グリモワール魔法学園【七属性の魔法使い】   作:ゆっけめがね

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※この作品の主人公は原作アプリの転校生ではありません。
 閲覧者様のイメージを壊す可能性があります。
 それでもOKという方は、よろしくお願いします。


第8話 学園の片隅

「秋穂秋穂秋穂あきほあきほあきほ・・・」

 

一人の生徒が誰かの名前を連呼していた。

嬉しそうに。

 

「瑠璃川さんがここにいるってことは・・・」

 

智花が瑠璃川という生徒が見ている方を見る。

 

「ふんふ~ん。

きょうもお天気がいいですねぇ~、シロー。

あきほちゃん。

はるのさんもお誘いして、みんなでおさんぽしましょお?」

 

「ありがとう、さらちゃん。

でもいいんだ。

おねえちゃんに言ってみたんだけど、とっても楽しいらしいから。」

 

「でもわかるよ、その気持ち!

なんかすっごいわかる!」

 

3人の生徒が話をしていた。

 

「そうなんですかぁ?

一緒に歩いた方が楽しいのにぃ~・・・」

 

「違うんだよさらちゃん!

春乃さん的にはいっしょにお散歩してるんだ!

だから、春乃さんは散歩部の一員みたいなものなんだよっ!」

 

「そうなんですかぁ?

ノエルちゃん、よくわかりますねぇ!」

 

「ふふーん。」

 

智花は話し込んでいる3人のところに向かった。

 

「みんな、こんにちわ。」

 

「あっ、南先輩!

こんにちわ。」

 

「こんちはっ!」

 

「こんにちはぁ~!

いいお天気ですねぇ!」

 

3人と智花は挨拶を交わす。

 

「うん。

実はね、みんなに紹介したい人がいます!

新しい転校生の人です!」

 

「わぁ~っ!

わたし、仲月 さら(なかづき さら)ですぅ!」

 

「あたし、冬樹 ノエル(ふゆき のえる)!

よろしくっ!」

 

「瑠璃川 秋穂(るりかわ あきほ)です。

えっと・・・」

 

なぜか向こうを確認する秋穂。

 

「よ、よろしくお願いします!」

 

「俺は早田 良介。

よろしく。」

 

気がつくとさっきの生徒が近くにいた。

 

「あっ!

お、おねえちゃん!」

 

「・・・おねえちゃん?」

 

   ***

 

「おねえちゃん、大丈夫だよ!

ただ自己紹介しただけだから!」

 

「わかってる。

秋穂が可愛いのはちゃんとわかってるから。」

 

会話になっていない。

 

「(なんだこの人・・・)」

 

「・・・転校生だって?

いいか、1つだけ言っておく。

間違っても秋穂に手を出そうと思うなよ。

もし何かしたら・・・こ・・・」

 

「おねえちゃんっ!

大丈夫だからっ!」

 

秋穂が叫ぶように呼びかける。

 

「・・・秋穂・・・怒った秋穂もかわいい・・・天使・・・」

 

「・・・・・(シスコンにも程があんだろ・・・)」

 

その様子を見て呆れる良介。

 

「じゃ、じゃあまたね。

春乃さんにもまた、ちゃんと紹介しますね!」

 

そうしてその場を良介と智花はその場を後にした。

 

「・・・とっても仲がいいんですよ!

瑠璃川・・・春乃さん、秋穂ちゃんのことが大好きなんです。

だから、その、男子には特に厳しくてですね。」

 

「ああ、話しただけなのに殺すって言いかけてたしな・・・

早とちりにも程があんだろ・・・」

 

「でも大丈夫です!

あ、大丈夫っておかしいかな。

普通に接してれば大丈夫ですから・・・たぶん・・・」

 

「・・・・不安だ。」

 

ため息をつく良介。

すると、近くで怒鳴り声のような声が聞こえてきた。

 

「・・・聞いているのか、朝比奈 龍季(あさひな たつき)!」

 

すると、近くに聖奈と一人の生徒がいた。

 

   ***

 

「うっせーな。

鼓膜敗れたらどうすんだよ。」

 

「また喧嘩したそうだな!

