ジョジョの奇妙な冒険 第５部外伝〜真実への探求〜 作：京都府南部民
「あらよっと」
「ほいさっと」
「うおぉぉぉおおおお！」
釣り針に恐怖を抱いたのは２人の豊富な人生でも初めてのことであろう
「老化が進んでいる以上、まだ兄貴は生きている！なら、オレも生きて任務を遂行する！」
「若ぇーんだから、たまには仕事サボってみな！」
釣り針は物体をすり抜けて相手の体に食いつく
ホル・ホースの推測が目の前で現実となっていしまった以上、岩陰に隠れることもままならない
「列車から狙撃できるか？」
「無理だ。射程距離が足りない」
「プロが弱音吐いてんじゃねーってんだ、まったく……」
ふと頭に思い付いた名案も使えないようだ
だが、無理もない状況でもある
敵は３６０度どこからでも攻撃できるといっても過言ではないのだ
「それじゃ、お前は弱音吐かずに奴に一撃当ててみな」
「それじゃ、やってやらぁ」
『キャプテンビヨンド』は砂をつかみペッシへと思いっきり投げつけた
スピードは風速ではなく時速１００ｋｍ
この速さで砂をかけられては堪ったものではない
「うぐぇ！」
「よし！一撃！」
「お見事」
喜びもつかの間
砂攻撃を受けたペッシだったが受け身を取りすぐに起き上ってしまった
２人から笑顔が消え、消沈した顔となる
「近寄ってこねぇ分、接近戦お得意のスタンドと踏んでいたんだが……」
「見た目で判断するなよ坊っちゃん。周りが狭く見えちまうぜ？」
「ふっふっふっふっふ…………周りが見えてねぇのはお前だ！マヌケめッ！」
「！」
不覚
ボニートの中指の先に釣り針が食い込んでいた
釣り針は手の中をどんどん進んでいき、手のひらと肘の間部分にまで到達する
「ちきしょっ、このっ、取れやがれ！」
キャプテンビヨンドが糸を引っ張り、無理やり引き抜こうとするも効果はない
それどころか遂に肘に到達してしまった
「ホル・ホース！『皇帝』だッ！『皇帝』で糸をぶち抜けぇ！」
「おう！」
弾丸を２発
糸へと発射される
糸が切れればこっちのもの
ボニートはそう考え、冷や汗を流しながらも笑みを浮かべていた
しかし、それ以上に笑っている人物がいる
ペッシだ
「ぐぉぉぉぉおおおお！」
弾丸が糸に触れた直後、ボニートの体全体に高圧電流のような痛みが伝わった
「ボ、ボニート！？」
「オレの糸はそいつの神経とすでに絡んでいる。そんな状態で撃っちまったらその分の痛みはすべて！こいつの体全身へと行きわたるッ！ミスタと同じ手に引っ掛かったワケだ……」
「ちっ！クソガキめ！」
ホル・ホースは『皇帝』の銃口をペッシへと向けようとする
だが、それを遮るようにボニートの手が『皇帝』を掴んだ
「やめとけ、ホル・ホース」
「何抜かしてやがる！今、奴のスタンドはお前の腕に食い込んでいて、防御はできねぇ！この状況だ！この状況で奴に撃てば必ず殺れんだぞ！」
「それは奴も一緒なわけさ」
「どういうこった？」
「これを見てみな」
ボニートは首を指さした
釣り針が首に到達している
もうここまでこれば喉を掻っ切ることもできる
いや、頸動脈に穴をあけることも難なくできるだろう
「ホル・ホース。この勝負お前は手を出すな」
「……勝てんだろーな」
「じゃなきゃ、こんなことは言わねぇさ………おい坊っちゃん！」
「何だ！」
「テメーの手並み、いや見事なもんだったぜ！坊っちゃんと侮って悪かったな！」
「………………………………」
褒め言葉だというのにペッシの顔は不審に満ちている
まぁ、ギャングの世界において褒め言葉ほど疑わしいものはない
「だからよー……」
「！」
釣り針が動き出し、喉元へと切っ先を向ける
だが、時すでに遅し
『キャプテンビヨンド』はボニートを掴んだ！
「Vieni qui!」
座標は北緯４２度東経１０度
ギャングにとっては皮肉な場所だ
ピアノーザ島の壁は高い
最後の「vieni qui」って「こっちに来なよ」という意味らしいのですが、確証が持てません。
イタリア語に通じている方は指摘してくだされば、ありがたく思います。
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