グリモワール魔法学園【七属性の魔法使い】   作:ゆっけめがね

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※この作品の主人公は原作アプリの転校生ではありません。
 閲覧者様のイメージを壊す可能性があります。
 それでもOKという方は、よろしくお願いします。


第79話 なにかいる

夏、沖合。

一隻の小さな船が走っていた。

 

「青い海!

白い雲!

カンカンの太陽っ!

楽しみすぎて、うっかりこのまま飛び込んじゃいそうですっ!」

 

真理佳は1人で燥いでいた。

 

「円野、今からそんなにテンションあげると持たないわよ。

それに今回はいつものとこだからね。

ハワイじゃないから。」

 

純が真理佳に注意した。

 

「ハワイでも国内でも、海は海です!

あぁ~、早く着かないかな・・・」

 

「ま、気持ちはわかるけどさ。」

 

「あっぢいぃぃ・・・はぁ、まだ着かんのか・・・?

干からびそうじゃ・・・」

 

アイラは苦しんでいた。

 

「一便ならフェリーだったから屋根があったんだけどね。

遅刻者はこうして地元の漁師さんに乗っけてもらうしか・・・」

 

「そうはゆーても、吸血鬼が朝の6時に起きれるかっちゅーんじゃ!」

 

「寝坊じゃ仕方ないわね。

あたしは仕事だったけど・・・」

 

「あづいぃ~、眠い~、お腹すいたぁ~、眠い~!」

 

「うるせぇなぁ・・・」

 

良介はため息をついた。

ちなみに良介は本当なら間に合っているはずだったが、アイラを起こすのに時間がかかってしまい遅れてしまった。

 

「良介、アンタこんなの抱えてきたの?

大変だったわね。」

 

「いやあ、こやつってば妾のお世話慣れしとるもんね。

のう、良介?

見ろ、如月なんてまだ寝とるぞ。

この炎天下でよく爆睡できるのう。」

 

天は座ったまま寝ていた。

 

「僕も起こしたんですけど全然起きないんですよ。

おぉーい!」

 

真理佳が呼びかけたが天に反応はなかった。

 

「ゆすってみましょうか。

き、さ、ら、ぎ、センパーイ!」

 

「や、やめんかっ!

船が揺れるじゃろうが!」

 

「疲れてんじゃないの?

寝かせといてあげなよー。」

 

「あぁ・・・暇だ・・・」

 

良介は何もない水平線を見つめた。

少しして、無事目的地の浜辺に着いた。

 

「あー、やっと着いたー!

バカンスバカンス!」

 

「いやーっほおお、おぅ・・・

っとと、いけないいけない!

忘れるところだった!

鳴海センパイ、僕たちは遊びに来たわけじゃないんですよ!」

 

「わかってるって。

毎年恒例、海辺の警備クエストでしょ?」

 

「円野、お前だって遅刻したじゃろが。」

 

「ひ、ヒーローは遅れて来るものなんですっ!」

 

「こんな遅れ方、あってたまるか。」

 

良介は呆れた。

 

「暑いし着替えようよ。

こないだの撮影で、可愛い水着買い取ったんだー。」

 

数分後、皆が着替え終わって戻ってきた。

 

「それにしても、やけに静かですね。

集合場所ってここでいいんですか?」

 

「そのはずだよ。

漁師さんも確認してくれたし。」

 

「おーい!

誰かいませんかぁ?

到着しましたよーっ!」

 

「ああぁ、やかましい!

だから声がでかいっちゅーんじゃ!」

 

真理佳が呼びかけたが、返事は帰ってこなかった。

 

「ほんとにシーンとしてるわね。

大丈夫なのかしら、これ。」

 

「おかしいのう、こんだけ騒げば誰かしらすっ飛んで来そうなもんじゃが。」

 

「も、も、もしかして、これは・・・

僕たち、無人島に来てしまったんじゃ!?」

 

「何言ってんだか・・・」

 

良介は浜辺の周りを見渡した。

 

   ***

 

良介たちは海の家を調べていた。

 

「海の家、電気は通ってるみたいだな。

店員は?」

 

「おっほ、美味そう!

