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ある日、学園生は風飛市内にあるレジャー施設に来ていた。
「これ!
ミナ、先に行くでない!
迷子になるぞ!」
恋が走って行ってしまったミナを呼び止めようとしたが、ミナはそのまま行ってしまった。
「全く、ミナのやつめ・・・おお!?
子供がたくさんおるぞ!
思った以上じゃ。」
恋は子供たちの数に驚いた。
「子供たちのためのレジャー施設だと伺っておりましたが・・・
本当に、天使のような子たちばかりですね。
なんて可愛らしいのでしょう。」
シャルロットは子供たちを見て笑った。
恋は泣き叫ぶ子供たちを見て、少し引いていた。
「・・・天使?」
「天使ですわ。」
良介は子供たちを見て、ため息をついた。
「やれやれ、今回のクエストは大変そうだな。
なぁ、紗妃。
・・・紗妃?」
良介は子供たちを見て呆然とする紗妃に話しかけた。
紗妃は良介に話しかけられた途端に我に返った。
「はっ!
い、いけません。
呆気にとられていました・・・」
紗妃はクエストに来ている学園生の方を向いた。
「え、えぇと・・・今回のクエストは【ふうびきっず】の警備です。
ご存知かもしれませんが、ここは・・・子供たちが憧れの職業を体験することができる人気のレジャースポットです。
しかし迷子等のトラブルも多発する為、クエストが発令されました。」
紗妃が説明していると鳴子がやってきた。
「と、言うのは建前だろ。」
「遊佐さん・・・えぇ、その通りです。」
「どういうことだ?」
良介は鳴子に説明を求めた。
「いいかい、良介君。
もし、第8次侵攻が本当に来るのだとしたら・・・この【ふうびきっず】は位置関係的に、最も侵攻の被害が少ない場所になる。
つまり、避難所となるわけだ。」
「なるほど・・・避難してきた人たちを守るために、できるだけスムーズな対処をとれるように、施設内の構造を理解するためか。」
「本来であれば、学園生全員が把握すべきなんだろうけど・・・【第8次侵攻が来る】と緊張した学園生がここに乗り込むのもおかしいだろう?
ここは予約制でね。
保護者も子供たちも随分前から楽しみにして来るんだ。
そんな中、僕たち学園生が怖い顔で警備をするわけにもいかないからね。
というわけで、今日は優しいお姉さん、お兄さんとして頑張ろうか。」
すると、早速恋が子供たちに絡まれていた。
「ぎゃぁ!
な、なんじゃお主ら!
えぇい引っ張るな!
縮むであろう!
あ、それはわっちの大事な筆じゃぞ!
だめじゃ!
返さんか!」
恋は取られた筆を取り返しに子供たちを追いかけていった。
「あらあら、もう仲良しさんなのですね。
羨ましいですわ。」
「あのやんちゃ盛りの子供たちを見ていると、昔の自分を思い出すな。」
鳴子は笑いながら子供を見ていたが、紗妃は固まっていた。
「おーい、紗妃。
リラックス、リラックス。」
良介に言われて、紗妃は元に戻った。
「はっ!
そ、それでは早速警備に移りましょう。」
紗妃に言われて他の学園生は警備に向かった。
***
少し経って、筆を取り返した恋が帰ってきた。
「なんちゅう体力じゃ・・・あの子供ら・・・」
「南条さんは子供に慕われていらっしゃるのですね。」
「好かれるにしても、わっちの大事な筆が持ってかれるようではたまらんぞ。
館内を把握せねばならんというのに、振り回される予感がぷんぷんしよる。」
「(誠の奴、こうなることを面倒臭がってクエスト受けなかったんだな。)」
「まずは子供たちに集中をしたほうが良さそうだ。
ここまで大勢の子を相手にすることにはまだ慣れていないだろう?
営業時間内に施設を見回ることは出来なくても、閉館後に確認する手もある。
クエストの【警備】がおざなりになっては元も子もないからね。」
4人が話していると紗妃がやってきた。
「さて、皆さん。
お話し中申し訳ありませんが、このくじを引いてください。」
「くじ?」
シャルロットが不思議そうにくじ引きを見た。
「アトラクションについていただくため、担当をくじで決めます。」
「希望はとらんのか?」
「希望制ですと、一部に人気が偏ってしまいそうですので・・・ご理解ください。」
「では、僕から引かせてもらおうか。」
鳴子から順番に学園生はくじを引いていった
「警官?」
恋は引いたくじを首を傾げながら見ていた。
「看護師・・・」
「ほ、保育士・・・まさか私が保育士を引いてしまうなんて・・・」
「僕は医者だ。
シャルロット君と同じアトラクションみたいだね。」
「な、なぁ。
警官とは何をすればいいんじゃ?」
恋は良介に聞いてきた。
「いや、俺に言われても・・・補導すればいいんじゃね?」
「子供たちを・・・?」
「子供たちを補導してどうするんですか!
