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結婚式が行われているホテルのロビー。
花嫁衣裳に身を包んだ薫子と葵がいた。
「副会長さん、お似合いですよ!
きっといい写真になりますね♪」
「あ、ありがとうございます・・・冷泉さんもやはり着物が堂に入っていますね。」
2人のところに絢香がやってきた。
「他のお仕事中なのにごめんなさい・・・なるべく早めに終わるようにしますね。」
「緊急依頼として許可を取ったので問題ありませんよ。
皇さんの事務所でしたら、素材をおかしなことには使わないでしょうし。
きっとグリモアの印象アップにつながりますわ。」
薫子は笑顔を見せた。
「そういってもらえると嬉しいです。
うちの社長、強引なところあるから。」
「いえいえ、こんなに上等なお着物を貸していただけて。
ところで皇さん!
皇さんはまだ着替えないのですか?」
「あっ、あたしはインタビューの収録もあるから後回しで。
それより他の人は?
我妻さんは・・・」
少し離れたところに浅梨は1人でいた。
そこに絢香がやってきた。
「我妻さん、いいかな?
衣裳の準備するから選んでほしいんだけど・・・」
「ふぁい!?
は、はい!」
「どうする?
色は白がいいかな。
青とか黒も似合いそうだけど。
で、ええと・・・タキシードでいいのかな?」
浅梨はその言葉に少し動揺した。
「あの、我妻さん?」
「・・・です・・・」
「ん?」
「私、あのドレスがいいですっ!」
浅梨は飾ってあったドレスを指さしながら言った。
***
絢香と葵はロビーで話をしていた。
「さっき秋穂ちゃんと話したんだけど、今回のって誰の警備なのか知ってる?」
「我妻さんのお知り合いのようですよ。
お名前は存じませんが・・・」
「我妻さんは?」
「さっきまであそこに・・・あら?」
葵はさっきまで浅梨がいた場所を指差したが、そこに浅梨の姿はなかった。
浅梨はホテルの外で、見知らぬ男性に手を引っ張られていた。
「あ、あの・・・知らない人についていったらいけないので・・・
ちがうんです、もう戻らないといけないんですけど・・・
建物が急にどこかにいっ・・・ひゃっ、や、やめ・・・」
ホテルから出てきた葵と絢香は浅梨を見つけた。
「我妻さん!」
「なっ、ナンパされてる・・・!?」
「なんぱ・・・間宮さんが待ち焦がれてらっしゃる、アレでございますか!?」
「やっ・・・あっ!
困りますぅ、離してください・・・!」
浅梨は手を離そうとしていた。
「でも、ひどく強引に見えます。
もしやお助けしたほうがよいのでしょうか?」
「(どうしよ、ヘタにあたしが出て騒ぎになったら・・・)」
絢香が悩んでいると良介が颯爽と浅梨のところに行った。
「そこのアンタ。
そいつ、俺のところの学園の生徒だが、なにか失礼なことでもしたか?」
「良介さん!」
「すまないが、そいつはこれから仕事が控えててな・・・
名前と住所を・・・
ああ、世話になったら後日お礼に伺わせるよ。
いや、こっちの生徒が迷惑をかけているなら当然のことだ。
すべて・・・グリモワール魔法学園執行部に報告させてもらうから。
安心してくれよ。
学園生が人に危害を与えることはないから。
訓練中の身だから、力の制御に手いっぱいだが・・・
自衛せざるをえない状況以外では、安全を約束するよ。」
浅梨は良介を黙って見ていた。
「理解いただけて結構。
それじゃ、名前を・・・」
男性は浅梨の手を離すと走り去っていった。
「あ・・・逃げちゃいました・・・」
「大丈夫か?
なにもされなかったか?」
「あっ、は、はい!
ありがとうございます。」
浅梨は良介の方を見つめた。
「良介さん・・・」
「ん?」
「かぁっこいいぃ・・・!」
「浅梨、もう少ししっかりしろよ。」
良介はため息をついた。
***
ホテルロビーで絢香と葵と良介が話していた。
「冷泉さんのお家は、きっと結婚式も盛大だよね?」
絢香は葵に聞いた。
「そうですねえ。
お相手の家柄にもよると思いますが。」
「相手の家柄・・・?」
良介は首を捻った。
「はい。
おそらく、わたくしは親が決めた人と結婚すると思いますので。」
「え!
