グリモワール魔法学園【七属性の魔法使い】   作:ゆっけめがね

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※この作品の主人公は原作アプリの転校生ではありません。
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 それでもOKという方は、よろしくお願いします。


第94話 ストーカーの正体

良介たちは温泉宿に戻ってきていた。

 

「本当なんですか!?

さらちゃんが行方不明って・・・」

 

エミリアは良介から話を聞いて驚いた。

 

「ああ、そうだ。

で、今からもう一度探しに行こうかと思ってな。」

 

「さらちゃん誘拐されちゃったんですか?」

 

「まだそうと決まったわけじゃないんだけどね・・・」

 

「でも、その可能性は十分にあると思うんよ・・・ほら、ウチらが調査しとったんも失踪事件やん?

もし・・・さらちゃんが聞き込み中に犯人に出くわしたんやったら・・・」

 

「そんな・・・大事件じゃないですか!」

 

「そうなの!

あぁ、湯けむり妖怪の伝説が残るこの温泉街で・・・謎の連続失踪・・・これはもう、大事件なのよ~!」

 

「おい、まだ連れ去られたと決まったわけじゃ・・・」

 

エミリアは良介の話を聞かずに何か考え込んでいた。

 

「湯けむり妖怪・・・まさか・・・」

 

「エミリアちゃん、なにか心当たりがあるの?」

 

「私、聞いたことがあって、あんちん、きよ・・・ひこ?

っていう伝説なんですが。」

 

「アンチンキヨヒコ・・・誰やん?」

 

エミリアの話を聞いていた良介が口を開いた。

 

「安珍・清姫伝説のことか?」

 

すると、ずっと黙って様子を見ていた誠も話に混ざってきた。

 

「清姫って女が安珍って男に一目ぼれして告白したけど、安珍が嘘をついて逃げたことに清姫が激怒した結果、蛇になって安珍を襲ったって話か。」

 

「そう、それです!」

 

「どんな嘘をついたらそうなるんよ。」

 

「きっと、その人の怨念が・・・妖怪となって今でも愛する人を探して・・・」

 

「あやせさん・・・妖怪はサスペンスじゃないぞ。」

 

良介はため息をついた。

 

「うぅ・・・ごめんなさい。

わたしがしっかりしてたら・・・」

 

「大丈夫よ。

私達で見つけましょう!

湯けむり妖怪蛇女を!」

 

「もちろんです!

さらちゃんを助けないと!」

 

「わ、わたしも・・・絶対にさらちゃんを助けます!」

 

「早速、聞き込みよ!」

 

あやせたちは外へと出ていった。

 

「・・・良介、どうする?

なんか皆変なスイッチ入ったみたいだけど。」

 

「知らん。

俺たちは俺たちで普通に聞き込みするぞ。」

 

良介と誠も続くように外に出た。

 

   ***

 

良介たちは温泉街を歩いていた。

 

「暗くなると危ないから、みんな気をつけてね。」

 

ゆかりは皆に注意を促した。

 

「まず聞き込みだな。

さっき回ったけど、もう一回行くか。」

 

「うん。

なにかあったら教えてね。

はぁ・・・大変なことになっちゃったわね・・・私がちゃんとついてれば・・・」

 

「まぁ、妖怪はないやろけど、心配やなぁ。」

 

「妖怪じゃなくても、ストーカー監禁とかの可能性も・・・」

 

「もう、海老名さん。

縁起でもないこと言わないでよ。

ああぁ、不安になってきた・・・本当にそうだったらどうしよう・・・」

 

「なんや、ゆかりはんたらオロオロしとるわ。

こういう時一番頼れそうなのになあ。」

 

「意外な一面ね・・・こういうの、なんて言うんだったかしら~。」

 

「はぁ・・・こんな時は朝比奈さんがいたら心強いんだけど。

きっと一喝して、パーッと探してくれるんだろうな・・・ダメだね。

私、どんどん悪いほうへ考えちゃって・・・」

 

「あやせさん、もしかしてギャップ萌えって言いたいのか?」

 

誠があやせに言った。

 

「あぁ~!

それだわ。

椎名さんって、普段あんなにしっかりしてるように見えるのに・・・こういう時は、急にかわいい一面が垣間見えちゃって。

男性は思わず、ときめいてしまうんですよね~。

ね、良介さん?」

 

「・・・え?

