ジョジョの奇妙な冒険 第5部外伝〜真実への探求〜   作:京都府南部民

34 / 38
第32話 作戦名シャルル・ド・ゴール(ホル・ホース)

「おい、グーデン。援護射撃中止だ」

 

『えっ?ホル・ホースさん、なんd』

 

ぐしゃ!

 

通信用のトランシーバーを踏みつける

これで無用な手出しは無くなった

グーデンには悪いが、1対1でやらなきゃ意味が無いんだ

 

「ボニートはペリーコロを、俺はお前を。ちょうど良い塩梅じゃねぇか」

 

「逆だホル・ホース。俺がお前を、だ」

 

コイツとの因縁は10年前のボストンに遡る

まだ俺が『皇帝』を発現したての頃だ

当時の俺は青二才よろしくバカやって色んな所を襲いまくっていた

宝石店や富豪の家……もうホント浴びるように強奪を繰り返していた

そのおかげかどうか知らないが、俺はボストン暗黒街の顔役になり、そこいらのマフィアからの勧誘もなどか受けていたな…全部断ったが

ある日酒場で飲んだくれていた俺にある男が話しかけてきた

それがこの男、サンチェスだった

 

「何だそのテンガロハット?かっこいいと思ってんのか」

 

「バカには分からぬ漢の美学ってやつだよ」

 

メキシコ系アメリカ人というのが表での肩書だったが、実際はオレと同じようにスタンド能力を使いあちこちを襲撃する一級の強盗犯

それも俺と同系統のスタンド。猟銃のスタンド

意気投合するのに時間はかからなかったさ

翌日には俺とコイツはコンビを組み、一人じゃ出来ない危険なヤマに手を出すことになる

結果は大成功

5:5の取り分で4万ドルという大金が互いの手に入った

有頂天ってのはあのことなんだろうな

それに気を良くした俺たちは手当たり次第に金を奪っていった

ボストンの地方新聞には「州民の敵」として顔は出ぬものの名を連ねたこともある

 

「だが、まさか生きているとは思わなんだ。あのまま炭になっている…そのハズなんだが」

 

意気揚々と強盗稼業に勤しんでいるとき、今度は州立造幣局を襲うことになった

別になんという事ではない

州立以前に国立銀行に手を出した俺たちからすれば、小遣い稼ぎ程度の意識だった

 

「ヒッヒッヒ、俺だけがなるのはどうも癪でな、お前にも体験してほしいんだ」

 

計画はこうだ

造幣局の主要な場所に爆弾を仕掛け、その混乱に乗じ俺は金庫の中を、野郎は印刷所からドルの原本をいただく

シンプルかつ原始的な方法

それですべてがうまくいく……ハズだった

金庫の中に入るまではいつも通り

だが、俺は騙されていた

中にある筈の金が一銭たりとも無い

単なる手違い、そう思い振り向いた直後火の手が回ってきた

本来の計画なら金庫に火が回るのは30分後

俺は即座に理解した。嵌められた、と

 

「ケジメつけに来たんだよクソ野郎。裏切りの代償は高くつくぜ!」

 

「お前がそれを言うか?殺し屋と傭兵を勘違いするなよカウボーイ」

 

造幣局からの脱出を図ったが、時すでに遅し

サンチェスは警備システムをいじくり窓という窓にシャッターを下ろしていた

万事休す

後悔と屈辱、そして諦観の念が入り混じるなか目に飛び込んできたのは完全密閉型の大型ロッカー

脳内に溢れていたアドレナリンとエンドルフィンが告げた「あの中に入れ!」ってな

自分でも分かるほど…みじめだったよ。どん底ってのを味あわされた

 

「ぶちまけな…!」

 

Bam!

 

「おぉっ!」

 

事件の後、俺はボストンを去ることにした

プライドが許さなかった

確かに悪人のプライドなんて大した事ねぇ

だがな、やられただけの男なんて自他ともに認める訳にはいかねぇや

それこそ「ホル・ホース」という名を背負ったのなら!

