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朝の学園の校門前、良介が1人で歩いていた。
「良介さん、良介さん!」
「ん?」
良介は誰かに呼ばれたので振り向くと、さらがいた。
「おはようございますぅ!
あのですね、実はですね・・・
わたし、クエストに行くんですよぅ!」
「クエスト・・・ああ、商店街のクエストか。」
良介はデバイスでクエストを確認した。
「はい!
商店街のひとたちが困ってるみたいなんですぅ!
副会長さんから、行ってみたらって言われましたのでお請けしました!」
「へえ、薫子さんにか。」
「わたし、やっとクエストを自由に請けられるようになりまして・・・
ですから、今日は頑張っちゃいますよぉ!」
「よし、それじゃ俺も請けるかな。」
「では、よろしくお願いしますね!」
さらはそう言うと、先に行ってしまった。
だが、なぜかすぐに戻ってきた。
「ん?
どうした、さら。」
「商店街・・・前に行ったことがあるんですけど・・・どこでしたでしょうか?」
「バスに乗って行くんだよ。」
良介は呆れ笑いをしながら言った。
「あ、バスですね!
ありがとうございますぅ!
それでは、シロー、出発ですよう!」
良介とさらはクエストに向かった。
その頃、生徒会室。
虎千代と薫子がいた。
「仲月に単独のクエストを許可したのか。
アイツもそんな歳になったんだな。
フフフ、いつまでも小さいから気づかなかったぞ。」
「学園生活は私たちなどよりずっと長いのですけれどね。
今までも誰かのパーティに所属して、という形で後方支援をしていましたが・・・
まずは簡単なクエストから、徐々にこなせるようになってもらいましょう。」
「なんといっても、物心ついたころから学園にいるのは仲月だけだからな。
ある意味、アイツが一番グリモアの生徒らしいかもしれん。」
「今日のクエストは商店街に出現した魔物の掃討です。
規模は少数。
全て幼体で、人に危害を加える力は持っていません。
ですが出た場所が場所だけに、急いで討伐することになりました。
仲月さんなら、商店街の方々へのイメージも悪くないでしょうし。」
「こんなに小さい子を戦わせるなど不届き千万、となるんじゃないか?」
「仲月さんはみなさんを助けるために全力を尽くしてくれます。
良介さんがいっしょですし、戦いが終わっても元気でしょう。
小さくてもこんなに強く、自分たちのことを考えてくれている・・・
と受け取ってもらえれば僥倖ですね。」
「まあ、仲月を送り出す時点である程度の打算は仕方ない。
だが、魔法使いはみんながそうでないといけない。
強く、人々のことを考えている・・・誰が行っても、そういう印象じゃなきゃな。」
「ええ、もちろんですわ。」
2人が話していると、聖奈が入ってきた。
「会長、副会長。
対策開発局局長がお見えになりました。」
「そうか。
誰だっけそれ。」
虎千代がそう言うと、茉理が入ってきた。
「ほら~、だから茉理ちゃんって呼んでって言ったのにぃ!」
「あ、あなたは学園生ではない!
年も離れています!
馴れ馴れしく呼ぶなどできるわけがありません!」
「やぁん、お堅いところもカ・ワ・イ・イ。
背伸びしてるのねぇ~。」
「ああ、神宮寺の。
ようこそ、生徒会室へ。」
「なんの用事でしょうか。」
「おっと・・・いやね、そろそろ初音ちゃんと話してもいいんじゃないかなって。
試用期間?
終わってほしいな~って・・・まだ信用できないかな?」
「ああ、そういうことか。
ふむ・・・まあ、いいんじゃないか?」
「会長・・・!」
「もともと神宮寺に【信用できる人材】として紹介してもらったんだ。
それなのにあまり疑うと、なにがなにやらだからな。
局長。
一般生徒と同様の行動制限をあなたに与える。
学園生の入れる場所ならどこでも行っていい。
誰と話してもいいぞ。」
その言葉を聞くと茉理は嬉しそうに笑った。
「アリガト。
今までは関係者?
