ジョジョの奇妙な冒険 第5部外伝〜真実への探求〜   作:京都府南部民

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投稿が遅れたんじゃない、レポートが多かったんだ(戦国無双4をやりこんでいたという意味)





第18話 フニクリ・フニクラ⑦

「何発当たった?」

 

「見積もって17発」

 

「えぇー、56個投げたんだぞ」

 

「下手くそ」

 

帰還したボニートを待っていたのは、ホル・ホースの軽口だった

遠く見えない相手に17発も当てたのだ、少しは評価すべきだろう

 

「そいじゃ、乗客が無事かどうか見てくるわ」

 

「おう、頼んだぞ。…………さて」

 

小石はペッシの体奥深くに突き刺さった

胴体から血はだらだらと流れており、地面に血だまりを作っている

一番の痛みは首を骨折したことだろう

 

「う、グ、おぉぉぉぁぁぁぁ」

 

「やめときな、ペッシ。死に際はなるべく綺麗にするのが、俺たちギャングの嗜みってやつだぜ」

 

「うる、せ」

 

ペッシは懐から『亀』を取り出した

亀についてボニートはまったく何も知らない

だが、瞬時に理解した

あれは大事なものなんだろう、と

 

「ペッシ!その亀をどうする気だ?」

 

「どうせ、死ぬんなら……それこそてめぇの言う通り『綺麗にする』ッつーんなら…この亀は叩き落さなきゃならねぇ」

 

「……………………」

 

ゆらりとキャプテンビヨンドが現れる

叩き落すと物騒な言葉を聞いたからには、ボニートもおとなしくはしていられない

何としてでもペッシを止めなければ、とどめを刺さなければならない

 

「だけど、そりゃあ…………ブチャラティの前でやってこそだからよォ~」

 

ペッシは振り上げた手をゆっくりと落としていった

亀をポトリと落とし、その手に釣竿が現れる

ひびだらけの釣竿は今の彼の精神を表しているのか

 

「プロシュート兄ぃは…言ったんだッ!『食らい付いたら最後、スタンド能力は解除しない』、と!」

 

首の骨が折れようとも、体に幾ばくの石が刺さろうとも

もうその姿は「不細工」の一言に尽きる

それでも彼は守るのだ

兄貴の言葉を

 

「よし、そこまで言うんならやってやらぁ!俺の投げとお前の釣り!勝負だ!」

 

「ふん!」

 

キャプテンビヨンドの拳にビーチ・ボーイが喰らいつく

防戦一方はボニートのやり方ではない

先ほどと同じように石を投げるだけ投げ、ペッシの体に当ててゆく

しかし、ペッシは怯むことなく釣り針を更に食い込ませる

ボニートは戦法を少し変えることにした

体全体に当てるのではなく、指を集中的に狙う

 

「なっ!?くぉぉおおおお………」

 

ペッシの左手小指・右手中指が赤くはれ上がり、ぷるぷると震えだした

効果はあったようだ

 

「ちっ、もう少しイカれると思ってたんだが……」

 

「読みが…甘ぇんだよ!」

 

「うぉッ!?」

 

釣り針は肩の部分まで来ていた

ペッシの目的は首喉を掻っ切ることだったが、指への執拗な攻撃に一旦中断

そのままボニートを釣り上げ、自らのもとへと引っ張る

 

「今だ!その喉元を、掻ッ!切る!」

 

釣り針がボニートの首へと伸びる

まさに、万事休す

さぁ、どうする?

 

「そういうのは、てめぇの首で試しな!」

 

釣り糸を引っ張り、ボニートはペッシを逆に釣り上げる

急接近するペッシ

その目に見えたのはキャプテンビヨンドの左拳

驚愕の表情がボニートからペッシに移った

 

「ビーチ・ボーイ!地面に食らい付け!」

 

「もう遅い!」

 

キャプテンビヨンドが遂につかむ

掴んだ相手には容赦しないのがボニート

思いっきり地面に叩きつけ、追い打ちにパンチを一発

ペッシの目から光が消え、口はだらしなく開いている

 

「……残念だったな、ペッシ。俺の『勝ち』だ」

 

