きて」

 

 「んん・・・・・・」

 

 ティナは、布団の中でもぞもぞしてから頭を出した。

 

 「んー」

 

 オレはティナを抱き起こし、そっとキスを落とした。 誘拐事件の後、朝起きると必ずせがむようになったことだ。

 

 「おはよ、ティナ」

 

 「晃徳、おはよ」

 

 そう言って、布団から出た俺たちの姿は一糸纏わぬ姿だった。 去年の誕生日にお互いの初めてを送りあったからだ。 それと同時に、ティナには口移しで詩の密酒を飲ませた。 カンピオーネは、寿命が長命になり老化が遅くなる。 だから、同じ寿命になるために呪力を強化して、老化を止めることにしたのだ。 お陰で、副次的にイチイバルが大幅に強化されてしまい、とんでもなくなったのはいい思い出・・・かな?

 

 「朝ごはんの支度してくるね」

 

 「ああ、オレは洗濯物を干しておくよ」

 

 オレは洗面所にある洗濯機のところに、ティナは台所へと歩いていった。

 

 今居るのは、日本にある死んだ両親の家だ。 両親との思い出が残るこの家で過ごしたいために、高校進学を機に日本の高校に受験したからだ。 そんなことを考えていると、台所からティナの声が聞こえてきた。

 

 「晃徳ー、ご飯できたわよー」

 

 「いま、いくー」

 

 オレはティナの待つ台所へと向かった。

 

 

 

 

 

 オレとティナが通っているのは私立城楠学院高等部だ。 ここはティナの文通友達の万里谷 祐理も通っているところだ。 両親の死後、フィンランドに居たため日本の高校に詳しくなかったところ、万里谷 祐理から薦められてこの高校に入学した。 クラスも万里谷 祐理と同じ1年6組だ。 入学早々、ティナの美貌に数多の男子生徒が告白してきたが、フラれたと言うことは記憶に新しい。 そんなことを考えていると、後ろから聞き慣れた声が聞こえてきた。

 

 「丸田さん、ティナさん、おはようございます」

 

 「おはよう、万里谷」 

 

 「おはよう、祐理」

 

 丁度、今考えていた万里谷 祐理が後ろから挨拶を掛けてきた。 万里谷 祐理、亜麻色の髪と瞳をした、おっとりとしたお嬢様だが筋金入りの逞しさを持ち、責任感が強く真面目な性格をした美少女。 ヴォパン侯爵が、4年前にしたまつろわぬ神招来の儀の為に、日本から招致された女性だ。 その時、一緒に知り合ったリリアナ・クラニチャールと共に、ティナの文通友達になった。

 

 「ティナさん、聞きましたか?」

 

 「何を?」

 

 「新たに8人目の王が日本人で誕生したそうなんです」

 

 「なんだって!?」「何ですって!?」

 

 これにはオレもティナも声を揃えて驚いた。

 

 「それも、どうやらうちの学校の人なんだそうです」

 

 「「・・・・・・・・・」」

 

 オレとティナは、声すら出さず呆然としていた。 まさか日本、それもうちの学校で、カンピオーネが誕生するとは露にも思わなかった。

 

 「それでなんですが、一人でお会いするのは心細いので、お二人にも放課後一緒に立ち会って頂ければ、と声を掛けたんですが・・・」

 

 万里谷はすまなそうに声を掛けてきた。 どうも一人でカンピオーネに会うのは不安なようだ。

 

 「もしかして委員会絡み?」

 

 「はい・・・」

 

 「答えは分かっているんでしょ?」

 

 「・・・はい」

 

 ティナがオレに目配りしてくる。 今回は、流石に事態が自体だけに、誰がなったか分からなければ対処の仕様がないと思い、頷き返した。

 

 「ただし、条件があるわ」

 

 「その辺は分かってます。 その方と会うのは、私と丸田さんとティナさんだけと言ってあります。 委員会の人にも、来ないでくださいと言っておきました」

 

 「分かったわ。 じゃぁ、放課後七雄神社で会いましょう」

 

 そう言って、オレたちは教室に入って行った。

 

 

 

 

 

 授業が終わり、一旦家に帰っている途中、ティナとの他愛も無い話の中でカンピオーネについて話しかけてきた。

 

