倉橋家の姫君   作:クレイオ

5 / 14
魔法薬学の教授

 

 翌日、怜奈は芒の猫パンチを顔面に食らって目を覚ました。昨夜芒にかけた魔法は解けていたから、芒は声をかけて怜奈を起こすことができたのだが、昨日の恨みも込めてのパンチだった。ただ、爪は出さずに肉きゅうだけでのパンチなので、怜奈は顔を押された程度の衝撃しか受けなかった。

 ホグワーツにはたくさんの仕掛けが詰まった階段や扉があり、目印になりそうな肖像画の人物はしょっちゅうお出掛けしているから、一年生は教室を探すだけで精一杯だった。またポルターガイストのピーブズは出会った生徒に片っ端から悪戯して回るので、一年生は彼に出会わないようにびくびくしていた。

 だが、怜奈と行動を共にするスリザリンの一年生はそんな心配をする必要がなかった。陰陽師としての能力を持つ怜奈は、魔法がかけられていれば大抵一発で見破ったし、実は妖怪としてかなりの妖力を持つ芒が力に物を言わせれば、多くの仕掛けが一時的に止まったりした。また、ピーブズは怜奈に一度「九字」で滅しかけられてから、怜奈には逆らわないようになった。怜奈の姿を見ると、ピーブズはどんな悪戯の最中であれ、全てを放り投げて逃げて行った。

 ただし、授業についてまで怜奈に頼ることは出来なかった。魔法族出身者が殆どのスリザリン生は大抵の授業に付いていけたが、ゴーストのビンズが担当する魔法史だけは脱落者が続出した。彼の一本調子な口調には強力な催眠能力があるのか、殆どの生徒が居眠りしていた。そんな中、例え誰一人聞いていなくても授業を続けるビンズはかなりのつわものだ。怜奈もたまに意識を失うことがあり、彼女は早々に「自動筆記羽ペン」を使うという狡猾な手段に打って出た。羽ペンが勝手に動いていても、ビンズは眉一つ動かさなかった。

 魔法史以外の授業では、怜奈はとても優秀だった。天文学は陰陽術でも必要だから既に知識があったし、実技科目では怜奈は常にスリザリンでトップを独走した。自ら手を挙げることは滅多にないが、課題は常に一番にクリアして寮の得点を稼いだ。変身術の授業では、怜奈はたった一回でマッチ棒を光り輝く金の針に変えた。ドラコの驚きの声でそれに気づいたマクゴナガルは、相好を崩して怜奈を褒めるとスリザリンに5点加点した。

 例に漏れず、スリザリン生も闇の魔術に対する防衛術の授業にとても期待していた。怜奈もその内の一人だったが、すぐに期待は打ち砕かれた。DADAの教室はにんにくの強烈な臭いが漂っていて、教師のクィレルの言葉はどもり過ぎでよく聞き取れなかったからだ。威厳が微塵も感じられないクィレルをスリザリン生は見下した。怜奈もどうしてこんな人が教授なんだろうと思ったが、それ以上に気になったのは、彼のターバンの下に何があるのかだった。興味本位ではない。そこから邪悪な気配をひしひしと感じたのである。芒もそれに気付き、悪霊か何かがとり憑いているに違いないと言った。怜奈は入学前に父・泰成に言われたことを思い出し、絶対にクィレルには近づくまいと決めた。

 金曜日は怜奈が待ちに待った魔法薬学の授業がある日だった。スリザリンとグリフィンドールの合同授業である事が気がかりだったが、大好きな魔法薬学を兄のように慕うセブルスから指導されるとあって、怜奈は朝から上機嫌だった。

 魔法薬学は地下牢で行われる。薬品を管理するには、低温で直射日光の当たらない地下は最適なのだ。壁にずらりと並ぶホルマリン漬けの動物を眺めながら、教卓のまん前に陣取る怜奈の隣で、ドラコは取り巻きのクラッブやゴイルとグリフィンドールの生徒にちょっかいをかけていた。普段なら止めるが、生憎早くセブルスに会いたい怜奈は彼らを完全に視界に入れてなかった。

