ジョジョの奇妙な冒険 第5部外伝〜真実への探求〜   作:京都府南部民

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年末につき復活!

前話でボニート君の能力について明らか~とか書いていましたが、詳細は1話分使って説明しようと思っています

それと勝手ながら更新が停止しまっていた事を深くお詫びいたします


第3話 パックス・ロマーナ!③

「指揮官殿!7階の別働隊との連絡がつきません!」

 

「指揮官殿!一部だけですが電気が復活しているフロアが!」

 

「指揮官殿!6階の先遣隊との連絡が絶たれました!」

 

1階のロビーでは黒シャツ達が小さな声ながらも慌ただしいやり取りを繰り返していた

何度も何度も同じ場所を行ったり来たりしては作戦事項を確認し合っている兵が思わぬアクシデントによりうまく対応ができず、その場にただ立っている者もいれば、とりあえず仕事をしているフリを見せる為に意味も無く歩き回っている者が多い。

それに、この状況でもっともうまく対応できていない者がいた。

中央のイスに優雅に腰かけていた『指揮官』である

爪を噛み、貧乏ゆすりを繰り返している

 

「(いかん!兵に動揺が走り始めている!おまけに私までもが『ソワソワ』しているとは!)」

 

ここで『指揮官』の経歴について少し話させてもらおう

本名は、ベネデット・カナーリ

元々、大企業の平社員であったが、ある時上司が政治家との癒着について知ってしまい、それを上司に問い詰めたが、あえなく一蹴される。案の定クビになってしまったベネデットは路地裏を放浪している時、右翼組織に勧誘される。そこで意外にも頭角を示し現在の『指揮官』の地位に就いている

 

「あの指揮官殿…」

 

「焦るんじゃない!先遣隊との連絡が絶たれたからなんだというのだ!増援だ!増援を出せ!」

 

「は、はい!」

 

通信兵がぎこちなく敬礼し、去っていく

後ろに控えていた兵士たちは通信兵の指示に従い階段を登り始めた

 

「私は……戻ってしまうのか?あの時と同じようにみじめに…」

 

その瞬間、指揮官から大量の汗を噴き出し体もブルブルと震えだしている

 

「!……『ブルブル』まで起き出した……つまり」

 

指揮官は頭を腕で覆うようにしゃがみこみ、周りからの声を聞こえないように遮断する

まるで悪い事をした子供が親からの叱責を拒絶するように

 

「絶対、『嫌な事』が起こる!絶対に、絶対にぃぃぃぃぃ!」

 

「指揮官殿!お気を確かに!」

 

指揮官が遂に喚きだした

部下が寄ってくるもそれを振り払うかのように腕を振りまわす

狂いだした指揮官に部下達は疑念を持ち出す

「自分達の計画は本当に遂行されるのか」と

 

 

 

 

 

 

指揮官が狂いだしている頃

ボニートはエレベーターのワイヤーを使い降りていた

しかしその顔には疲労の顔が少し見える

 

「映画みてぇな事するとはゆめゆめ思っちゃいなかったが、これはこれで」

 

ワイヤーを掴んでいた腕の筋肉がゆるみボニートは勢いよくズリ落ちる

 

「きついんだよな」

 

ボニートの上には「2」の数字が書いてあり開きっぱなしのドアから光が漏れている

それを確認したボニートは少し微笑み

 

「1階まで目と鼻の先……よし、見えてきたぜ!」

 

ボニートは何と…手を離したッ!

2階と1階、数字こそ1違いだがその間の距離は非常に長い!

だが、ボニートはそんな事を考えてはいない!

つまり!彼にとっては距離など1kmであろうと100kmであろうと変わりないのだッ!

 

『キャプテンビヨンド』!

 

 

 

 

 

 

「人質を殺せッ!皆殺しだ!」

 

「指揮官殿!どうか落ち着きください!」

 

1階のロビーは本当の意味で慌ただしくなっていた

人質は遂に泣きだし、指揮官は声を荒げて部下を怒鳴りつける

周りにいる兵はほぼ年若く恐らくだがまだ20にも満たない年の者もちらほらと見受ける事が出来る

 

「言う事を聞かん者は死刑だ!」

 

指揮官は銃を取り出し、最初に泣き始めた人質へと近づいていく

 

「貴様かぁ!秩序を乱した者は!」

 

「いやぁぁぁぁ!」

 

拳銃の銃口を人質の頭につける

手が震えながらも笑顔で引き金に指を添える事が出来るのはもはや狂気そのものでしかない

 

 

 

 

 

「一般人巻き込むたぁ、とんだアマチュアだな」

 

 

 

 

 

開くはずのないエレベーターがゆっくりと開き、そこから埃まみれになってよく見えないが藍色のスーツを着た男がせき込みながら這いあがってくる

 

「お目にかかれて光栄でございます。指揮官殿。とでも言やぁ満足か?」

 

藍色スーツの男、ボニートが指揮官の目の前に立つ

指揮官は掴んでいた人質を乱暴に離し銃口をボニートへと向ける

しかしボニートは驚かず堂々と指揮官の目の前に立ち、挑発しているかのように口笛を吹きながら辺りを見回す

 

「そうか、貴様が我らの先遣隊を!」

 

「先遣隊?あぁ、あの軍服モドキ共の事か?」

 

「モドキではない!彼等は立派な『軍人』だ!イタリアに忠誠を誓った『神聖なる軍隊』だ!」

 

増援により少なくはなっているがロビーにいた兵士は銃を手にしボニートへと銃を向ける

指揮官は自分が優勢に立ったと確信し右手を上げる

 

「そしてこの私も『軍人』だ!歴史に名を残す程のな!」

 

指揮官の右手がボニート目掛けて振り下ろされる

兵士たちは銃を一斉に発射し、ボニートの位置には煙が充満し彼の姿は視認できない

指揮官は銃を天高く掲げる

 

「諸君!仇は討った!もはや恐れるもの無しぃ!」

 

周囲から感嘆のどよめきがあがる

指揮官もにやりと笑い今度こそ優雅に座る

 

しかしだ

良く考えてほしい

完全武装していた兵隊を不意打ちに近い形で倒したボニートにとって周りからの一斉射撃などで死ぬであろうか?