今の時代にそんなコトってあるんだ!?
冷泉さんは、好きでもない人と結婚なんてイヤじゃないの?」
「幼少の頃からそう言われて育ちましたから。
皇さんは、夫となる人をご自分で選べるのですか?」
「自分で選べるっていうか・・・普通はそうだと思うよ。
いやでも、うーん・・・アイドルやってる間は無理だろうな。
アイドルって、誰のものにもなっちゃいけない風潮あるからね。」
「なんと!
ははぁ、そういうものなんですね。
皇さんはいつまでアイドルを続けられるのですか?」
「うぐっ!
そ、それは・・・今の時点で答えにくいかな?
いずれ歳がいったらアイドルではいられなくなるだろうけど。
そのころにはもう恋愛してくれる相手はいないかも・・・ははは。」
「大変なお仕事なのですね。」
「冷泉さんだって、大変じゃない・・・」
「いえいえ、わたくしなどは恵まれていますので!」
「いやいや、あたしも今は結構幸せだよ!」
「ということは・・・?
あまり、思い悩むことでもないのでしょうか?」
「そうかもね。」
2人は突然、良介の方を向いた。
「そういえば、良介さんのことも気になりますね!」
「は・・・?」
良介は唖然とした。
「確かに。
良介君の恋愛観とか気になるかも。」
「ねえよ。
俺には。」
良介は即答した。
「ない?
どういうことでしょうか。」
葵は首を捻った。
「俺は魔物に両親を殺された。
その上、魔法使いに覚醒した。
そうなった以上、魔物と戦うことが俺の全てだ。
恋愛感情なんかに走っていられるか。」
「なんか・・・生天目さんみたいだね。」
絢香は良介を悲しそうな目で見た。
「俺とあいつは違う。
あいつはただの欲で戦っているだけだ。
俺は自分みたいに魔物に肉親、大切な人を亡くした奴を出したくないだけだ。」
「良介さんは、そのことだけでご自身の人生を捧げるおつもりですか?」
「もしも、あなたのことが好きだって言ってきた人がいたらどうするの?」
「出てこなくていいよ。
その方が・・・みんな幸せだと思うから。」
良介は笑みを見せると歩いてどこかに行ってしまった。
2人は良介の背中を見ていた。
***
ホテルロビーに葵、浅梨、薫子、誠がいた。
葵は新郎の姿を目撃した。
「あ、やっぱりそうです。
確かに以前会合でご挨拶した・・・」
「どうしました、冷泉さん?」
薫子は葵に聞いた。
「我妻さん、今回依頼してくださったお知り合いの方なのですが。
与党の議員さんでしょうか?」
「あ、はい!
どちらかというとお嫁さんの方に縁があるんですけど。
お嫁さんが我妻の血縁者なんですよ。」
「まぁ!
・・・ということは、花嫁さんは・・・」
「はい!
魔法使いなんです!
軍人さんですよ。
来月から前線に配備されるっていってました。」
「そいつは・・・」
「雑誌なんかで一時的話題になったので、結構知られてるかもですね。
最近、街中に魔物とか、霧の護り手とか物騒ですから・・・
比較的都合のつきやすい私が、警備を引き受けたんです。」
「けれど、そんなに魔法使いの結婚は難しいのでしょうか?」
葵は首を傾げた。
「戦いの場に赴く以上、魔法使いは短命だからな。
立場上、いわれのない差別を受けることも珍しくないからな。
その後の生活も含めると、困難だろうな。」
誠はため息をついた。
「そう!
だから私、小さい時からずっと思っているんです。
普通、魔法使いは人を助けるべき、っていいますけど・・・
お母さんやお姉ちゃん、軍人さん・・・それにグリモアのみなさん。
魔法使い自身の幸せも、ちゃんと守らなきゃいけないって!」
薫子と葵は浅梨の方を笑顔で見ていた。
誠は真顔で見ていた。
「それが、始祖十家としての志、ということですか。」
「はい!
