IS/勇者王ガオガイガー─白き翼の戦士と勇気ある者―   作:オウガ・Ω

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天高くそびえる山…酸素は限りなく薄く、人を寄せ付けない神聖な空気が満ち吹雪が舞う頂に巨大な影

太古の昔、人類が誕生する以前に生まれ溶ける事なき《永久氷壁》から超常的、いや自然の力から生まれたような獅子を象った氷像…その姿からは荘厳な気が溢れ出している

ー…………命の石……携える…酋長と同じ……命護る勇者……ー

獅子から声が響く…獅子の瞳には《命の石》を宿し、傷つきながらも巨悪から命を護る少年たち……獅子はその中の一人、数多の命を託された《獅子の少年》を、かつて命を護る為に戦った星の意思《オーリン》に選ばれた《酋長》と呼んだ少年と重ねる


ー……酋長・と・同じ……オレ・力・なる……でも・身体・動かない・それでも・力・に・なりたい………星の意思・オレ・に・力・くれー

氷の獅子の声は吹雪にかき消されながらも、《獅子の少年》に力を貸すために星の意思《オーリン》に願った



第十七話 奪われたガオーマシン!!

バイオネットにより国家間を超えた地球規模の破壊活動およびこれにより起きた人為的災害、自然災害に対して国連《地球防衛会議》議長ロゼアプロヴァール国連事務総長が提言により地球勇者防衛隊、ガッツイ・ギャラクシー・ガード (Gutsy Galaxy Guard) 、通称GGGを発足して1ヶ月。各国に支部設立に伴い《G-ISコア》供与、ゾンダーISに関しての情報開示がなされた

 

いち早く支部が設立されたのはロシア、獅童オウマがスペシャルアドバイザーとして在籍している《ロシア宇宙科学院》を母体とするGGGロシア。中国科学院航空星際所楊司令が指揮するGGG中国。そしてフランス政府直属対バイオネット対策チーム《シャッセール》を母体に生まれたGGGフランス

 

現在、《GGG日本》本部から供与された技術を基に勇者王ガオファイガー専用ツール、各勇者の様々な新装備開発が進められる中、バイオネットは水面下で恐るべき計画を発動しようとしていた事にまだ誰も知る由もなかった

 

 

「さて、いくとするか……出来損ないのバイオダインRINに感動の再会をプレゼントをしにな………クヒッ!」

 

『………リ、リョウカ、カ、カ、イ………ガラン……サ…マ…』

 

 

「ケッ!フリールの奴やりすぎだっうの……弄る度に絶頂しまくってたからな……まあ、出来損ないのバイオダインの悲鳴はしっかりボイスレコーダーに取ってやるか奴のコレクションを増やす手伝いしてやるか……クヒャ!来い!ファイバード!!」

 

 

光に包まれ青を基調とした全身装甲のIS《ファイバード》を纏う少年…《沙華堂(シャカドウ) 牙儖(ガラン)》。背後に控えたニューロメカノイド《ガイゴー》共に飛翔する…

 

 

ーもう、やめてくれ……誰か、誰か……ー

 

「黙れよ。俺様のカッコイい専用ISなんだから言うこと聞けよ火鳥勇太郎……いやファイバードさんよ?ーーーーーがどうなってもいいのか?アアン?」

 

…それっきり口を閉ざす声の主に満足そうに目を細めた牙儖(ガラン)と無言で追従するガイゴーの姿は空の彼方へと消えていった

 

 

第十七話 奪われたガオーマシン!!

 

数時間前、IS学園《演武場》

 

 

「そういや臨海学校近いんだよな……っと!」

 

「……山田先生が下見に行くって言ってたな……はあっ!」

 

 

「アレ?山田先生と火麻先生が行くって聞いたんだけどな……最近、噂になってるみたいだぜ、二人がつきあってるってさ!」

 

 

「まさか!?あの火麻参ぼ、先生が山田先生と!?」

 

早朝、清廉な空気が満ちる道場内で木刀を構える燐、一夏…踏み込むと同時に打ち込み、乾いた音が木霊する。今日の鍛錬は太刀筋を見切り、かわすと同時に撃ち込む特訓…二人とも目をはちまきで隠し、気の流れを肌で感じ逆袈裟に撃ち、反動で互いに離れ距離を取り正眼の構え(鹿島流)と蜻蛉の型(示現流の型)を取る一夏と燐

