IS/勇者王ガオガイガー─白き翼の戦士と勇気ある者― 作:オウガ・Ω
宇宙開発公団最深部
《エリアX》
様々な機材から大小無数のケーブルが延びる先には巨大な緑色の原石が静かに鎮座する。その近くに白衣を着た二人の男女の姿があった
「…やっぱり…この原石は…」
「ライの推測通りね…」
白衣を着たライと呼ばれた赤い髪の40歳手前男性の言葉にうなずくと20代中頃の女性はゆっくりと原石に手を当てる
緑色の原石が淡く発光し始めエネルギー波動が辺りに満ちた
「人、命あるものが触れると強い反応する…それ以上に《生命の波動》と似た波形を感じる」
「マヤのセンシングマインドはそういってるのかい?」
「うん…それに」
ライの手をとり優しく自身のお腹へとあて
「…この子も」
「…そうか。君がいうなら信じるよ」
服越しからでもわかる命の鼓動を感じとるライ。 大学で教鞭をとっていた頃、生体医工学を専攻していたマヤ・ノワールと知り合い互いの専門知識や考えをのべたり休みの日には山奥へ探検等をしながら関係は強く深まりマヤは自分の秘密「過去、現在、未来の事象を脳内である程度観測できる能力」《センシングマインド》という能力を持っていると明かした。だがライはそれを《素晴らしい力だ》といったことがきっかけとなり、マヤが飛び級で卒業すると同時に結婚した二人に十年目にしてようやく授かった《命》だった
「ライ、もう名前決めた?」
「…女の子だったら凛音、男の子だったら燐だ…」
「燐、凛音……ふふ《リン》繋がりじゃない…でも良い名前ね…あっ?」
「ど、どうした!?」
「今蹴ったわ…たぶん男の子よ」
「ホントだ…すごく元気だな。父さんが聞いたら喜ぶかな、そういえば面白い子を見つけたっていってたな」
「面白い子?」
「近々、家につれてくるって聞いたけど人付き合いが苦手みたいなんだ…確か名前は……篠ノ之束って子なんだけど……ってマヤ?」
「え、ううん…何でもない」
柔らかな笑みを浮かべるマヤに笑みを返し再び《Gクリスタル》に目を向けながら先ほど浮かんだ未来を思い出す
黒い身体に胸に雄叫びをあげる獅子、赤い髪をなびかせながら巨大な手を組み合わせ激しく緑の光を輝かせ、紫に輝く巨大なナニかと対峙する姿
だがマヤはわかってしまう…雄叫びをあげる獅子はまだ生まれてもいない《我が子》だと
そして未来には自分達が居ないことを《センシング・マインド》が感じ取っていた
(ごめんなさい、あなたに辛い道を歩ませてしまってごめんなさい……でも)
黒き破壊の獅子に寄り添う光…暖かで獅子の心を支え共に歩む暖かな光
誇り高い空の戦士の魂と血を受け継ぐ《白き翼の戦士》
赤と青、緑と黄色、黒と白、紫、灰色、熱き魂の声、《命の結晶》で繋がれた仲間達の姿
(わたしとライはこの時には生きていないかも知れない…でもその時が来るまでいえ、もう運命は動き出してる。だから、この子に、この子には…)
新たな命が宿る自らのお腹を優しく撫で慈愛に満ちた目を向け
(…その時が来るまで、寂しい想いはさせない…例えそれがどんなに短い時でも……)
心の中で強く想いを込め再びGクリスタルに手を添え目を閉じるマヤ、まるでその深い想いに応えるように淡く光を放ちはじめた
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…ここは?どこ…―
わたしは死んだはずなのに…
―……おねがい、リッ君を助けて…―
今の声は……束ちゃん?………リッ君……まさか燐?