恐らく、パトロールとか・・・そういうものかと・・・」
「わたくし、看護師の知識などほとんどありませんが・・・どうしましょう・・・子供たちに看護師はこういう仕事だと伝えなければならないのですよね?」
「【魔法使い】という職業はないのかのぅ?
あればわっちはそっちに・・・」
「無いだろ。
【普通】の職業体験が出来るレジャースポットなんだから。」
「事前に係員がちゃんと説明してくれるさ。
心配することはないよ。」
少しして、恋が良介ところにやってきて聞いてきた。
「そういや、お主はどこの担当になったのじゃ?」
良介は笑みを浮かべながらくじを見せた。
「これだ・・・!」
「施設案内の担当!?
ぐぬぬ・・・そんなのがあったのか。
お主、運が良いのう・・・」
「それで、仕事内容は聞いたのか?」
「うむ、一応聞いたぞ。
施設内のぱとろーる、事件の捜査とな。
捜査はな、架空の事件が発生したと想定してするんじゃと・・・
ふふふ。
まるで幼い頃に戻ったようじゃ。
ちょいとばかしわくわくするのぅ。」
「・・・勢い余って、事件を迷宮入りとかにするんじゃないぞ。」
「わ、わかっておる!
教官として補導を・・・」
「いや、補導してどうするんだ。」
すると、子供たちがやってきた。
「なんじゃお主ら。
迷子か?」
「ねぇねぇ、君もこれに参加するんでしょ?
一緒にやろうよ。」
「違うぞ。
わっちは参加者ではない。
教官じゃ!」
「ならぶならあっちだよ。
はやくいこーよ。」
「おねーちゃんそのお洋服どこのなのー?
あたしも着たい!」
「これは制服じゃ!
わっちは参加者ではない・・・っておい、引っ張るでない!
どこへ行くのじゃ!?
わっちは警察官として仕事が・・・じゃから違うと言うに!
あ、ミナ!
良いところにきた!
この子らを何とかしてくれぬか!?
ミナー!」
ミナには恋の声が聞こえておらず、行ってしまった。
「あやつ、全くわっちの声が聞こえてないではないか・・・!
えぇい!
分かった、分かったから纏わりつくでない!
・・・ん?」
今度は違う子供がやってきた。
「さっきまで一緒だった子がいなくなったじゃと!?
早う言わんか!
そやつの特徴・・・服は覚えておるか?
詳しく教えるのじゃ。探しに行くぞ!」
恋は子供たちと行ってしまった。
「やれやれ、大忙しだな。
さて、俺も施設案内の仕事をやりますか。」
良介も仕事をしに向かった。
***
良介は医者、看護師を体験する施設にやってきた。
「ここが医者や看護師の体験をすることができるところだよ。」
良介は子供たちに説明すると施設に入った。
ちょうどシャルロットが子供たちに看護師の仕事を教えている最中だった。
「患者さまが緊張されないように、お声をかけてくださいね。
そうですわ、お上手ですね。
あなた様は立派な看護師になりますわね。」
「シャルロットさん、うまくやってるみたいだな。」
「あら、良介様。
えぇ、今ちょうど体験時間中です。
遊佐さんはあちらにいらっしゃいますよ。
もうすぐ終わると思いますが・・・」
シャルロットの見ている方向を見ると、鳴子が医者の仕事を教えていた。
「駆血帯は巻けたかい?
いいね。
加減もばっちりだ。
じゃあ次に、これで患者さんの腕を拭いてみようか。
そう、良くわかるね。
肘のあたりだよ。
これで準備が整った。
打つときに血管が逃げてしまうから、指で押さえるようにして・・・そう。
うん。
君は本当に上手だね。
完璧じゃないか。」
「遊佐さん、子供たちにああやって教えていらっしゃるんです。
わたくし、いくら係員の方から事前に教えていただけたとしても・・・あそこまで手際よくお伝えできる自信ございませんわ。」
すると、鳴子がやってきた。
「やぁ、良介君。
僕の治療でも受けにきたのかな?」
「あの子の回は終わったのですか?」
「あぁ。
目をキラキラさせていたよ。
本当に純粋な子ばかりで可愛いね。」
「お医者様は子供たちの憧れの職業と言いますからね。
それにしても・・・遊佐さんはいろんなことをご存知ですね。」
「好奇心でかじった知識があっただけさ。
大したことじゃない。
それに、保健委員なら簡単な切開くらいは出来るよ。
君も注射くらいなら出来るんじゃないか?