 

「何故裏切った、なんて野暮ったいことは聞かねぇでおいてやる。来いよサンチェス、10年前のやり直しと行こうぜ」

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

さて、熱くなるホル・ホースに対してサンチェスは非常に落ち着いていた

全てにおいてそうだが、勝負というものは冷静であればあるほど良い

 

「(ホル・ホースめ、最初に撃てば何事も優勢に持って行けると思ったら大間違いだ)」

 

サンチェスはスタンド…『プレゼンス』に弾丸を込め、相手の出方を伺う

10年前まで一緒にくんでいた相棒だ

その癖、微細な動きを把握はしている………が

10年.10年のスパンはあまりにも長すぎる

基礎の読みはデキても、応用された動きは全くと言ってよいほど分からない

だが……

 

「それはお前も同じだろ!ホース!」

 

「いっ」

 

間一髪、ホル・ホースは積まれている鉄骨を盾にし何とか弾丸を回避する

 

「(よし、反撃してきた。調子に乗るのはお前だけで十分だ)」

 

ガンマンはいかに相手をだまし合うかで勝負する

マカロニウェスタンではそれが常識だ

かっこいい名乗りなんていらない。123で振り返る必要もない

早い者勝ちの世界

そういう意味ではホル・ホースには一日の長がある

彼の特性は何といっても「早撃ち」の一言に尽きる

ただし、対するサンチェスにはガンマンのもう一つの醍醐味が備わっている

 

「オレのスタンドを忘れたか!隠れたところで無意味だぞ」

 

プレゼンスの能力

広く見れば弾丸にあるのだが、実質はその銃身にある

どんな弾丸でも使えるのだ

弾丸という火器全般

パラベラム・マグナム、いやそれどころじゃない

徹甲弾から爆薬榴弾などなど

熟練を重ねれば大陸間弾道弾も夢ではない

そして彼が撃つのは…ナパーム弾

飛行機に影響が出ないようちゃんと狙いを絞って

 

「焼き切ってやる」

 

鉄骨を中心に火柱が燃え盛る

 

「アチ!アチチチチ!」

 

「ちっ、逃げられた」

 

「おぉ、あちちち……この野郎火だるまが好きならそうしてやる」

 

反撃の一手にライターはいかが?

ジッポー社の製品を無くす事は非常に惜しい

放り投げたライターに弾丸は見事に命中し、周辺に火の手が行きわたる

 

「ベホッゴホッ……」

 

「咳き込むぐらいならカッコつけんな!」

 

皇帝の全弾発射

ホル・ホースは勝負に出た

隙を見せたら、一気に突け!

Go!Go!Go fire !

弾は八の字状に襲い、血しぶきが上がる

その出血量たるや惨なもの

周りの火が消えていく程といえばお分かりいただけるだろう

 

「ヒッヒッヒッヒ気持ちいいなぁサンチェス!火だるまにできないのが辛いが血だるまになるほうがお似合いだぜ!」

 

「ぬっ……ぐおぉぉぉぉ!」

 

身を後退させながら弾を避けようとするが皇帝の弾道修正により苦痛は続く

ホル・ホースの考えは厭らしいの一言に尽きる

八の字弾に決定打はない

十分に弱らせてからその頭に必殺の一発を撃ちこむ算段だ

 

「ホォル・ホース!うぐぁ!」

 

抵抗むなしくサンチェスが倒れる

 

「ヒヒッ、ヒッヒッヒヒ、ヒッヒッヒ……」

 

独特な笑いが静々と鳴り響く

復讐・歓喜・満悦の三拍子が込められた笑いだ

10年間は長く。一発は一瞬で終わる

 

「あの頃に戻りたいとは言わん。やり直そうというのはオレの立場じゃない」

 

「ふぅ…ぐぉ……」

 

「俺は炎を味わった…………お前は地獄を味わってこい」

 

予想通りの展開だ

最後の銃声はホル・ホースに委ねられた

 

 

 

Damm!