燐の名前が浮かんだ瞬間、様々なイメージが流れ込んでくる…あの日から燐とあの子達が受けた地獄の日々、なんで、何でこんなことに
―いかん、代謝機能が不完全じゃ!―
―Gストーンが機能しない…なんでオリジナルGストーンを使ってるのに!…―
―なぜじゃ!なぜ機能せん…どうすれば…―
お義父さん、束ちゃん………燐……生きて…お願い生きて!!―
第八話 兄妹
「おし、着いたぜ燐」
六月上旬、正確に言えばスイス《セルン中央研究所》から日本へ戻って二日が過ぎた、でも俺は「あること」がずっと気になっていた
フランスであの《ISコア》を握り潰そうとした俺の前に現れた緑の光に包まれ八枚の翼を広げた女の子
そしてISコア?から人、女の子に戻した時に感じたGストーンの共鳴は一体なんだったんだ
「………い、お~い燐」
それにあの子から感じた懐かしさは…
「どうしたんだ燐」
「え?な、なんだ一夏君?」
「燐、最近なんかあったのか?授業中も上の空だったしなんか悩みでもあるのか?」
「い、いや、何でもない…って此所は?」
「ああ、俺の友達のじいさんがやってる食堂、まあ立ってるのもなんだし入った入った」
背中を押されながら引き戸を開くと大きなテーブルが六つ、カウンターを囲むように並び厨房が覗ける懐かしい作りの店内だなと感じながら適当に近くの椅子に座る
「おう一夏、久しぶりじゃねぇか……ん、そっちの坊主は誰だ?」
「は、はじめまして。獅童燐です(…な、なんだろ火麻参謀といい勝負できるかも)」
「今時の奴にしちゃ礼儀正しいな。俺んとこのに見習わせたいぐらいだな。で何食うんだ?」
訪ねられてメニュー表を見る…いろんなお品書きがかかれてる中からひときわ目立つ大きな文字でかかれたメニューを頼んでみることにした
「ご、業火野菜炒めをお願いします」
「わあった!」
丸太から削り出したようなまな板に野菜をおき中華包丁を握り軽快なリズムを鳴らしながら切り、それを油通しし用意していた中華鍋へ入れ鍋を振るいはじめると同時に勝手口が開いた
「おじいちゃん、おにい見なかった!」
「ああ、弾か?バンドの奴らと練習行くって朝からいないぞ」
「…おにいったら、何で肝心なときにいない…」
といいかけた女の子が俺たち、いや一夏君を凝視して動きが止まった
「ん?よう久しぶり。邪魔してる」
「い、一夏さんっ!?き、来てたんですか?全寮制の学園に通ってるって聞いてましたけど」
「ああ、うん。外出…っていうか友達つれてきたんだ」
「友達?」
「あ、はじめまして獅童燐だ…」
「獅童燐………ああ~世界で二番目に動かした宇宙開発公団の若き宇宙飛行士候補生獅童さんですか!!」
五反田さんのあまりの声の大きさにキンキンと耳鳴りがする…俺ってそんなに有名だったんだ
「蘭!あんましでかい声出すな!客に迷惑だろ!!」
「ご、ごめんなさい」
厳さんに怒られてシュンとなる五反田さんを一夏君は手招きしテーブルへと座らせてしばらくして自然に会話が弾んでいく
内容はIS関係だったんだけど鈴さんの名前が出た途端、束さんが怒った時によく見るような黒い何かが見えた
「おう、できたぞ坊主!」
ドンッとおかれたのは野菜と肉の香ばしい匂い漂う野菜炒め、ライスに琥珀色に輝くスープ。箸を手に取り手を合わせた
「いただきます…………………う、うまい!」
「り、燐!落ち着けったら野菜炒めは逃げないから!!」
「油通しして野菜の旨味をギュッと封じ込め、さらに肉とよく絡むように調合された甘味噌、豆鼓、醤油…砂糖に僅かに柚子の香りがする…だからスルスル入るしご飯によくあう!」
「おお、よくわかったな坊主。油通しがこの業火野菜炒めの命だ」
「おかわり!」
「食いっぷりもなかなかいいな坊主。よし大盛をサービスだ!!」