そこで俺?」

 

良介は驚いた。

 

「かわいい・・・?

ギャップ!?

あかん!

あかんでそれは!

ギャップとか卑怯やわ!

ダーリンの前で意外とかわいいとこなんて、見せんといてーっ!」

 

誠はため息をついた。

 

「良介、また話が脱線し始めたぞ。」

 

良介は呆れたように頭を掻いた。

 

「放っておけ。

聞き込み行くぞ。」

 

良介と誠は聞き込みに向かった。

 

   ***

 

あやせは温泉街の人と話をしていた。

 

「あらあら、なるほど~。

それは怖いですね~。

はい、ありがとうございました。

ではでは~。」

 

あやせは聞き込みから戻ってきていた良介たちのところにやってきた。

 

「あやせさん、どうだった?」

 

良介はあやせに聞いた。

 

「それがね、大変なこと聞いちゃった。

ここ数日、変な人影を目撃したって人が多いらしくて・・・ストーカーじゃないかって。」

 

「ストーカーって、まさか本当に?」

 

「そのストーカーがさらちゃんを・・・可能性はありますね。」

 

「事件ね!

ミステリーだわ~。」

 

ゆかり、エミリア、あやせの3人の反応を見て良介と誠はため息をついた。

 

「それにしても、俺の感じた気配って・・・」

 

良介は顎に手をやった。

 

「きっと、さらちゃんカワイイから見つけて・・・連れ去ったのかも。」

 

「うぅ・・・さらちゃん・・・」

 

秋穂は悲しそうな顔をした。

 

「もし監禁されたりしていたら、今ごろ・・・」

 

「や、やめてってば、そういうこと言うの。

それに!

もしストーカー誘拐とかなら、私たちじゃどうにも・・・」

 

「大丈夫です!

きっと誘拐の犯人もこの温泉街にまだいるはずです!」

 

「犯人は現場に戻る・・・捜査の基本ね!」

 

「でも、警察に・・・」

 

「いや、ウチらで捕まえるんや。

誘拐なんて許せへんもん!

だってそうやん?

かわいいってだけで・・・襲うやなんて・・・」

 

「香ノ葉ちゃん・・・」

 

「ウチだって、さらちゃんに対しては我慢しとるのにっ!」

 

「え?」

 

あやせは香ノ葉の発言に呆気にとられた。

 

「許さへん・・・絶対、しばき倒すで!

さらちゃんはみんなのアイドルなんや!

不可侵なんやで!?

聖域に手ェ出した罪、後悔させたる・・・!」

 

「あの~・・・香ノ葉ちゃん?」

 

良介と誠はその様子を見て、頭を掻いた。

 

「とりあえず・・・俺らは先に聞き込み再開と行くか。」

 

「ああ、そうだな。」

 

良介と誠は聞き込みを再開した。

 

   ***

 

良介たちは聞き込みを続けていたが、少しずつ人が少なくなってきていた。

 

「人も少なくなってきましたね・・・」

 

「わくわく。

なにか起こりそうよね~。」

 

「な、なにか起こるんですか・・・?」

 

あやせの発言に秋穂は不安そうな顔をした。

 

「そろそろ次の犯行が・・・気をつけてね、秋穂ちゃん。」

 

「えぇ・・・わたしなんですか?

うぅ・・・」

 

「でも、ホンマに不気味やなぁ。」

 

「あれ、なんでしょう?」

 

エミリアが何かに気づいて、指差した。

良介と誠がエミリアが指差した方へと行くと、立札があった。

 

「古い立札だな。

良介、なんて書いてあるんだ?」

 

「えー・・・湯けむり妖怪伝説の由来。」

 

「あら?

それって、昼間のおばあさんが言っていたやつね~。」

 

「湯けむり妖怪とは・・・清らかなる心の者に害をなさず、悪しき心の者を食らう妖怪。」

 

「ほうほう、つまり?」

 

「湯けむり妖怪は、悪い心を持っていると襲ってくる。

清らかな心、良い心を持っていると襲われないってことだな。」

 

「なんや、あるあるやなぁ。

結局、悪い子は湯けむり妖怪に襲われるから、ええ子にせなあかんよ~・・・みたいな、子供にいうこと聞かせるための作り話やん?」

 

「だけど、こういうのは大切な教訓が含まれてたりするんだよな。」

 

「よくある、地方の伝説じゃねえの?