 

 

 

「う、あ…え?」

 

「んっふっふっはっはははは!血だるま?地獄?そりゃ全部お前の役目だホース!」

 

あぁ、説明し忘れていた

サンチェスの持つ醍醐味。それは……

 

「お前はつくづく正統派のカウボーイだ!マカロニガンマンってのは殺しに糸目は付けないもんだ」

 

騙し撃ち

その一言に尽きる

元来の性根がそうなのだ

死んだふり・後ろから狙撃・決闘という名のリンチ

褒められたものじゃないが、サンチェスはソレを繰り返し生きてきた

 

これが……裏に生きる男のやりかたでありポリシーであり……

 

「てめぇ、よくも!……あぁ?」

 

右肩を撃ちぬかれた

世界最高の利き腕が使い物にならない

 

「チッ…またも」

 

「してやられた、その顔はお前にしかできないよなぁ。フッフッフッフヒッヒッヒッヒ」

 

「……ははっ、ははっはっはっは。ヒッ、イッヒッヒッヒッヒ……」

 

異常だ。狂っている

一方は歓喜に酔いしれて、これはまだ理解できる

問題はもう一方だ

負けているのだぞ?殺されるんだぞ?死ぬんだぞ?

その笑みはなんだ

自嘲、逆転、まさか歓喜に酔いしれているのか

バカな。ホル・ホースはそんな奴じゃない

いつもの彼なら詫びをして、適当な条件を付けて逃げるはずだ

勝機があるとでもいうのか?

 

「昔のよしみだ。好きな弾丸で殺してやる。選びな」

 

サンチェスはポケットから4つ弾を取り出した

最強の威力を誇ろうマグナム

普遍的なパラベラム

ソヴィエト最高傑作マカロフ弾

ペリーコロと同じく、ハーグ陸戦協定違反ダムダム弾

 

「じゃあ……これで頼むよッ!」

 

その勝機はこの一発にかけていたんだ

自分のスタンド『皇帝』の弾丸を

銃は撃てない、左で当たれる自信なんて彼にはない

その時に……思い付いた

「相棒ならどうするだろうな?」

撃つではなく投げる。原理が原始的なっただけだ

 

「!?」

 

「何度も言ってやる。弾丸だってスタンドだ!」

 

だが、これが最後の一発だ。もうスタンドパワーが限界に近付いている

 

「そう来ると思ってたぜ…」

 

「何!?」

 

指にはめていた4つの弾丸を捨て、プレゼンスが火を噴いた

騙し撃ち

サンチェスは弾丸を選ばせる気などひとかけらもなかったのだ

だからと言って助かるという訳ではないが………

皇帝及びプレゼンスの弾丸がぶつかり合う

互いの精神力の差を見れば結果は言わずともわかるだろう

弾丸が来たのはホル・ホースの方だ

 

「俺を騙すなんて分の悪い賭けに撃ってでたモンだ」

 

ホル・ホースの目の色が変わる

決死の目から諦観に、抵抗の目が媚び始めている

 

「な、なぁ頼む。昔のよしみだろ?俺はもうこの通りだ……約束しよう!二度とお前を追わない」

 

懇願の声に耳を傾けるほどサンチェスは大人ではなかった

落ちている弾丸を拾い、プレゼンスにリロードする

口笛の音色が短調になっている辺り、葬送曲でも流しているつもりなんだろう

 

「金か?いくらでも払ってやるぞ。ドルかユーロか?なんでも払ってやる。だから!」

 

「やかましいんだよ」

 

プレゼンスの銃口が真っ直ぐテンガロハットへと伸びる

 

「三枚目は死ぬのが筋だ!」

 

 

 

 

ズギュ!…グォォォオオオン!

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

side ホル・ホース

 

 

 

「あ、あぁ?え、ま、えぇぇぇ?」

 

ヒヒヒヒヒヒッ!

騙し撃ち?三枚目?