「な、なんかすごい人なんですね」
「まあな、なあ弾はどうしてんだ?」
「聞いてくださいよ一夏さん、おにいったら最近バンドばかりやってるんですよ!この前なんか……」
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―カモォンッ!ロックンロォオル!!俺の熱いシャウトでハートをギンギンにしてやるっぜ!!―
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「私の学校でいきなりライブはじめて大変だったんです…でもみんなには好評で」
「相変わらずげんきにやってんだ…」
「違います!おにいがあんなになったのは六年前に誘拐されてからなんです!!」
ダンッとテーブルを叩く蘭にビクッと体を震わす一夏くん、思わず箸を止めると五反田さんはさらに続けた
「それに、最近のおにいったら…」
「俺がなんだって?」
突然響く声、三人がそろって目を向けた先には赤い髪をまとめ背中にはギターケースを持った少年が不思議そうな顔をしてをあげたっていた
「お、おにい!?」
「な、なんだよ蘭、俺の顔になにか付いてるか?って一夏じゃないか!」
「よ、久しぶり元気だったか弾」
「ああ、毎日バンドの練習で忙しいけどな。で今日はなんでうちの食堂に来たんだ?」
「ああ、今日は友達を連れてきたんだ。コイツは…」
「…お前………燐か…」
ガタンとギターケースを落す弾、その瞳と顔からはまるで《何故ココにいるんだ》的な表情を浮かべ燐も同じ表情を浮かべている。一夏とギターケースを持ち上げる蘭もただ見ているしかできなかった
「……ひ、久しぶりだな弾!」
「お、おう燐!元気してたか!?」
「なんだ弾、燐と知り合いなのか?」
「あ、ああ…一夏は知らないんだったな、まあ何て言うか…別な小学校の友達だっだからな」
「そうだったのか…でも以外だったな燐と弾が友達だったなんてな」
「まあな~ハハハ…っとあんまし店んなかでいるとじいちゃんに怒られっから部屋に戻ってからまた来るわ」
手をヒラヒラさせながら五反田さんからギターケースを受けとると勝手口へと歩いていく弾…去り際に聞こえるか聞こえないかぐらいの小さな声で短く呟いて俺の隣から離れていった
とりあえず業火野菜炒めを完食しょうと箸を進めた急ぎながらもよく噛みながら…
「うまい!すいませんライスおかわり!!」
「おうよ!たくさん食えよ坊主!!」
もちろん《五反田食堂》に新たなる大食い勇者王伝説を樹立したのはいうまでもなかった
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「来たか燐」
「久しぶり弾…元気してたか」
「………まあな…んで燐はどうなんだよ」
「俺もまあまあかな…バンドやってるんだって?五反田さんから聞いたよ」
「ああ、オレにはこれしかできないからな…でだ燐、今日は何しに家に来た…」
これからが本題だと言わんばかりに言葉を強める弾
先ほど小声で《飯を食い終わったら店の裏に来い》と言われて来た俺は質問に答えることにした
「一夏君が連れてきたんだ…なんか俺の元気がなかった見たいらしいからな…」
「一夏らしいな…ソレを少しでも蘭に向けてくれりゃオレも苦労しないのによ…はああ~」
「ん?どういう意味だ?」
「そんまんまの意味だよ…燐、束さんは元気してるか?まあ、あの人の事だから寝不足になってるだろうけど」
「最近はよく寝るようになったよ…六年前よりかは……」
「……そっか…最後にひとつだけ聞いていいか。黒いISの噂は知ってるよな?」
黒いIS…たぶんガオファイガーの事だ、でもソレを聞いてどうするんだろう?