ましてや銃で撃ったのだ。なぜ、床に血が付いていないのであろうか?

 

「人間の油断は……大体『勝利の後』にやってくるモンだ、ってポルポさんが言ってたが……本当だったな」

 

ボニートは天井の電灯にぶら下がっていた

さらに言うと無傷!

 

「今度はこっち……」

 

「貴様!なぜ!」

 

ボニートは颯爽と床におり、拳銃で自身の生存に驚愕していた周りの兵士を滅多撃ちにする

しかし所詮と言っては語弊が生じてしまうが彼が使っているのはあくまで銃

弾切れしてしまった銃にボニートは舌打ちをし、鞄の中から手榴弾を2つ取り出し、一つをドアの方に投げ、もう一つを階段へと投げた

 

「これで警察が来るぁ、お前らも1時間後にはブタ箱行きッてもんかねぇ?」

 

ボニートのこの言葉に黒シャツの兵隊達はいっきに青ざめる

1人の兵士が黒シャツを脱ぎ、爆破されたドアへと向かい外へ逃げ出した

その兵士に引き続き、続々と兵隊達が銀行より逃げ出す

ボニートは人質達のテープを引きはがし、避難するように指示をする

 

「これで全員かな……ん?」

 

ボニートは人質達が我先にと避難している中、ある人物を見つけた

指揮官だ。黒シャツを脱ぎ捨て人質達に続いて自分も逃げようとしている

ボニートは『キャプテンビヨンド』を発現させ、指揮官を壁に叩きつける

 

「『敵前逃亡』はよォ~、死刑じゃなかったかねェ」

 

「あぁ、あぁ、あぁ……」

 

指揮官は迫りくるボニートに怯え後ずさりする

ボニートの後ろでは炎が燃えており指揮官の恐怖に拍車がかかる

 

「どうする?ぶん殴られるか、投げ飛ばされるか?どっちが良い?」

 

「嫌だぁぁぁぁぁ!」

 

指揮官はみじめにも泣き喚き、窓の方へと逃げ出す

脳内が混乱しているせいか窓には到達したものの手が上手く回らず、鍵をガチャガチャさせているだけだ

 

「頼む…頼む…開け!開け!」

 

「窓から出たがってるって事は『遠くに行きたい』…つまり『投げられたい』の解釈で良いな?」

 

『キャプテンビヨンド』が指揮官の後ろに現れ―――思いっきり『ぶん殴った』

 

 

 

 

 

 

 

 

~事務所~

 

「あ~、腰痛い」

 

目の前にあるソファに座り込み、鞄の中から通帳を取り出す

通帳は黒焦げになっていた

軽く舌打ちした後、ボニートは焦げた通帳をビリビリに破きゴミ箱に放り投げる

 

「文無しかぁ……」

 

だらーっと、上を見上げぶら下がっている電灯を見つめる

すると電話が鳴り響いた

足で鬱陶しそうに引き寄せ受話器を取る

 

「はい~もしもし、こち~ら~ボニート~」

 

『声に張りが無いよ、ボニート君』

 

電話の相手はポルポだった

 

「どしたんですか?さっき連絡入れたばっかなのに」

 

『そのさっきの間にあることが決まってねェ~、まったく上層部の連絡網には困ったものだよ』

 

「それはそれは……で、何ですか?新しい仕事?」

 

『君がこの前解決した銀行強盗事件の件でね。実はあの右翼団体、我が「パッショーネ」としては非常に厄介な組織でねェ…』

 

ポルポはボニートに次の事を話した

あの指揮官率いる右翼団体はイタリアの中でも巨大な組織で「パッショーネ」の運営を邪魔していた事

強盗事件以降、その右翼団体は弱体化し、近々警察が強制捜査に乗り込むとの事

最後に「パッショーネ」は強制捜査後、警察に多大な賄賂を送り右翼団体の土地一体の利権を自分達に譲る事だそうだ

 

「人事異動がめんどくさくなりますなぁ~、しばらくデスクワーク一辺倒ですかね?」

 

『その人事異動の対象が君だよ』

 

「え?」

 

ボニートの顔からいつもの飄々とした表情が消え、しばらく放心状態に陥る

しかしポルポは容赦なく話を続ける

 

『右翼団体の持っていた土地の4分の1を君に譲渡する形になってね…ブふぅ~、ま、とりあえず昇進おめでとう』

 

『今まで「パッショーネ」に貢献してきた君の功績は上層部も評価していてねェ~、件の強盗事件解決が決定打になったようだよ』

 

『形式上は幹部にはなるが、私の部下である事には変わらないみたいだからね』

 

『まぁ、よろしく頑張りたまえよ若人』

 

ポルポは言いたい事だけを言って無慈悲に電話を切った

ボニートは電話を切られた事に気づかないのか、未だに受話器を耳に当てている

 

「へ?」

 

口をぽかんと開け、きょとんとしている様は滑稽の極みである

 




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