 「晃徳、次誕生したカンピオーネ誰だと思う?」

 

 「おそらく、草薙 護堂だろうな」

 

 「やっぱり?」

 

 今日、授業の合間の休み時間、トイレに行った時に草薙 護堂とすれ違ったが、彼は呪力を隠そうともしていないため、カンピオーネであることに気が付いた。

 

 「祐理経由だから、おそらく『官』に着くと思うけど、どうしょう?」

 

 「まぁ、それは万里谷と一緒に会って、草薙の性格を判断してから動けばいいさ。 排除するしないにしても、敵対行動さえを取らなければどうでもいいさ。 さぁ、スーパーで食材を買ってから帰ろうか」

 

 「はい。 今日は豚の合挽き肉が安いので、晃徳が大好きなカーリカーリレートですよ」 

 

 「やった!」

 

 ティナと今晩の晩御飯の話をしながらスーパーへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 家に戻り着替えた後、万里谷との約束通り七雄神社にきたら、丁度万里谷が巫女衣装に着替えて出てきたところだった。

 

 「お、タイミングは丁度良かったかな?」 

 

 「あ、丸田さん」

 

 「あんたたちは?」

 

 草薙 護堂は、オレたちに問いかけてきた。

 

 「ああ、オレたちは自己紹介してなかったな。 オレは丸田 晃徳。 北欧の結社薔薇十字(ローゼンクロイツ)に席を置く術者だ」

 

 「わたしはユスティーナ・レア・サーラスティ。 晃徳と同じく、北欧の結社薔薇十字(ローゼンクロイツ)に席を置く術者にして、晃徳の婚約者よ」

 

 最初はティナの美貌に見蕩れていたが、婚約者というところで草薙 護堂は驚いた様子だった。

 

 「・・・・・・万里谷、ここに委員会の人間は居ないんだよな?」

 

 「え、ええ・・・」

 

 万里谷は、オレの顔つきが変わったことに気付き慌てていた。 オレは位置を特定し、ティナにイメージを送った。

 

 「ティナ」

 

 「分かっているわ」

 

 「な!?」

 

 ティナは、返事と同時に左手にイチイバルを召喚し矢を放った。 矢は隠れていた矢は、不審者の顔のすぐ横に突き刺さった。  突然のことに、草薙 護堂は着いていけず、呆然としていた。 が、突然声を荒げてきた。

 

 「サーラスティさん、いきなりなにをするんですか!? と言うか、その弓はどこから出したんですか!?」

 

 「いえ、今回の会合に呼ばれていない、招かれざる客が来たようなので脅しただけですよ」

 

 草薙 護堂が、ティナに詰め寄ろうとした時、不審者がこちらにやって来た。 

 

 「いやはや、流石は北欧の弓姫(きゅうき)ユスティーナ・レア・サーラスティ殿、噂に違わぬ腕前ですな。 そちらにいらっしゃるのは婚約者の丸田 晃徳殿で」

 

  その時、万里谷が慌ててこちらに駆け寄ってきた。

 

 「甘粕さん! 今日は、丸田さんたちが帰ってからくると言っていたじゃないんですか!」

 

 「いえいえ、万里谷さんが王と会うと聞いて、心配で早く来てしました」

 

 甘粕と名乗った男は万里谷に対して言い訳をした後、こちらに対して慇懃に礼をした。

 

 「初めまして、正史編纂委員会所属、甘粕 冬馬と申します。 ご高名なお二方に会えて光栄でございます」

 

 「で、その『官』の犬が約束を破ってまで来て、何のようだ」

 

 「いや、そのような身も蓋もない言いようどうにかなりませんか、はい」

 

 「オレの『官』嫌いを知っているんなら、当たり前の反応だろ」

 

 オレは不機嫌に甘粕 冬馬に答えた。 オレはティナに目配りした後、万里谷に話しかけてた。

 

 「万里谷、オレたちは帰るよ」

 

 「あ、待ってください。 丸田さん、ティナさん、本当に申し訳ありませんでした。」

 

 そう言って万里谷は、オレたちに駆け寄り深く頭を下げて謝罪してきた。 自分が悪くないと分かっていても、ここまで真摯に謝罪できる娘は珍しいよ。 オレとティナは顔を見合わせ、苦笑した。