 黒いマントを颯爽と靡かせ、セブルスは教室に入ってきた。彼はまず、出席をとり始めた。そして、ハリーの名前まで来て少し止まった。

 

 「ああ、さよう。ハリー・ポッター。我らが新しい―スターだね」

 

 猫なで声で言ったセリフに、ドラコと取り巻きが冷やかし笑いをしたが、怜奈はそんな彼らを一瞥しただけだった。また、セブルスは怜奈の名前を呼ぶ時は少しだけ優しい声音を出した。ただ、非常にわかりにくかったので、気付いたのは怜奈だけで、怜奈は緩やかに口角を上げた。基本的に、怜奈もセブルスも身内贔屓だった。

 

 「このクラスでは、魔法薬調剤の微妙な科学と、厳密な芸術を学ぶ」

 

 セブルスの口調はまるで呟くようだったのに、生徒たちは一言も聞き漏らさなかった。

 

 「このクラスでは杖を振り回すようなバカげたことはやらん。そこで、これでも魔法かと思う諸君が多いかもしれん。フツフツと沸く大釜、ユラユラと立ち昇る湯気、人の血管の中を這い巡る液体の繊細な力、心を惑わせ、感覚を狂わせる魔力……諸君がこの見事さを真に理解することは期待しておらん。我輩が教えるのは、名声を瓶詰めにし、栄光を醸造し、死にさえ蓋をする方法である――ただし、我輩がこれまでに教えてきたウスノロ達より諸君がまだましであればの話だが」

 

 演説の後は教室内が一層静まりかえった。怜奈は詩的でありながら、まさに魔法薬学の魅力を的確に表現しているセブルスの大演説に拍手を送りたい気分だったが、決して空気が読めない訳ではないので、うっとりと彼を眺めるだけに留めた。身内フィルター絶賛発動中の怜奈は、周りなどどうでもよくなってしまうのだ。

 セブルスが突然「ポッター!」と叫んだ。

 

 「アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じたものを加えると何になるか?」

 

 唐突な質問に、名指しされたハリーだけでなく、一部を除いたクラス中がきょとんとした。怜奈もぽけっとセブルスを見つめ、そして、初めての授業でなぜそんな教科書後半の欄外に書いてある注釈から抜粋した質問をするのだろうと思った。

 

 「わかりません」

 

 「チッ、チッ、チ――有名なだけではどうにもならんらしい」

 

 セブルスは口元でせせら笑った。ハーマイオニー・グレンジャーが高々と手を挙げていたが無視された。

 

 「ポッター、もう一つ聞こう。ベゾアール石を見つけて来いと言われたら、どこを探すかね?」

 

 今度は教科書中盤で一行程度しか出てきていないものについての質問だ。

 

 「わかりません」

 

 「クラスに来る前に教科書を開いて見ようと思わなかったわけだな、ポッター、え?」

 

 怜奈はドラコ達が身をよじって笑うのをぎっと睨みつけた。あまりに冷たい目で射抜かれ、ドラコがぴたりと笑うのをやめた。

 

 「ポッター、モンクスフードとウルフスベーンとの違いは何だね?」

 

 その質問なら、もしかしたら答えられるかもしれない。「薬草ときのこ千種」の十数頁に載っていたのを知る怜奈は期待したが、ハリーは知らない様子だった。この質問で、とうとうハーマイオニーが椅子から立ち上がった。

 

 「わかりません。ハーマイオニーがわかっていると思いますから、彼女に質問してみたらどうでしょう?」

 

 グリフィンドール生の数人が笑い声をあげたが、セブルスは眉間の皺を濃くした。一方、怜奈も顔を顰めていた。楽しみにしていた魔法薬学の授業で、よく慕う人物が初回にも関わらず普通なら答えられない質問をし、わかっている生徒を指しもせず、大人げなく少年を嘲笑するのだ。怜奈はその理由を知っているが、やはり見ていて気持ちのいいものではないし、せめてハーマイオニーを指してやってもいいのではと思う。

 

