ジョジョの奇妙な冒険 第5部外伝〜真実への探求〜   作:京都府南部民

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第2話です。


今回はボニート君の能力が明らかに……


第2話 パックス・ロマーナ!②

『5階フロア制圧!』

 

『同じく5階非常階段制圧!』

 

それは正に電撃作戦であった

突如として銀行に現れた黒シャツの武装勢力によって銀行は占拠されてしまった

1階のロビーに社員、一般人はロビーに集められ目と口をテープで張られている

 

「電気も止まり人質は増え…ふむ、計画は順調のようだな」

 

黒シャツの中でも独特の雰囲気を漂わせた男、『指揮官』は缶コーヒーを飲みながら部下の持ってきた書類に目を通す

指揮官の目の前には人質が綺麗に並べられている

その中でも身なりの良い人物に近づき、口のテープをはがす

 

「頭取殿?腹は決まったかな?」

 

「あ、あぁ、分かった!金だな!金さえあれば良いんだな!?」

 

「うむ、1000万ユーロとお小遣いに10万ルーブル貰おう」

 

「10万ルーブル?何でまたそんな通貨を…」

 

「早くしてくれないか」

 

目はふさがっている為、分からないが頭取の頭に拳銃を突きつける

頭取の顔は冷や汗が吹き出し、歯を震わせながら金庫とコンピューターの暗証番号をくちにする

 

「ほぅ、今の頭取殿の状態を擬音語であらわすと……う~ん『ダラダラ』と『ガタガタ』が良い具合できている。うむすばらしいバランスだ、勲章を上げたいほどにだ」

 

拳銃を下げ、回転いすに座り…頭取の頭に発砲する

 

「だが、金で命を売買するものには銃弾がぴったりだ」

 

頭取は床に勢いよく倒れ、周りの人質がパニック状態になる

 

「人質諸君安心したまえ、今のは威嚇射撃だ。身代金1000万ユーロが支払われたと同時に君達を開放する。もっとも場を騒がしくする者は順次射殺していくので理解していただこう」

 

ロビーが静まり返り、人質から聞こえるのは涙をすする音だけだ

 

「うむ、よろしい」

 

後ろから年若い黒シャツの兵士が指揮官の前に現れる

 

「指揮官殿、ご報告があります!」

 

「続けたまえ」

 

「はっ!先遣隊は二手に分かれ正階段を使い6階へ、別働隊は非常階段を使い7階に行きました!」

 

「逃亡用の10万ルーブルを含め、計画は更に順調……ふむ、良い。引き続き制圧するよう伝達せよ」

 

「はっ!了解いたしました」

 

指揮官は椅子に座り拳銃を拭いていると兵士が振り返り、また指揮官の前に現れる。

 

「どうした?」

 

「はい…実は妙なものを聞きまして」

 

「妙なものだと?」

 

「私自身は見ておりませんが、連絡隊の同志がこの1階トイレの個室の天井に大きな穴が開いていた、というのが耳に聞こえましたので」

 

「大きな……穴?」

 

 

 

 

~7階トイレ~

 

「ッ痛ぇ~、やっぱ無茶するもんじゃねぇなぁ」

 

ボニートは頭を抱えながら周りを見渡す

壁には7と書かれてあり、安堵の息を漏らす

 

「本当なら8階が良かったんだが、ちょうど良いハンデ…である事を祈るか」

 

服に着いた埃を払い、鞄から拳銃を取り出す

平時とは言え何が起こるか、誰に狙われていてもおかしくないマフィアの職業上、この手の武器を持つのは仕方がないとも常識とも言える

壁伝いに移動し音をたてないように移動する

すると、いくつかの足音が聞こえてきたのでボニートはもう一度トイレの個室に戻る

 

――順調ですな。中尉殿――

 

――うむ、しかし偵察とはいえ油断はするなよ――

 

――分かってますよ。――

 

 

 

 

ボニートが聞き耳を立てている限り敵となっている人物は2人

それも「偵察」という単語を聞く限り、その後ろには「本隊」となるものが控えているのが分かる

ボニートは拳銃で思いっきり壁を殴る

 

――おい!トイレの方から何か聞こえたぞ!――

 

――了解!アドネ先行します!――

 

足音がゆっくりとボニートのいる個室へと近づいてくる

そして足音が消え、個室のドアと床の間に影ができる

 

「今すぐドアを開け!そうすれば人質としてそれなりの……待…遇・・・・・・・・・を?」

 

イタリアの若き青年兵アドネが急に自分の腹部に異変を感じ、恐る恐る下を向く

2か所だった

自分の腹から血が吹き出ている

 

「え?…そんな、嘘だ、ろ?お……、れは」

 

「ごちゃごちゃうるせぇ」

 

倒れこんだアドネの頭部をボニートは踏みつけ、壁に叩きつける

アドネの遺体から使えそうな装備を取り外す

 

「手榴弾にショットガン、そしてこの軍服モドキ……ただのコスプレってわけでも無さそうだな」

 

「アドネ!どうした!?おい!」

 