敗者にその言葉は届いたのであろうか

何とも言えない勝利宣言

24歳のベテランと推定年齢30歳以上の殺し屋が、たった一人の新入りの暗殺者相手に苦戦を強いられた

今、ペンシルバニアでにやけ面を浮かべている上司には聞かれたくないことだろう

 

「『食らい付いたら最後、スタンド能力は解除しない』…か、てめぇはよくやったよペッシ。バカみてぇに一つ二つの言葉をそこまで貫き通したんだ。恥じるこたねぇぜ?むしろ誇りゃいい、堂々とな」

 

フィラデルフィアで地元のファミリーとバカンスを楽しんでいる上司は人を褒めることがまず無い

それは、ボニートも同様である

同様というよりも学んだというほうが正しい

故に褒めるときは思い切り、褒めちぎる

褒められる=認められたと思っても問題はない

 

「墓は作ってやんねーぜ。そんぐらいはお前も『覚悟』してるだろ?」

 

終わった

ペッシからは呼吸の音さえも聞こえない

足元によって来た亀を拾い、ボニートは戦いの場所に背を向けた

 

 

 

 

 

 

 

 

だから、甘いのだ。ボニート・E・ゼルビーニ。

ペッシは本当に死んだのか?確証は?根拠は?

その自信は一体どこから来ているのだ?

 

「………………………」

 

「!?」

 

『いったん食らいついたら腕や脚の一本や二本失おうとも決して「スタンド能力」は解除しない』

ペッシとプロシュート兄貴が守った、この言葉

ボニートは褒めた。確かに認めたッ!

だからこそ、心の底のどこかで甘く見ていた!

ボニートは『言葉』で理解しただけであった!

 

「………………」

 

「うぉぉ!?」

 

釣り針はもう心臓にも喉にも行くことはない

うまく引っ掛かったとしても肉片が一つ千切れるだけ

 

「…………………」

 

それでもペッシは黙々と釣竿を引っ張る

せっかくの当たり目を逃がすわけにはいかない

くいっくいっと釣竿を小刻みに引っ張っている

良い具合に『直線』なのだ

ビーチ・ボーイの釣り糸が直線になった時、それはペッシがやると決めた時!

 

「!」

 

ボニートもスタンドを繰り出し、小石を一つ拾い上げた

腹に刺さっている釣り糸を上へと思いっきり引っ張る

浮いたのはペッシ!

 

「見事だよ……お前は。だから綺麗にやってやる」

 

「…………」

 

キャプテンビヨンドが投げの体勢に入る

ボブ・フェラーを彷彿とさせるその球種はスライダー

ボニートが最も得意とする投球だ

 

「………………」

 

もはや声も出すことも叶わない

悲鳴も断末魔も、だ

ペッシはただ冷静に自分に向かってくる石を見つめている

もっと正確に言おう

彼は石の向こう側のボニートを見ているのだ

たとえ鳩尾に穴が5cmできたとしても

釣竿が崩壊していき、その手からなくなったとしても

スタンドを解除することはない

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

なぁ……兄貴ィ、俺ぁやってやっただろ?

 

もう、ママッ子野郎(マンモーニ )なんて呼ばねぇでくれよ

 

なぁ、プロシュート兄貴

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

「どはっ」

 

安堵の息をつき、地面に座り込む

今まで溜めていた分の汗が浮かび上がった

体中のいたるところにできた傷口に、その汗が入り込み痛みを刺激させる

 

「…はぁ、はぁ。『やっと』だな。『やっと』……勝てたな」

 

『やっと』か

相手を侮ったにしては高すぎるかもしれんが、これぐらいが丁度良いのだろう

傷口を押さえながらよろよろと立ち上がり、ペッシへと近づく

 

「良いもん教えてくれたなぁ、ペッシ。だが、お前にゃ…………」

 

 

 

 

 

 

~いったん食らいついたら腕や脚の一本や二本失おうとも「スタンド能力」は解除しない~

 

~『ブッ殺す』と心の中で思ったならッ!その時スデに行動は終わってるんだッ!~

 

 

 

 

 

 

「かっこよすぎるぜ」

 






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2014/8/29 ホル・ホースの推定年齢を25歳から30歳にしました



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