ジョジョの奇妙な冒険 第5部外伝〜真実への探求〜   作:京都府南部民

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大学の課題で戦国時代の中国地方を調べていて分かったのが松田家討ち死にしすぎ





第30話 伊仏直行便②

「いきなり、血相変えてどうした!?家の鍵でも閉め忘れたか?」

 

「それはありませんよ。僕ちゃんと閉めましたし」

 

「あぁ、もう!これやるから少し静かにしといてくれ」

 

イヴェコトラックは公道をしたらめったらに走っていた

何度か他の車にぶつけてしまったがそんなことはお構いなし

制限速度も完全に無視しており、警察に通報されるのも時間の問題だろう

 

「運ちゃんとしての最低限のルールはどこに行ったんですか!?」

 

「ハッハー!存在自体が御法度なこの俺に、道交法なんて紙屑みたいなもんさ!」

 

「暫定成立名簿?どれどれ……」

 

「丁重に扱えよ。250万の品だからな」

 

「こんな紙の束が250万……250万…250万?俺のヒコックを奪ったのはてめぇか!」

 

「だから、や・か・ま・し・い!」

 

ボニートのハイテンションは2人が引くレベルのものだった

いつも以上のハンドルさばきは、曲がり道も難無くカーブしている

声の大きさも、まさに世界が勝手にイメージするイタリア人という具合だ

 

「北軍アメリカを生きた保安官のカッコよさは分かんねぇだろうな!」

 

「ちょっと、借りますね。…………うわぁ、経歴真っ黒な人がいっぱい」

 

例えば、タトラt97を購入アレクシオ・アモロス夫人

ギリシャの大富豪と再婚したが、その6か月後大富豪が突然の事故死

大富豪の息子に遺産が継がれるはずだったが、その息子も自殺

ある記者は夫人を「遺産目当ての女」と題した記事を掲載

翌日、ある記者は失踪したそうな………

この事から、裏ではカマキリ夫人と呼ばれている

現にパッショーネも関連しているパーティに出席している姿も確認されている

 

「アンドレイ・ブルシアーノ……聞いたことがある。美術品のためなら手段をいとわぬクズ野郎って、同業者からも評判だぜ」

 

「ルッチア・パルド。父アリアノ・パルドは大戦時にナチのシンパだったそうで、いわゆる頽廃芸術品を買い漁ってた模様。それを受け継ぎ、博物館に法外な値段で売り飛ばしているみたいですよ」

 

「要は全員日陰者ってことだ。世界観で見るなら結局俺らみたいな連中だよ」

 

「それで?我らがボニート様はどこに行くご予定で?」

 

ファイルを投げつけた時と同じ動きで、地図帳を後部座席に放り込む

亀の中にあったものを拝借してきたものだ

イタリアからフランスに向かって赤い線がひかれている

 

「フレンチには手を出さないんじゃなかったか?」

 

「フランスパンだよ。無性に食べたくなって仕方がないんだ」

 

「事務所にあったんですけど………」

 

「……………………………」

 

「おい、お前何か隠してるだろ」

 

ギクッとは言わないまでも、ピクッとはした

疑問にうまく答えれないのか、鼻で笑い運転に集中しようとするが

ホル・ホースはそれで許してくれるほど大人じゃない

後ろからいきなり首を絞められる

思わぬ攻撃にボニートは何とか耐え、タップをしながらもトラックを道路脇に寄せる

 

「何しやがる!」

 

「そりゃ、こっちのセリフだ!急に仏頂面になったと思ったら免停上等のスピードでフランスだと?ル・マンにトラックがエントリーするなんて聞いたことがねぇぞ!」

 

「ベントレーじゃなくて悪かったな!だがな、急がねぇと連中は今すぐ飛んじまうんだぞ!」

 

「連中?連中って一体何だ?」

 

「あっ…………」

 

しまったという表情を顔に出してしまい、ホル・ホースからの疑惑の視線が更に強くなる

 

「答えろよ幹部様。じゃなきゃ、俺はここで降ろさせてもらうぜ」

 

ドアを開け片足を外に投げ出す

そこまでされたら、ボニートの顔も思案顔になる

3分

額に手を付け、うんうんと唸りながら3分

意を決したのか深呼吸してホル・ホースに向きなおった

 