外で待機している男が慌ててアドネの元へとやってきた

ボニートも慌てて個室のドアを上手く使い隠れる

そして死体に驚き駆け寄った所をショットガンで狙い撃つ

 

「うが!……き、きさ、ま…よくも…」

 

アドネと同じく頭を踏みつけ壁に蹴り飛ばす

 

「文句言うんじゃねェ、部下の弾で死んで部下と同じ死に方だ…誇れよ」

 

倒れた壮年の軍人から手榴弾を幾ばくか頂戴する

せめてもの弔いの為、二人の兵に十字を切る

 

「しっかしコイツらは本当に何なんだ?ただの強盗にしちゃ装備が良すぎるしなぁ」

 

ボニートは死体を物色し、服をひっぺがす

血のせいで所々赤くて分からなくて目を細めていたが襟元に何かの刺繍が施してあった

そこには赤白緑のトリコローレ、その中央には赤を基調とした白い十字が描かれていた

 

「何だこりゃ?イタリアの国旗では無さそうだが……」

 

哀れ、ボニートには知識はあっても「学」が無かった

分からない方の為に説明するとこの国旗はイタリア王国の国旗である

1861年から1946年にかけての王政だった頃のイタリアの国旗である

 

「まぁポルポさんに聞きゃ何とかなるか……問題は…」

 

『おい!どうした!応答せよ!応答……』

 

「コイツなんだよな」

 

ボニートから見れば若い方の青年兵アドネのトランシーバーから怒鳴り声が聞こえてくる

彼はトランシーバーを手に取り、アドネの首にかけてあったネームタグを見ながら答える

 

「こちらアドネ!警備員が銃を持って抵抗している!応援を求め…っ!」

 

ボニートが鼻をつまみトランシーバーに怒鳴りこむ

するといきなり銃声が鳴り響く

誰も撃っていないのに銃声が鳴り響く

 

『大丈夫か!アドネ、応答せよ!』

 

ボニートはトランシーバーを便器の中に放り込み、トイレ入り口に近づく

遠くから複数名の足音が聞こえてくる

ボニートは息を殺し、耳を澄ませる

 

――アドネはどこに行った!――

 

――中尉殿の姿も無いぞ、探せ!探すんだ!――

 

ドタドタと慌ただしい足取りで兵隊たちは過ぎ去っていく

ボニートはそれを確認した後、壁伝いに暗い廊下を歩む

 

「(暗くてよく見えねェ……かといってライターを使う訳にもなぁ)」

 

思案しながら暗闇を進んでいるとボニートの手に何かが触れた

 

「こいつぁ…ちょうど良い」

 

壁にはこの銀行の簡易的な見取り図が描かれていた

この7階のフロアの部分に赤い丸がひとつあるこれが現在地なのであろう

ボニートは目を凝らしながら赤い丸から道をなぞっていき6階への道を探る

 

「階段という階段には兵隊がいるだろうし、エレベーターもこの調子じゃあなぁ…」

 

ボニートが思案に暮れているとわたってきた廊下の方から複数の足音が聞こえてきた

 

――おい!あそこに人影が見えるぞ!――

 

――動くな!――

 

「やっべ!」

 

僅かだが頭の中に残っている地図を思い出しながら、とにかく7階を逃げ回る

曲がり角はなるべく曲がり追手の目をなんとか眩ませようとする

 

「(ここを曲がればエレベーターがあるはずだ!無理に開けてその中に入りワイヤーを伝って1階に!完璧だ!)」

 

ボニートは勢いよく廊下を曲がり、エレベーターへと直進する……しかし!

 

「おっと、ここまでだ」

 

ボニートの横から銃器を持った複数の兵隊が彼を囲む

追手の二人も合流し退路も絶たれた

 

「囲まれたか……」

 

「手を頭に当てて目を閉じゆっくりと座れ!」

 

ボニートは渋々という事を聞き目を閉じゆっくりと座る

兵士の一人が銃の照準をボニートに定め、引き金に指を添える

 

「アドネと中尉殿の分だ!くらえ!」

 

兵士が今に発砲しようとする

目が一種の狂気に満ちているのがその証拠だ

 

 

その時だった!

兵士が持っていた銃が兵士ごと浮かび上がり地面に叩きつけられたのだ!

 

「ポルポさんから、『一般人にはなるべく使うな』と言われちゃいたが…」

 

ボニートの後ろがゆらりとうごめき一つの『像(ビジョン)』が現れる

二角帽に赤と黒の水玉コートを着ている海賊のようないでたちをしている

頭部は頭蓋骨だけで歯を「カチカチ」と音をたて、服から盛り上がっている筋肉がその威圧感を更に増幅される

 

「だが、あくまで『なるべく』だ。そうなんだ『なるべく』なんだ。仕方ねェよなぁ?」

 

ボニートは腕を組み、勢いよく立ちあがる

 

「本腰入れるぜ!『キャプテンビヨンド』!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボニート・E・ゼルビーニ

彼は『スタンド使い』である

 




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