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夏、沖合。
一隻の小さな船が走っていた。
「青い海!
白い雲!
カンカンの太陽っ!
楽しみすぎて、うっかりこのまま飛び込んじゃいそうですっ!」
真理佳は1人で燥いでいた。
「円野、今からそんなにテンションあげると持たないわよ。
それに今回はいつものとこだからね。
ハワイじゃないから。」
純が真理佳に注意した。
「ハワイでも国内でも、海は海です!
あぁ~、早く着かないかな・・・」
「ま、気持ちはわかるけどさ。」
「あっぢいぃぃ・・・はぁ、まだ着かんのか・・・?
干からびそうじゃ・・・」
アイラは苦しんでいた。
「一便ならフェリーだったから屋根があったんだけどね。
遅刻者はこうして地元の漁師さんに乗っけてもらうしか・・・」
「そうはゆーても、吸血鬼が朝の6時に起きれるかっちゅーんじゃ!」
「寝坊じゃ仕方ないわね。
あたしは仕事だったけど・・・」
「あづいぃ~、眠い~、お腹すいたぁ~、眠い~!」
「うるせぇなぁ・・・」
良介はため息をついた。
ちなみに良介は本当なら間に合っているはずだったが、アイラを起こすのに時間がかかってしまい遅れてしまった。
「良介、アンタこんなの抱えてきたの?
大変だったわね。」
「いやあ、こやつってば妾のお世話慣れしとるもんね。
のう、良介?
見ろ、如月なんてまだ寝とるぞ。
この炎天下でよく爆睡できるのう。」
天は座ったまま寝ていた。
「僕も起こしたんですけど全然起きないんですよ。
おぉーい!」
真理佳が呼びかけたが天に反応はなかった。
「ゆすってみましょうか。
き、さ、ら、ぎ、センパーイ!」
「や、やめんかっ!
船が揺れるじゃろうが!」
「疲れてんじゃないの?
寝かせといてあげなよー。」
「あぁ・・・暇だ・・・」
良介は何もない水平線を見つめた。
少しして、無事目的地の浜辺に着いた。
「あー、やっと着いたー!
バカンスバカンス!」
「いやーっほおお、おぅ・・・
っとと、いけないいけない!
忘れるところだった!
鳴海センパイ、僕たちは遊びに来たわけじゃないんですよ!」
「わかってるって。
毎年恒例、海辺の警備クエストでしょ?」
「円野、お前だって遅刻したじゃろが。」
「ひ、ヒーローは遅れて来るものなんですっ!」
「こんな遅れ方、あってたまるか。」
良介は呆れた。
「暑いし着替えようよ。
こないだの撮影で、可愛い水着買い取ったんだー。」
数分後、皆が着替え終わって戻ってきた。
「それにしても、やけに静かですね。
集合場所ってここでいいんですか?」
「そのはずだよ。
漁師さんも確認してくれたし。」
「おーい!
誰かいませんかぁ?
到着しましたよーっ!」
「ああぁ、やかましい!
だから声がでかいっちゅーんじゃ!」
真理佳が呼びかけたが、返事は帰ってこなかった。
「ほんとにシーンとしてるわね。
大丈夫なのかしら、これ。」
「おかしいのう、こんだけ騒げば誰かしらすっ飛んで来そうなもんじゃが。」
「も、も、もしかして、これは・・・
僕たち、無人島に来てしまったんじゃ!?」
「何言ってんだか・・・」
良介は浜辺の周りを見渡した。
***
良介たちは海の家を調べていた。
「海の家、電気は通ってるみたいだな。
店員は?」
「おっほ、美味そう!
イチゴのシャーベットじゃって!」
「ちょ、ダメですよ、お店のもの勝手に食べちゃ!」
「ぎゃんぎゃん騒ぐな。
金なら置いとくわい・・・
あ、サイフ忘れた。
良介、出しといて。」
「なんで俺が・・・」
「あれ!?」
「ん・・・真理佳、どうした?」
良介は変な声をあげた真理佳の方を向いた。
「センパイ、僕もサイフ忘れちゃいました・・・」
良介は唖然とした。
「しょうがないヤツじゃ。
じゃあ良介、頼むわ。」
「うぅ、すみませんセンパイ・・・」
「おいおい・・・今月あんまり卸してないんだぞ・・・」
良介は愚痴を言いながら財布を出した。
「しかし食糧もある、電気も水も通っとる・・・
本当に人だけがおらん状態じゃな。
どーしたんじゃろ。
散歩?
遠足?」
「もしかして・・・集団失踪事件じゃないですか!?」
「なーにが失踪事件だ。
無人島じゃないかとか、たかがこれぐらいのことで・・・」
良介が真理佳の方を向くとそこに真理佳はいなかった。
「ん・・・?
真理佳?」
「あれ?
円野どこいった?」
良介とアイラは周りを見渡した。
どこにも真理佳は見当たらなかった。
「急にいなくなった・・・のか?」
「そんなアホなことあるわけなかろう。
いやぁ、ただ見てないうちにどっか行ったんじゃろ・・・」
「まさか本当に失踪したんじゃないだろうな?」
良介は再び周りを見渡した。
***
その頃、天は目を覚ましていた。
「まったく・・・行かないつったのに誰が勝手に連れてきたのよ・・・」
「円野が抱えてきたんだよ。
覚えてないの?
【せっかく海なのに行かないと損ですよ!】っていってた。」
「機械が錆びるほうが損でしょうが!
余計なお世話よ!」
「そのわりには可愛い水着着てるじゃない。」
「こんなクソ暑いところで白衣着込んでるワケにはいかないでしょ。
てか、私が持って来たわけじゃないから。
気がついたらあって・・・」
「素直じゃないわねぇ。
似合ってるのに。」
突然良介の声が聞こえてきた。
「おーい!