「さぁ、どうだい?決心は」

 

「あぁ、分かったよ!話せばいいんだろ、話せば」

 

座席に深く座り、空を眺める

目をつぶって記憶を掘り起こさなければならない

あれは何時だったか、これは何時だった、それは何時かわからない

 

「俺がまだガキの時だ」

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

ちょうど8つの頃だったかな………初めてポルポさんから親父の事、アルバーノの存在を知った

驚いたよ、それまでに俺にとって父親はジェノバのホームレスだったからな

しばらく経って、俺がやっとパッショーネだって肩で風切れるようになったぐらいにポルポさんから呼び出しをくらった

何かと思ったんだが……アルバーノのことについてだった

だけど、俺はもうそういうのは吹っ切れたって言った

……珍しくな?ポルポさんが歯切れ悪くその話を終わらしたんだよ

何時もは、無神経にずけずけと葬式でも悪態吐くような人が、後ろにゴロンと寝返って「もう、帰りたまえ」だと

まぁ、俺もそこまで気にしちゃいなかった。それこそ吹っ切れてたからな

ある時、部屋の掃除をしているとき親父からの……アルバーノの方だ。手紙が出てきた

使い道がある訳でもないからそのまま捨てようとしたんだが……捨てられない

気の迷いだ、今度はストーブの中に放り込もうとしたんだが……放り込めない

そうだよ、知りたくなっちまったんだ。アルバーノの言う真実ってやつをな

 

仕事の合間を縫って幹部連のおじいさま方や古株の構成員に色々と取りあってみた

返事は全て「ノン」

当たり前だ。裏切り者と親しくしていましたなんて口が裂けても言えねぇや

1人だけ、答えてはくれねぇがそれっぽいことは言ってくれた

ヌンツィオ・ペリーコロ

あの人ホントにすごいよ

後ろに窓があるってのに笑いながら思い出話してくれたよ

色々新しいことも聞けた

アルバーノは幹部の中でもやり手だったこと

その死後、アルバーノの部下たちはボスに反逆を企て暗殺チームに掃除されたこと

何でも話してくれたよ

案の定収穫が無いモンだから、もうアルバーノに関することは忘れようとベッドに入ったその時。俺の頭にインスピレーションが沸き起こった

なんでペリーコロさんだけが答えてくれたのか

俺は早速ペリーコロさんのアリバイだったり経歴だったりを調べ始めた

アルバーノが死んだとき、ペリーコロさんはシンガポールで宝石商の仕事をしていたそうだ

それはいい

だが、興味深いことを聞いた

パッショーネの2次組織が一斉に会合を開いたとき、ペリーコロさんの仲介で参入した組織のトップたちにあることを尋ねた

何時どこでペリーコロさんと交流を持ったか

ある奴は「1970年10月8日ミラノで」と答えた

隣の奴は「同じく1970年10月9日ブフテアの地下街で」と答えた

……おかしいとは思わねぇか?

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

「つまり、ペリーコロは2人いると?」

 

「あぁ、イタリアからルーマニアに行くってなるなら2日以上はかかる」

 

「だけど飛行機を使えば……」

 

「無理だ。当時のルーマニアはチャウシェスク政権が共産社会とやってたときだ。西側とは比較的交流はあるが、それでも入国の制限は厳しい。不法入国ならなおのことだ」

 

「ますます話が見えねぇな……」

 

ペリーコロが2人いる

ボニートの行き過ぎた憶測に2人は頭を抱えた

ドッペルゲンガーを認めろと言われて、認めるほど大人じゃない

しかし、ペリーコロが2人いるというのも考えようだ

 

「フランスにいるってのは?」

 

「カルロ・アバーテ。元々はペリーコロの側近でシマの10分の1を受け継いだ奴だ」

 

「それで?」

 

「そいつの買ったロッキードは、フランスのド・ゴール空港建設予定地跡での引き渡しになるそうだ」

 

