ジョジョの奇妙な冒険 第5部外伝〜真実への探求〜   作:京都府南部民

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ずっと前から知っていましたがボニート君のbonito
イタリア語で「カツオ」を意味示すそうです。


第33話 作戦名シャルル・ド・ゴール(ボニート)

「ようこそボニート君!ここに来るのは君だと思っていたよ」

 

「ご招待に預かった覚えは無ぇよ」

 

野郎勝ちを気取ってやがる

役者のような身振り手振りが一々鼻にかかる

おまけに好々爺然としたあの笑い

まるでポルポさんじゃねぇか

 

「オペラじゃないんだから、もう少し自然になったらどうです?」

 

「ふぁっはっはっは!老人がここまで楽しんでおるのだ。ノリを知りたまえよ若人」

 

ノリと言われても俺は『殺し』に来たんだ

ポルポさんから「殺しは静かにスマートに」と教わった

だが、なんだろうな。これが世代の違いってやつらしい

 

「あんたに幾ばくか聞きたいことがある!イヤでも答えてもらうぜ」

 

「アルバーノのことか?それともボスに対してか?あるいは……君の事かな?」

 

「冗談はやめろ。こっちは本気だぜ」

 

ペリーコロからため息が出る。つまらない奴だとでも思っているのだろう

 

「かつて、ギャングは公権力との戦いであった!」

 

「………………………」

 

「時には一般人を巻き込み、政治家実業家投資家に触手を伸ばし、自らの権益の拡大の為に朝から晩まで考え、手段を選ばずより率直な方法ですべての事件を引き起こし解決。その循環であった!」

 

「マキャベリズムか?難しい言葉使えばだまされるようなオツムじゃねぇぜこっちは!」

 

「権謀術数か…ふっ、ならば君はどこの誰のおかげでその職に就いているのかね?ポルポに人道博愛の精神なんて一欠けらもありはせんぞ?」

 

「てめぇ……」

 

とはいうものの、あながち間違っていない

あの人の事だからペンシルバニアでもどぎついことやってんだろうな

バツの悪い顔に、相手はしたり顔

 

「『一般人をなるべく巻き込むな』……アルバーノは全く正論だけの男だったよ。だが!それで回るほどギャングは甘くない!」

 

「だから、殺したのか!!

 

「………奴の考えはギャングではなかったよ」

 

自分こそ真のギャングだと言い張りたいらしい

ご老体には生憎だが、元祖とか本当のとかいうキャッチコピーは飽き飽きしてんだ

誇り持つんならまだしも、我正しというやつは信用できないし「信頼」できない

 

「ボスもそうだ……最初は大分好感を持てた人物だったが……姿こそ見せんかったが大胆なやり方に憧れた連中がいたんだ、今の幹部連がそうだ。だが、どうだ?いざ勢力を伸ばすとなるとまるでカタツムリのように引っ込んで……幻滅したよ。だから、その秘密を守るために死んでやった。何も知らされていない秘密の為にな!」

 

杖を突きなおす音が滑走路に鳴り響く

 

「名調子の演説だったぜペリーコロ。大方の事情は分かったよ、要はアレだ。世代の移り変わりについていけないのを周りに押し付けているだけだろ?」

 

「ガキが言うじゃないか……」

 

怒らせちまったよ

笑顔でいるあたり、余裕かましてんだろうがそうはさせねぇ

ああいうタイプには、全力で煽っていくのがオレのスタイルだ

しかし、相手はポルポさんと同じくデキる人物

考えたかねぇが、もしかしたらもう奴の術中に嵌っているかもしれない

 

「そこだ!」

 

「ぬ……」

 

先手必勝

映画じゃないんだから間合いなんて考えてたらハチの巣になっちまわぁ

オートマグを一発撃って、資材の裏側に隠れる

幸いペリーコロが持っているのは杖だけと見た

…隠し玉は持っているだろうが

 

「(だからといって、何もせずに死ぬのはごめんだ。どうせなら思いっきり迷惑かけて死んでやる)」

 

資材から身を乗り出し、銃を構える

そこにペリーコロの姿は…いない!?

どこだ、どこに行った

 

「こっちじゃよ」

 

「な…ぐぁ!」

 

後ろに振り向いた直後、頭部に強烈な一撃が加わる

老体に見合わず中々キツイ一発だ

杖に鉄を仕込んでいやがるな

やられっぱなしは主義じゃねぇ!