 

 「いいよ、万里谷は悪くない」

 

 「そうよ、祐理は悪くないわ。 また明日学校で、ね」

 

 「はい、では明日」

 

 ティナがウインクをして別れを告げると、万里谷はほっと顔をして返事をした。

 

 

 

 

 

  ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 丸田さんたちが帰った後、甘粕さんが草薙さんにエリカ・ブランデッリについて話していたが、わたしは丸田さんとティナさんのことを考えていました。

 

 ティナさんとは、4年ほど前にヴォパン侯爵がまつろわぬ神招来の儀の時に、リリアナさんと一緒に知り合い、それ以降文通友達をさせていただいています。 リリアナさんのこともティナさん経由で色々聞き及んでいます。

 

 ティナさんと文通していて聞いたのですが、丸田さんはフィンランドに行く以前は、日本に住んで居たそうです。 ご両親は『民』で有名な術者だったそうですが、七年ほど前に事故で亡くなったそうです。

 

 丸田さんの『官』嫌いは、フィンランドに居るときにも有名でした。 日本の『官』に携わる方が、呪物の解呪を依頼されたそうですが、取り付く暇も無く断られたそうです。

 

 そんな丸田さんですが、ティナさん経由の文通で知ったのですが、組織として『官』が嫌いで、ティナさんが間に入り、個人的にだったら大丈夫だそうです。

 

 そんな事を考えていると、甘粕さんと草薙さんの話が終わったようで、草薙さんは帰っていきました。 わたしは、甘粕さんに問いかけました。

 

 「甘粕さん、何故あんなタイミングでいらっしゃったんですか」

 

 「いえ、上の者が、委員会を差し置いて他の組織がカンピオーネに会うと分かると、強引に割り込ませまして。 役所勤めの弱いところで断れなかったのです」

 

 流石に甘粕さんも、もし分けなく思うのか反省した顔をしてました。 その後、真面目な顔をして委員会の考えを教えてくれました。

 

 「どうも委員会の上の者は、丸田さんに後ろ暗いことがあるようで、草薙さんを丸田さんに近づけたくないようなのです」

 

 「後ろ暗いことですか?」

 

 「はい、その辺は馨さんにも調べるように言われましたが、なかなか進展しなていないので」

 

 「そうですか」

 

 「調査の方が進みました、お教えしますよ」

 

 そう言って、甘粕さんは帰っていきました。

 

 

 

 

 

  ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 私は部屋の扉をノックして、部屋の主の返事を待った。

 

 「はい、開いてるよ」

 

 「失礼します」

 

 部屋の中央のデスクには、高校の学生服を着た少女が座っていた。 彼女こそ、ここ正史編纂委員会東京分室室長、沙耶宮馨(さやのみやかおる)だ。

 

 「で、甘粕さん草薙さんの反応はどうだった?」

 

 「どうも、草薙さんはエリカ・ブランデッリを持て余しているように見受けられました」

 

 「なるほど、ではこちらの付け入る隙はあるんだね」

 

 「そのようですな」

 

 上司の問いに調べるように言われていた内容を答える。

 

 「それで、もう一組の方は?」

 

 「それはもう、けんもほろろに拒否されましたよ。 いきなり矢を射掛けられるとは思いませんでした」

 

 「それはそれはご愁傷様」 

 

 沙耶宮馨は笑顔で答えた。

 

 「分かっていて、送りましたね」

 

 「もちろん。 でもね、あれほどの人材を外国の結社に取られているのは勿体無いからね」

 

 「まあ確かに、あの北欧の弓姫が傅くほどの人物ですから」

 

 「甘粕さんは、丸田 晃徳と委員会の内偵を進めておいて」

 

 「はい、万里谷さんにも、何故委員会が丸田さんを疎むのか教えて欲しいと頼まれていますので」

 

 この時、気楽に調べようとした内容が、日本の『官』の陣営に大きな衝撃をもたらすとは、思いもしなかった。

 

 

 

 

 

 




実は祐理が主人公に近い話でした。

あと、沙耶宮と甘粕の会話が事件と繋がって行きます。

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