時のフランス政府はド・ゴール空港(パリ国際空港)をニースに作る予定であった

しかし、現地の住民から猛烈な反対に遭い当初の計画は頓挫。議員たちはこれに喧々の議論を繰り広げ、ようやく現在のロワシー=アン=フランスに決定した

となると、ニースの予定地にある建設途上の滑走路と格納庫を撤去することになるのだが……ここで問題が起きた

建設会社が引き受けてくれないのだ

そうヨーロッパ中の全マフィアがこの予定地に目をつけ、圧力をかけたのだ

ある議員は「軍を使い直ちに撤去に移るべし」と声高に唱えたが、その翌日に「やっぱり軍よりも民間会社に任せた方が良いですね」と手のひらを返した

 

「ロッキード……えらく古い飛行機ですね」

 

「全くだ。3000万もするピーナッツなんて恐れ多くて手が出せねぇや」

 

懐かしい事件だ

バックとギアチェンジを使いこなし道路に戻る

さっきの反省からかスピードは少し落としている

 

「だが、何故ペリーコロを追う?ボスへの得点稼ぎか?」

 

「…俺はな、嫌でもアルバーノの子供なんだよ。血筋なんぞに未練はないが、どうも気になっちまったんだ、アルバーノの言う真実をな」

 

「そうか……そうだよな、お前は生来好き嫌いはしない性質だよな」

 

「だ、だけど……ボニートさんとペリーコロさんに何の関係が…」

 

後部座席から顔をのぞかせるグーデンにボニートは少し顔をしかめた

 

「アルバーノが死んだあと、ペリーコロはガキの俺を探していたらしい……」

 

「良い事じゃねぇか」

 

「最後まで。そしてペリーコロは小規模ながらゼルビーニ夫妻の葬式まで執り行った、ボスにバレぬよう極秘でな」

 

「ほうほう」

 

「夫妻の死んだ明後日にな」

 

「明後日……うん?おい、アルバーノが死んだ時ペリーコロは…」

 

「そうさ、シンガポール。今と違って空港は整備されちゃいねぇし、それどころか1970年代の東南アジア、色んな意味で簡単には入れず出れずだ」

 

「マジで2人いるってことかよ…」

 

「あくまで仮説だが、本体は一つだぜ」

 

「本体……じゃあ、ペリーコロさんは!」

 

「そうさ!野郎は………………

 

 

 

 

 

                

                スタンド使いさ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~フランス ド・ゴール空港建設予定地跡~

 

 

 

 

最近の若い者はどうも勘が良い

わしも昔はあれぐらいあったものだが、どうも『老い』というやつはそれをゆるしてくれない

色んな事があったなぁ……

国立銀行の襲撃・中国からエジプトへの密輸・東側諸国から亡命の手引き

何でもやった

それこそファシストの連中ともやりあった

パルチザンの友人は今何をしているんだろう

地下でヒソヒソと爆弾を作っていたころが懐かしい

そう考えるとこの時代は非常に息苦しいものだ

どのギャングも波風立てることを恐れ、政治家の真似事ばかり

唯一、力を使うとしたら反逆者に対してのみ

臆病な連中が増えた

若い衆だけにそういう気風があるなら、時代の流れと割り切っていたが…幹部連までもが及び腰の能無しばかり

比較的強行手段の多かったポルポも死に、後に残るはわし一人

冗談じゃない ふざけるな

この老骨にも手段というものはあるのだ

火炎瓶を黒シャツ隊に投げたことがあるか?

敵対ファミリーのボスを直にゼロ距離で撃ちぬいたことがあるか?

わざわざコロンビアに行ってマリファナ農場を空爆したことはあるか?

わしはそれを全てやってのけたぞ!

老人の下らぬ過去の栄光話と受け取るも良い

それこそ、この職種だ

いくら難題をこなしたとて、2代以上語り継がれる事はない

 

……あぁ、いかん

少々熱くなりすぎた

だが、一つだけ言える

もう昔ながらのギャングはいないのだ

サツが来たらガンを飛ばし、みかじめ料を強要し、鉄の掟を互いに守り…………

ふふふふ、やはりわしは時代に取り残されたジジイというわけだ

それで良いのだ

すでに根回しは完了した

ニューヨークマフィアも動く気配はない

この世代を塗り替えてやる

 

 

 

 

 

 

2001年!全ギャングは1950年代に遡る!

 

 

 

 

 

 

 

 






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