 

「す、すごい…燐ってサムライなんだね…」

 

 

「ああ、だが一夏があそこまで獅童とやるとはおもわなかった…」

 

最初の頃は、一夏が負けていたのだが燐と互角に撃ち合える技量に到達していた…そんな二人を見るシャルと箒は二人の動きに驚きながらも無駄のない演舞のような足裁きから切り払い、突きから袈裟、柄打ち、胴凪ぎ、息をもつかせぬ苛烈な打ち込みに思わず声を漏らしてしまう

 

(………一夏…私より強くなってる……獅童のおかげかもな……それに比べ私は…)

 

…過去の苦い思い出が箒の脳裏をよぎる…それに比べまっすぐに競い合い、高めあう二人の姿に胸が締め付けられる

 

「……あくまで噂だろ一夏くん!」

 

「うわっ!」

 

 

振り下ろされた木刀を滑らせるように流し、そのまま抜き胴を放つ燐…それが合図のように二人は互いに一礼、木刀を納め上座へと一礼し外へでると正座する。

 

「たた、今の効いたぞ燐」

 

「わ、悪い…でも踏み込みがたいぶ速くなったな…今度、篠ノ之さんとやってみたらどうだい?」

 

「……そうだな。最近は燐とばっかり鍛錬してたからな……よし、誘ってみるか」

 

「い、一夏、汗を拭いたらどうだ。あとコレも飲め」

 

「サンキュー……ングング、プハァ生き返るなあ~なあ箒、今度一緒に鍛錬やらないか?」

 

「な?…う、わ、私で良ければ何時でもいいぞ!お、お手柔らかに頼む」

 

タオルで汗を拭きながら、手渡されたスポーツドリンクで喉を潤す一夏の問いに上擦りながら頷くのを微笑ましく見守る燐の道着が引っ張られる

 

「ねぇ燐、箒って束さんの…」

 

「うん、妹だよ……でも二人が本当に仲直りするにはまだ時間がかかるんだ……せめてショウ兄がいたら」

 

「ショウ兄?」

 

「……束さんと篠ノ之さんのお兄さんで、ISが発表される前に飛び級でギリシャの大学に留学して、世界中の神話大系の研究をしているんだ……今はエジプトに居るみたいなんだけど」

 

十一年前、燐がまだ四、5歳ぐらいの頃に獅童家に遊びに入り浸りな束を心配し迎えにきてくれた少年《篠ノ之松陽(ショウヨウ)》。いつも和服に身を包み燐を実の弟のように可愛がりながら色んな事をわかりやすく教えてくれた彼を《ショウ兄》と呼んでいた

 

今はエジプトでアスワンダム近くに沈んでいた未盗掘の王墓を見つけた同じ日本人で女性の助教授と調査をしているらしい……それ以上に松陽は、自身と束、束と箒は血の繋がりが無いことを燐に教えてくれた人だった

 

……束が妹である箒と髪や容姿が似てないことに気づき、戸籍標本を閲覧。二十数年前に神社の前に射手座のレリーフが刻まれた《黄金の箱》の近くに捨てられていた事実を知り、ギクシャクした姉妹関係になり今に至る事をサイボーグとしての身体を自らのモノとして認識、恩師《御凰蓮》《御凰オリエ》聖闘士《レグルス》の命を受け継ぎバイオネットと戦うと決めた日に手紙で伝えられた

 

なぜ自分に?そう思った時、手紙の裏に書かれた文字

が目に入る

 

ー燐、君を一人の男と見込んで頼みたい。束と箒を昔みたいに仲の良い姉妹に戻してくれませんか?束と一緒に過ごした君ならば、きっかけを与えられるはずです。箒も今、親しくしていた一夏くんと離ればなれになり不安で一杯です………もし一夏くんと出会うのであれば一緒に力になってくれませんか?………どうか、お願いしますー

 

文字から滲み出る心配の感情を感じ燐はさりげなく束に箒と仲直りする機会を作ろうとしていたが、要人保護プログラム(正確には国連から内諜へID5関係者を護衛の意味もあった)により音信不通となった事が溝を広げていたのもあり、束本人からも消極的な言葉ではぐらかされていた

