カンピオーネ!---譲られた神殺しの力--- 作:auslese
原作開始前にキャラ説を入れて原作スタートとなります。
僕はティナの救出し、ヴォパン侯爵とサルバトーレを退けた後、一路モスクワ方面へ飛び立った。 直接フィンランドに向かっては僕の正体がばれるおそれがあるからだ。 ハディに乗っている間は、外気温を気にしなくても一定の温度に保たれるため、古城→モスクワ→フィンランドと北極を経由して帰った。 そしてエル義父さんの家の近くに着くと仮面を外し、ハディを普通の馬に偽装させ、屋敷の玄関に向かった。 僕が、玄関に着くと同時に扉かが開きティナが飛び出してきた。
「晃徳ーー!」
「うわっ!?」
咄嗟にティナを抱きしめ、転ばないようにその場一回転して勢い殺した。
「あきのり・・・」
よく見ると、ティナが僕の胸に顔を押し付け、声を殺して泣いているのが分かった。 僕は、ティナが泣きやむまでティナを抱きしめ頭を撫で続けた。
「パパが晃徳がカンピオーネになったて・・・」
「聞いたんだねティナ、エル義父さんはどこに居るの? そこで話すから」
「うん、パパは書斎に居るわ」
「わかった、いこ」
僕は、ティナの手を引きながらエル義父さんの待つ書斎へと向かった。
僕とティナが書斎に入ると、エル義父さんが呪具に刻まれたH(ハガル:正確にはHの中央の横棒が少し右斜め下に傾いたもの)のルーンを使い書斎に結界を敷いた。
「さて、晃徳。 どう言う結果になったか教えてもらえるかい」
「うん」
僕はティナ救出の際の経緯を話した。
「では、ロキの仮面で正体は隠したままなんだね」
「うん、ここ帰ってくるルートも、西に行ってから北極を経由して帰ってきたから、バレてないと思う」
「そうか」
エル義父さんはほっとしたような顔をした。
「あ! エル義父さん、ウル先生に呼ばれているのでティナが無事だった報告も兼ねて
「そう言えば、報告がまだだったな。 わかった挨拶したら戻って来なさい。 今後の方針を決めたいからね」
「はい、ティナ、いこ」
「うん」
僕はティナを連れて門のある裏庭へ駆けていった。
門を抜けると、すぐの場所にウル先生が待っていた。
「ウル先生、無事ティナを助け出せました」
「ご心配をお掛けしました」
僕の報告と共にティナも頭を下げ、無事の報告をした。
「うむ」
ウル先生は鷹揚に頷くと僕に目配りしてきた。 僕は、先生とロキ兄ちゃんの経緯をティナに話した。
「そんな・・・先生・・・ロキ兄さん・・・・・・」
ティナはその場に泣き崩れた。 僕はティナを抱きしめた。
「先生は予見で僕とティナが、あの儀式上から戻って来れないことを知っていたんだ」
「・・・・・・・・・」
ティナは目を見開き、声もなく呆然としてた。
「ティナ、先生たちは僕にティナを助ける力を最後にくれたんだ。 僕は、本当はカンピオーネになるつもりなんて無かったんだけど、ティナが居なくなる方が耐えられなかった。 だから、これからは僕がティナを護るから」
「晃徳・・・・・・」
「ティナ・・・・・・」
僕を見上げるティナの頬を撫でて、そっと唇を重ねた。 僕とティナがしばらく抱きあっていると、ウル先生の咳払いの音が聞こえ、急いで僕とティナは離れた。
「仲睦まじいのは良いが人目も気にしなさい」
僕とティナは仲良くウル先生に叱られた。
ウル先生のお叱りが一段落したところで、ウル先生が自分のことをティナに話し出した。 ティナは、最初何を言っているのか分からない様子だったが、話が進むにつれ目に涙が浮かび上がってきた。 ティナは先生よりどちらかというとウル先生に懐いていた。 その様子は祖父と孫に近い状態だった。
「ウル先生まで・・・・・・」
「ティナ許せ」
ティナがウル先生の足にしがみ付き声を上げて泣き出した。 僕は、ウル先生にしがみ付いているティナの頭を無言で撫で続けていた。 暫くしてティナが泣き終わったあと、ウル先生が一本の弓を取り出した。
「ティナよ、ワシがここを去る前にこの弓をお前に渡そう」
「それは・・・・・・」
ティナはウル先生が取り出した弓をじっと見詰めていた。
「その弓はイチイバル。 呪力を矢として打ち出す弓だ」
「ウル先生・・・この弓、まるで神器みたいな力を感じます」
ティナの眼が蒼く輝き霊視が発動していた。
