ジョジョの奇妙な冒険 第5部外伝〜真実への探求〜   作:京都府南部民

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第13話 フニクリ・フニクラ②

「駄目だ。こいつも衰弱してやがる」

 

「くそったれめ!」

 

ボニートの仕事の信条の一つ

『なるべく一般人は巻きこまない』

現在、目の前で行われている老化の惨劇はその言葉をいとも容易く崩したものであった

 

「(恐らくだが…いや、これは明らかにスタンドの攻撃だッ!集団老化なんて聞いた事が無ェ!きっと敵はこの列車内のどこかにいる。そしてこの規模、使い手なら把握して無ぇ訳がない。この老化現象は連中にとって『奥の手』の一つだろう。つまり連中は)」

 

「ボニート、一つ聞きたい事があるんだがよォ~」

 

「何だ?」

 

「どうして俺たちは老化していないんだ?」

 

ホル・ホースの言葉にボニートは衰弱した乗客と自分達とを見比べた

まずは、料理

ボニートたちは料理と呼べるものは一切頼んでいないし、それどころか食欲も無い

他の乗客たちには、テーブルの上にステーキなど豪勢な食事が置かれていたようだが、その料理も老化の影響なのか黒ずんだ塊となっている

次に、服装

これは関係ないだろう

確かにホル・ホースは西部風の服を着ているが、ボニートは藍色を基調とした迷彩色スーツ(ブリオーニ社製)

スーツを着ている乗客は何人かはいる

最後に、飲み物

ボニート達が手に持っているのはストレガとグラッパ

どちらもイタリアを代表するリキュールとブランデーだ

だが、客員テーブルの上にあるのはワイン、ウィスキー、バーボンなどなど

無論リキュールとブランデーを飲んでいると思われる乗客もいた

 

「分からん……な、だが俺達には『何か』違うものを持っている…あるいは、その『何か』を持っていないから老化の条件から外れているとすんのが妥当だと思うが?」

 

「妥当かよ、しっくりしねぇな」

 

「俺だってそんな言葉使いたかねぇよ」

 

グラスをカウンターに置き、ポケットからタバコとライターを取り出す

タバコはオーストリアから取り寄せた「カサブランカ」

だが、ライターがうまく着かないようだ

 

「ホル・ホース、ライター」

 

「禁煙はどうした?」

 

はっ、とボニートは慌ててタバコを箱に戻した

そこでまた違和感に襲われる

何か力が奪われたような、特に左腕の力が奪われたような

 

「ボニート!お前、腕!」

 

「あぁ?」

 

驚愕したのはホル・ホースだけではない

ボニートも驚愕する

 

「何だこりゃ!?」

 

指先からどんどん枯れ果てた木のように老化が進んでいく

爪は剥がれかけ、皮もめくれ始めている

右腕で力強く押さえようとも、キャプテンビヨンドで押さえようとも

 

「(何故だ?何故今になって…このタイミングでッ!)」

 

頭の中で自分の行動を一気に思い返す

そこにこの老化の秘密が隠されているかもしれないからだ

 

「(この列車に乗ってからの行動を思い返せ!切符を駅員に渡した。ブチャラティ捜索のために全車両を周った。そして今ここで酒を飲んだッ!アルコールの摂取量が問題なのか?いや、違う!もし連中が何かをあぶり出すためにこの無差別老化を行っているというのなら、そんな曖昧なもんじゃねぇはずだ。きっと俺は『何か』を持っちまったんだッ!捨ててしまったんだッ!)ホル・ホース!この列車に乗ってからの俺の行動を詳しくだ!覚えている限りで詳しく、全て、言えッ!」

 

熟慮に熟慮を重ねたがボニートの頭の中で解決の糸口は見つからない

彼は自分の相棒に意見を求めた

自分の事は自分がよくわかっている

などと言う連中がいるが自分を見る事が出来るのはいつだって他人だ

 

「この列車に乗ってから?……新聞を車内販売で買う、席に座って切符の確認、ブチャラティ捜索のために全車両を周る、見つからず諦めてバーで一休み、ロックのストレガとグラッパで乾杯、周囲の老化に驚いて対策を練り始める、老化の条件について考え始める、そして……」

 

ホル・ホースは何に気付いたのか、目を見開きあるものを指さす

 

「グラスをカウンターに置く……」

 

「グラスをカウンターに……………そういう事か!」

 

枯れた左腕の最後の力を振り絞りカウンターに置かれたグラスへと手を伸ばす

 

「老化の条件、分かったぞ!」

 

彼はグラスへと……いや、『ロックアイス』へと手を伸ばす

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

「なるほど『温度』か、そりゃ盲点だったな」

 

「サーモ何とかってのがあるらしいが、肉眼じゃ見えない所をつく能力だ。こりゃ厄介なことになったぜ」

 

互いにロックアイスで体を冷やしつつも、周囲への警戒を怠る事はない

ホル・ホースは『皇帝』の引き金に指をかけたままだし、ボニートは右手で大型フライパンをペン回ししているかのようにして遊んでいる

 

「こっちから行くか?それとも向こうから?」

 

「一番の理想的なのはこっちから行ってウルトラ大活躍して事件解決」

 

「一番の現実的は?」

 

「向こうから来て防戦一方で何とか勝利」

 

「勝てるだけ良しとするか…………」

 

ロックアイスを口に放り込み、更に冷蔵庫の中を漁っているのはホル・ホースだ

 

「なぁ、ボニート。これは俺の予想なんだが」

 

「言ってみろ」

 

「敵はおそらく複数人で行動をしている」

 

この予想は仕事経験で培った直感が告げたものだった

ホル・ホースは様々な組織・人物と組み、様々な組織・人物と敵対してきた

政治家、企業の重役、マフィア・ギャング、極右極左団体、テロリスト、ある時は一般人と手を組んだこともある

はっきり言って仕事の数だけならボニートよりも多い

 

「…………もし、お前の言う通りだった場合、その敵は多数か?少数か?」

 

「お前の好きな方で良いよ」

 

「じゃあ少数か」

 

フライパンを受け止め、貫通扉を睨みつける

『皇帝』の銃口も貫通扉を向いている

 

 

 

 

 

――――まったく、も~兄貴ったら容赦ないんだから~――――

 

 

 

 

 

 

「本腰入れるぞ!ホル・ホース!」

 

「アイ・アイ・サー!」

 

 


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