グリモワール魔法学園【七属性の魔法使い】   作:ゆっけめがね

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※この作品の主人公は原作アプリの転校生ではありません。
 閲覧者様のイメージを壊す可能性があります。
 それでもOKという方は、よろしくお願いします。


第85話 グリモアの夏

ハワイアンビーチズ東。

良介たちは魔物が来るのを待っていたが、未だに一匹も来ていなかった。

 

「こ、来ないね・・・」

 

「ってかNEの人たち強すぎ!

わたしたちの出る幕ないじゃん!」

 

「黙ってろ。

ヤツらが張り切ってんのはトーゼンだ。」

 

「そういや、魔物一匹倒せば謝礼がハワイ州から出るんだったか。」

 

「ん?

あ!

だから民間人をウチらに任せてんの!?」

 

「アイツらはそれで食ってんだ。

こっちのクエストが民間人誘導。

需要と供給が一致してていいだろ?」

 

メアリーは不敵な笑みを浮かべた。

しかし、少し時間が経つと魔物がやってきた。

 

「あ、き、来ます!

来ますっ!」

 

「PMCは生き残ってこそ金が手に入る。

だから加減ってもんがある。

こっちの実力と金を天秤にかけて、最低限を送ってくる。

つまりアタイらならあれくらいやれるってのがプロの判断だ!」

 

「舐められたもんだな・・・!」

 

良介は向かってきた魔物を殴り飛ばした。

 

「おい、良介に続け!

10秒でぶっ飛ばすぞ!」

 

「は、はいっ!」

 

メアリーたちは良介の後に続いていった。

 

   ***

 

みちるは何か念仏のように唱えていた。

 

「できるできる・・・わたしならできる。

せっかく教えてもらったんだもん・・・!」

 

「み、みちるちゃん、前見ないと危ないよ!」

 

「智ちゃん!

千佳ちゃん!

わたし、戦えるからね!」

 

「は、はぁ?

そりゃ良介がいるから戦えるでしょ?」

 

「もうわたし、ガス欠になんかならないから!」

 

「え?

ど、どういうこと?」

 

「魔法に使う魔力を抑えて、でも威力は殺さない・・・裏ワザ!

行くよっ!」

 

「みちる!

待てっ!」

 

突然前で戦っていたはずの良介がみちるの隣に現れた。

 

「それ、1回も試してないだろ!」

 

「だ、だって訓練の時は使う機会が・・・」

 

「実戦で初めてのことはするな!」

 

すると、メアリーが後ろから指示を出した。

 

「間宮!

魔物の目の前の砂を思いっきり熱くしろ!

フライパンみてーにだ!」

 

「あ、う、うん・・・でも時間かかるよ!」

 

「全力でやれ!

良介は間宮に魔力を流し込みながら魔物の相手だ!」

 

「わかった。」

 

「南は雷もある程度使えるな!

ヤツらは海水で濡れてる!

アタイと良介と同時に撃て!

間宮の魔法と合わせて焼き焦がすぞ!」

 

「は、はい!

やります!」

 

みちるは無言で皆の様子を見ていた。

 

「テメーは見てろ!

いいな!」

 

「は、はい・・・」

 

みちるは肩を落としながら返事をした。

 

   ***

 

メアリーの指示と同時に魔法が放たれた。

 

「今だっ!」

 

「はあぁっ!」

 

「サンダーブレーク!」

 

三人の雷撃が魔物を次々と倒していった。

 

「ほとんど倒したのは良介のみたいだったが・・・ま、こんなもんだな。」

 

すると、一匹だけ生き残った魔物がいた。

 

「ん、なんだ、まだいたのか。」

 

「よ、よーし、じゃあトドメ・・・」

 

千佳がトドメを刺そうとすると、メアリーはみちるを呼んだ。

 

「おい、無個性!」

 

「む、無個性って言わないで!」

 

「トドメはテメーだ。

やれ。」

 

「えっ!?」

 

みちるは驚いた。

 

「あの魔物は瀕死だ。

もう動けねぇ。

やりてーんだろ。

テメーのその魔法で、アレが殺れなきゃイチからやり直せ。

今回は学園生の命が最優先だ。

前線から外すからな。」

 

「や、やってやるもん!」

 

「おーし、いい度胸だ。

コイツを片付けたら次、その次!