 「座りなさい」とハーマイオニーにぴしゃりと言ったセブルスと怜奈の目が合う。セブルスは怜奈の表情を見て僅かに目を見開くと、きまりが悪そうに数秒目を泳がせ、それから再び怜奈に視線をやった。

 

 「クラハシ、今の三つの質問に答えなさい」

 

 セブルスがそう言うと、スリザリン生がぎょっとした。自分達に矛先が向くとは思っておらず、いくら秀才の怜奈でも答えられないと考えたからだ。グリフィンドール生も驚きながら怜奈を見た。当の怜奈は何事か思案している様子だったが、数秒して冷やかな微笑を浮かべながら口を開いた。

 

 「第一の問いの答えは眠り薬です。他に刻んだカノコソウの根や催眠豆の汁などを加え、水のように澄んだ色をしており、成分が強すぎると一生眠り続ける場合もあります。その強力さ故『生きる屍の水薬』という別名があるくらいです。第二の問いの答えはヤギの胃です。ベゾアール石はヤギの胆石で、大抵の毒に対する解毒剤になりますが、毒物を摂取して痙攣などをしている者に無理に飲ませようとすると窒息死する危険性もあるため、注意が必要です。第三の問いの答えは名称こそ違いますが、同じ植物のことです。私の国ではトリカブトといい、根に毒があります。近年では脱狼薬に用いられたことで脚光を浴びましたが、その有毒性の高さから、服用したものの体を蝕んでしまうのが難点と言われています」

 

 「……正解だ。スリザリンに10点。諸君、なぜ今のクラハシの答えをノートに書き込まんのだ?」

 

 いっせいに羽ペンを取り出す音が聞こえ、それに被せるようにセブルスが言った。

 

 「ポッター、君の無礼な態度で、グリフィンドールは1点減点」

 

 怜奈の目が冷たく光ったのに気付いたのはセブルスだけだった。

 その後もセブルスのあからさまなスリザリン贔屓は続いた。セブルスは生徒を二人一組にしておできを治す簡単な薬を調合させた。マントを翻しながら、彼は生徒が干しイラクサを計り、ヘビの牙を砕くのを見回った。怜奈は聊か機嫌を直し、喜々として誰よりも早く工程を進め、ペアのドラコは怜奈の指示通りに動いた。セブルスが怜奈とドラコのペア以外に注意し、二人か角ナメクジを完璧に茹でたのでみんな見るようにと言った時、部屋中に鮮やかな緑色の煙が広がり、シューシューという大きな音を立てた。グリフィンドールのネビル・ロングボトムがペアを組むシェーマス・フィネガンの大鍋を溶かしてしまい、こぼれた薬が床に広がって生徒の靴底を焼き、薬を頭からかぶったネビルは体中から真っ赤なおできが噴出し、痛みに泣いていた。

 怜奈はおできを治す薬のような初歩中の初歩の調合で、まさかこんな大惨事を起こす人がいるなんてと呆気にとられ、ドラコも突然のことに目を白黒させていたが、セブルスはすぐに怒鳴り声をあげて杖を振り、床にこぼれた薬を消し去った。

 

 「バカ者!おおかた、大鍋を火から降ろさないうちに、山嵐の針を入れたんだな?」

 

 ネビルはぼろぼろ涙を流し、鼻にまで広がったおできが痛々しい。

 

 「医務室に連れて行きなさい」

 

 セブルスは忌々しそうに言い、出し抜けに彼らの隣で作業していたハリーとロン・ウィーズリーに矛先を向けた。

 

 「君、ポッター、針を入れてはいけないとなぜ言わなかった?彼が間違えば、自分の方がよく見えると考えたな?グリフィンドールはもう1点減点」

 

 その理不尽なセリフにハリーが抗議しようと口を開きかけた時、スリザリン側の一番前に座っていた怜奈がかつかつと足音を立て、セブルスとハリーの側にやってきた。その行動にグリフィンドールだけでなくスリザリンからも視線が集まる。

 

 「それはあまりに理不尽ですわ。今の減点、取り消してください」

 

