IS/勇者王ガオガイガー─白き翼の戦士と勇気ある者― 作:オウガ・Ω
《シンメトリ・ウィンドウ》、《シンパレート・パーソナライズ》システムのデータ、脳波形をじっくりチェックし、やがて大きく息を吐いた
「疾風くん、雷龍くん、検査およびメンテナンス完了じゃ。起きても大丈夫じゃ」
「ありがとうございます。獅童博士」
「じゃが、シンパレート・パーソナライズの調整無しでシンメトリカル・ドッキングを二度もするとはの無限情報サーキット《Gストーン》があるといえど…下手をしたら、君らのどちらかが消………」
「すいませんでした。次からは無いように気をつけます…では私は学園に戻ります、いくぞ雷龍」
『大丈夫だって、そんなことなら無いように俺も見張ってるから安心しなよ獅童じいさん』
「君らがそういうなら信じよう。じゃが、少しでもおかしいと思ったら必ず来るんじゃぞ」
レイジの言葉に頷くと、二人は三式空中研究所をあとにしたのを見届け、二人の検査結果へ目を通していく
(凍也くん、疾風くん、二人がバイオネットの科学者《フリール・ルコック》《ドクターウェスト》の手により互いの左脳を交換手術を施術された《ツイン・デュアルカインド》、ニューロノイドを運用するためヘッドダイバー二人がどうしても必要になる、それを一人の人間が二人分のデュアル・インパルスを生み出し一人で動かすための技術、だが人道的面からみて封印されモーディワープ消滅と共に施術データ共々闇へ消えたはずじゃった)
凍也、疾風のある診断結果別に目を向けつらい眼差しを向けカタカタ操作する
(……何度も失敗を繰り返し、奴らは世界十大頭脳の一人にして過酷な環境における生体強化《アドヴァンスド》、大気がない惑星で大気を生み出し風、雷、水、火などの自然を人工的に生み出す理論を構築した《竜崎乙女》女史をだまし、妊娠していた彼女の受精卵を生体強化…世界初の《ファースト・アドヴァンスド》化。生まれた双子をさらおうとするも逃げられ、八年前、ID5に保護される前に奴らに殺され二人は《ツイン・デュアルカインド》施術され成功した…が、一つの身体に二つの人格を有したせいで精神が破綻しかけた………六年前に燐達を救出後、すぐさまワシ等は二人の人格をGISコアへの移植を決意した)
ーこのままでは君たちのどちらかが消滅する。君たちのどちらかをGISコアへの移植をすれば助かる片方は助かる…ー
ー……なら俺を移植してくれ、兄さんを助けてくれー
ー……兄を、凍也を助けてくれー
(………GISコア雷龍、炎竜への人格移植は成功した。だが二人が調整をしない状態で、一日に三回以上のシンメトリカル・ドッキングを敢行したら………どちらか片方の人格は………………………完全消滅する)
海底の砂利を巻き上げ進む黒い影。GGGが誇る《水陸両用IS整備装甲車》。GGG機動IS部隊のGISシリーズ整備と補修素材、操縦者のメディカルルームを完備している特殊艦。大阪でのゾンダーISからの防衛的戦闘行動を終え帰還へ就いていた……
「あ、あの~シャルル?束さん?」
フュージョンアウトを終えメディカルルームに収容された燐の両隣にいるのは篠ノ之束こと《東雲アリス》、シャルル・デュノアが燐が横になるベッドの両脇でにこにこ笑いながら見てる
「リッ君、今からメディカルチェックするから上を脱ぎ脱ぎしょうか♪」
「何で服を脱がせるのかな~それより燐、左手を出して。僕が優しくアジャスタしてあげる」
笑顔で燐に訪ねる二人…しかしその目は笑っていない…それどころか束は病院着に手をかけ手慣れた様子でボタンをはずしていく
「ち、ちょ束さん!脱がさないで!?」
「さあさあ、恥ずかしがらずに、いつもみたいに私にリッ君のすべてをみ・せ・て♪」
「……………いつもみたいに……へえ、いつもみせてるんだ燐は…」
「あ、あのシャルル?どこいくのさ?」
「……燐のバカ」
プウッと頬を膨らませ、小さく何かつぶやき燐の左手から自らの手を離し、メディカルルームからでていくシャルル。その背中に《塵芥にな~れ!》と叫ぶ巨大な鉋で敵を削りきる黄金の破壊神のオーラが浮かんでいたのを見たGGG隊員の面々はガタガタ震えていたそうだ。