「何だ黒いISって?単なる噂話じ……」
「…とぼけるなよ燐、あの黒いISはお前なんだろ?《何故わかった?》って顔してるな、あの《黒いIS》はお前の夢の為に束さんが作ったモノだって霧也と疾風、凍也から聞いたからな…どうなんだよ」
あ、あいつら~弾にいうなよな…まあ間違いじゃないし言うしかないか
「ああ、黒いIS…ガオファイガーは俺だ…でもな弾、ひとつだけ言わせてくれ…」
「なんだよ、まさかお前、俺を連れ戻しに…」
「違うんだ弾、お前は俺達と違って―――――された――――が少ない。それ以上に血の繋がった本当の家族がいる…それに目標を見つけたお前を連れ戻すなんてできるかよ」
「…り、燐…すまない、疑ってすまねぇ」
「別にいいさ弾。でさ《マイク》は元気にしてるか?」
「ああ、アイツなら今新しい友達のとこにいってるぜ…でもアイツのサポートのお陰で今こうして普通に《話す》事ができるからな…」
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『――――――――――――――――――――――――――――!!』
『サイコヴォイス見たいにはできませんねぇ~フリィイルくぅん』
『やはりベターマンを捕獲しなければ無理みたいだねギムレットくぅん…ダアアンの声帯と音感をいじろうとするかあああ』
『…ハミル…ハミク……ヤ…ム…ル…フガアアアアアアアアアアア!フガィアアアアアアアアアア!!』
手術台に固定された少年の声帯を背中から延びたメスで切り開く度に血が散りかすれるような声が辺りを木霊する。だがメスが震えだし粉々に砕け破片が頬を切った
『フフフ…素晴らしいなあダアアンッ……もっともっと改造してあげよう………フヒャハハハハ』
目をゆっくり細めながら頬から流れる血をマスクの下から長い舌を伸ばし舐めとり再びメスが煌めく…
『フギィ!フギャガアアアアアアアアアアアアアアア!!』
『ああ~いい声だぁ~ハアッハアッハアッ』
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「どうした弾?」
「い、いや、なんでもないさ…さって、速くみんなのとこに戻るか」
一瞬見せた暗い表情を振り払い弾はわざとらしく声を上げ裏にある五反田家へ歩き出しそれに燐も続き中へ上がり向かったのは弾の部屋、そこでは
「ああ~また負けたぁ!」
「まだまだだな蘭は…お、弾、燐遅かったじゃないか」
「あ、ああ、じいちゃんに捕まってな…おし、蘭、オレが敵をとってやるから貸せよ」
「お、おにい!まだ私が一夏さんと」
「細かいこと言うなって、なあ一夏」
「そうだぜ蘭…っとやるな!!」
「そういや弾、知ってるか?」
カタカタとコマンド入力しながらキャラを操る弾に無造作に話しかけてきた
「蘭、来年IS学園、うけるんだと」
「な、なんだって!!」
操作する手が止まりガバッと蘭を凝視する弾、しかしその視線を流すよう顔を反らしたと同時に《YOU・WIN》とテレビに大きく写された
「ど、どういうことなんだよ!っていうか今通ってる学校はどうすんだよ?それに推薦はないんだぞ!?」
「私の成績なら大丈夫だし筆記なんか、バンドばかりしてるおにいとちがって余裕です」
「い、いや…そうだ一夏、燐、あそこって実技あるんだよな!!」
「ん、ああ、あるな。IS起動試験ってのがあって適正がないやつはそれで落とされるし」
「適正があって動かせたとしても試験官と模擬戦闘やるのがあるな」
「それなら問題は解決すみです」
三人の前にエッヘンとたち見せた一枚の紙にはIS簡易適正試験《判定A》とかかれた文字に唖然となる弾、だがすぐさま回復し立ち上がった
「ダメだ、蘭!今通ってる学校を変える事なに勝手に決めてるんだよ!」
「あら、いいじゃない別に」
「か、母さん!っていうかいつかそこに!?」