 冷たい微笑を浮かべ、怜奈がよく通る声で言った。生徒たちがざわつく。セブルスは眉間の皺を増やし、怜奈を睨みつけた。

 

 「ほう、スリザリンの君がグリフィンドールの生徒の肩を持つのかね」

 

 「寮の垣根など関係ありません。私、個人的にミスター・ポッターに思い入れがある訳ではありませんが、授業の最初から、スネイプ教授が彼ばかり減点対象にするのを正直見かねておりました」

 

 「我輩がポッターから減点したのには相応の理由がある」

 

 「あら、私にはミスター・ポッターが事実を述べたようにしか思えませんでしたけれど。ミス・グレンジャーが手を挙げていたのに、彼女を指名しなかったことに何か合理的な理由でもおありなのかしら?そもそも、最初の三つの質問もおかしいですわ。トリカブトについては兎も角、『生きる屍の水薬』もベゾアール石も、『薬草ときのこ千種』の後半に少しの注釈があるだけで、実際に扱うのは6年生以降のはずです。まさか、教授はミスター・ポッターがたった一カ月で教科書を全て暗記できるとでも?それは無茶な話ですわ。このクラスの大半が、そのような神がかった行為はできませんもの」

 

 「…………」

 

 怜奈が笑みを深めて一息に言うと、セブルスは言葉に詰まった。心なしか、地下牢の気温が下がった気がする。しかし、それは錯覚でもなんでもなく、気が高ぶったせいで怜奈の薄れた雪女の血が活性化し、彼女の体から冷気が発せられているからだった。

 

 「今の減点理由もこじつけにしか聞こえませんでしたわ。そもそも、最も悪いのは手順通りに調合しなかったミスター・ロングボトムですが、その失敗の責を負うべきは監督者たる教授であるはずです。よもや、我が誇り高きスリザリンの卒業生にして寮監であらせられる貴殿が、己の過失を生徒に転換し、それを口実に減点しようなどという卑劣な行為……なさるはずありませんわね?」

 

 怜奈が小首を傾げると、どこからか冷たい風が吹き、彼女の長い髪が靡いた。色の異なる黒い瞳がぶつかる。痛いほどの沈黙を破ったのは、セブルスだった。

 

 「……先ほどの発言を撤回する。ポッターではなく、過失によって授業を妨害したロングボトムから一点減点する。授業を再開する。各自席に着きなさい」

 

 「まあ、流石スネイプ教授!思考が柔軟でいらっしゃる」

 

 セブルスがマントを翻して教壇に足を向けると、怜奈が相好を崩して明るく言った。その言葉は嫌味がたっぷり含まれていたが、セブルスは何も言わなかった。結果としてグリフィンドールが2点減点されたことに変わりないが、セブルスの理不尽な発言を撤回することが出来たので、怜奈は上機嫌で薬を完成させて提出した。

 

 終業のチャイムがなると、グリフィンドール生が逃げるようにして地下牢から出て行った。その時、ハリーが何か言いたげに怜奈に視線をやったが、怜奈は見たことがない魔法生物のホルマリン漬けを見ていたので気が付かなかった。

 

 「行こう、レイナ」

 

 「先に行っていていいわよ。私、スネイプ先生に少しお話があるから」

 

 そう言うと、ドラコは顔を顰めた。きっと、怜奈がセブルスに意見したことに怒っているのだろう。怜奈はそれを分かっていたが、ドラコのお小言など聞く気は毛頭なかったので先に牽制した。

 

 「さっきのことについて謝るつもりはないし、あなたのお説教を聞くつもりもないわ。他のスリザリン生からもよ。あなた方が私に何かを強制できるなら、話は別だけれど」

 

 怜奈が薄らと笑みを浮かべると、ドラコは苦虫を噛み潰したような顔をした。怜奈の発言通り、日本魔法界の王家と言われ、ブラック家の血が混じる怜奈の寮内での権力は絶大なのだ。

 

 「分かった。今度はあまり不躾なことを言うんじゃないぞ。減点されかねないからな」

 