 

「喰らいな!」

 

「ぐおぉ!」

 

頭のぐらつきなんてなんのその

今度は当ててやったぜ、体に3発・足1発

飛び散った血がソレを物語っている

後ろに回り込まれたのはびっくりしたが、俺のタフさを舐めてもらっちゃ困る

 

「へっ、何だい。もうちょっと戦ってくれるかと思ったんだがなぁ」

 

大きな戦いほどあっけなく終わっちまうもの

とは聞いたことがあるが、どうもこういうのは不完全燃焼だ

オートマグのマガジンも折角スペアを持ってきたのに使わず

いや、一番のがっかりはキャプテンビヨンドを使わなかったことか

 

「スタンド使いの見方は間違ってたかな?」

 

倒れ伏しているペリーコロに蹴りを入れ(かなり強力に)死んだかどうかを確認する

げしっ!どかっ!ばきっ!ぐおん!

うん、死んでいる。瞳孔が開き切ってるあたりその確証が持てる

 

「…イタリア暗黒街の大物ペリーコロここに死すってか?いや、もともと死んだ扱いか」

 

 

―死ぬのは君の方だー

 

 

気付いたころにはもう遅かった

左の肩に開けられた穴

飛び出すB型の血しぶきは目の前で倒れているペリーコロではなく、この俺ボニート・ゼルビーニ

それもただの弾じゃねぇこの痛み

一般の弾じゃありえない、ダムダム弾の痛み

だが、それよりもありえないのは………

 

「何で生きてやがる……ペリーコロ!」

 

「大きな声は出さない方が良い。出血に響くぞ?それはそれでありがたいがね」

 

おかしい

俺はちゃんと撃ったはずだし、死体も確認した

だのになぜ生きている

スタンド能力、これ以外にありえんだろう

俺はちゃんと本体を叩いたはずだ

例えそれがスタンドだったとしても、本体に影響が無いってのは考えにくい

信じたかないが、まさか蘇生能力を持ったスタンドなのか

だがそれなら、ルーマニアやシンガポールからの移動が説明できなくなる

 

「ご丁寧に銃で戦うスタンド使いのギャングがいるとは驚きだよ。キャプテンビヨンドはどうしたのかな?」

 

「…………へへっ、老人を大切に扱えっていうだろ?」

 

軽口で返すも頭の中はパニック状態だ

蘇生したペリーコロはさっきまでのスーツ姿ではなく、まるで特殊部隊が着るような防護服

手には最強の拳銃として名高いSW m500

オートマグ一丁装備のボニートではとても太刀打ちできない

 

「カエルの子は何とやらだな。その無様な姿アルバーノにそっくりだ」

 

まともな家庭で育った奴ならこの言葉を聞いて憤慨するんだろうな

嫌なことに俺はその感情が無い

更に言うなら、コイツは俺のそういう心を知ってる

はははは…やっぱりだ、俺は嵌められてたのか

 

「死ぬときは綺麗に……ちゃんと真ん中狙ってくださいよ?」

 

「往生際は良いな。感心感心」

 

M500の銃口は俺の眉間へと向けられる

嫌だ嫌だ、死にたくない、まだこいつにけじめをつけていない、ポルポさんに笑われちまう

死ぬときは綺麗に

くそっ、なんでこんな時にあんな言葉を律儀に守っちまうんだ俺は

 

「では、どれ………」

 

死ぬのか?死ぬか?死んでしまうのか?死んじまうのか?死のうとしているのか?死を恐れているのか?死を受け入れるのか?死を良しとするのか?死ぬ?死と向き合うのか?死と戦うのか?死がゆっくりとやってくるのか?死を享受するのか?死を抱くのか?死を…死を……死を………死を…………死を!

 

「えぇい!ちゃちゃこましい!」

 

キャプテンビヨンドッ!

死体の方のペリーコロを投げつけ、一気に駆け出す

こんなところでこんなやつに殺されてたまるか!

映画みたいに一旦間合いを取って、キャプテンビヨンドの小石攻撃でぼこぼこにしてやる

手始めに…!

 

「あばよマグちゃん!」

 

オートマグを時速60㎞でペリーコロに投げつける

キャプテンビヨンドの本領発揮だ!

持ちと投げ

この2つがあればナショナルリーグだって夢じゃねぇんだ

滑走路の周りは森林地帯だから石にも木にも困りはしない

夜目が効くのを待つことになるが、待ちの一手だ

焦るんじゃない、正確に狙うんだ

体のどこかに当たれば俺の勝ちと言っても良い

そうこう考えているとペリーコロが起き上がろうとしている

まずい、まだ距離を取っていない

 

「2つばかしくれてやる!」

 

「ぬぐっ!」

 

第二ボタンを引きちぎり時速100㎞投げつける

スピードこそ速いが、いかんせん物が小さすぎる

しかし、ペリーコロの叫びが聞こえてくるあたり良いところに当たってくれたのだろう

 

「どうせなら靴もだ!」

 

ダメ出しに靴も投げつけてやり、遂に裸足になった

小さな砂利が足の裏を刺激するがそこは滑走路、生の地面を歩くよりかはマシだ

滑走路の端に着いた辺りで地面に手を付ける

スタンド能力は工夫だぜ、ペリーコロ!