一般人相手に!」

 

「それがどーした。

魔法使いは喧嘩しちゃいけませんってか?」

 

「当たり前だ!

魔力による筋力増強を知らんとは言わせん!

魔法使い、ただ魔法使いであるだけで常人よりも筋力に勝る。

相手が死んだらどうするつもりだ!」

 

「ケッ!

そんときゃ年少行くだけだろーが。」

 

「・・・少年院?

馬鹿を言うな。

魔法使いが行くのは・・・七枷矯正センターだ。

魔法使いの義務も、学生の義務も果たせないままだと退学だ。

貴様は矯正センターに送られる。」

 

「へーへー。

好きにしてくれ。

俺は構わねーよ。」

 

「減らず口を・・・!」

 

どうやら問題を起こしたようで注意されているようだ。

 

「おい、男子と女子が歩いてるぜ。

注意しなくてもいいのかよ。」

 

「私は風紀委員ではない。

それに今問題にしているのは、貴様だ。」

 

すると、聖奈がこっちに気づいた。

 

「・・・良介、ちょうどいい。

先ほどの話を聞いていたな?

魔法使いが危険だということは知っているな?」

 

「ああ、ある程度知っているつもりだけど・・・」

 

「もちろん、魔法が使えるからだが・・・もうひとつある。

魔法使いに覚醒した者、つまり【魔力が活性化した者】は、

体内の魔力により筋力が増進される。

撃ち出す魔法の威力耐えるためだ。

だから、一般人と力比べするな。

絶対にだ!」

 

「(まずすることがないと思うんだが・・・)」

 

「下手すると、骨くらいたやすく折ってしまうからな。

魔法を使うのも言語道断だ。

魔法使いのイメージを下げるようなことは、絶対に、絶対にするな。

それが魔法使いに覚醒したものの義務だ。」

 

なにやら説教じみてきて長話になり始めた。

 

「・・・・・」

 

「この朝比奈のように授業にも出ず、街でもめ事ばかり起こし、

校則違反を繰り返していると、退学処分になる。

だが魔法学園を卒業していない魔法使いを、社会は受け入れない。

ここを退学になったら、行き先は【矯正施設】だ。

・・・そうなりたくなければ、正しく毎日を過ごせ、いいな。」

 

「(要するに、問題起こさず、授業に出ればいいんだな。)」

 

「貴様もだ。

いつまでも見逃しておかんぞ。」

 

「お目こぼしなんか頼んでねーだろーが。」

 

聖奈はその場から去っていった。

 

「・・・ケッ」

 

龍季もその場から去っていった。

 

「・・・矯正施設、ねぇ・・・

本当にそんな所、あるのか?」

 

「・・・結城さんが言ったこと、全部本当です。

退学になった人は滅多にいませんが、ゼロだったわけでもないので・・・」

 

「・・・マジか。」

 

「実際、矯正センターに送られた人はいるんです。

・・・で、でも大丈夫ですよ!

真面目に授業に出て、クエストに行って・・・

そうすれば、みんな卒業できますから!」

 

「・・・そうか、わかった。

(・・・ところで、思ったが覚醒する前に問題起こしたとか、

なにか前科あっても送られるのか?)」

 

「・・・・?

良介さん?

どうかしました?」

 

「あ、いや、なんでもないよ。

(・・・絡まれたからって暴走族一つ潰したのは黙っておくか。)」

 

   ***

 

智花と別れた後、良介は再び夏海を探し始めた。

すると、噴水前にいる夏海を見つけた。

 

「夏海、こんなところにいたんだな。」

 

「あ、良介。

やっと見つけたわよ!

