グリモワール魔法学園【七属性の魔法使い】   作:ゆっけめがね

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※この作品の主人公は原作アプリの転校生ではありません。
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 それでもOKという方は、よろしくお願いします。



第66話 サムシング・ブルー

結婚式が行われているホテルのロビー。

花嫁衣裳に身を包んだ薫子と葵がいた。

 

「副会長さん、お似合いですよ!

きっといい写真になりますね♪」

 

「あ、ありがとうございます・・・冷泉さんもやはり着物が堂に入っていますね。」

 

2人のところに絢香がやってきた。

 

「他のお仕事中なのにごめんなさい・・・なるべく早めに終わるようにしますね。」

 

「緊急依頼として許可を取ったので問題ありませんよ。

皇さんの事務所でしたら、素材をおかしなことには使わないでしょうし。

きっとグリモアの印象アップにつながりますわ。」

 

薫子は笑顔を見せた。

 

「そういってもらえると嬉しいです。

うちの社長、強引なところあるから。」

 

「いえいえ、こんなに上等なお着物を貸していただけて。

ところで皇さん!

皇さんはまだ着替えないのですか?」

 

「あっ、あたしはインタビューの収録もあるから後回しで。

それより他の人は?

我妻さんは・・・」

 

少し離れたところに浅梨は1人でいた。

そこに絢香がやってきた。

 

「我妻さん、いいかな?

衣裳の準備するから選んでほしいんだけど・・・」

 

「ふぁい!?

は、はい!」

 

「どうする?

色は白がいいかな。

青とか黒も似合いそうだけど。

で、ええと・・・タキシードでいいのかな?」

 

浅梨はその言葉に少し動揺した。

 

「あの、我妻さん?」

 

「・・・です・・・」

 

「ん?」

 

「私、あのドレスがいいですっ!」

 

浅梨は飾ってあったドレスを指さしながら言った。

 

   ***

 

絢香と葵はロビーで話をしていた。

 

「さっき秋穂ちゃんと話したんだけど、今回のって誰の警備なのか知ってる?」

 

「我妻さんのお知り合いのようですよ。

お名前は存じませんが・・・」

 

「我妻さんは?」

 

「さっきまであそこに・・・あら?」

 

葵はさっきまで浅梨がいた場所を指差したが、そこに浅梨の姿はなかった。

浅梨はホテルの外で、見知らぬ男性に手を引っ張られていた。

 

「あ、あの・・・知らない人についていったらいけないので・・・

ちがうんです、もう戻らないといけないんですけど・・・

建物が急にどこかにいっ・・・ひゃっ、や、やめ・・・」

 

ホテルから出てきた葵と絢香は浅梨を見つけた。

 

「我妻さん!」

 

「なっ、ナンパされてる・・・!?」

 

「なんぱ・・・間宮さんが待ち焦がれてらっしゃる、アレでございますか!?」

 

「やっ・・・あっ!

困りますぅ、離してください・・・!」

 

浅梨は手を離そうとしていた。

 

「でも、ひどく強引に見えます。

もしやお助けしたほうがよいのでしょうか?」

 

「(どうしよ、ヘタにあたしが出て騒ぎになったら・・・)」

 

絢香が悩んでいると良介が颯爽と浅梨のところに行った。

 

「そこのアンタ。

そいつ、俺のところの学園の生徒だが、なにか失礼なことでもしたか?」

 

「良介さん!」

 

「すまないが、そいつはこれから仕事が控えててな・・・

名前と住所を・・・

ああ、世話になったら後日お礼に伺わせるよ。

いや、こっちの生徒が迷惑をかけているなら当然のことだ。

すべて・・・グリモワール魔法学園執行部に報告させてもらうから。

安心してくれよ。

学園生が人に危害を与えることはないから。

訓練中の身だから、力の制御に手いっぱいだが・・・

自衛せざるをえない状況以外では、安全を約束するよ。」

 

浅梨は良介を黙って見ていた。

 

「理解いただけて結構。

それじゃ、名前を・・・」

 

男性は浅梨の手を離すと走り去っていった。

 

「あ・・・逃げちゃいました・・・」

 

「大丈夫か?

なにもされなかったか?」

 

「あっ、は、はい!

ありがとうございます。」

 

浅梨は良介の方を見つめた。

 

「良介さん・・・」

 

「ん?」

 

「かぁっこいいぃ・・・!」

 

「浅梨、もう少ししっかりしろよ。」

 

良介はため息をついた。

 

   ***

 

ホテルロビーで絢香と葵と良介が話していた。

 

「冷泉さんのお家は、きっと結婚式も盛大だよね?」

 

絢香は葵に聞いた。

 

「そうですねえ。

お相手の家柄にもよると思いますが。」

 

「相手の家柄・・・?」

 

良介は首を捻った。

 

「はい。

おそらく、わたくしは親が決めた人と結婚すると思いますので。」

 

「え!