「うむ、正確には神弓イチイバル。 ワシが今までに作り出した中で最高の弓だ」
「神弓・・・イチイバル・・・・・・」
「この弓で打ち出された矢は、相手の対呪防御を無効にする効果がある」
「!?」
今度こそティナは言葉を失った。 ある意味、神を殺すことの出来る武器を手に入れた状態だからだ。
「カンピオーネの力は強大だ。 しかし、晃徳一人で出来ることなど限界がある。 だからティナよ、常に晃徳の隣で居れるようにその弓を託す。」
「はい」
ティナはウル先生からイチイバルを受け取った。
「確かに託したぞ。 それとこれは、オーディン様とロキとワシからの贈り物じゃ」
そう言って、僕に小さな袋を渡した。 袋の大きさは10cm四方の大きさだった。 僕とティナは、袋を開け中身を取り出して固まった。 袋から出てきた小さな箱に「マリッジリング」と書かれていたためだ。 字面を見るとロキ兄ちゃんの文字だった。
「ったく、ロキ兄ちゃんはどこまでも、僕とティナをからかうのが好きなんだから・・・でも、ありがとう、ロキ兄ちゃん」
何となくロキ兄ちゃんが、無邪気に笑った顔が脳裏を過ぎった。
「ティナ」
ティナの顔はまだ真っ赤で、呼んだことにも気付いていなかった。 僕はティナの左手を取って指輪を薬指にそっと差し込んだ。 指輪を入れると気付いたのかティなの顔が更に赤くなった
「ティナも付けてくれる?」
そう言って僕は左手を差し出した。 多分、今度は僕の顔も真っ赤だと思う。 ティナは口をパクパクした後、意を決して僕の薬指に指輪を差し込んだ。
「ほほほほ、ワシ事ウルがそなたたちの婚姻を祝福しよう。 互いを愛し、慈しみ、共にすごすことを南の太陽や
「「はい」」
「うむ、マリッジリングはオーディン様とロキの置き見上げじゃが、ワシからはこれを送ろう」
そう言って、金色の指輪を取り出した。
「それは、晃徳のグングニルとティナのイチイバルを納める為の指輪じゃ。 晃徳は権能じゃから何時でも取り出せるが、ティナはそうはいかんからな。 ティナに送るのなら晃徳にも送らんと釣り合いが取れんからの。 この指輪に各々の武器を容れるイメージをすると収まるようになっておる」
僕とティナは言われた通り、グングニルとイチイバルを容れるイメージをした。 するとグングニルとイチイバルが一瞬で消えた。
「その指輪は、晃徳が右手の人差し指、ティナは左手の人差し指に着け、武器をイメージするとそれぞれの手の中に出てくるようになっておる」
「ウル先生、ありがとう」
「なに気にせんでよい、ワシはお前たちを孫のように思っておったのじゃからな。 祖父からの最後の贈り物じゃ」
そう言って、ウル先生は僕とティナの頭を撫でてくれた。 しかし、撫でてくれているウル先生の手の感触が、可笑しいことに僕たちは気が付いた。
「ウル先生・・・」
「なに、時間じゃ。 晃徳、ティナよ。 お前たちに会え、本当に楽しかったぞ。 いつかまた降臨する時、お主たちが生きておれば会いたいものじゃ。 では、さらばじゃ」
ウル先生の輪郭がだんだんぼやけていき、光の粒子となって天に昇って行った。
僕とティナが、ウル先生が消えた空を見ていると、後ろから残った
「ウルとの別れも終わったようじゃな」
代表して教授が話しかけてきた。
「うん」
「ここに来て、皆お前たちと共に過ごし、楽しい日々を過ごしたのじゃ。 お前たちがあまり悲しみすぎると、あの3人も心配するであろう。」
「うん」
僕は涙を拭き、教授たちの方を振り向いた。
「これからのことじゃが、ワシら3人で話し合った結果、ヴァルハラにある水鏡を使いティナの父親の結社の後援をしようと思う」
「そんなこと出来るの?」
「なに前例が無い訳はないからの。 以後、ティナの父親がトップでワシらが助言者という形を取る」
あ、初めての試みじゃないんだ。 どこかの結社も同じ事をしているんだ。
「晃徳がカンピオーネになったことで、世情が一気に加速するぞ。 ティナの父親と綿密な連携が全てを分かつ可能性がある。 しっかりすんじゃぞ」
「「はい!」」
僕とティナはそう言って、現世への門を潜ったのだった。
僕がカンピオーネになって4年後、新たなカンピオーネの出現により新たな物語が生まれるのであった。
ウル外界。そしてオーディンとロキの悪戯でした。
ついに原作開始ですが、舞台は日本に戻ります。