第十六話 転校生、その名は……
「………ん」
「気がついたか?」
「き、教か……っ~!?」
「無理するな。ボーデヴィッヒ…まだ万全ではないのだからな…ほら、少し横になれ」
目を覚ましたラウラの目に椅子に座り本を読む織斑千冬の姿。驚き身体を起こそうとするが全身に気だるさと痛みが襲いわずかに歪めたのを見て優しく寝かせる千冬…口元まで毛布でかくしややうつむき小さくつぶやいた
「は、はい……あの教官。私は一体……あの時、とんでもない事をした気が……」
「……お前は悪くはない。私の監督不行き届きと警備に穴があった……お前の抱えていた心の闇に気づけなかった私は教師として失格だ……本当にすまなかった」
「き、教官!頭をあげてください!責任ならわたしにあります、勝手な行動で教官に大変な迷惑をかけたのですから!!だから頭をあげてください」
頭を下げる千冬に声をかけた時、医務室の扉が開かれ二人の男性がカツカツと軍靴をならし歩き二人の前に立つ…着ている服から見てドイツ連邦の軍服、飾られた階級章と顔を見たラウラ、頭をあげた千冬は身を堅くし敬礼する。軍帽を被ったら金髪に切れ長な水色の瞳を向けながら男性が敬礼した手を下げ静かに口を開いた
「久しぶりだな織斑千冬教官、そしてラウラ・ボーデヴィッヒ少尉…」
「す、スコルピオン総帥!ヘルガ参謀長!いつ日本に?」
「IS学園より対抗戦観戦へ招かれたのだ、我がドイツ連邦代表候補ラウラ・ボーデヴィッヒ少尉の戦いを観に来た……だが、あそこまで無様に負けるとはな」
「そして、中国代表候補生《凰鈴音》、欧州連合の同盟国家である英国代表候補生《セシリア・オルコット》両名に対しての少尉の挑発的行動、専用ISの損壊は本国において問題になっている…」
「待ってください!スコルピオン総帥!ヘルガ参謀長!ボーデヴィッヒが今回の騒動を起こしたすべての原因は私にあります!罰するなら私をお願いします!!」
「き、教官…」
淡々と言うスコルピオン総帥、ヘルガ参謀長に声を挙げる千冬の姿に驚くラウラ。身体を張り生徒を守ろうとする姿からは責任を負う大人としての信念が溢れている
「織斑千冬、君は我がドイツ連邦軍に一年間、教官として少尉や我がIS部隊を育て上げた実績は高く評価している。だが今回の処罰はすでに教官の任を解かれ日本に在籍している君には関係ないこと、ボーデヴィッヒ少尉の処遇は後日、追って沙汰する………いくぞヘルガ」
「ハッ!フューラー!………また会おう織斑千冬」
そう告げると、踵を返し歩き出すドイツ連邦総帥《スコルピオン》、参謀長《ヘルガ》は医務室を出ていくの千冬とラウラはただ黙って見送ることしか出来なかった
★★★★★★
「フューラー、少尉の処罰ですが」
「…………ヘルガ参謀長。すでに決めてある」
IS学園の外におかれた専用ジェットへ歩きながら手渡した赤い封筒を受け取り、軽く敬礼し別れたヘルガ参謀長へ目を向けながらジェットへ乗り込み深々とシートへ身を任せるように座るスコルピオン総帥は一枚の写真を手に取る
日の丸を前に並ぶ五人の少年の姿…その中の一人、編み笠に薄い紫の人民服に身を包んだ黒く長い髪の少年へ視線が注がれる
「………我がドイツに多大な貢献をし救った世界十大頭脳《竜崎乙女》女史の子息の一人《竜崎疾風》…ボーデヴィッヒ少尉と出会ったのは偶然と思いたいな…」
少し笑みを浮かべる彼の脳裏には熱き青春をボクシングにかけた若き日のスコルピオン総帥、ヘルガ…旧ドイツJr.、そして旧日本Jr.いや、最高のライバルと拳を交え生まれた友情。そして世代を超え再び現れた新生日本Jr.メンバーに名を連ね、十年前にドイツ連邦で起きた異常気象を沈静化、ふたたび緑あふれる国土を蘇らせたの恩人の子息の名をつぶやく。やがて専用ジェットは滑走路を離陸、はるか彼方にあるドイツへと飛翔。分厚い雲へ消え去った頃。入れ違いでGGGベイエリア本部からシャルルと共に燐がIS学園へとガンドーベルで帰り着き降りるとオートで走り去るのを見送り寮へ歩き出す二人、だがさっきから会話すらなく気まずい空気が流れていた
「あ、あのシャルル?」