 

 

(……ショウ兄、二人を仲直りさせるのは骨が折れるよ……)

 

 

と、心の中で呟いた頃……

 

 

「ん……朝ですか」

 

ベッドから身体を起こすのは《GGG日本》本部、機動IS部隊所属兼IS学園食堂《中華》主任《竜崎疾風》…しかし何か重い。手には焼売の生地のようにしっとりすべすべな手触りに「またですか」と大きくため息をつき架け布団の中を見る

 

サラサラとした銀髪に穏やかな寝顔を浮かべ抱きつくよう眠るドイツ代表候補生にして《GGG日本》本部へ研修に来ているラウラ・ボーデヴィッヒの愛くるしい姿にドキドキする

 

一月前以来、GGG経由でIS学園食堂の《中華料理主任》として招かれてからというモノ、料理人寮に割り当てられた疾風の部屋…正確に言うとベッドへ潜り込む日々が続いていた

 

しかし、疾風はそっと髪をすくと心地良さそうに笑みを浮かべるラウラに在ることが脳裏に蘇る

 

ーどうしたの疾風?ー

 

ー母様の髪、すごく綺麗ですー

 

ーありがとう疾風。でもね、コレだけは覚えておくのよ…髪と顔は女の子にとって命に等しいの。特に髪をゆだねるのは好意の顕れとーーーーー…ー…ーを意味するの、忘れたらダメよー

 

ーうん、母様ー

 

ーむ、疾風ばかりずるいよ…母さん、僕もいい?ー

 

ーはいはい。甘えん坊さんね…凍也も覚えておくのよ……ー

 

 

(ゎ、私はとんでもないことをやっているのではないでしょうか?!)

 

我に帰る疾風、慌てて手をひこうとする…いや意志に反してさらに髪をすく

 

「は、んんっ//」

 

熱を感じさせる声に疾風の手は滑るようにすいていく…が、突然扉が粉微塵に吹き飛ぶ…ソコには中国代表候補生《凰鈴音》の姿。背後には猛り狂う虎がギランとみている?

 

「疾風…コレはどういう事なのかしら?」

 

「り、鈴音さん!?こ、これはその!?」

 

「ん、なんだ騒々しい……鈴か。せっかくの夫婦の営みを邪魔をするとは無粋だな」

 

 

寝ぼけ眼をこすりながら小さくあくびするラウラ、サラサラとした銀髪が白磁のように白い肌を流れ落ちるように滑る一糸纏わぬ姿を見た鈴からぴきっ?何かが切れた音が聞こえ、温度が一気に下がる…

 

「………ふ、夫婦の営みぃ?!……あ、朝っぱらからなんてことしてんのよ疾風!とにかく離れなさいよ!」

 

 

「断る。誰も私と疾風を引き離すことはできないからな…さあ疾風、もう少し営みを続けようか」

 

「ち、ちょ?二人とも引っ張らないでください。千切れる?ちぎれますから!?(ろ、老師。こういう時はどうしたらよいのですか?)」

 

両腕をぐいぐい引っ張り合う二人をよそに遥か彼方、五老峰にいる大恩ある師《童虎》に問う…しかし答えは帰ってこず、爽やかな朝の空気に疾風の悲鳴が響き渡った……

 

★★★★★★★★

 

「……相変わらずですね疾風は……」

 

「…キリくん」

 

ため息をつきながら三人の様子を見ていた霧也に声がかけられた。水色の髪を風になびかせながら立つのはIS学園最強にして生徒会長、更識楯無の姿…しかし霧也はナニも答えない

 

「………七年ぶりだよね…」

 

「…………」

 

「誘拐されたかんちゃんを助けてくれたのキリくんなんだよね?学園に現れた襲撃者や、あの雲から救出して治療して私を助けてくれたのも……」

 

「………………」

 

 

「…………答えてよ。ねぇ…キリく……」

 

 

「………前にも言いましたが私はボルフォッグ。GGG諜報部責任者です。私を通してあなた方が知る人と重ねるのはやめてください」

 