強えー魔物と有利に戦える機会はそうねぇ!

今の内に慣れとけ!」

 

みちるが魔物に止めと刺して少し後。

 

「避難完了・・・おーし、この辺はもういい。

ちょうど、魔力の少ない奴らがへばってくる頃だ。

最後の民間人と一緒に北上しながら、他の学園生と合流していくぞ。」

 

みちるは立ち尽くしていた。

 

「無個性。

テメーは戦闘から外れろ。

後方支援だ。」

 

みちるは何も言わずにメアリーの方を見た。

 

「テメーは魔法使いになって日が浅ぇ。

まだ成果より命を優先する時期だ。

そこを間違えたら死ぬ。

1発で倒れなかった分、進歩してると思え。」

 

「はい。」

 

「みちるちゃん・・・」

 

「えっと・・・」

 

良介は何も言わずに剣を鞘に収めた。

 

「ほとんど初めての実戦が今回だ。

なにやったって恥じゃねぇ。

今は悔しがっとけ。

あとでアタイを笑ってみな。」

 

すると、メアリーのデバイスが鳴った。

メアリーはデバイスを取り、話を聞いた。

 

「わかった。

すぐ北の仲月班だ!

NEがやられた!

瑠璃川と不良がテメーらを待ってるぞ!

急行!」

 

「はい!」

 

「もー、まだ戦うの・・・」

 

「愚痴言ってないで行くぞ!」

 

良介は第1封印を解放すると、猛スピードで飛んで行った。

 

「あ、待ってくださーい!」

 

智花と千佳はその後を走って追いかけていった。

メアリーはみちるに話しかけた。

 

「松島。」

 

「えっ!?

は、はいっ!」

 

「ついたら仲月をすぐ避難させろ。

他の全員が戦闘に参加する。

テメーの役目だ。」

 

「わ、わかった!」

 

みちるも走って向かった。

 

   ***

 

さらの班に怜がやってきた。

 

「瑠璃川、朝比奈!

大丈夫か?」

 

「怜ちゃん先輩!

来てくれたんだ!」

 

ノエルが嬉しそうに怜の方を見た。

 

「こちらの戦闘が長引いてな・・・もう、魔物はいないのか?」

 

怜の後をありすが息を上げながらやってきた。

 

「はいぃ!

メアリーさん達が来てくれたんですぅ!」

 

さらが嬉しそうに言った。

怜はその言葉を聞くと、ありすの方を見た。

 

「すまない、楠木。

急がせてしまったな。」

 

「ぃ・・・ぃぃ・・・ぇす・・・」

 

その頃、良介とメアリーは2人で被害の確認をしていた。

 

「ナチュラルエネミーの被害は死者6人、重傷12人、軽傷大量か・・・」

 

「この規模なら少ねぇくらいだが、イチ企業にとっちゃ痛手だ。」

 

すると、メアリーは話を変えてきた。

 

「PMCに所属している連中、なんで軍に入らねーと思う?」

 

「ん?

堅苦しいのが嫌とか?」

 

「実感が欲しいのさ。

もともと正義感で戦うのに挫折したヤツラだ。

PMCは営利企業だ。

金っていう明確な目標がある。

憎いアイツを1匹殺れば、このくらいの金が入りますって実感で戦う。

メンドクセェ精神論がない方が戦える・・・そんなヤツらもいるのさ。」

 

「実感や金か・・・」

 

その言葉を聞いて、良介はため息をついた。

すると、メアリーは良介のマントを引っ張り始めた。

 

「どうした?」

 

「オラ、手ぇ出されねーからついて来い。

腕相撲、やらせてやるからよ。」

 

「・・・今からするのかよ。」

 

良介は苦笑いしながらついて行った。


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