早速、独占密着インタビュー、受けてもらうわよ!」

 

「はいはい、約束だもんな。

受けるよ。」

 

二人は歩き始めた。

 

「うわぁ、ヌルヌルして気持ち悪い・・・シャワー浴びたい・・・」

 

「(・・・あれ、今なら・・・)」

 

「あ、もしかして帰ろうとしてる!?

ダメ、ダメだからね!

記事は明日の朝までに作らなきゃいけないの!

あんたの取材と、討伐した魔物の情報共有、

今からやんないと全然終わらないんだから!

さっき言ったでしょ!」

 

「え・・・まさか、マジで夜中まで・・・」

 

「ほら、行くわよ!」

 

そのまま夏海に引っ張られてしまった。

そしてなぜか、まず生徒会室来ていた。

 

「・・・なるほど?

結構壊されたらしいな。」

 

「全部バッチリ!

カメラに収めてきました!

これで明日の一面は・・・」

 

すると、薫子が話しかけてきた。

 

「写真のコピーをいただけますか。」

 

「え、ええっ!?

そんな、これは命よりも大事な写真なの!

やすやすと渡したりなんかしな・・・」

 

「岸田。

頼む。

アタシたちはお前と目的が違う。

写真を公表したりしない。

ただ分析に使うだけだ。」

 

虎千代までもが頼み込んできた。

 

「分析・・・って、デバイスに戦闘記録?

みたいなのが残るんじゃ・・・」

 

「それとは別に、だ。」

 

それを聞いて悩む夏海。

 

「・・・えっと・・・」

 

「いいですか。

生徒会長が報道部にこうして頭を下げている。

本来なら生徒会の権限を利用し、取り上げてもよいのです。

・・・あなたの良心に期待すると、会長はお願いされているのです。」

 

「な、なによー。

そんな恩着せがましい・・・わ、わかったわよ。

あげる。

でも本体も容量がないの。

部室のパソコンでコピーしてくるから、待っててね。

それじゃ。」

 

「・・・あ、俺もこれで失礼します。

(俺、外で待っててもよかったな・・・)」

 

良介と夏海は生徒会室を後にした。

 

「・・・街に魔物、か。」

 

虎千代は椅子に座りながらそうぼやいた。




人物紹介

仲月 さら(なかづき さら)12歳
散歩部の部長。
のほほんとした面々とペットのシローを引き連れていつも学園を練り歩いている。
2歳の時に魔法使いに目覚めたため、学園生活はすでに10年。
年少組だがベテランの風格で、誰に対しても物おじせずに話しかける。
マスコットのような生徒。

冬樹 ノエル(ふゆき のえる)14歳
みんなのサポーターを自称するお手伝い要員。
人手が足りない部活に顔を出しては、ひとしきり遊んで去ってゆく。
どの部にも入部する気はないらしい。
唯一の例外が散歩部で、よく仲月さらと学園内を歩いている。
冬樹イヴとは双子のようだが・・・仲悪い?

瑠璃川 秋穂(るりかわ あきほ)13歳
校内の名物【瑠璃川姉妹】の妹の方。
姉から受ける犯罪まがいのスキンシップに辟易しながらも、
愛情は感じ取っている様子。
このままではいけないと独り立ちの決意を固めているが、
あまりに溺愛されて育ったため、独りになると寂しくて泣き出してしまうようだ。

瑠璃川 春乃(るりかわ はるの)17歳
校内の名物【瑠璃川姉妹】の姉の方。
一見クールビューティであるが、それを台無しにするほど重度のシスコン。
妹以外には一切興味を示さないあたり筋金入りだ。
魔物討伐にも意欲的ではないが、
妹に危険が及びそうなときは情け容赦なく敵を粉砕する。

朝比奈 龍季(あさひな たつき)17歳
授業をサボってケンカに明け暮れる学園一の不良。
寄るもの全て傷つける乱暴者の雰囲気が強いが、
よく見ると犬の毛があちこちについている。
仲月さらの飼い犬シローを撫でている所も結構目撃されており、
彼女にも心を許すものはあるようだ。

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