しか話せなかったからね。
グフフ・・・・・」
茉理は怪しい笑みを浮かべた。
「ただし、一般生徒は授業がある。
その邪魔はしないように頼むぞ。」
「ラジャ・・・あ、生徒会長さん。
その喋り方だけど・・・」
「年上のあなたに偉そうな話し方をして申し訳なく思うが、それが仕事だか・・・」
「いやいやいや、違うのよ。
全然オッケー!
でもね、呼ぶときは茉理ちゃんって呼んでね。
それくらいいいでしょ?」
「わかった、茉理ちゃん。」
茉理は嬉しそうに笑った。
「ごちそうさま!」
茉理はスキップ気味に生徒会室から出て行った。
「あの方は本当に成人しているのですか?」
「こら、薫子。
そういうことは言うもんじゃない。」
「JGJ関連は私の担当です。
お任せ下さい。」
「ではまず、茉理ちゃんと呼べるようになってくださいね。」
聖奈はその言葉に困惑した。
「会長がそう呼んだのですから、もう失礼は当たらないでしょう。」
「は、はい。
善処します。」
聖奈はため息をつきながら出て行った。
***
良介とさらは話しながらバス乗り場に向かっていた。
「良介さん、今日はよろしくお願いしますねぇ。」
「ああ、よろしくな。」
「わたし、あんまりクエストに出ないのでみんな心配してましたけど・・・
良介さんといっしょなら、きっと大丈夫ですぅ!
それに、ししどさんがお守りをくれましたし!」
「お守り・・・?
結希が?」
「この・・・えーと、発信機で、わたしたちの場所がわかるって・・・
危なくなったら、ししどさんがすぐにきてくれるっていってましたぁ!」
「そ、そうか。
しかし、結希がそんなもの渡すとは珍しいな。
(どう考えてもGPSとかそういうやつの類だな・・・)」
「ゆきさん、よくシローと遊んでくれるんですぅ。」
「結希が・・・シローと・・・?」
良介はその姿を妄想してみたが、まったく思いつかなかった。
「ふぇぇ?
そんなにふしぎですかぁ?
ししどさん、シローのことをとってもきょーみぶかいっていってました。
ほかには・・・えーと・・・いいコンビになれるっていってくれました!
だから今日は・・・練習のせいかを、良介さんにみせてあげますぅ!」
「そうか・・・
(興味深い・・・?
シローには何か秘密でもあるのか?)」
良介は首を捻りながら、バス乗り場に向かった。
***
少し遡って、数日前。
良介は噴水前にいた。
そこに春乃がやってきた。
「良介。
ちょっと待て。」
「ん・・・春乃か。
何か用か?」
「この前、秋穂を助けてくれたことに礼を言う。
あのときは1人じゃどうしようもなかった。」
「そうか・・・。」
2人は少し無言になった。
「それだけ。」
春乃が去ろうとすると、良介は呼び止めた。
「春乃、秋穂は大丈夫なのか?」
「ん?
ああ、秋穂はすぐによくなったわ。
この前、結婚式場の警備に行ったでしょう。」
「ああ、確かにそうだったな。」
「後遺症がなくてよかった・・・」
「そう・・・だな。」
「アンタも秋穂のことを知った。
でも、あの子には言うな。
随分よくなったけど、あの子はまだお母さんのことを思い出して泣く。
自分のことを知ると、ただでさえ辛い人生が耐えがたいものになってしまう。
アンタもあのときの秋穂を見れば、伝える気なんか失せるわ。」
「(その気持ち・・・なんとなくわかるような気もするな・・・)」
「今まで、ずっとあの子に障壁を張り続けてきた。
それしか方法がないと思っていたから。
1度、霧が入り込んだらどうしようもない・・・なにを読んでもそう書いてあった。」
「それで・・・春乃はどうする気なんだ?」
「探す。
治すための方法を、探す。
あたしと秋穂は、そこからだ。
・・・それだけ。」
「そうか。」
良介が背を向けると春乃は続けて話した。
「あともう1つ。」
「ん?」
「これで秋穂を付け回すことを許すと思うな。」
「フッ・・・」
良介は鼻で笑った。
「何が可笑しい。」
春乃は良介を睨んだ。
「お前に、そして秋穂に伝えておけ。
死にたくなかったら俺に関わろうとするなと。」
「・・・何?」
「俺は助けをするが、俺を助けようとする必要はない。」
「どうして、そんなことを言う。」
「これ以上、何も失いたくない。
それだけだ。」
良介はそう言うと、去っていった。
***
商店街。
良介は変身し、さらと歩いていた。
すると、さらが話しかけてきた。
「この前のこと、大変でしたねぇ・・・おケガ、ありませんでした?」
「ああ、大丈夫だよ。
もう治ったから。
けど、どうしたんだ?」
「わたし、ずっと学園にいるのです。
いち、にぃ・・・じゅうねんですねぇ。
最初のころはあんまり覚えてないんですけど・・・
たくさんの先輩たちに優しくしてもらったのですよぉ。」
「へぇ、そうだったのか。」
「先輩たちはほとんど卒業してしまいましたけど・・・
ひとりだけ、卒業の前に亡くなっちゃったんです。
そのときの生徒会長さんで、とっても強かったんですよぉ。」
「そうなのか・・・生きていたら、是非とも会ってみたかったな。」
「お話では、魔物と戦ったときのちっちゃなケガがもとで・・・
うちどころが悪かったっていってました。
ですから、良介さんもおきをつけてくださいねぇ!