抑揚の無く、淡々と言葉を紡ぐ霧也…しかし楯無は風なびく白いマフラーを手にして声を漏らす

 

「じゃあ、なんでこのマフラーを持っているの?私とかんちゃんがキリくんの誕生日にあげたのを持っているの?お願い、答えて……キリくん」

 

 

「……………………このマフラーは死んだ犬神霧也から貰ったのです…」

 

「え?」

 

「……『……僕はもうじき死ぬ、だから君がコレを受け取って。もしカンちゃん、カナねえちゃんにボルフォッグが会ったら…約束守れなくてごめん』と伝えてくれと。気になるようでしたらコレはあなた方が持っていた方が相応しいでしょう…」

 

マフラーを取り、楯無に押しつけるように渡し、印字を切り瞬く間に姿を消す霧也…

 

「………嘘つき…《瞬転身》の術…キリくんしか使えない術だって知っているんだから…」

 

小さく呟いた楯無はマフラーを大事に持ち歩き出した…その瞳からはボルフォッグが七年前に死んだ幼なじみ《犬神霧也》本人だと確信を得たともとれる意志を見せながら

 

 

★★★★★★

 

《GGG日本》本部。宇宙への足掛かりとしての宇宙開発公団が置かれる人工島《ギガフロート》の海底部に併設された此処では各勇者ISサポート特殊艦六機を有し、速やかに世界各地へと向かうことが可能な施設でもある

 

 

「グッモーニング諸君」

 

「大河長官?今日は休暇じゃ無かったのかの?」

 

「そうだったんだが、ルネとユキはマドカくんにべったりでね…でもマドカくんは最初に比べると明るくなってよかったよ」

 

 

「博士、G-IS-07《アリエス》の整備とシュバルッエア・ハーゼ隊のシュバルッエア・ヴァイクにGバリアシステム実装完了しました…あ、大河長官!」

 

 

「落ち着きたまえ、ユーノ・スクライア隊員。君のことはオウマ先生から優秀な空間認識、量子認識能力を用いた瞬間創世システムの優秀なスタッフと聞かされているよ。改めてようこそGGG日本本部へ」

 

「は、はい…」

 

握手するユーノと大河長官…現在、本部にドイツ連邦より研修配属されたシュバルッエアハーゼ隊の三機へGSライドを組み込み作業を担当していたユーノは獅童博士の兄オウマ・獅童の勧めもあり《三式空中IS研究所》のメインスタッフとなっていた

 

「まさか、篠ノ之博士がGGGに参加してるなんて思ってもいませんでした、それに伝説のID5だったなんて…生身でミサイルを粉砕したシルバーピューマー、落下する衛星を五分で分解するブルーレオン、何でも真っ二つのブラックウォルフ、あらゆるコンピューターのプロテクトを数秒でとくホワイトラビット、即断、即決。チタンヘッドドライバーで相手をなぎ倒すゴールドタイガー…」

 

 

「まあ百聞は一見にしかず。若いころのワシ等もやんちゃをしてた頃だったからの…さて、そろそろシャッセールから…」

 

 

鳴り響いた警報に穏やかな空気から一転、緊張感がメインオーダールームに満ち、正面スクリーンに映像が投影され言葉を失う。無数の竜巻がシンガポールの街を蹂躙していく光景

 

「博士!コレはまさか気象兵器か!!」

 

 

「間違いない。コレは中国で確認されたモノより強化されておる…長官!」

 

 

「ウム!直ちにGGG機動IS部隊出動だ、メンバーは燐、疾風、そしてラウラ君のシュバルッエアハーゼ隊…サポート艦は三段飛行甲板IS空母で燐と疾風をIS学園で合流次第、現地へ!」

 

 

ー三段飛行甲板IS空母発進準備、三段飛行甲板IS空母発進準備!!ー

 

GGGメンテスタッフが区画から蜘蛛の子を散らすように走り去る。同時に区画に分厚いシャッターが断続的に閉じヘキサゴンから切り離され、そのまま三段飛行甲板IS空母は海面へ急浮上。そのまま空へジェットエンジン全開で空を駆ける

 

途中、燐と疾風(なぜかボロボロ)、ラウラとIS学園上空で合流。オペレーションルームで作戦ミーティングを束と火麻がはじめる

 