今の時代にそんなコトってあるんだ!?

冷泉さんは、好きでもない人と結婚なんてイヤじゃないの?」

 

「幼少の頃からそう言われて育ちましたから。

皇さんは、夫となる人をご自分で選べるのですか?」

 

「自分で選べるっていうか・・・普通はそうだと思うよ。

いやでも、うーん・・・アイドルやってる間は無理だろうな。

アイドルって、誰のものにもなっちゃいけない風潮あるからね。」

 

「なんと!

ははぁ、そういうものなんですね。

皇さんはいつまでアイドルを続けられるのですか?」

 

「うぐっ!

そ、それは・・・今の時点で答えにくいかな?

いずれ歳がいったらアイドルではいられなくなるだろうけど。

そのころにはもう恋愛してくれる相手はいないかも・・・ははは。」

 

「大変なお仕事なのですね。」

 

「冷泉さんだって、大変じゃない・・・」

 

「いえいえ、わたくしなどは恵まれていますので!」

 

「いやいや、あたしも今は結構幸せだよ!」

 

「ということは・・・?

あまり、思い悩むことでもないのでしょうか?」

 

「そうかもね。」

 

2人は突然、良介の方を向いた。

 

「そういえば、良介さんのことも気になりますね!」

 

「は・・・?」

 

良介は唖然とした。

 

「確かに。

良介君の恋愛観とか気になるかも。」

 

「ねえよ。

俺には。」

 

良介は即答した。

 

「ない?

どういうことでしょうか。」

 

葵は首を捻った。

 

「俺は魔物に両親を殺された。

その上、魔法使いに覚醒した。

そうなった以上、魔物と戦うことが俺の全てだ。

恋愛感情なんかに走っていられるか。」

 

「なんか・・・生天目さんみたいだね。」

 

絢香は良介を悲しそうな目で見た。

 

「俺とあいつは違う。

あいつはただの欲で戦っているだけだ。

俺は自分みたいに魔物に肉親、大切な人を亡くした奴を出したくないだけだ。」

 

「良介さんは、そのことだけでご自身の人生を捧げるおつもりですか?」

 

「もしも、あなたのことが好きだって言ってきた人がいたらどうするの?」

 

「出てこなくていいよ。

その方が・・・みんな幸せだと思うから。」

 

良介は笑みを見せると歩いてどこかに行ってしまった。

2人は良介の背中を見ていた。

 

   ***

 

ホテルロビーに葵、浅梨、薫子、誠がいた。

葵は新郎の姿を目撃した。

 

「あ、やっぱりそうです。

確かに以前会合でご挨拶した・・・」

 

「どうしました、冷泉さん?」

 

薫子は葵に聞いた。

 

「我妻さん、今回依頼してくださったお知り合いの方なのですが。

与党の議員さんでしょうか?」

 

「あ、はい!

どちらかというとお嫁さんの方に縁があるんですけど。

お嫁さんが我妻の血縁者なんですよ。」

 

「まぁ!

・・・ということは、花嫁さんは・・・」

 

「はい!

魔法使いなんです!

軍人さんですよ。

来月から前線に配備されるっていってました。」

 

「そいつは・・・」

 

「雑誌なんかで一時的話題になったので、結構知られてるかもですね。

最近、街中に魔物とか、霧の護り手とか物騒ですから・・・

比較的都合のつきやすい私が、警備を引き受けたんです。」

 

「けれど、そんなに魔法使いの結婚は難しいのでしょうか?」

 

葵は首を傾げた。

 

「戦いの場に赴く以上、魔法使いは短命だからな。

立場上、いわれのない差別を受けることも珍しくないからな。

その後の生活も含めると、困難だろうな。」

 

誠はため息をついた。

 

「そう!

だから私、小さい時からずっと思っているんです。

普通、魔法使いは人を助けるべき、っていいますけど・・・

お母さんやお姉ちゃん、軍人さん・・・それにグリモアのみなさん。

魔法使い自身の幸せも、ちゃんと守らなきゃいけないって!」

 

薫子と葵は浅梨の方を笑顔で見ていた。

誠は真顔で見ていた。

 

「それが、始祖十家としての志、ということですか。」

 

「はい!