たくさんクエストに出てる良介さん、とっても心配です。」
「あ・・・うん・・・気をつけるよ。
(ほぼクエストに行くたびにボロボロになることが多いから、なんとも・・・)」
と、さらのポケットに入っていたシローが何かに反応した。
「ふぇ?
シロー、どうしましたか?」
「さら、魔物だ。」
「あっ、こっちに来ますぅ!」
良介とさらは身構えると、魔物は突進してきた。
良介は軽く体を捻って躱すと、魔物に拘束魔法をかけた。
「さら、今だ。」
良介が言うと、さらは魔法を撃つと、魔物は消滅した。
「やりましたぁ!」
「よし、この調子で行こう。」
良介とさらは次の魔物のところへと向かった。
***
購買部前。
チトセと薫子がいた。
「ええ、そうでしたね。
新しく作られた歴史はわからない。
あなたはただ、前の歴史と【同じところ】を見つけて、変えていく・・・」
「その通り。
だからこのゲートの謎を宍戸さんが解いてくれるなら・・・
全力でお手伝いするわ。」
「初めて裏世界に行った後、あなたは急に自分のことを話しだした。
なぜですか?
裏世界にいくことに、どんな意味が?」
「なにも変わっていなかったから。」
「こちらを変えたのなら、元の歴史である裏世界に変化がないのは当然では?」
「もちろんそうよ・・・でも・・・なにかありそうなの。
完全に2つに分かれている・・・にしては、不自然な点があるもの。」
薫子は不思議そうな顔をした。
「私もずっと、世界は2つあると思っていた。
でも、この前過去の裏世界に行った人たちの話を聞いたでしょう?
表世界の彼女たちが子どもだったころ・・・大人の彼女たちと会っている。
裏世界から来た?
いいえ、裏世界はその頃、ゲートは見つかっていない。
彼女たちは・・・どこから来たの?」
薫子は無言でチトセを見た。
「ね?
この世界には何かがある。
まだ、誰も知らない何かが。
それを突き止めなければ、問題は解決しない・・・」
チトセは去っていった。
薫子は購買部に入ると、ももがあいさつしてきた。
「副会長、こんにちは!」
「(この子には【生まれていないからわからない】といった・・・
けれど実際は、彼女は虎千代の運命について知っている・・・
あえて嘘をついたとすれば・・・
裏世界の第8次侵攻・・・おそらく学園の生徒は・・・)」
薫子は顎に手をやったまま考え込んでいた。
「副会長さん?」
ももはその様子を見て首を傾げた。
少し離れた廊下に誠がいた。
誠はこれまでの話を全て聞いていた。
「(完全にチトセがももに話した内容は嘘だな。
恐らくあいつは裏世界の第8次侵攻時点で生まれている・・・いや、もしかしたらその時を知る当事者かもしれない・・・
そうでなければ会長のことを知っているのはおかしいからな。
となれば・・・)」
誠は頭の中を整理した。
「裏世界の誰かが化けて、偽名を使ってやってきた・・・」
そう言うと、誠は鼻で笑った。
「まさか・・・な。」
誠はその場から去っていった。