次の回まで時間があるし・・・そこの人形で試してみたらどうだい?」
「わ、わたくしがですか!?
そんな・・・もし、失敗したら・・・」
「相手は人形だぞ。
何を心配してるんだ。」
良介は軽くため息をついた。
「わかりました。
遊佐さんの説明は先ほどから何度も聞いてますし・・・きっとできます。
やってみますわ!」
そう言うと、シャルロットは早速やり始めた・・・が。
「あ、あああ!
遊佐さん、変な音が聞こえます!!」
「へぇ、この人形って意外と高性能なんだな・・・動脈を刺したみたいだね。」
「ど、動脈?」
「あと、勢いよく押し出したんじゃないか?
空気が入ったと認識されてるな。」
「おい、殺す気かよ。」
良介は引き気味に笑いながらシャルロットを見た。
「い、いけません!!
患者さま、すぐに回復魔法をかけますからね!
あぁ、神よ。
どうかこの方をお救いくださいませ!」
「人形に回復魔法をかけてどうするんだ。」
すると、鳴子のデバイスが鳴った。
「南条君、どうかしたのかい?
その子の特徴は?
分かった。
良介君もここにいるから、伝えておくよ。」
「鳴子さんは、今度は何事で?」
「良介君、子供が迷子になったようだ。」
「はぁ・・・まったく、こりゃ想像以上に大変だな。」
良介はため息をついた。
***
良介は今度は保育士の体験ができる施設にやってきた。
「ここが保育士の体験ができる施設だよ。」
良介は子供たちに説明して中に入ると紗妃が教えている最中だった。
「えぇと・・・赤ちゃんの抱っこの仕方は腕で頭を支えて・・・あ、ああ!」
「おねえさん・・・赤ちゃんの首、ガックンってしたよ・・・いたそう。
かわいそうだよ・・・」
「なので、こうならないように腕でしっかりと支えてくださいね!」
「なんか・・・嫌な予感しかしないな。」
良介は不安になりながらも紗妃の説明を見ていた。
「次は赤ちゃんはミルクをあげてみましょうね。
ミルクはお湯で溶いて・・・はい。
出来ました。
これを赤ちゃんに・・・」
「え!
ボクのおかあさんは冷ましてたよ!?
赤ちゃんやけどしちゃうよ!」
「ふぇ!?
う、うそ・・・そんなこと書いてあった・・・!?」
紗妃は説明書を見てみた。
「ミルクは作ってから人肌に・・・急ぎの場合は氷水で・・・み、皆さん!
ミルクは人肌まで冷ましてくださいね!」
「おねぇさんーひとはだってなにー?」
「私たちの体温くらいです!」
「だめだ・・・目を逸らしたくなってきた。」
良介は目を逸らしたい気持ちを抑えながら紗妃の説明を見た。
「おねーさぁーん。
次どうすればいいのー?」
「ご、ごめんなさい。
ちょっと待って・・・」
「おねえさーん!
この赤ちゃんのおむつ替えたーい!」
「え!?
えぇと・・・おむつの替え方は・・・」
「ねーねー、おねーさん。
もう遊ぼうよー。
ボク、飽きちゃったぁ。」
「だ、だめです!
お仕事はちゃんと最後までしないと・・・」
「赤ちゃんすげー泣いてる!
わっ!
なんだこれみず!?
みず出てきた!」
「うう・・・!
だめだめ、だめです!
こ、ここでお漏らししたら規則違反ですよ!!」
「ああ、もう!
我慢できねえ!」
良介は紗妃の説明のところに乱入し、正しいやり方を教えた。
説明を終えると紗妃は良介に話しかけてきた。
「いつから見ていたのですか?」
「最初からだよ。
何かあるのか?」
「いえ、お手伝いいただきありがとうございました。
正直・・・助かりました。
保育士としての仕事内容は理解していたつもりだったのですが・・・子供たちを前にしたら、頭の中が真っ白になってしまって・・・小さい子と接する機会なんて滅多になかったものですから。」
「だからってあんな説明の仕方はないだろ。」
「だ、だって、子供って壊れ物みたいじゃないですか!