イチゴのシャーベットじゃって!」

 

「ちょ、ダメですよ、お店のもの勝手に食べちゃ!」

 

「ぎゃんぎゃん騒ぐな。

金なら置いとくわい・・・

あ、サイフ忘れた。

良介、出しといて。」

 

「なんで俺が・・・」

 

「あれ!?」

 

「ん・・・真理佳、どうした?」

 

良介は変な声をあげた真理佳の方を向いた。

 

「センパイ、僕もサイフ忘れちゃいました・・・」

 

良介は唖然とした。

 

「しょうがないヤツじゃ。

じゃあ良介、頼むわ。」

 

「うぅ、すみませんセンパイ・・・」

 

「おいおい・・・今月あんまり卸してないんだぞ・・・」

 

良介は愚痴を言いながら財布を出した。

 

「しかし食糧もある、電気も水も通っとる・・・

本当に人だけがおらん状態じゃな。

どーしたんじゃろ。

散歩?

遠足?」

 

「もしかして・・・集団失踪事件じゃないですか!?」

 

「なーにが失踪事件だ。

無人島じゃないかとか、たかがこれぐらいのことで・・・」

 

良介が真理佳の方を向くとそこに真理佳はいなかった。

 

「ん・・・?

真理佳?」

 

「あれ?

円野どこいった?」

 

良介とアイラは周りを見渡した。

どこにも真理佳は見当たらなかった。

 

「急にいなくなった・・・のか?」

 

「そんなアホなことあるわけなかろう。

いやぁ、ただ見てないうちにどっか行ったんじゃろ・・・」

 

「まさか本当に失踪したんじゃないだろうな?」

 

良介は再び周りを見渡した。

 

   ***

 

その頃、天は目を覚ましていた。

 

「まったく・・・行かないつったのに誰が勝手に連れてきたのよ・・・」

 

「円野が抱えてきたんだよ。

覚えてないの?

【せっかく海なのに行かないと損ですよ!】っていってた。」

 

「機械が錆びるほうが損でしょうが!

余計なお世話よ!」

 

「そのわりには可愛い水着着てるじゃない。」

 

「こんなクソ暑いところで白衣着込んでるワケにはいかないでしょ。

てか、私が持って来たわけじゃないから。

気がついたらあって・・・」

 

「素直じゃないわねぇ。

似合ってるのに。」

 

突然良介の声が聞こえてきた。

 

「おーい!

純!」

 

良介とアイラが走ってきた。

 

「こっちに真理佳来てないか?」

 

「円野?

来てないよ。

どっか行ったの?

 

「海の家調べてたら急にいなくなって・・・」

 

すると、謎の音が聞こえてきた。

 

「なんの音じゃ?

誰もおらんな。

はて・・・」

 

アイラは謎の音がした方向を見たがなにもなかった。

 

「真理佳じゃないのか?

ヒーローごっことかで遊んでるんじゃ?」

 

「その可能性がないとは言い切れんな・・・しかしせっかく妾が探しているのに・・・

かよわい妾を置いて、1人でビーチをエンジョイなんてずるいぞ!」

 

「なんなら、合流のめどがつくまで東雲も遊んでくれば?」

 

「む、そうじゃな。

そしたらもう一本アイス食べちゃおうかの・・・

そうじゃ!

砂遊びしよ。

良介、日傘持ってこーい。」

 

アイラは先に走って行ってしまった。

 

「やれやれ、純はどうする?」

 

「あたしは一応先に行った人と連絡とらなくちゃって思ってるけど・・・

せっかくだから遊んできなよ。

そんなに心配いらなそうだしさ。」

 

「純がそう言うならそう・・・っ!?」

 

良介には一瞬、雄叫びのような声が聞こえた。

 

「どうしたの、良介。

なんか聞こえた?」

 

「純は聞こえなかったのか?」

 

「いや、あたしはなんも聞こえなかったけど・・・」

 

「鳴海ー!

冷却材になりそうなもの持ってきてー!」

 

天が純を呼んだ。

 

「えぇ?