「今回、シンガポールに現れたバイオネットの気象兵器(ガンザン)の被害および逃げ遅れた民間人救出。そしてガンザンの機能停止と排除が目的だ」

 

「ラウラちゃんと黒うさ隊のみんなは、疾風君と逃げ遅れた民間人救出。リッ君はガンザンの足止めお願いね…シャルちゃんがゾンダーISの反応無かったたたって言うけど無理しちゃ絶ッツ対ダメだからね!」

 

「気、肝に銘じます……」

 

 

「もし破ったら…………………こ、この束さんと一緒にお風呂に入って貰うからね!!」

 

「ゴホン!お前ら作戦前にいちゃつくのやめろよ」

 

「……クラリッサ、一緒に風呂とは?」

 

 

「隊長、古来より男女が一緒の風呂に入ると言えばただ一つです。営みをうまく進める前戯であります!」

 

「なるほど…だから営みがうまくいかなかったのだな…疾風、今度一緒に」

 

 

「ゼ、全力でお断りします!」

 

などのやりとりで緊張感がゆるむ。今回はドイツ連邦より研修配属されたラウラ率いるシュバルッエアハーゼ隊、GGG機動IS部隊との初出動もあって緊張気味だった空気が和む、やがてシンガポールへ近づくと三段飛行甲板IS空母中央が大きく開くと3とかかれたシャッターが開く

 

「ガオファー、ステルスガオーⅢ装着モード…いきます!」

 

弾かれたように格納エリアからシンガポールへ飛翔するガオファー《ステルスガオーⅢ》装備モード、ミラーカタパルト内では疾風《IS風龍》を展開、瞬く間にミラー粒子がコーティング、同時にシンガポール市内へ射出、ラウラ率いるシュバルッエアハーゼ隊も続いていく

 

「疾風、私とクラリッサは民間人の避難誘導および救出に向かう」

 

「わかりました。私と雷龍は寸断され取り残された避難民救出に向かいます。ボーデヴィッヒさん、くれぐれも気をつけてください」

 

 

「わかった…また、あとでな………疾風も気をつけろ」

 

ラウラに無言で頷くとプライベートチャンネルを閉じ、疾風は胸のダイヤルを動かしシャオダンジィをコール、ハイパーセンサーで分断された橋に取り残された避難民へ圧縮空気を送り身体を包み込み、エアクッションを展開し安全な場所へ運ぶ。しかし巨大な瓦礫が背後から迫るも稲妻が粉砕。少し離れた場所にはティガオ4にあげた超高圧雷撃で崩れ落ちたビルの外壁を砕く雷龍

 

『気をつけろよ疾風。あの気象兵器は前に戦った奴とは別もんだ!』

 

 

「わかっている、今は逃げ遅れた民間人を安全な場所に誘導を最優先します。雷龍はボーデヴィッヒさんのサポートを!」

 

『わかってるよ……今、向かうぜ』

 

デンジャンホーに乗り移動する雷龍を見送るとエアクッションを広域展開、まるでソナーのように広がる風と共に安全な場所に移動させ、疾風は次のエリアへ移動した頃、分厚い雲の上空に身を隠すように無数の竜巻と豪雨をもたらしていくガンザンの前にガオファー《ステルスガオーⅢ》装備モードが対峙する

 

 

「これが気象兵器ガンザン!これ以上は好きにはさせない!!」

 

 

すぐさま、ウルテクスラスター全開で迫るガオファーはドリルガオーⅡをコールし装着勢いよく回転するドリルで貫こうとする…しかし分厚い装甲は傷一つつかず弾かれるように後退する。しかし諦めず胸部リングジェネレータを解放、ファントムリングをドリル先端に展開と同時に回転速度が上がる

 

 

「ファントムリング!プラスッツ!ドリルファアアアントオオオム!!」

 

光輪を纏ったドリルが接触、そのまま砕き貫き内部メカを破壊しながら反対方向へ出るガオファー、同時に火を噴きゆっくりと海へ落ちていく

 

「いまだ!ガオーマシン!!」

 

 

