ジョジョの奇妙な冒険 第5部外伝〜真実への探求〜   作:京都府南部民

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ゆうがたクインテットを最後の演奏会部分だけでよいから再放送してくれないかなって思う今日この頃


第34話 作戦名シャルル・ド・ゴール②

「後ろを狙うのが君の流儀か…ホル・ホース君?」

 

「手を頭に、銃は捨てろ」

 

簡潔な言葉でペリーコロに命令する

逆らっても意味なしと踏んだのか、あっさりと承諾した

ただし、『皇帝』の銃口の先がぶれることはない

 

「取引をしようじゃねぇか」

 

「取引?」

 

「俺たちはこれ以上アンタを追わない。実質追えないっていうのが本音だが、とにかく追わないし探らない」

 

「それをその男が認めると思うかね」

 

「…何とかするさ」

 

「ほう…で、儂には何がある?ユーロを積んだところで意味は無いぞ」

 

その言葉を待ってましたと言わんばかりに指をパチン!と鳴らす

すると、黒服の男がよろめきながら現れた

ホル・ホースは男の頭を掴み、地面に倒す

 

「ボス…すみません」

 

「こいつは飛行機のコックピットでビクついていた奴だ。コイツがいなけりゃアンタは飛べない。反面、ソイツがいなければ俺に給金が回ってこない」

 

「それは……嫌だな」

 

その老獪な知恵をもってしても、この場を瞬時に切り抜ける最良の言葉は中々思いつかない

うんうんと唸り、これもダメあれもダメと小さくつぶやいている

 

「どうする!?俺の気は長くは無いぜ」

 

「……なら、仕方がない。後味の悪さはゼルビーニの特徴だからな」

 

ゆっくりと

両者は互いの人質へ歩みを始める

ホル・ホースはボニートへ、ペリーコロはパイロットへ

そして、すれ違う正にその時!

 

「後始末できてこそ男だとは思わんかね?」」

 

ずおっ

 

ペリーコロからもう一人のペリーコロが現れる

ストレンジャーだ

その手にはナイフが握られており、発現した勢いでホル・ホースとの距離を詰める

だが、そこはガンマン

利き腕である右腕が使えないのが痛いが、左腕でも額を貫通するぐらいの精度はある

 

「サンチェスの契約料分。君の命で払い戻させていただくよ」

 

「やっぱり、ね」

 

パン!

 

第2弾を撃ったその直後、周囲が白煙に包まれる

サンチェスからくすねた煙幕弾だ

 

「ごほっごほっ!目くらましのつもりか」

 

そうは言うが、この煙を晴らすことはできない

老体故にこの環境での激しい運動はあまりよろしくない

口元にハンカチをあて、目に涙を堪らせながら晴れるのを待つしかない

まぁ、待ったところで

 

「逃げおおせたか……」

 

敵がいる可能性はゼロに近い

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

滑走路から離れ2人は飛行場跡から脱出できた

ニースの街中を人目に悟られないように路地裏ルートでトラックへと向かう

 

「ボニート、おい起きろ」

 

「うぐぇ」

 

腹に拳一つ分の圧力が来たショックでボニートは目を覚ました

 

「はぁ…ふぅ……ホル……ホース。お前がうぅ!いるってことは」

 

「あぁ、作戦通りだ。見ろ」

 

示された親指の先からジェットエンジンの音がする

ロッキードの飛行機が飛び立とうとしているのだ

 

「あいつは乗ったか?」

 

「おそらくな、っていうか絶対だ」

 

顔に笑みが浮かぶ

作戦は成功した

あいつは乗ってくれたんだ

 

「イヴェコに、早く…あぁ!」

 

「無理するな、肩貸してっやからよ」

 

「すまねぇ…はぁぁ」

 

ホル・ホースも右肩を撃ちぬかれこそしたが、ボニートに比べれば大したものではない

ダムダム弾を2発喰らって意識を戻したんだ

その精神力たるや見事

しかし、スタンドを発現するにはいささか脆すぎる

 

「飛行機はどっちに行った?」

 

「北北東だ。軍のレーダーに引っ掛からない為だろうな」

 

「よし、出してくれ」

 

ブロロロロロロロロ………

 

トラックは重厚なエンジン音を上げUターンする

飛行機を追っているのだ

あまり離れすぎると見失ってしまうし、どこでアメリカ行きルートに切り替えるかも見ておかなければならない

だが、一番の目的は……………………

 

 

 

電波を届けるためである

 

 

 

 

 

~ロッキード機内(side PERICOLO)~

 

『ボス、もうそろそろ大西洋です』

 

「……………………」

 

逃がしてしまった

妥協という考えは大嫌いだが、こうなっては仕方がない

向こうの本部に着き次第、早速暗殺者を手配して合理的に始末するとしよう

いやはや、こういう時に限って郷愁の念というのは強くなってくる

 

「やはり、オチは下手くそだったな」

 

それがゼルビーニの家系なんだろう

責めるわけではない

アルバーノの時もそうだったが、ボニートもあぁだった

そういうものと割り切るしかないのか

 

「…………………」

 