それが我妻として・・・

魔法少女としての使命です!」

 

「浅梨、そうやって自分の使命を忘れるなよ。」

 

誠が話しかけてきた。

 

「そういえば、誠さんも使命みたいなものがあると聞いたんですが・・・」

 

浅梨が聞いてきた。

 

「誠さんもあるのですか?」

 

薫子も誠の方を見た。

 

「ああ、あるよ。」

 

「それは・・・?」

 

「自分みたいに、大切なもん全部失う奴を出さないこと。」

 

「大切なもの・・・?」

 

葵は首を傾げた。

 

「ああ、そうだよ。

俺は両親を・・・兄妹を・・・妹を魔物に殺されたからな。」

 

「え・・・?」

 

薫子は驚いた。

 

「そういう奴を出さない為に俺は魔物と戦うつもりだ。」

 

「あの・・・さっき良介さんに聞いたのですが。」

 

葵が誠に聞いた。

 

「ん?」

 

「誠さんは、ご自身は幸せになろうとは思わないんですか?」

 

「無い。

そんな資格なんて俺にあるわけないだろ?」

 

誠は当たり前のように答えた。

 

「なぜ・・・そう思うのですか?」

 

薫子が聞いてきた。

 

「家族を1人も救えない奴にそんな権利あると思うか?

俺は思わないね。」

 

「誠さん・・・!

あなたは・・・!」

 

「俺は・・・自分以外のみんなが幸せになってくれたらそれで充分だよ。」

 

「誠さん・・・良介さんも同じようなことを言っていました。

なぜそんなことが言えるのですか?」

 

葵は悲しそうに聞いてきた。

 

「良介もか・・・まぁ、同じ経験をした者にしかわからないんだろうな。

この気持ちってやつは。」

 

誠は暗い笑みを浮かべるとその場から去っていった。

3人はただ誠の背中を見ることしかできなかった。

 

   ***

 

夕方の街中、怜が走っていた。

 

「もうこんな時間か、急がねば。

特殊な家業とはいえ、理解があることに甘えてはいけないな。

しかし、これから忙しいシーズンだ。

屋根の補修はどうするか・・・

ん?

このホテルか?

JGJのマーク・・・よし、間違いない。」

 

怜はホテルに入った。

ホテルに入ると、花嫁姿の葵が出てきた。

 

「神凪さん!

みなさん、神凪さんが着きましたよ。」

 

今度は花嫁姿の薫子が出てきた。

 

「ご実家は大丈夫でしたか?

とりあえず我妻さんと交代してもらいますので・・・」

 

怜はその状況を見て、驚愕した。

 

「っ!?

な、なん・・・え!?」

 

花嫁姿の絢香まで出てきた。

 

「あっ、えーと、これは・・・」

 

「皇まで!?

なぜそんな格好を!?

まさか、みんな嫁に行くのか!?」

 

「ええと、話すと長くなるのですが・・・」

 

「あのですね、全員花嫁衣裳で、良介さんと誠さんと一緒に・・・」

 

「全員花嫁で・・・?

良介と・・・?」

 

怜の後ろから花嫁姿の浅梨が出てきた。

 

「あ、神凪さんだ。

せんぱぁい、神凪さんが来ましたよ。」

 

「ああ、来たか。

怜、家は大丈夫か?」

 

白いタキシードに身を包んだ良介が出てきた。

誠は制服のままだった。

 

「り、良介・・・お前、男とまで・・・」

 

「怜・・・?

お前、何を・・・」

 

「えへへ、誠先輩ったらとっても優しいんですよぉ。

さっき動きにくくて、つまづきそうになったんですけど、支えてくれて。

私、キュンとしちゃいましたぁ♪」

 

「ははは・・・そいつは・・・よかったな・・・

(つい先日に男だと知ったから全然嬉しくねえな・・・)」

 

誠は引き気味に笑った。

が、怜は誠の方は見ずに良介を睨みつける。

 

「あのー・・・怜?」

 

「良介・・・私はお前を信じていたのに・・・

やはり何股もかけるような不誠実な男だったのかっ!」

 

「えぇっ!?」

 

良介はその言葉に驚愕した。

 

「きゃっ!

神凪さん!?」

 

「か、神凪さん落ち着いて・・・」

 

「止めてくれるな!

風紀委員として見逃すわけにはいかない!

そこに直れ良介!

私がお前の性根を正してくれる!」

 

怜は腰の真剣を抜いた。

 

「ま、待て!

違うからっ!

お前の勘違いだから!」

 

そう言いながら、良介は剣だけを出した。

 

「問答無用っ!」

 

怜は良介に斬りにかかった。

 

「あれ・・・?

俺は完全に無視・・・?」

 

誠はその状況をただ呆然と見ていた。


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