「…………」
(………うわ、まだ怒ってる……やっぱり束さんとのアレが原因だよな。多分)
何度か話しかけるもスルーされるばかり。勇者といえども機嫌を損ねた女の子には適わないようだ。そんな空気を振り払うように救世主が現れた
「よお!燐。今帰りか!?」
「あ、一夏くん。どうしたんだ妙にテンション高いけど?」
「実はな、大浴場の使用許可が降りたんだ!今から二時間限定だけどさ。燐もシャルルも一緒にどうだ?」
今まで寮の個室にあるシャワーだけですませていた一夏のテンションの高さに驚く二人…大浴場の大きな湯船につかり、日頃の疲れをすっきりとしたいというのもあるが、大阪でのゾンダーISとの戦闘の疲労とその後の一悶着で疲れた燐、一日に二回も浄解をしたシャルルには魅惑の言葉。しかし
「悪い、実はコレから織斑先生の所にいかないといけないんだ。先に入っていいよ…」
「……そっか、千冬姉に呼ばれてるなら仕方ないか。じゃあ先に風呂いただくぜ」
「ああ、今回は一番風呂譲るけど次回はオレが一番だからな」
「覚えておくよ」
軽く拳をぶつけると、燐はシャルルを残し職員室へ歩いていき、二人から完全に離れたことを確認し中庭へとでると木の幹に身体を預ける
「………霧也、いるんだろ?」
「はい、大阪でのゾンダーISとの戦闘お疲れさまでした…」
木の影から、白いマフラーで目元から下を隠し、紺色の学生服姿の犬神霧也が音もなく現れた
「……学園にもゾンダーISが現れたって聞いたよ。まさか二人にシャルルの浄解モードを見られるなんてな…」
「…織斑一夏くん、篠ノ之箒さんは口が堅いので大丈夫と判断しました。学園外に現れたAT兵を千冬さんと撃退している最中に、バイオネットの幹部の侵入を許してしまいましたが、幸い疾風がIS学園内に現れたゾンダーISへ対処してくれたので最悪な事態は未然に防げました」
「!疾風が学園にいるのか!」
「はい、獅童博士が先ほどまで雷龍、疾風のシンメトリズム調整してました。今IS学園食堂でゾンダーISのコアとなったドイツ代表候補生ラウラ・ボーデヴィッヒ嬢へ食事を用意しています」
「そうか、疾風のG-IS《撃龍神》ならコアを無事に摘出できるからな…でもボーデヴィッヒさんの看護をなんでやっているんだ?」
「(………ドイツでの件は内緒にしといた方がいいですね。あとが面白いでしょうし…)それは疾風本人から聞いた方がよいかと。燐、これで機動IS部隊メンバーはほぼ揃いました…」
「……そうだな…報告ありがとうな霧也…今度会うときは「GGGベイエリア本部で」……ってもういないし…とりあえず部屋に戻るか」
いつの間にかに消えた霧也に苦笑いしながら、寮にある自室へと歩いていった
★★★★★★★
「ふう~やっぱり風呂はいいねぇ~リリンが生み出した最高の文化ってやつだよな~」
ゆったりと湯船に浸かりながら腑抜けた顔で、タオルを頭に乗せパシャっと湯を肩に浴びせる燐…湯煙がだだよう誰もいない大浴場を独り占めの状態に満足している…腑抜けた顔になるのはある理由があるからだったりする
湯船に浮かぶ燐の全身、至るところに大小様々な傷跡…バイオネットの悪辣な改造および実験で切り開かれ縫合されるを繰り返し受けたモノ。目をこらさなければわからないが全身には規則正しいライン?が見え、左腕にはGストーンと一体化した装置がお湯越しに見える
(……シャルルまだ怒ってるかな……)
なお、部屋に戻ってすぐ大浴場へいくとベッドに頭から毛布をかぶり眠っているシャルルに言ったのだが、無言だった…束との距離感の近さに嫉妬していたのも理由があることを知らず、明日の朝一番に謝ろうと考え、ゆったりと全身で湯の温度を堪能していた時、ガラリとと引き戸が開く、
「……一夏くんか?……二度風呂に来た…の…………………シ、シャルル!?」
「お、おじゃまします」
髪を下ろし、Gストーンとラファール・リヴァイブ待機形態のペンダントを首にかけ豊かなバストをタオルで隠したシャルルの姿…一瞬、見とれるも慌てて身体の向きを変え湯船に顔を半分隠す燐…
(な、なんでシャルルが大浴場に!?て言うか寝てたよね?なのに何で!?)