「さっきよ、弾。あまり大きな声を上げるとお友だちに迷惑よ…あら挨拶がまだでしたね私は五反田蓮、弾と蘭のお母さんです…キラ☆」
「か、母さん!いつの間に!」
「ひ、ひさしぶりです蓮さん(相変わらず変わってないなあ)」
「あら久しぶり一夏くん、元気にしてた?麦茶持ってきたから飲んでね」
「母さん、そのポーズやめてくれって恥ずかしいから!?」
「ええ~別にいいじゃない。弾だってコスプレするじゃない」
「あ・れ・は・ライブの衣装だって!と、とにかく話は戻すけど蘭が学校変えるのいいのかよ!?」
キラってポーズをとき、にこやかに笑いながら盆に乗った麦茶を配りながらもまっすぐ弾の話を聞きながら
「弾、蘭が自分で決めたことよ。《たくさんの人にオレの歌を聞かせたい》ってお友だちと毎日練習してる。それとまったく同じことよ」
「う、うう…わかったよ…でもさ親父にも一度話せよ…じゃないとオレん時みたいに大変だからな」
それだけ言うとプイッと前を向きだまりこむ弾を見て思いっきり笑ってしまいそうになるのを堪え、再びIS/VSを三人で交代しながら対戦していった
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『ハローウツホ~♪』
「マイク、今日も来てくれたんだ」
『うん、だってマイクはウツホと友達なんだもんね~♪♪』
生徒会での仕事を終えた寮に戻ったウツホと呼ばれ眼鏡をかけた少女の回りを嬉しそうに飛ぶ丸っこいナニか
「今日はどうしたのマイク?」
『今日も新しい歌を持ってきたもんね~』
「え、ほ、本当//////」
『できたてほやほやの新曲なんだもんね~さ、ウツホ早く、早く』
うなずきながらマイクから渡されたのを耳につけ目を閉じる
―いっくぜ!今日もみんなのハートに元気を送るぜ!!―
激しくかき鳴らされるギター、ベース、ドラム…そしてボーカルの声が響く度に体を熱くなるのを感じる少女、今まで聞かなかったロックを聞くようになってから毎日が充実し始めた
(すごく熱くて優しい声…誰なんだろう…心にすごく響く…)
曲に身を任せながら気になるのはボーカルの声…まるで心に染み渡り元気になっていく
(……どんな人なんだろ………マイクに聞いてみようか…な……)
やがてうつらうつらとなりそのままベッドへと仰向けになるように深い眠りについた少女
『ウツホ、寝ちゃったもんね……マイクはこっそり帰るもんね…弾も待ってるだろうし』
ワイワレスイヤホンを回収し部屋の窓に立つマイク…G-IS-06《マイクサウンダース13世》は友達である親友《五反田弾》のもとへ呼び出したバリバリーンに乗り込み空へと消えた
「…………マイク、弾を頼みます…」
その姿を紫色のIS《ボルフォッグ》を纏い腕組みし屋上にたつ少年はそういい残すと回りに溶け込むように姿を消した
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「わりい、そろそろ寮に戻らないと」
「あ、悪かったな一夏、燐長く引き留めちまって」
「いいって、いいって。さてと蘭、入試頑張れよ」
「は、はい!で、では一夏さん、燐さんもお元気で」
「燐坊!また食べにいよ」
「は、はい!厳さん」
夕暮れに染まる五反田家から四人に見送られながらIS学園直通リニアがある場所へと歩いていく
「さって明日から学校か~朝の特訓もあるしキツいな」
「そうだな、でも学校ってキツいのもあるから楽しいんじゃないかな」
「ん~確かにそうかもな。さって急ぐか燐、んでもって明日の特訓頼んだぜ」
「ああ!」
そういい軽く拳をぶっけリニアに無事乗り込み寮へと戻った頃、一機の飛行機が日本へ向かっていた機内には金髪の少年…燐がフランスで出会ったシャルル・デュノアが座席に座っている
(…日本…か……)