グラスに入ったスコッチの味が全くしない

運動のし過ぎ…いや、先の戦いにおける不完全燃焼のせいだ

サンチェスがヘマをしなければ、もう少し楽しめたんだがのう

フン、まぁ良い。所詮金で雇ったチンピラだ

 

「音楽をかけてくれ。クラシックを頼む」

 

『えぇ?ですが、ここで電波を取るとレーダーに引っかかる恐れが…』

 

「この時間帯の大西洋…いったい誰が気にするのかね?」

 

『………はい、了解しました』

 

気の利かん奴だ

こういう嫌な気分の時は音楽を聴くに限る

 

―'O sole mio! sta 'nfronte a te!―

 

おぉ……神はとことん懐かしい思いにさせる気だ

そうだこの曲だ

皆で歌いあったなぁ

桟橋で酒を酌み交わしながら、音程もリズムも気にせずに自分らしく歌うのだ

 

「sta 'nfronte a te……」

 

 

 

『クァンノファノッテ…』

 

 

 

「!?」

 

何だ、この声は

さっきまで聞いていた歌手とは違うまったくの別の声だ

おまけに、こう……通信機のようなノイズも入っている

 

『どうだい、ペリーコロ?俺の美声は』

 

あぁ!そうだ!

何だ、何が不完全燃焼だ

アルバーノ!お前は最高の男を生んでくれたな

最高に燃え上らせてくれるじゃないか……

 

「ボニート君!」

 

『空の旅はどうだ?老体にゃきつかろう』

 

「ふっはっは!君こそ白々しい、あのケガでよくしゃべれるものだ」

 

流石はと言ったところだ。儂と銃を交わしあっただけある

 

『俺があんたのことを疑ったのは、アルバーノについて聞いた時だ』

 

その通りだ!

君を始末するには、どこかでボロを出さなければならなかったのだ

上手く喰い付いてくれた

儂は誘ってたんじゃよ。君がポルポの庇護下にある以上、自ら出向くというのは危険じゃったからな

あの時、「知らぬ」と言えば君はアルバーノについて諦めていただろう

このイタリアを離れると決意したとき、一番の未練であり障害だったのが君だ!

始末しなければ処理しなければ解決しなければ……殺さなければならない

ボスの真似事をしたくは無かったが…そうギャングを復古させるためには過去を一掃しなければならんのだ

 

『勘違いするなよ?俺がアンタをここまで狙うのは、何も父母の仇討ちなんて高尚なものじゃない。……言い出したら色々あるが、アンタにとどめを刺すこと!それがアルバーノの言う真実…そう思ったからさ』

 

真実だと?

儂にとどめを刺すことが?

ふぁはははは!親子そろってバカな連中だ

 

「真実?それがどうした?声は届いても肝心の攻撃が届いていないのでは何の説得力もないぞ」

 

『哲学の話になるが…アンタは自分が今どこにいてどこに向かっているか、考えたことはあるかい?』

 

「何を……言っている?」

 

『文字通りさ。おかしくないとは思わないか?一定の高度を保つ飛行機が……』

 

その言葉を聞き、儂は操縦席へと向かった

確認しなければならない

最後まで聞く必要もない

奴が何を言うのか理解した

 

「おい!今進路はどうな……って…」

 

コックピットはもぬけの殻だった

座席に捨てられている緊急脱出用キット

操縦桿はガムテープやつっかえ棒などなど様々なもので固定されており、動かすことはままならない

クソぉ!こんなところで負けてたまるか

儂はペリーコロ。ギャングを立て直す男だ

操縦桿が破壊されたわけではない

邪魔な物を取り除けば何とかはなる

 

「ストレンジャー!」」」」

 

スタンドをフル活用してそれぞれに指令を与える

 

「早くしろ!このままだと成層圏に突入するぞ!」

 

「分かっとるわい!…えぇい、これでどうじゃ」

 

3体目がすべてのテープを剥がす

よし、これなら行ける

 

「機体そのものを旋回し、本来のルートに戻す!何かに掴まっておけ!」

 

「エンジン正常!昇降舵修正!」

 

残念だったなボニート!

自分から手口を表すとは、ギャングの風上にもおけん奴だ

引き分けにすると思うなよ

儂はそういうなぁなぁの勝負が大嫌いなんじゃ

 

「このハンドルを引けばッ!儂の勝ち、勝利じゃあ!」

 

 

 

 

 

ッッッドォォォォォォン!!!!!!!!!

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「ふぁぁぁぁ~~~~」

 

朝の眠気に人々は戦うことになる

中には負けてそのまま眠ってしまう者も多い

だが、今日の朝はスパイスが効いている

ヨーロッパ人は総じてニュース・新聞が大好きだ

経済面から国際面、娯楽面にかじりついているマダムもいる

 

「あなた、コーヒー」

 

「あぁ、ありがとう」

 

新聞にコーヒーあるいは紅茶、そして愛する妻のキス

うむ、これぞヨーロッパだ

 

「やっぱり株価は下がる一方か……ん?」

 

言ったはずだ

今日の朝はスパイスが効いていると

紙面に書かれた一文は……

 

「サリー!テレビをつけてくれ!」

 

 

 

 

『謎の航空機が大西洋上(フランス領海)で大爆発!?』

 





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