混乱しながらブクブクと考える。しかし答えは見つからない…悩みに悩む思春期真っ盛りな勇者?の耳と背中に音、自分以外のぬくもりを感じようやく現実に帰還する燐の左手に何かが触れる。みると真っ白な華奢な手が重ねられ淡い緑の光がお湯に反射している…つまり自分の後ろには生まれたままの姿のシャルルがいる事実に思考がオーバーヒート寸前になっていた
「あ、あのシャルル?女の子がそう簡単に男の人に裸を見せたり、こう、くっつくのも、肌をわせるのもいけないから!?な、ナニ言ってんだろ……あうう」
「…くすっ…燐って意外と固いんだね。でも僕のは見たからおあいこだよ」
「あ、あの時は本当にゴメン!と、とにかくオレあがるから。シャルルはゆっくり…」
湯船からでようとする。だが燐の手をしっかり握るシャルルの手に阻まれ動く事ができない
「……燐、少しだけ話したいことがあるんだ。聞いてくれるかな」
「……な、ナニ?」
間近に感じる体温と女の子特有の甘い香り、柔らかさにくらくらしながらも、シャルルの声にしっかりと耳を傾ける
「学園に残るよ……GGG特別隊員としてもあるけど、これからは自分の意志で一歩ずつ前に向かって進みたいんだ…コレからは僕にしかできないことを、僕の力を必要としてくれる人の為に役立てたいんだ」
「そっか…一歩ずつ…すごいなシャルルは」
「ううん、僕にその《一歩》を踏み出す《勇気》を燐がたくさんくれたんだ…ありがとう」
「え?オレがシャル…「シャルロット」……え?」
「お母さんがつけてくれた本当の名前…シャルロット・リオンレーヌ…あの人から《デュノア》は名乗るなって言われたからお母さんの姓《リオンレーヌ》になったけど」
「……リオンレーヌ…フランス語で《獅子の女王》って意味だったな」
「意味わかるんだ…って、初めて会った時も訛もない綺麗なフランス語で話してたよね。誰かに教えて貰ったの?」
驚いたように声を上げながらさらに密着するシャルル…シャルロットの鼓動と息づかいを感じドキマギする燐の体温も鰻登りに上昇中…でも聞かれたからには答えなければと我慢する
「…母さんが日仏クォーターで、日本の大学に来るまではフランスに住んでたんだ、昔よくフランス語やおとぎ話を教えてくれたんだ」
「…そうなんだ。フフ、少しリード出来たかな」
「なんか言ったシャル……シャルロット?」
「え?ううん、何でもないから!それよりソロソロ上がろう!じゃ先にあが……キャ!?」
勢いをつけ立ち上がったのが悪かったのか。湯船の中で足を滑らせるシャルロット…とっさに手を掴もうと腕をのばすも運悪く二人とも倒れ、水しぶきならぬ《湯しぶき》が盛大に立つ
「ケホ、大丈夫、燐……………ふぇ……」
「タタタ…ん?」
湯船から顔を出す燐、だが両手のひらに柔らかく張りのある圧倒的存在感。視線の先には収まりきれないほど女性特有の母性の象徴、憧れ、夢が詰まったバスト。指がしっかりと埋まり隙間から桜色の何かが見える二つの膨らみをしっかり支えるような形で掴んでいる。シャルロットの顔が瞬く間に真っ赤になりアメジストの瞳が潤み始める
「う、うわあああああ!?」
「シ、シャルロット!?やめて死ぬ!死ぬから水責めは…ゴバッラ!?」
照れ隠しと言わんばかりに、燐の頭をつかみ湯船に沈めるシャルロット…沈められながらもサイボーグの目が肌やら、金の何か?を目にしたのを最後にぷっりと意識が途絶えた
★★★★★★