 「その心配は御無用よ。友人としてお話するだけだもの」

 

 ドラコが溜息とともに言うので、怜奈は肩を竦めて返した。ドラコは納得した様子で、クラッブ、ゴイル、パンジー・パーキンソンといった取り巻きと共に地下牢を出て行った。

 一人残った怜奈が準備室に足を向けると、次の授業の準備をしていたセブルスが手を止めて振り返った。

 

 「何の用だね、クラハシ」

 

 「あら、そんな他人行儀な呼び方しないでちょうだい。私とセブルスしかいないんだから」

 

 保管棚に並べられた薬草を眺めながら怜奈が言うと、セブルスは教室に入った。本当なのに、と思いながら怜奈もそれに続く。確かに地下牢はからっぽで、がらんとした室内は一層寒々しく感じる。

 

 「それで、レイナは私に一体何の用があるのだね」

 

 セブルスの人称が変わる。倉橋家で話す時と同じだ。怜奈はセブルスの前に立ち、眉を顰めてまずは謝罪を口にした。

 

 「授業中、教授に対して生意気な口を聞いたこと、それについては申し訳なく思うわ。でも、セブルスがあんまり幼稚な意地悪するものだから頭にきちゃったの。私にとって、セブルスは博識で優しい人だったから、ああいう姿は見たくなかった」

 

 怜奈が唇を尖らせると、セブルスは少しの間目を泳がせ、そして怜奈の頭を撫でた。

 

 「……私も、今日のポッターに対する態度は聊か度が過ぎていたようだ。君を失望させてしまったようだな」

 

 「少しだけね。でも、授業は楽しかったわ。……ミスター・ロングボトムの失敗は想定外だったけれど」

 

 「あれは私も予想していなかった。最初に注意していた事を忘れるなど、うっかりでは済まされん。次回から奴には目を光らせねば」

 

 頭を撫でながら、実に忌々しそうに顔を顰めるので、怜奈はつい笑ってしまった。セブルスも目を細めて、刺々しい雰囲気は消え去った。

 

 「レイナは随分優秀なようで、私も寮監として実に鼻が高い。今日の授業でも一番に薬を完成させた上、手順も全て完璧だった。今後もその調子で頑張りなさい」

 

 「ええ、勿論よ。そうだ!ねえ、セブルス。私、もっと高度な薬を作ってみたいわ。放課後に教室を使わせてもらえないかしら?」

 

 「構わんよ。ただし、私が監督できる時に限るがね。……O.W.Lレベルの物は作れる筈だったな」

 

 「去年、お父様がO.W.Lと同じ問題をお出しになってパスしたから大丈夫よ」

 

 「そうか。では、課題については私が考えておこう。……ところで、学校生活には慣れたかね?イギリスと日本では生活習慣の違いも多いから、不便なこともあるだろう」

 

 それまで満足そうな様子で口角を上げていたセブルスが、ふいに気づかわしげに怜奈の目を見た。怜奈はくすりと微笑み、何の心配もいらないと答えた。

 

 「最初は戸惑うことも多かったけれど、大分慣れたわ。それに家に手紙を出したら、お祖母様が気を配って下さって、寮の部屋に本家の私の部屋の家具と同じ物を送ってくださったり、毎日和食を届けてくださったりしてるのよ」

 

 怜奈が入学初日に書いた手紙を読んだ祖母・千代子が、馴染みの薄い殺風景な部屋で生活させるのは可哀そうだと大げさに心配し、翌日の内に様々な調度品を式神に持たせて送ってきたのだ。さらにイギリス料理は体に合わないだろうと、毎日決まった時間に食事を届けてくれている。お陰で怜奈の部屋は、ホグワーツの寮部屋とは思えない内装になり、食事の不安も解消された。

 セブルスは倉橋家の過保護っぷりに呆れた顔をした。だが、自分が口出しすることではないと思ったのか、「それは良かった」と言っただけだった。

 

 

 




うちのセブルスは、心を許した相手の前では一人称が「私」に変化します。この話は、怜奈に言い負かされるセブルスを書きたかっただけです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。