 

「キャプテンビヨンドにはこういうやり方もある!」

 

舗装された滑走路にビヨンドが手を突っ込み手ごろな岩を一つ取り出す

あまり穴をあけすぎると滑走路が使い物にならなくなる。それも目的だ

全ヨーロッパのマフィアを敵にまわしちまうが、あいつ一人に比べたら大した事じゃねぇ

ほぼ瓦礫同然の滑走路。これで野郎はここから飛び立てねぇ

残念だったな、ペリーコロ

 

「滑走路は破壊したッ。あとはお前を伸してやるだけだ」

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「はぁ……はぁ、ぐあっ。中々、無茶をやる…」

 

あの小童め

上手く当てたからといって調子に乗っているな

老骨の余裕を見せておればいい気になりおって

いや、あれぐらいが丁度良いのかもしれん

そこいらの奴だったら一目散に逃げている所だ

ゼルビーニの血は面白い

 

―どうした、ペリーコロ?怖くなったか?-

 

よく言う!怖がっているのはお前のはずだアルバーノ

シンシアを殺され、子供と離ればなれ、自分の体には不必要な穴が開き………

素晴らしいな、ゼルビーニというものは!

だから仕留めなくてはならん

彼は……彼の血筋はまさに脅威じゃ

本人には自覚は無いだろう

余計に危ない!自覚なき脅威、まったくもって度し難い

 

「わしの野望を、宿願を……邪魔されるわけにはいかん」

 

ボスも騙し息子も騙し部下も騙し

後には退けん。すべてを『無駄』にすることだけは避けなくてはならない

儂が生きていると知った以上、その探究心は認めるが生かしては置けん

 

「では…本気を出すとしよう………マジにな」

 

 

 

出て来い、『ストレンジャー』

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

「左肩は使いモンにならねぇが…俺にはキャプテンビヨンドがあるッ!」

 

ペリーコロのあの妙なワザ

迂闊に近づいたら俺の負けだ

ペッシと同じ方式でじわじわと追いつめてやる

夜の闇に眼は慣れ、正確な像は視認できないがシルエットははっきりとわかる

 

「全力で投げてやるぜ…!」

 

まずは一発

キャプテンビヨンドの投げはルースも越えるんだ

戦車砲レベルのスピードで硬度100の小岩を撃ち投げる

 

「ちっ、外した……だが」

 

下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる

弾はあるんだ

滑走路下から瓦礫・小岩を適当にかき集め、俺の左腕・キャプテンビヨンドの両腕で撃ち投げまくる

 

「そらぁ!大盤振る舞いだ、爺さんだからって遠慮するなよ!」

 

あのシルエットが右往左往している

あっはっはっは!おもしれぇ、クセになっちまいそうだ

 

「そろそろ当たってくれよ…」

 

そう念じた時

シルエットが不自然によろめいた

あそこだ。狙い撃ちぃ!

今まで散発的に投げていたのを一点集中型に絞る

 

「おぅれ!どうだどうだ!」

 

あたふたしろよペリーコロ!

老人だからって気を抜くようなボニートさんじゃねぇぜ

……よし、本気中の本気を見せてやる

投げのラッシュを一旦止め、眼を細める

狙撃ならぬ狙投

…起き上った……よろめいてる………バランスを保つ…………今だ!

 

「ふん!」

 

砲口初速は1000m!ビヨンドのスライダーを喰らいなぁッ!

 

ーうぼぁぁあああああ!-

 

BINGO!あの断末魔が聞こえたのなら戦果は上々だ

だけどな…俺がこれで満足すると思うなよ

 

「えぇ、そうだろ。ペリーコロ!」

 

確かに俺はバカだがアホじゃない

奴の戦法は大体わかった

自分自身を囮にして相手が油断しきったとこを、蘇生してぶっ叩く

つまり

 

「二度背中を狙われるのはゴメンだ」

 

「うぐぶ…おぉ……」

 

後ろに回っていたペリーコロの腹に小石を埋め込んだ

やっぱり、おじいちゃんだな

若者を侮るからそうなるんだよ

俺は2度同じことをされるのが大嫌いなんだ

しかし、これで仕留めたと思っちゃならねぇ

これはあくまで確認だ。蘇生の回数はまだ把握していないからな

なら、俺のとる手段は……

 

「今度は上に逃げっ…うぉ!」

 

キャプテンビヨンドに持ち上げられたその時

今度は俺の腰骨の辺りに違和感が…痛覚が走る

やべ、いやこれマジで…やべぇ

この痛みはさっきと一緒だ。ダムダム弾!