燐の叫びが響くと山間部からライナーガオーⅡが線路を滑空するよう飛翔、分厚い雲の切れ間から黒いステルス戦闘機《ステルスガオーⅢ》、ガオファーから分離した《ドリルガオーⅡ》が片方とドッキングし旋回する

 

 

★★★★★

 

「火麻さん!リッ君からファイナルフュージョン要請シグナルきたよ!」

 

「わかった!長官!!」

 

『ウム!ファイナルフュージョン承認!!』

 

 

「了解!ファイナルフュージョン…………プラグラアアアアアムッツドラアアアイブ!!」

 

 

赤く点滅するパネルを叩き割ると同時に、プロテクト解除。インストールされ表示が赤く明滅する

 

 

     ーGAOFIGHGARー

 

何時もならばプログラムリングが周囲に展開、リングを各ガオーマシンが走る…見慣れた光景が起こらない。それどころかF・F用プログラムリングが起動していない、エラー表示のみが明滅している

 

「な、何で、確かにプログラムドライブしたのに……!?」

 

★★★★★★★★

 

 

「ファイナルフュージョンが出来ない?…何でだ!」

 

突然の事に戸惑う燐、ガオファーのハイパーセンサーが背後から迫る機影探知を告げる音が響く…それを目にした燐の動きが止まる。眼前には白亜のISにも似た機体の名前を口にした

 

 

「あ、あれはバイオネットに奪われたガイゴー!」

 

 

金色の胸部装甲に施されたスリットに光が走ると同時にガオーマシン各機がガオファーから離れていく光景に声を失う。考える暇も与えないかのように身体に衝撃が走る。背後に目を向けた燐の視界には複数の未確認ISが囲むように展開するそれに見覚えがあった

 

 

「あの機体は……八年前に父さんと母さん、モジュール01のみんなを殺した、コード《ゲシュペンスト》………まさかバイオネットだったのか!!」

 

ギリッと拳を握りしめるも、今は気象兵器ガンザンを安全な場所で機能停止、破壊をしなければ。そのためにガオーマシンをどうにかしなければと動いた時だ

 

 

『ナニ余所見してやがんだあ?バ・イ・オ・ダ・イ・ン・RIN!』

 

声が響くと同時に背後に激しい衝撃、たまらず体制を崩した燐にコード《ゲシュペンスト》がスプリットミサイル、M90アサルトマシンガンを一斉掃射、無防備状態で為すすべもなく撃たれ続け、強固な装甲がひび割れ、遂に砕けISスーツを貫通。夥しい血が朱に染め垂れ落ちていく

 

「グアアアア!!」

 

 

『おお、いいねぇトレヴィアアアアアン!最高の声だな!ボイスレコーダにはしっかり記録しとけよ……ガイゴー』

 

 

『リ、リョウカ、カ、カ、カ、カ………リン……』

 

集中砲火を受けながらもガイゴーの声がサイボーグである燐の耳に届く……その声は八年前、モジュール01で母と共に死んだ人物と同じモノ、薄れていく意識に蘇るのは細切れに切り刻まれた父の最期の姿。そして金色の胸部装甲が真ん中から開き見えたモノ

 

 

『……………リン………』

 

彩り様々ななケーブルに繋がれた人間の頭部…《獅童ライ》が虚ろな瞳を向け微かに唇が震える

 

 

「そんな…ウソだ………父さんはモジュール01で、オレの目の前で!!」

 

 

『喜んで貰えたみたいだな?そうだ、感動の再会って奴だ!キヒヒッ嬉しいよな?もしかして感動のあまり声もでないってか?…だったら出させてやるよ…こいつは六年前の研究所をぶっ壊された分だ!受け取りな!!』

 

 

「ぐ、アアア!」

 

何も無い場所から複数のミサイルが右足の装甲を砕く…ISスーツは焼けただれ異臭が立ち込める

 

 

『やっと声を出したか。これはオヤジの周りをコソコソ嗅ぎ回ったクソ忍びのせいで株価を下がった分だ!』

 

 

「ウワアアア!」

 

右肩のウルテクスラスターが光に包まれドロドロに赤熱化、大爆発を起こし右肩の肉が抉れ血が吹き出す…力なく落ちていく燐…だが何かに頭がつかまれミシミシとひびが広がっていく中、グニャリと風景が歪みだし、青を基調とした勇者にも似たロボット…全身装甲のIS《ファイバード》がついに姿を見せた

