ジョジョの奇妙な冒険 第5部外伝〜真実への探求〜   作:京都府南部民

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第28話 ワインセラーの明日②

「それで、お前いつまでいる気だ?」

 

「次の依頼が来るまで、って言やぁそれっぽいが、実のところ食い扶持が無くてな。しばらく、ここでおまんま食わせてもらうぜ」

 

「報酬から色々減らしとくぞ?食費・光熱費・通信費とバカにならねーんだからな」

 

パーティの片づけが終わった頃には夕食時となっていた

今日の食事当番はグーデン

明日も明後日も、昨日も一昨日も

 

「ご飯出来ましたよー」

 

「また、豆とベーコン炒めかよ。もうちょっとバリエーション増やしやがれ」

 

「この前『ドイツ料理に飽きた』って言ったじゃないですか!?」

 

「やかましい!朝昼晩とウィンナーってどういう神経してんだよ」

 

「まぁまぁ、そうカッカするんじゃねぇよ。俺ぁ嫌いじゃねぇぜ、この19世紀辺りの貧乏人が食べそうな料理はな」

 

「21世紀になっても、貧乏人の食事ってのは変わんねぇわけだ。歴史的悲劇ってヤツだぁね。ホントに」

 

しかし、食うものは食うようだ

ベーコン2切れを平らげ、レンズ豆を一気に飲み込む

ボニートに至っては、おかわりまでしている

隠し味のブラックペッパーが効いた証拠だ

 

「テレビ見ても良いか?世界放送で好きな番組があってな……」

 

「ピンクチャンネルはホテルで見ろよ」

 

「バカ。『古代自然旅行記!』視聴率10%以上は当たり前の冠番組だぞ」

 

西部の見た目とは裏腹に、趣味は中々博学なもの

様々な大学の教授を招き、地球の動きをCGで再現するという月並みな内容だが、教授達が激しく論争し合うことが偶にあるので、一定の視聴者から支持を得ている

しかし、番組はまだ始まっていないようだ

その代わり、今日起こったことがニュースで報道されている

 

『今日の午後15:00に福祉制度の改善を求めるデモが行われました。参加者は現在の政府に対して……』

 

「…このアナウンサー可愛いな」

 

「見る目あるねぇ、そりゃ女子アナ番付3位の女だからな」

 

「じゃあ、あれなんですか?」

 

グーデンはなぜか細かいところに目が行き届く

この前のヴェネツィアでもそうだったが、眼球の中にセンサーでもあるのだろうか

指さしたのはアナウンサーの薬指

綺麗に光るリングが……

 

「人妻かよ…生憎寝取りの趣味はねぇぜ」

 

「守備範囲の狭い奴だ。そんなんじゃ男も幸せにできないぞ」

 

「そうだそうだ!」

 

「グーデン、今月と来月と再来月の給料ナシな」

 

「……ホル・ホースさん!ボニートさんの悪口言うのやめてくださいよ!」

 

随分と現金なものだ

ニュースは次々と話題を変えていく

州知事選の結果、助演男優賞などなど……

尺が長いわけではないから、どれもさわりを説明しているぐらいだが

 

『チェリッツィオ氏はこれで3度目の助演男優賞を受賞したことになり』

 

「俳優は良いねぇ……俺も昔はショーン・コネリーに憧れたモンだ…」

 

「僕、新聞取ってきますね」

 

「おーい、洗うから皿持ってこーい」

 

今日の皿洗い当番はボニート

エプロン姿が全く似合っていない

だが、手際が良いのは認めよう

昨日のパーティの分も含め、皿という皿が乾燥台に置かれる

 

『イタリアを代表する宝石商、ヌンツィオ・ペリーコロ氏が銃殺されました。犯人は不明ですがまだこのイタリアにいると警察は推定しています』

 

ボニートだけでなく、この部屋の全員がテレビに見入った

パッショーネの大御所、ヌンツィオ・ペリーコロ

表の世界では宝石商として業界を渡り歩いてきた

今、イタリアで出回っている宝石のすべてにペリーコロが手を付けたという噂まである

 

『同氏の莫大な遺産は、息子であるジャンルッカ・ペリーコロ氏に相続されるということです』

 

「莫大な遺産ねぇ…知ってるか?暗黒街で聞いた噂だと、大手ヘッジファンドの株も大量に持ってるそうだ」

 

「………………」

 

ボニートの眉間に皺が寄っていた

何か気に食わない事でもあったのだろうか

彼は警戒している

いや、怯えているといったほうが良いかもしれない

 

「ボ、ボニートさん!ボニートさん!」

 

「………どうした」

 

「これ……ポストに…」

 

 

 

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「隠語…読めるか?」

 

「……………………なるほど、ね」

 

この隠語は幹部クラスとなったボニートにしか分からないように細工されていた

エプロンを雑に畳み、クローゼットから黒の背広を取り出す

鞄に放り込む物も最小限必要な物ばかり

ライターやタバコ・保険証にオートマグ、偽造パスポートにそれから……

 

「面倒だ。グーデン、お前はここにある荷物をまとめておけ。それと、ありとあらゆる文書は全て燃やせ。いいな?」

 

「何でそんなことを……あぁ、分かりましたよ」

 

最近、グーデンの勘が冴えているような感じがする

やはり一線を越えたことが一番の刺激なのだろうか

ぜひ、私も越えてみたいものだ

 

「ホル・ホース、お前は……」

 

「皆まで言うな、付き合ってやるよ。どうせ、だ」

 

「額をねだるなよ」

 

「ご冗談」

 

彼はもうここに戻ってくることはない

今から葬式に行かねばならないから

それは奴の葬式か、はたまた自分の葬式か…………

答えは、主のみぞ知る

 

 

 

 

 

 





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