啖呵のワリには情けない顔してるじゃないか

 

「ホル・ホース…てめぇ」

 

「よっこいしょっと」

 

演技すんのも止めだ止め

右肩を撃たれたのは辛いが……

気にすることはない。あっちは右腕を無くしたんだからなぁ

 

「何をした…?答えろ!」

 

「弾丸と言ってもな市場に出回っていないものがある」

 

「市場、だと?」

 

「一般的に。種類にもよるが弾丸に込められる火薬の量は決まりがある。そこからは雷管がどうたら撃鉄がうんたらという話になるが、それは置いておこう。……もし、火薬炸薬の量が一定をはるかに上回るものだとしたら?」

 

「じゃあ…俺が撃ったのは……」

 

「ご明察!ホル・ホース印の薬量20倍パラベラムさ」

 

完成するのに1週間はかかる傑作的自爆弾

天秤を使って程よく調合しなければ自分が吹き飛んじまうから神経尖らせたぜ

どんな弾丸でも撃てる?

ヒヒヒッ、それが仇になるとはゆめゆめ思っちゃいなかっただろうな

 

「だが何時だ……何時俺に仕込んだ!」

 

「頭の悪い野郎だな~、ソレッ」

 

「あっ、がっ」

 

4つの弾丸を捨てた時だよ。その時、俺はポケットから自爆弾を奴の近くに転がした

まさか一発目がその弾だとは…ツいてるねぇ

なぁに、相棒の考えに則ってみただけさ

投げて弾丸を撃つ。奇想天外な戦い方は発想の勝利だ

さっきは弾かれちまったからな

今度は当ててやったぜ、左大腿筋!

 

「自分から弾ァ捨てておいて『ガンマン』名乗るからそういう目に遭う。今度からはちゃんと敵味方の弾を分けておくべきだな」

 

「うぅぐあ……」

 

「ま、その今度ももう無いが……」

 

騙し撃ちが得意な奴だから何か仕込んでるだろう

そう考えた俺はシャツの裏側をめくり、ある弾を取り出す

おぉ、あった。これこれ

 

「ナパーム!撃たれたときはびっくりしたぜ、うん?」

 

「はぁ、ふぅ……分かった。謝ろう!あの時裏切って悪かったッ!」

 

ナパーム弾をサンチェスの腹の上に載せる

この時だ!10年間も待つのはこの時の為だったんだ

命乞いだって?お前それでもサンチェスかよ

何か隠してあるんだろ?俺は知ってるぜ…ッヒヒヒヒ

 

「ガンマンの心得第5条……」

 

「ひぃ……」

 

そんな顔しないでくれよ

最期、なんだ

もうちょっと明るく行こうよ

ほれ笑えよ。スマァイル

 

「傷つけた相手にはとどめを刺せ」

 

「……ふぅ………………殺れ!」

 

あばよ、サンチェス

今まで不愉快だったが…今からは最高の気分だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「飛行機は…よし大丈夫だな」

 

サンチェスも守っていたが、俺たちもこれを守らなければならなかった

そう、作戦成功の為のカギだからな

 

「ホル・ホースさぁん!どこにいるんですか?」

 

「ん?おーいグーデン!ここだここ!」

 

飛行機から降り、グーデンの許に向かう

 

「うわ、コゲ臭い……」

 

「ナパームの匂いは嫌いか?」

 

好きな奴はいないだろうな

硝煙ならまだしも変な化学薬品とか入ってるんだ

トーシロに嗅がせるのは無理がある

 

「そういやボニートさんは…」

 

「まだだ。あの野郎時間厳守を押し付ける割に人を待たせるからな」

 

「ははは…では」

 

「おう、頑張って来いよ」

 

そう俺たちには作戦がある

あの老獪なペリーコロを出し抜くためには…ペリーコロの作戦も使わなければならない

全く大胆な奴だよ

しかも、言いだしっぺが囮になる

昔から知っているがああいうところは好感が持てるんだよな

憧れはしないが…さて

 

 

 

「あいつの負けっぷりでも拝んでやるか」

 

 

 

 




誤字・脱字、おかしな表現がありましたら感想にてお願いします









『プレゼンス』
破壊力ーⅭ スピードーB 射程距離ーA 持続力ーB 精密動作性ーⅭ 成長性ーE

サンチェスのスタンド
右腕と直結した猟銃の姿をしており、様々な弾丸を撃つことができる
今のところナパーム弾程度しか撃っていないが、その気になれば大陸間弾道ミサイルも可能?といった具合である 

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。