「おはよう燐……って?どうしたんだ?すごく顔色悪いぞ!?」
「な、何でもない…色々あったからさ…」
ざわざわ騒がしい教室の机の上にタレライオンみたいに力なく顔を乗せ答える燐は大きくため息をついた。目が覚めるといつの間にかに自室のベッドにいた燐、ぼんやりしながら大浴場の出来事を思い出し、隣のベッドをみるがシャルロットの姿がない。寝た形跡も見あたらず枕元に一枚の紙切れがおかれていた。
ー少し用事をすませてくるから、先に教室にいっててー
短く書かれた文章を見て、真っ先に浮かんだのはあのハプニング…手のひらに柔らかさと温もりが蘇り熱暴走が起きかけ慌てて掛けてあった冷却コートを着る燐、それでも体温が上がり心臓がバクバク鳴るのが収まるまで始業前までかかり、今に至る
(………どうしたんだろシャルロット。オレのせいかな、それともフランス本国に…ソレはないか。ボーデヴィッヒさんの姿も見えないか)
だがフランス本国からの呼び出しの可能性を捨てる燐。シャルロットの立場はGGG憲章において守られているからだ。ラウラの場合はゾンダーIS化以前の行動がドイツ本国に問題視され処罰を待つ身だと霧也からの追加報告から知ってる。疑問で頭いっぱいになった時予鈴が鳴り響く。教室の扉が開き、副担任の山田先生が入ってくる…何か様子がおかしい
「み、みなさん。おはようございます………はあああ」
「なあ燐、山田先生様子おかしくないか?」
「オレもそう思う。とにかく待とうか?」
一夏にそう答える燐、山田先生はふらふらしながら教壇に立つ
「今日はですね……皆さんに転校生を紹介します。転校生というか、みんなもう知ってるんです…はあああ……」
ざわめきはじめるクラス。三人目の転校生に色めき立つのに対して、山田先生はややうなだれながら口を開き、入ってくるように声をかけた
「失礼します…」
タレライオンみたいになっていた燐の耳に聞き慣れた声、目を向けた先には女子の制服に包んだ女の子がぺこりと頭を下げた
「シャルロット・リオンレーヌです。皆さん、改めてよろしくお願いします」
一瞬、クラス全員が固まる…一夏も勿論、燐も固まるも直ぐに復活。朝に姿を見せなかった理由にようやく気づいた燐に頬を赤くしながら目を向け笑みを送るシャルロット……吹っ切れた笑みに燐は思わず釘付けになってしまった
「デュノア君はデュノアさ……いえ、込み入った事情で母方の姓リオンレーヌに………うう寮の編成をやり直さなきゃいけない……」
山田先生の疲れた声は、やがて沸き起こったクラスの声にかき消され、数分後に遅れてやってきた火麻激の必殺技《ヒートスマイル》で騒ぎはおさまった……
同時刻、ドイツ本国からの書簡を受け取り目を通したラウラは内容に驚きの表情を浮かべ自室のベッドにへたり込んでしまった
《辞令》
ーラウラ・ボーデヴィッヒ少尉。貴君に近々ドイツ本国において設立するGGGドイツ支部に先駆け、《GGG日本》本部へ三年間の研修配属、所属部隊《シュヴアルッエ・ハーゼ》隊と共にIS学園へ通学しつつ警備をGGG機動IS部隊とあたられよー
ドイツ連邦総帥《フューラ・スコルピオン》
ドイツ連邦参謀長《ヘルガ・ジーニアス》
厳罰を覚悟していたラウラにとって、信じられない内容。総帥と参謀長直筆のサインは紛れもなく本物。突然のGGG日本本部へ部隊と共に配属唖然となるラウラの手からもう一枚の紙切れが落ち、手に取り見た瞬間、ボンっと湯気が立つ
「な、ナニを考えてらっしゃるのだ!総帥!!」