純!」
良介とアイラが走ってきた。
「こっちに真理佳来てないか?」
「円野?
来てないよ。
どっか行ったの?
「海の家調べてたら急にいなくなって・・・」
すると、謎の音が聞こえてきた。
「なんの音じゃ?
誰もおらんな。
はて・・・」
アイラは謎の音がした方向を見たがなにもなかった。
「真理佳じゃないのか?
ヒーローごっことかで遊んでるんじゃ?」
「その可能性がないとは言い切れんな・・・しかしせっかく妾が探しているのに・・・
かよわい妾を置いて、1人でビーチをエンジョイなんてずるいぞ!」
「なんなら、合流のめどがつくまで東雲も遊んでくれば?」
「む、そうじゃな。
そしたらもう一本アイス食べちゃおうかの・・・
そうじゃ!
砂遊びしよ。
良介、日傘持ってこーい。」
アイラは先に走って行ってしまった。
「やれやれ、純はどうする?」
「あたしは一応先に行った人と連絡とらなくちゃって思ってるけど・・・
せっかくだから遊んできなよ。
そんなに心配いらなそうだしさ。」
「純がそう言うならそう・・・っ!?」
良介には一瞬、雄叫びのような声が聞こえた。
「どうしたの、良介。
なんか聞こえた?」
「純は聞こえなかったのか?」
「いや、あたしはなんも聞こえなかったけど・・・」
「鳴海ー!
冷却材になりそうなもの持ってきてー!」
天が純を呼んだ。
「えぇ?
なによ、人をアゴで使って・・・しょうがないなぁ。」
純が天のところに向かった。
その途端、再び雄叫びのような声が聞こえてきた。
「気のせい・・・じゃないな。
何事もなければいいんだが・・・」
良介は雄叫びが聞こえてきた方向を凝らすように見ていた。
***
少し経って浜辺。
「あぢぃ・・・吸血鬼がミイラになっちゃう・・・」
「暑いの苦手なら日よけの帽子貸したのに。」
「み、みずぅ・・・みずをくれぇ・・・」
すると、天がやってきた。
「ホラ、ついでに塩タブレットでも舐めときなさいよね。」
「うえぇ、しょっぱい・・・マズい・・・」
「さて、どうするかだ。
先発組と連絡が取れない状態だが・・・」
「頼みのデバイスも電波が良くないのよね。
困ったな・・・
いつもバスで来てるんだけど、今回は島のほうっていってたからなぁ。
うーん、船に乗る前にちゃんと地図で確認するべきだったか・・・」
「乗っけてきたっていう地元の漁師?
そいつが間違えたんじゃないの。
円野も戻ってこないし、なんかめんどくさいことになっちゃってるわね。」
「このまま日が暮れたらマズイからな。
備えだけはしとこう。」
「明後日までに迎えが来なかったら、仕事ヤバイな・・・
いやでも、もしそうなったら非常事態だし、仕事どころじゃ・・・?」
「ぐわ、なにす・・・うぎゃぁ!」
「ん?
アイラ?」
良介はアイラの声がした方を見るとアイラの姿が消えていた。
「良介、東雲は?」
「今さっきそこに・・・フラフラだったんだぞ・・・」
「だよねえ。
そんな状態で早く動けるとは思えないんだけど。」
「アイラのことだ。
どっかにいるんじゃないのか?」
「そんなまさか、急に消えたりするはずないじゃん。
あははは!
あはは・・・は、は・・・」
純の笑いが少しずつ消えていった。
「アイラと真理佳だから大丈夫だと思うが・・・」
良介は顎に手をやり考えるような仕草をした。
「う、うん・・・」
すると、純は良介の方を向いた。
「あのさ、良介。
念のため単独行動しないようにしてよね・・・」
「怖いのか?」
「怖くて言ってるわけじゃないからね!」
「ならいいが・・・」
良介は顎に手をやったまま周りを見渡していた。
***
数十分後、良介たちは物音がした方へと向かっていった。
「今、こっちで音がしたな。」
しかし、そこには何もなかった。
「うーん・・・やっぱ誰もいないか?
他のとこ探したほうがいいかな。」
「そうね、目視できる範囲では・・・あー、役に立ちそうなもの全然持ってない・・・
まだまだ不便だわ。
身一つでも色々できるように改善しないと。
やっぱり体内に埋め込むチップを増やして・・・うん。
帰ったらやってみるか・・・」
「なにブツブツ言ってんだか・・・」
良介はため息をつきながら周りを見渡していた。
「良介、どう?
なんか見える?」
「なにも見当たらんが・・・こっちに行ってみるか。」
良介は1人で動こうとした。
「ま、待ちなさいよ、そっちに行くならあたしも・・・」
突然、近くの草むらから物音がした。
「誰だ・・・!」
良介が草むらの方を向くと、そこから真理佳が出てきた。
「う、せ・・・センパイ・・・?」
「真理佳!
どこ行ってたんだお前・・・!」
すると、真理佳はその場に倒れた。
「真理佳!?」
良介たちは真理佳に駆け寄った。
「うわ、怪我してんじゃん!
大丈夫?
手当しないと・・・」
「す・・・すみません・・・急に後ろからやられて・・・」
「後ろから・・・?
一体何が・・・」
「歩けそう?
あたしも肩貸すから、とりあえず海の家まで戻ろ。」
「セ・・・センパイ・・・」
「いいから、無理に喋るんじゃないわよ。」
「き、気を・・・つけて・・・
この、島・・・なにか・・・いま、す・・・」
「何かいる・・・一体何がいるっていうんだ?
この島に・・・」
良介は生い茂った木々の方を見て呟くように言った。