 

「ふっ、ぐお…ペリー……コロぉ」

 

「ふはははっはっは!亀の甲よりだ!若者を侮るな?そんなだから、こんな老人に足元を掬われるんじゃよ」

 

バカな

俺が殺したペリーコロの死体の上に………また、ペリーコロが!

口を三日月に歪めやがって…気持ち悪ぃ

石で反撃…ダメだ血が抜けて頭が回らねぇ

 

ズドン!

 

「ゔあっ!」

 

「……ふ~ん、気が変わった。そのまま心臓を吹っ飛ばすのも気持ちいいが、こうして苦痛にゆがむ顔を見るのも最高じゃ。アルバーノはすぐに死んで楽しみがいが無かったからなぁ」

 

あぁ、分かった。遅すぎたが分かったぞ

こいつゲス野郎だ

それもデキるタイプのゲス野郎だ

 

「ダムダム弾なんて……もうちょっと国際法勉強した方が良いですよ…」

 

「頭を使いたまえよ、弾は撃てばもう使えない。むしろ貢献しているといった方が良いよ。ふふふふ……」

 

ハイテンションだな

クソッたれぇ、万全の状態ならこっからカウンター一発KOしてやるっていうのによ

 

「ふふふ…どれネタバレをしてやろう」

 

「?」

 

何だコリャ

気のせいかペリーコロが2人に………いや、3人、4人!増えていやがる!

これがこいつのスタンド……蘇生ではなく分身ッ!

 

「「「「分かるかね?ボニート君。わしはその気になれば君を殺すことをはじめ、パッショーネを掌握することだってできるのだよ。4体までしか出せないのが欠点だが…まぁ、そんな小さなことに精を出そうとは思わん」」」」

 

「…蘇生能力じゃなかったのか……………」

 

「「「「蘇生?ははっ、言い得て妙だな。喜びたまえボニート君。君は今世界で唯一ワシのスタンドを知った男だ!ワシの『ストレンジャー』をな!」」」」

 

「スト、レンジャー……」

 

激しい出血で意識が遠のいていくなか、ストレンジャーという言葉が耳に残った

他人、客、見知らぬ人

それがお前のスタンドか

なるほど、その能力なら世界各国に自分を回せるってこった

シンガポールもルーマニアも、そして今から行くであろうアメリカもな

 

「「「「この能力を隠すのはいささか面倒でな」」」」

 

「「「ボスや部下にも何回か疑われてな」」」

 

「「だが、能ある鷹は爪を隠す」」

 

「非スタンド使いという印象はとても役立ってくれたよ」

 

出血がうっ!

本格的にやばい…意識が飛び、かけてる

 

「そして私はね……うん?おやおや」

 

最悪のパターン

こっち見んなよお爺ちゃん

やっと単体になれたんだ

そのまま古話を続けてくれればこっちも手がある……のかな?

ガハッ!

 

「分かったぞ、もう意識が保てんのだろう?その出血量、医者でなくともよう分かる」

 

「………………」

 

「辛いか?痛いか?その表情をもっと深めるんだ」

 

「だま・・・れ、よ       ジジイ」

 

「ふふ、良い目だ」

 

1人になったペリーコロがm500の銃口を俺に向ける

……へっ、来いよクソじじい

変な情けかけられるよか、その方がありがてぇ

だがな、もうお前に痛みも苦悶の表情見せんのはこれっきりだ

うぐ!…………はっはっ…………

 

「おい、ボニート君。あぁ気絶したのか」

 

……………………

………………………………

………

………

 

「ゼルビーニというものは面白くする割には本当にオチが無い一族なのだな。アルバーノもシンシアもそんなだったよ」

 

……… ………………

……………

……………………

 

「心臓か……それとも脳天か……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこがお望みか?穴を開けるだけなら俺もプロだぜ」

 

 

 

 

 

 







誤字・脱字、おかしな表現がありましたら感想にてお願いします





『ストレンジャー』
能力パラメーター全てⅭ

ペリーコロが隠し持っていたスタンド
自分の分身を最大4体まで作り出すことができる
全員スタンドであり本体であるという異色のスタンド
ある1体が死んでも、もう1体が生きていれば何の問題もない


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