 

 

「グ、グアッ」

 

 

『どうした?その程度かバイオダインRIN?失敗作風情がバイオネットに逆らうんじゃねぇよ…アンッ!?答えろよ。オラ、答えろよ出来損ないのモブが!!答えろよ出来損ない!!』

 

拳が何度も、何度も胴体を捉え殴る。胸部装甲リングジェネレータは砕け、限界を超えたダメージにより勢いよく血を吐き出す燐…すでにシールドエネルギーは一桁切り、維持危険域を超えているのに関わらず瞳から戦意は失われていない燐を忌々しくみる…

 

『……気に入らない目だな…千年余り前に俺を裏切った《兄弟》とナニもねぇ《ボイド》に飛ばしたガンバスター擬きのと似てやがる……もうあきた…帰るぞガイゴー、ゲシュペンスト………』

 

無造作に放り捨て背を向けるファイバード、だがゆっくりと振り返るその手にはフレイムソードが握られている

 

 

『………さて、念には念を押しておくか……手向けにコレをくれてやるよ!俺様のカッコいい必殺技であの世にいってこいやああ!フレイムソード、チャージアップ!フルバーストオオオ!!』

 

 

加速しながら炎を纏った剣…フレイムソードの刃が落ちていく燐、ガオファーの身体を捉え右斜め上段に切り払いキンッと刃を収め、背を向けると爆発。そのまま海面に水柱が立ち治まると真っ赤な血が浮かび上がった

 

 

『………さて、不良品は処分完了…残りは雑魚だけだ…赤子の首をひねるぐらい簡単だから後回しにすっか…クヒッ!』

 

 

赤く染まる海面を一瞥するとファイバードはガイゴー、奪ったガオーマシン、ゲシュペンストを引き連れまるで凱旋するかのように悠々と空へと舞い上がり溶け込むようにその場から姿を消した

 

★★★★★★

 

 

「リッ君!しっかりして!リッ君!!」

 

 

「燐!目を開けて……お願い」

 

 

「いかん、瞳孔反応が鈍い!緊急オペレーションを急げ!」

 

ストレッチャーに乗せられ長い廊下を急がせる医療スタッフ、その隣には連絡を受けたシャルロットと束の姿…そのまま二人は特殊ユニットベース《弾丸X》内にある処置室に入るとアジャスト、各体調管理システム調整と同時平行で傷の処置をはじめる獅童レイジ博士、束

 

シンガポール市内の災害支援および、救出を終えた疾風、ラウラ、シュバルッエアハーゼ隊がみたのは血に染まる海面に力なく浮かぶ、息も絶え絶えの燐の姿…応急処置をしながら急ぎGGG日本へ帰還し《弾丸X》内《X》ルームにある処置室へと燐は運び込まれた

 

六時間後。処置室のランプが消えるも予断は許されなかった…

 

『長官、燐の治療はおわったぞい…』

 

「そうか、束くんとシャルロットくんは?」

 

『…シャルロットくんはGストーンのアジャストを、束くんは細胞抑制システム調整を継続して貰っておる…ガオファーが機能停止寸前まで燐の細胞抑制システムを維持しておらんかったら燐は…』

 

死んでいた、喉元までにでかかった言葉を飲み込むレイジに無言で頷くと口を開いた

 

 

「……機械は治すことは出来るが、たった一つの命は治すことは出来ない……ガオファーは燐を必死に守ってくれたのだな。博士は引き続き三人で治療を継続してくれ」

 

 

『了解じゃ…』

 

 

サブモニターを切り、そのままメインオーダールームからセカンドオーダールームへと移動した大河、そこには諜報部、機動IS部隊、ラウラ率いるシュバルッエアハーゼ隊の面々を前に深く息を吸い口を開いた

 

「諸君も知っての通り、燐がバイオネットの上級幹部と交戦、瀕死の重傷をおい今治療中だ。しかし必ず生還し元気な姿を見せてくれると信じている。何故なら燐は《勇者》だからだ!」

 

 