頭のいいやつは、そういうのじゃ聞かなさそうだけどな。」

 

話を聞いていたあやせがニヤニヤし始めた。

 

「あらあら~、誠くんはどうしたら言うことを聞くの?」

 

「それは・・・美人な大人の女性だったら聞くかも・・・」

 

「先輩・・・」

 

「ん?

どうした秋穂。」

 

「あの、あれって・・・」

 

「あれ?」

 

「あそこにいる人、さっきからずっとこっち見てるんですが・・・誰でしょうか?」

 

良介は秋穂の指差している方向を見た。

 

   ***

 

良介は秋穂が指差している方を見たが、誰もいなかった。

 

「誰もいないな。」

 

「うーん、確かにこっちにいたんですけど。

あ、あそこの影?

ほら、見えますよ。」

 

「ちょっと、やめてえな・・・秋穂ちゃん。

怖いやん・・・

うちの家康にはなんにも・・・」

 

「でも・・・ほら、向こうの木の下に・・・」

 

「もう、秋穂ちゃんまで変な冗談は・・・」

 

「冗談ではない。

いいから話を聞け!」

 

どこからともなく声が聞こえてきた。

 

「今、声が聞こえたな。」

 

良介は周りを見渡した。

 

「そうね。

わたしにも聞こえちゃったかも・・・」

 

「私、はっきり聞こえました!」

 

「やっぱり。

妖怪の怨念が・・・」

 

「そんな、まさか・・・」

 

「とにかくここを離れようか。」

 

「そうね。

秋穂ちゃんも行きましょ?」

 

「でも、あそこの人が・・・すすき野原のほう指差してて・・・」

 

「そんな人影どこに・・・」

 

「黙って話を聞け!

秋穂がいると言ったらいるんだ!」

 

誠の話を遮るようにまた声が聞こえてきた。

 

「この声・・・まさか・・・」

 

良介の顔をが引きつり始めた。

 

「良介!

後ろだ!」

 

「大人しくしろ。」

 

「はぁ・・・面倒な奴が来やがった。」

 

良介はため息をついた。

 

   ***

 

良介たちは温泉宿の部屋に戻ってきていた。

 

「ご、ごめんなさい!

おねえちゃんがご迷惑をかけて・・・本当にごめんなさい!」

 

秋穂が必死に謝っていた。

 

「それで、結局はエミリアを放り出したのも、声の正体も、街で噂になっていたストーカーも、全部春乃だったのか。」

 

良介は呆れていた。

 

「あはは・・・ずっと言おうとしてたんですけど、タイミングが・・・」

 

「妹の入浴するところを見られたくないってのはわかるけどさぁ・・・」

 

誠も呆れていた。

 

「ごめんなさい!」

 

「まぁ、いいか。

さらも旅館に戻ってきたし。」

 

良介はさらの方を見た。

 

「そうね。

怪我もしてないみたいだし、本当に良かった。」

 

「ごめんなさい・・・すすき野原にいったら、シローが気に入っちゃったんです。

なかなか動いてくれなくて・・・わたしもきもちよくて。

ついウトウトしちゃって・・・気づいたらまっくらで・・・ごめんなさいぃ!」

 

「おねえちゃんがごめんなさい!」

 

「まぁ、そう謝るなよ。

もういいから。」

 

良介は呆れ気味に笑った。

 

「これで、一件落着だな。」

 

誠がそう言うと、テレビでニュースが流れた。

 

「お、失踪事件も解決したみたいだな。

元夫のストーカーが、女性を監禁していた・・・か。」

 

「ホンマに、あやせはんの推理あってたんやなぁ・・・」

 

「やっぱり、愛欲のもつれだったのね~。」

 

「やれやれ、俺たちの出番は無しか。

ま、温泉に入ることができたからよしとするか。」

 

良介はその場に寝転んだ。

 

「でも・・・すすき野原のほう指差してた人って、誰だったんでしょうか?

きっと、さらちゃんの居場所を教えてくれてたんだと思うんです・・・」

 

「見間違いじゃないのか?

あの後、誠と一緒に周りを調べてみたけど、誰もいなかったぞ。」

 

「そ、そうですか・・・本当に見たんだけどな・・・おかしいなあ・・・」

 

秋穂は不思議そうに窓の外を見た。


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