なによ、人をアゴで使って・・・しょうがないなぁ。」

 

純が天のところに向かった。

その途端、再び雄叫びのような声が聞こえてきた。

 

「気のせい・・・じゃないな。

何事もなければいいんだが・・・」

 

良介は雄叫びが聞こえてきた方向を凝らすように見ていた。

 

   ***

 

少し経って浜辺。

 

「あぢぃ・・・吸血鬼がミイラになっちゃう・・・」

 

「暑いの苦手なら日よけの帽子貸したのに。」

 

「み、みずぅ・・・みずをくれぇ・・・」

 

すると、天がやってきた。

 

「ホラ、ついでに塩タブレットでも舐めときなさいよね。」

 

「うえぇ、しょっぱい・・・マズい・・・」

 

「さて、どうするかだ。

先発組と連絡が取れない状態だが・・・」

 

「頼みのデバイスも電波が良くないのよね。

困ったな・・・

いつもバスで来てるんだけど、今回は島のほうっていってたからなぁ。

うーん、船に乗る前にちゃんと地図で確認するべきだったか・・・」

 

「乗っけてきたっていう地元の漁師?

そいつが間違えたんじゃないの。

円野も戻ってこないし、なんかめんどくさいことになっちゃってるわね。」

 

「このまま日が暮れたらマズイからな。

備えだけはしとこう。」

 

「明後日までに迎えが来なかったら、仕事ヤバイな・・・

いやでも、もしそうなったら非常事態だし、仕事どころじゃ・・・?」

 

「ぐわ、なにす・・・うぎゃぁ!」

 

「ん?

アイラ?」

 

良介はアイラの声がした方を見るとアイラの姿が消えていた。

 

「良介、東雲は?」

 

「今さっきそこに・・・フラフラだったんだぞ・・・」

 

「だよねえ。

そんな状態で早く動けるとは思えないんだけど。」

 

「アイラのことだ。

どっかにいるんじゃないのか?」

 

「そんなまさか、急に消えたりするはずないじゃん。

あははは!

あはは・・・は、は・・・」

 

純の笑いが少しずつ消えていった。

 

「アイラと真理佳だから大丈夫だと思うが・・・」

 

良介は顎に手をやり考えるような仕草をした。

 

「う、うん・・・」

 

すると、純は良介の方を向いた。

 

「あのさ、良介。

念のため単独行動しないようにしてよね・・・」

 

「怖いのか?」

 

「怖くて言ってるわけじゃないからね!」

 

「ならいいが・・・」

 

良介は顎に手をやったまま周りを見渡していた。

 

   ***

 

数十分後、良介たちは物音がした方へと向かっていった。

 

「今、こっちで音がしたな。」

 

しかし、そこには何もなかった。

 

「うーん・・・やっぱ誰もいないか?

他のとこ探したほうがいいかな。」

 

「そうね、目視できる範囲では・・・あー、役に立ちそうなもの全然持ってない・・・

まだまだ不便だわ。

身一つでも色々できるように改善しないと。

やっぱり体内に埋め込むチップを増やして・・・うん。

帰ったらやってみるか・・・」

 

「なにブツブツ言ってんだか・・・」

 

良介はため息をつきながら周りを見渡していた。

 

「良介、どう?

なんか見える?」

 

「なにも見当たらんが・・・こっちに行ってみるか。」

 

良介は1人で動こうとした。

 

「ま、待ちなさいよ、そっちに行くならあたしも・・・」

 

突然、近くの草むらから物音がした。

 

「誰だ・・・!」

 

良介が草むらの方を向くと、そこから真理佳が出てきた。

 

「う、せ・・・センパイ・・・?」

 

「真理佳!

どこ行ってたんだお前・・・!」

 

すると、真理佳はその場に倒れた。

 

「真理佳!?」

 

良介たちは真理佳に駆け寄った。

 

「うわ、怪我してんじゃん!

大丈夫?

手当しないと・・・」

 

「す・・・すみません・・・急に後ろからやられて・・・」

 

「後ろから・・・?

一体何が・・・」

 

「歩けそう?

あたしも肩貸すから、とりあえず海の家まで戻ろ。」

 

「セ・・・センパイ・・・」

 

「いいから、無理に喋るんじゃないわよ。」

 

「き、気を・・・つけて・・・

この、島・・・なにか・・・いま、す・・・」

 

「何かいる・・・一体何がいるっていうんだ?

この島に・・・」

 

良介は生い茂った木々の方を見て呟くように言った。


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