心の中で呟くシャルルがなぜ日本へ向かうのか。『世界で三番目にISを動かした男子としてIS学園に転校、そして織斑一夏、獅童燐の専用ISのデータを収集しろ』と父親に命じられたからだった
(…あの人は僕を道具としてしかみていない…会社を建て直すことしか…でも獅童の名前があったなんて以外だったな)
少しだけ笑みを浮かべるシャルルの脳裏には燐と出会い僅かな時を過ごした思い出はシャルルにとって暖かいものだった
(…聞きそびれちゃったけど燐の左腕の石…このペンダントの石と同じだよね)
ポケットから金の鎖に繋がれ台座にGとも読める緑の石が嵌められたペンダントを手に取る。シャルルの母方の先祖が受け継いできたモノとシャルルは聞かされ色々なおまじないや昔話を母親から聞かされていた
―…勇気ある獅子ってナニ、お母さん―
―……………お母さんのご先祖様と常に一緒にいた獅子のことよ…命を護り未来を切り開く為に自らを傷つくのをいとわなかった心優しく勇気に溢れた獅子なの…―
―痛くなかったのかな獅子様…ぼくは…―
―…………。獅子様は自分の痛みよりも他人が受けた痛みの方が一番辛いの…―
―だったら、だったらボクが勇気ある獅子様の側にいて助けてあげる!―
―そう、私がとっておきの…ひいひいおばあ様から教えてもらったおまじないを教えてあげる……じゃこれをかけて―
―え?でもこれはお母さんの―
―いいの…このペンダントは…………にしか使えないから。お母さんのあとに続けていってね………―
(…この石ってなんだろう…お母さんは誰にも見せたらダメっていったのに何で獅童に見せちゃったんだろう…それにあの力はなんなんだろう…黒いISを獅子様だって思ったんだろう………お母さん、僕わからないよ)
――――――――――
―――――――――
「雷龍、ひとつ聞きたいんだけど」
『なんだ疾風』
「日本についたはずだ…なのになぜ囲まれてる?」
『………………疾風が迷うからだろ?』
「ずいぶんと余裕のようだな侵入者」
周囲を黒塗りの二機のISに銃を向けられ冷や汗を流す疾風…日本へ向け歩いたはずなのに中国、そこでバイオネットの気象兵器が巻き起こした大竜巻から街にすむ人々を守るために戦いやたら気が強いIS乗りと共に協力、気象兵器を破壊、同時に救助活動を終え逃げるようにその場を去り日本へ歩いたが五老峰という秘境に迷い混み大滝の前に座した《編み傘を被った老人》に気に入られ《ある技》を伝授され再び日本へ歩いた…だが今度はドイツに出てしまい厄介な事にIS配備特殊部隊シュヴァルツェ・ハーゼの演習施設に迷い混み今に至る
「あ、あの私は怪しいものではないですよ(…雷龍、逃げる可能性はゼロみたいだ)」
(『もとはといえばナビシステムを壊したからだろうが!気象兵器壊すのに最大出力のマキシマムトウロンなんか使うからよお!!』)
「な、あれは雷龍が出力を」
「…何をしている」
氷のように鋭い声が辺りに響く…見ると一機のISがゆっくりと降りてくる…回りの二機が慌てて離れるのを気に止めず近寄りグイッと疾風の胸ぐらをつかむ
「ぐ、ぐう」
流れるような銀髪に左目を眼帯で覆い鋭い眼差しをむける顔を疾風は悲しい目をしてるなと感じた
「貴様の所属、目的を言え…いっておくが黙秘権は通用しない…」
「(まずい…まずい…………)」
「…答えないか…まあいい。これより基地へ帰投…コイツを連行する」
そのまま手を離し咳き込む疾風にチラッと目を向けるも、そのまま飛翔し基地へ向かう残された二機は疾風の腕を掴みあとを追った
第八話 兄妹 了
君達に最新情報を公開しよう
五反田家を訪れた翌日、一夏と燐のクラスにふたり転校生が編入してきた
そのうち一人は燐にとって意外な再会、だが乾いた音が新たなる波乱を巻き起こす
IS《インフィニット・ストラトス》―白き翼の戦士と勇気ある者―
第九話 転校生
次回もファイナルフュージョン承認!
―シャルル・デュノア―
これが勝利の鍵だ!!