「どうしました、ボーデヴィッヒさん。まだ病み上がりなのですから大声は…何ですかコレは」
「み、見るなああああ!」
「グハッ!」
蒸籠を片手にラウラの足元に落ちた紙を拾い上げるも、ラウラの強力な膝蹴りが顎へ決まりベッドに沈む疾風…しかし蒸籠はしっかりと握ったまま。慌てて手に取った紙にはこう書かれていた
ー我がドイツ連邦最大の恩人《竜崎乙女》女史の息、竜崎疾風と子を成せ。少尉もまんざらではないとクラリッサ副隊長から色々聞いている。この三年間を有意義に使い攻略せよー
と、スコルピオン総帥直々のお言葉にベッドで気を失う疾風を見る。黒く絹のような髪、整った顔へ手を伸ばすラウラ…
「………疾風…私は」
ゆっくりと顔、唇を近づけようとしたラウラの自室の扉が盛大に破壊、振り返ると虎…いや中国代表候補生《凰鈴音》が甲龍を展開する姿
「ナニやろうとしてんのよ。あんた!」
「私が《私の疾風》と何をやろうと勝手だろう。それより私の部屋をこんなにしたのだから覚悟出来てるだろうな」
「な、ナニがあんたのよ!疾風は私のだから返しなさい!!」
「断る。疾風は私の嫁だ!奪いたければ勝ってみろ!!」
…一人の少年を巡り、新たな恋のバトルが始まりの狼煙と言わんばかりに学園寮を大きく揺るがした
★★★★★★★★★
「……ミスタアアアア・フリールくうぅん、ガイゴーはどうかなあ」
「上々だああ、はやく燐の絶望に染まる顔を見たいなあああああ。苦しむ歪む顔に、悲鳴を聞くだけで、私は私はあ~ハア、ハア、ハア、ハア、ハア、ハア、ハア、ハア、ンッ!………ヒヒヒャハ、軽く絶頂っちゃった……フヒフ!」
ニンマリと脂ぎった顔に笑みを浮かべながらはちきれんばかりに膨らみシミを作る股関をみながら、ガイゴー内部に接続された生体ユニットをベロリと粘液をドロリと擦り付けるように舐める
「止めろ。フリール、そのユニットはやつを苦しめる材料、丁重に扱え………出来損ないバイオダインRINを俺の手で殺すためにな…アヒャ!!」
「オオ!牙藍様、いつお戻りになりましたでありますか~イェい!」
「さっきだ。オレ様のカッコいいファイバードが治ったんでな。糞くだらない夢を叶えようとする奴らを根絶やしにするためにGGGをつぶす。ついでにグレート合体も出来るからな……フリール、お前にこいつを、《サーベラス・イグナイト》を与える…他の者にもバルゴラ、ジェミオン、ガルムレイドを完成次第与えよう……まずはガイゴーを使ってヤツを始末せよ。バイオネット・ナイツの諸君!糞くだらない夢は?」
「「「どぶに捨てちまえである!」」」
狂気に満ちた声が重なる中、白亜のニューロメカノイド《ガイゴー》の生体ユニットが微かに震え、やがておさまった
第十六話 転校生、その名は……
了
君たちに最新情報を公開しよう!
世界各国でGGG支部が編成されるようになり数日、臨海学校に向け色めき立っクラスメイトをよそに、バイオネットの動きがおかしい中、シンガポールにバイオネットの気象兵器出現の方を受け出動する
しかし、これが《悪夢の十日間》と呼ばれるGGG結成後に起きた最大の事件の始まりだった!
IS《インフィニット・ストラトス》白き翼と勇気ある者~コラボ編~
第三章 滅ぶべき右腕、滅びの声
第十七話 奪われたガオーマシン!!
次回の更新にファイナル・フュージョン承認!!
ニューロノイド《ガイゴー》&《ファイバード》
コレが勝利の鍵だ!!