大河の力強い言葉にセカンドオーダールームのメンバー全員が頷く…ラウラ、クラリッサはGGG配属が決まってからGGGアーカイブズを閲覧し、燐…いやGGG機動IS部隊の『絶対に諦めない』『前へと進む姿勢』を見てきた

 

GGG機動IS部隊はまさに勇者と呼ぶにふさわしいと認めていた彼女達も頷くと、諜報部主任《犬神霧也》が正面スクリーン近くに立つ

 

「……大河長官、これより地球防衛会議より承認されたID5アーカイブズの封印を解除します。これから見せるのはGGG設立に深く関わる事件です…」

 

 

スクリーンに映されたのは衛星機動上に浮かぶ国連宇宙開発機構と各国政府の技術の粋とIS本来の運用を目指した《モジュール01》…しかしノイズが混じり、モジュール01の外壁が爆発。周囲に黒い装甲に赤いバイザーを輝かせ構えた銃、背部からミサイルが火を噴く

 

そして、青と黒を基調とした全身装甲のISが現れ大きくうがたれた隔壁へ黒い装甲のISを引き連れて数十分間、悲鳴と助けを求める通信音声が断続的に響く…そして

 

『キヒャハハハ!クソ下らない夢なんざ金にならないんだよ!!フレイムソード、チャージアップ!フルバーストオオオ!!』

 

瞬く間に炎にも似た光がモジュール01を切り裂き、数秒で閃光に包まれ爆散。辺りに無数の肉片、隔壁の残骸が大気圏へ落下する中、青と黒を基調とした全身装甲のISと黒い装甲のISは辺りに溶け込むように消えた所で映像は途切れノイズが流れるのを唖然となるシュバルッエアハーゼ隊とは違い、機動IS部隊メンバーは無言でみていた

 

 

「……コレは八年前に起きたモジュール01の事件の顛末です。今回、燐に重傷を負わせた全身装甲のISと八年前の全身装甲のISは映像解析の結果、同一のモノと判明しました。ガオファーのライブラリに記録された音声とも合致しています」

 

 

「つまり結論から言うとだ、八年前の事件はバイオネットが関わっていたと言うわけだ…」

 

 

「…本日をもち、我々GGG機動IS部隊は、各支部との連絡を密にし未確認IS、コード《ファイバード》をバイオネットのゾンダーISと同等の脅威として捉え、遭遇した場合は、撃破もしくは捕縛を前提とし活動する。無論、奪われたガオーマシン奪還も考慮し行動する」

 

言い切ろうとした時、再びアラートが鳴り響く。レイジの代理としてオフィサーシートに座るユーノは正面スクリーンに映像を出力する。映したされたのは陰陽の太極図にも似た光が空いっぱいに紋様を展開、やがてガラスが砕けるように割れ光と共に現れた姿に、この場にいるメンバーに緊張が走った

 

 

青と黒の全身装甲のIS…《ファイバード》が《GGG日本》本部近海に姿を見せ飛翔している

 

 

★★★★★★

 

 

『なんだ、ここは?亀山さんの姿も見えない…みた感じ日本みたいだな……』

 

青と黒の全身装甲のIS、《ファイバード》は全周波数で呼びかけるも応答が無い事に不安を感じながら、周囲をサーチした時、真下の海面が盛り上がり紫色の潜水艦《多次元諜報用IS潜水艦》が姿を見せ、カタパルトが開き、上昇すると一人の少年が姿を見せた

 

 

「………見つけましたよ…七年ぶりですね…この日を待っていましたよ。ファイバードオオオオ!!」

 

 白髪をゆらゆら揺らし憎悪の眼差しを向け《犬神霧也》の声が響いた

 

 

第十七話 奪われたガオーマシン!!

 

 

 

 




君たちに最新情報を公開しよう!

ガオファー破れる!瀕死の重傷を負わせガオーマシンを奪ったファイバードが再び姿を見せる

しかしファイバードの前に復讐に燃える《この世で最も神に近い男》の全てを受け継いだ犬神霧也の恐るべき力が発動する!

IS《インフィニットストラトス》ー白き翼と勇気ある者ー

第十八話 異世界より訪れし者、奪われし者との邂逅


次回の更新にファイナルフュージョン承認!


ー冥界with《六道輪廻》ー

……コレが勝利の鍵だ

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