それが我妻として・・・
魔法少女としての使命です!」
「浅梨、そうやって自分の使命を忘れるなよ。」
誠が話しかけてきた。
「そういえば、誠さんも使命みたいなものがあると聞いたんですが・・・」
浅梨が聞いてきた。
「誠さんもあるのですか?」
薫子も誠の方を見た。
「ああ、あるよ。」
「それは・・・?」
「自分みたいに、大切なもん全部失う奴を出さないこと。」
「大切なもの・・・?」
葵は首を傾げた。
「ああ、そうだよ。
俺は両親を・・・兄妹を・・・妹を魔物に殺されたからな。」
「え・・・?」
薫子は驚いた。
「そういう奴を出さない為に俺は魔物と戦うつもりだ。」
「あの・・・さっき良介さんに聞いたのですが。」
葵が誠に聞いた。
「ん?」
「誠さんは、ご自身は幸せになろうとは思わないんですか?」
「無い。
そんな資格なんて俺にあるわけないだろ?」
誠は当たり前のように答えた。
「なぜ・・・そう思うのですか?」
薫子が聞いてきた。
「家族を1人も救えない奴にそんな権利あると思うか?
俺は思わないね。」
「誠さん・・・!
あなたは・・・!」
「俺は・・・自分以外のみんなが幸せになってくれたらそれで充分だよ。」
「誠さん・・・良介さんも同じようなことを言っていました。
なぜそんなことが言えるのですか?」
葵は悲しそうに聞いてきた。
「良介もか・・・まぁ、同じ経験をした者にしかわからないんだろうな。
この気持ちってやつは。」
誠は暗い笑みを浮かべるとその場から去っていった。
3人はただ誠の背中を見ることしかできなかった。
***
夕方の街中、怜が走っていた。
「もうこんな時間か、急がねば。
特殊な家業とはいえ、理解があることに甘えてはいけないな。
しかし、これから忙しいシーズンだ。
屋根の補修はどうするか・・・
ん?
このホテルか?
JGJのマーク・・・よし、間違いない。」
怜はホテルに入った。
ホテルに入ると、花嫁姿の葵が出てきた。
「神凪さん!
みなさん、神凪さんが着きましたよ。」
今度は花嫁姿の薫子が出てきた。
「ご実家は大丈夫でしたか?
とりあえず我妻さんと交代してもらいますので・・・」
怜はその状況を見て、驚愕した。
「っ!?
な、なん・・・え!?」
花嫁姿の絢香まで出てきた。
「あっ、えーと、これは・・・」
「皇まで!?
なぜそんな格好を!?
まさか、みんな嫁に行くのか!?」
「ええと、話すと長くなるのですが・・・」
「あのですね、全員花嫁衣裳で、良介さんと誠さんと一緒に・・・」
「全員花嫁で・・・?
良介と・・・?」
怜の後ろから花嫁姿の浅梨が出てきた。
「あ、神凪さんだ。
せんぱぁい、神凪さんが来ましたよ。」
「ああ、来たか。
怜、家は大丈夫か?」
白いタキシードに身を包んだ良介が出てきた。
誠は制服のままだった。
「り、良介・・・お前、男とまで・・・」
「怜・・・?
お前、何を・・・」
「えへへ、誠先輩ったらとっても優しいんですよぉ。
さっき動きにくくて、つまづきそうになったんですけど、支えてくれて。
私、キュンとしちゃいましたぁ♪」
「ははは・・・そいつは・・・よかったな・・・
(つい先日に男だと知ったから全然嬉しくねえな・・・)」
誠は引き気味に笑った。
が、怜は誠の方は見ずに良介を睨みつける。
「あのー・・・怜?」
「良介・・・私はお前を信じていたのに・・・
やはり何股もかけるような不誠実な男だったのかっ!」
「えぇっ!?」
良介はその言葉に驚愕した。
「きゃっ!
神凪さん!?」
「か、神凪さん落ち着いて・・・」
「止めてくれるな!
風紀委員として見逃すわけにはいかない!
そこに直れ良介!
私がお前の性根を正してくれる!」
怜は腰の真剣を抜いた。
「ま、待て!
違うからっ!
お前の勘違いだから!」
そう言いながら、良介は剣だけを出した。
「問答無用っ!」
怜は良介に斬りにかかった。
「あれ・・・?
俺は完全に無視・・・?」
誠はその状況をただ呆然と見ていた。