すぐ泣き出しますし・・・何を考えているかも・・・子供たちとどう接すればいいのか分からないというのが正解でしょうか。」
「だったら、今から分かるようになれよ。
将来のためにな。」
「そうですね。
私もいずれはちゃんと子供たちと接する方法や・・・赤ちゃんのお世話を覚えなくてはいけない時がくるとは思っていますが・・・」
すると、紗妃は良介の顔を見た途端、赤面した。
「ち、違いますよ!?
私はそういうつもりではなく・・・」
「は?
何が?」
「別に意識しているわけではありませんからね!?
誤解しないでください!」
「は、へ?
何言ってんだ?」
「なんだか・・・誘導尋問された気分です。
風紀委員にそのような態度、良い度胸です!
学園に戻り次第すぐに・・・」
「だから、お前何言って・・・」
すると、アナウンスが流れた。
「迷子のお知らせをいたします。
白い・・・をお召しになった・・・お子様を探しております・・・お心当たりの方は・・・」
「迷子?
良介さん、もしかして迷子がいることご存知でしたか?」
「ああ、知ってたけど。」
「なんで言わないんですか!
一刻も早く迷子を探さないといけないのに!!」
「お前がちゃんと説明できてたら、こっちもそのことが言えたのにお前が説明できなかったから時間がなくなったんだろうが!」
「う・・・たしかにアトラクションで四苦八苦しておりましたが・・・」
「が・・・なんだよ?」
良介が少しキレ気味に紗妃を睨んだ。
「はい・・・申し訳ありません・・・と、ともかく!!
急ぎ皆さんと合流しますよ!」
2人は施設の出口に向かった。
***
良介と紗妃は鳴子と合流した。
「遊佐さん!
あの、迷子のアナウンスを聞いたのですが・・・!」
「ん?
あぁ、迷子か。
安心したまえ。
もう保護されたよ。」
すると、恋とシャルロットがやってきた。
「無事にお母さまともお会いに出来たみたいですし、ほっといたしましたわ。
これも神のお導きです。
あぁ、神よ。
感謝いたします。」
「そうですか・・・私たちが出る幕でもなかったのですね。
安心しました。」
「じゃが、見つかった場所が問題じゃな。」
「どこで保護されたんだ?」
「迷子が居たのは【地下の避難区域】じゃ。」
「地下の避難区域って・・・ちょっと待ってください。
本来であればそこは・・・」
「僕たちがこの後に確認するはずだった場所。
非常時以外は、責任者によって施錠されているはずだ。」
「奇妙だな。
迷子がそこまで行けるか・・・疑問だな。
セキュリティは大丈夫なのか?」
良介は鳴子の方を見た。
「現状、胸を張って大丈夫だとは言えないね。
軍に安全の確認を急いでもらったほうがいい。
会長にも報告を。
君たちも気付いているかもしれないが、この数か月間・・・人が集まるところで騒ぎが起きている。
偶然で片付けばいいが・・・ここは、万が一の避難所だ。
万全を期して損はない。
これが人為的に・・・意図的に施されていたものだとしたら。」
「根は事前に潰すに限るな。」
良介は周りを見渡しながら言った。
かなり時間が経ち、閉園時間を迎え、アナウンスが流れた。
「まぁ、もう閉園の時間ですのね。
あっという間でしたわ。」
「わっちはあちこち振り回されたせいでもうぼろぼろじゃ・・・じゃが、遣り甲斐はあったぞ。
警察官というものは責任が重いのう。
魔法使いも似たようなもんだが、警察官も違う方法で皆を守っているんじゃな。」
「看護師のお仕事もとても楽しかったです。
病院にかかることはあっても・・・実際にどのようにお仕事をされているかなんて、知る機会はありませんし。」
「氷川は保育士じゃったな?
どうじゃ、楽しかったか?」
「そうですね・・・楽しかったというか緊張したというか・・・今後の機会に活かせる勉強になりました。
もし、私たちが魔法使いでなければ・・・この中の、どれかの職業に就いていたかもしれませんね。」
「確かに、そういう世界も見てみたいな。」
「・・・らね。」
良介は鳴子の方を見た。
「鳴子さん、今なんて?」
「いや、なにも?
そんな世界を僕たちが作ればいいんじゃないか。
霧の魔物を根絶してね。
【魔法使い】が必要ない・・・一般市民として歩めるような、そんな世界をね。」
「そうだな。
そのために第8次侵攻に備えないとな。」
「施設内を視察し、学園へ帰りましょう。」
良介たちは施設を視察に向かった。