没ネタ集   作:亜莉守

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一言、ひぐらしめいた物を書きたかった。後悔はしている


ノーマルエンドの夢を見たい

 

―――― バットエンドの夢を見た。

 

 前回は最後の最後近くまで行けたのに、最終的に高城先輩に負けて姫路さんは転校、二年生はクラスの基本がDからFのクラスになって、AやBの人たちがバタバタと風邪で倒れた。そのことが噂に噂を呼んで文月学園は実質的に解体、普通の学校になったのはいいけど生徒のモラルの低さとかが問題視されるようになった。結局、卒業までどうにかこぎつけられたけど文月学園の生徒であるってレッテルを張られるようになった。そして、卒業式のあの日、僕は試験召喚システムに飲み込まれた。

「……うん、またこれか」

 見上げればいつも見てきた天井、体を起こしてみれば見慣れた部屋、そして見慣れたセーラー服、毎回思うけどなんでセーラー服が吊ってあるのさ。僕は普通に男なのに。セーラー服を無視して、クローゼットに入っている制服に着替えて、部屋の外へ出ようとする。

「さて、今回はどんなとこなんだろう」

 色んな夢を見た。例えば全員の性別が違ったり、年齢が違ったり、立場が違ったり、挙句の果てには知らない人が乱入してくるときもあった。大体は僕が死ぬか召喚システムに飲まれるかして終わるけど。

 ドアを開けてみたら、知らない人がいた。いや、違う。認めたくもないけど、僕は割とよく知っている。身長こそ違えど、見覚えのある髪型、見覚えのある顔、見覚えのある学ラン、見覚えのある獣の耳と尻尾。

「や、おはよう ご主人」

 そこには僕の召喚獣が居た。何故かオカルト召喚獣の騒動と同じ等身大サイズで

「えっと、なんで」

 このパターンは始めてだよ。ポカンとしているとまあ座ってと召喚獣に促される。あ、うんと間抜けな返事をしながら僕は席へと着いた。

「とりあえず もう一回言うけどおはよう、ご主人」

「う、うん おはよう?」

 つっかえつっかえしながら僕は返事をした。いや、いや 本当になんで。

「まあ、ご主人が混乱するのも無理ないよね。ぼくは貴方の召喚獣だよ」

 そこはわかった。もう、十分にわかった。でも、何でだよ。僕の様子を見ていた召喚獣が不機嫌そうに尻尾を揺らす。うわ、こんな動きできたんだ。

「えー、なんかノリ悪いなぁ。ご主人の性格考えたら普通に驚いてくれそうなのに」

「まず自分の召喚獣が召喚フィールドも無いのに召喚されている時点でもう大パニックなんだけど」

 そうなの? と首を傾げる召喚獣、そうでしょ! って言いたくなったのは悪くない。召喚獣が納得したように頷いた。

「ご主人、今回で1000回目だもんね。図太くなって当然か」

「1000回って……」

 まさかとは思うけど、夢を繰り返した回数?! そこまでやってたのか。

「まあね、今のご主人の意識がどこからスタートしてるのかは不明だけど総計回数は999回たまに文月学園にやってこないで他の学校で過ごしている数も含めているからとんでもない数になっているみないだし」

「他の学校?」

 生憎だけど僕には文月学園以外の記憶はない。色々と変わったりもする世界だったけど、そこだけは変わらないはずだ。そう召喚獣に伝えたら、眉間にしわを寄せ始めた。

「あー、やっぱご主人に記憶は無しか。引き継いじゃったらキャパオーバー扱いだったのかな。ぼくにだけ引き継げてる辺りはもう嫌味でしかないなぁ」

「つかぬことを聞くけど、全部覚えてるの」

 もう僕なんて詳しいこと忘れかかってるんだけど

「うん、だってぼくの本体パソコンじゃないか忘れるわけがないよ。デリートも効かない特殊仕様だから大丈夫!」

 サムズアップされても?! 地味にツッコミが追いつかないのは気のせいなのだろうか。

「とりあえずさ、ご主人が苦しそうな顔するのはもう見たくない。だからぼくはここへ来た。結構大変だったんだよ? 優先順位を藤堂からご主人に切り替えたりとか、システム全部だまくらかしてここに特殊フィールド張ったりとか、まあ色々とね」

 だから、と召喚獣は続けた。

「ご主人、ご主人が幸せになれる世界を一緒に作ろう? ぼくの力なんてご主人の力に比べたら酷いものだけど、それでもご主人の力になりたいだめ……かな」

 なんかこう、胸にこみ上げてくるものがあった。記憶のある限り、僕は誰にも助けを求めなかったし、求めようとすらしてこなかった。まあ、ちょっとした意地みたいなものも混ざっていたのだろう。だけど、目の前で僕のためと言ってくれた彼をみてもうちょっとだけ頑張ろうかなって思った。

 

 これは僕と僕に関わった人の絆の話。

 

――― ノーマルエンドの夢を見たい。

 





最初に書いた通り、ただ単にひぐらしっぽいの書きたかっただけです。

11巻より先がないのでバットエンドを想像した結果、ああなった。姫路さん転校が多分、明久には一番きつい気がした。

他の学校は各自どうぞご自由に補填してください。基本は平穏かなってイメージがある。

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