グリモワール魔法学園【七属性の魔法使い】   作:ゆっけめがね

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※この作品の主人公は原作アプリの転校生ではありません。
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 それでもOKという方は、よろしくお願いします。



第64話 瑠璃色万華鏡

碧万千洞、誠と律と千佳は捜索を続けていた。

すると、突然誠のデバイスが鳴り出した。

 

「ん、誰だ?

こんな時に・・・え?」

 

誠が驚いた顔をした。

 

「なんだよ。

誰からだ?」

 

律が聞いてきた。

 

「鳴子さんからだ。」

 

「ゲッ!!」

 

「ゲッ!

誠、お前なにしたんだよ!」

 

律と千佳は同じ反応をした。

 

「なにもしてねえよ。

シカトするわけにはいかないな・・・出るか。」

 

誠は鳴子からの電話に出た。

 

「もしもし・・・瑠璃川の居場所?

・・・本当ですか?

アプリ・・・わかりました。

終わったら消していいですか?

はい、わかりました。」

 

誠がデバイスを切ると、律と千佳が不安そうな顔をして見ていた。

 

「なんて脅された?」

 

律が不安そうな顔のまま聞いてきた。

 

「瑠璃川 春乃の場所がわかるアプリをくれたんだよ。

今ダウンロード中だ。」

 

誠はデバイスで何かダウンロードし始めた。

 

「でもアイツのデバイス、壊れてるんだろ?」

 

「知らん。

お、出たか・・・こっち・・・壁だな。」

 

誠はデバイスを見ながら言った。

 

「どれどれ・・・確かに壁だな。

回り込まなきゃ。」

 

律も誠のデバイスを覗き込んできた。

 

「うし、行くか。」

 

誠たちは春乃がいるはずの場所へ向かった。

変わって良介と聖奈とヤヨイ。

良介のデバイスが鳴った。

 

「ん・・・俺か。」

 

良介はデバイスに出た。

 

「もしもし・・・」

 

「よかった。

つながった。

良介君、そこにヤヨイ・ロカがいるね?

ちょっと代わってくれないかい。」

 

「鳴子さんですか。

わかりました。

ヤヨイ。」

 

良介はヤヨイにデバイスを手渡した。

 

「え?

アタシ?

アタシに・・・誰だろ・・・もしもし?

ヤヨイ・ロカです。

・・・遊佐、鳴子?

ええと、学園生の遊佐 鳴子さん?」

 

「遊佐だと・・・?

なぜこんな時に・・・なぜロカを・・・」

 

聖奈は不思議そうな顔をした。

 

「うん、うん・・・霧を追いかけて・・・あの、もしかしてその子って・・・

・・・うん、わかった。」

 

ヤヨイは連絡が済むと、デバイスを良介に返した。

 

「ありがと。

おかげで探すのが捗りそうだよ。」

 

「どうも・・・で、鳴子さんから何を聞いたんだ?」

 

「秋穂って子の探索方法だよ・・・今からアタシ、集中する。」

 

ヤヨイは目を閉じると、集中し始めた。

少しするとヤヨイは目を開けた。

 

「確かに、霧が一定方向に流れて行ってる・・・

崩落があってから何時間だっけ?」

 

ヤヨイは聖奈に聞いた。

 

「そろそろ7時間だ。」

 

「急ごう。

アタシに任せといて。

これから1時間で、見つける。」

 

良介たちは秋穂がいると思われる方へ向かい始めた。

 

   ***

 

歩きながら聖奈はヤヨイに聞いてきた。

 

「状況を説明しろ!

霧の流れとはいったいなんだ!」

 

「霧は一定濃度になると可視化するけど、見えなくてもそこにある。

そして基本的には、たゆたっている。

でもいくつかの条件で・・・」

 

「移動を始めるってことか。」

 

「さすが兄さん、その通りだよ。」

 

「貴様、霧が見えるのか?」

 

「見えないよ。

でもわかる。

感じ取れる。

パパに鍛えられたから。

南で魔法使いじゃない人間が生き残るには、戦う力よりも・・・

霧の集まりを見定めて、逃げる力が必要だったから。」

 

「霧を追って行けば、なぜ瑠璃川が見つかる。」

 

聖奈は質問を続けた。

 

「霧を引き寄せる体質、って知ってる?」

 

「怪我をした際に霧が入り込み、その霧が周りの霧を集める。

それが、【霧が集まる体質】ってことだな。」

 

「さすが兄さん。

よく知ってるね。」

 

「まさか、瑠璃川のどちらかがそうなのか?」

 

「どちらかっていうか・・・

秋穂って子がそうだね。」

 

「何・・・?」

 

「っ!?」

 

良介と聖奈は驚愕していた。

 

「え・・・し、知らなかったの?

なんであの子、今日まで生きてたの?」

 

良介は顎に手をやった。

 

「霧が入り込んだ人間は魔物化が進行する。

それを止めるには障壁で、魔法的に遮断するしかない。」

 

「霧を取り除く手段が見つかってない以上、魔法をかけ続ける必要がある。

お姉さんだっけ?

誰にも気づかれずやってたの?

その人、すごい根性だね。

お友達になりたいよ。」

 

「まさか、あの溺愛ぶりにはそんな事情があったとは・・・

その障壁はどのくらいもつものなんだ?」

 

聖奈はヤヨイに聞いた。

 

「人によるし、最後にかけた時間にもよるからね・・・

今回はそろそろ半日だし、もしかたら・・・もう切れてるかも・・・

・・・なんとかなるなる。」

 

「ヤヨイも不安なんじゃないか・・・」

 

良介は、ヤヨイが誤魔化したような顔を見て、呆れた。

すると、ヤヨイは一人で少し進み始めた。

 

「しっ・・・あっちあっち。」

 

ヤヨイが指差した方向を良介と聖奈は黙って見た。

 

「霧が集まってる。

あの中心が例の子だよ!」

 

良介たちは秋穂を見つけた。

 

   ***

 

秋穂を見つけた良介たちは霧を払おうとしていた。

 

「良介!

霧を払うぞ!

私の羽で・・・ロカ!

こういうときはどうするんだ!」

 

「いやぁ、こういうときは逃げるんだよねぇ・・・ま、仕方ないか。

今攻撃したら、女の子まで一緒にやられちゃうから、ちょっと待ってて。」

 

そう言うと、ヤヨイは秋穂のところに向かい始めた。

 

「うひーっ。

自分から霧に突っ込むバカが・・・どこにいんのっ!」

 

ヤヨイは秋穂を抱えながら戻ってきた。

 

「よっし!

秋穂ちゃんゲット!

ロカなめんなっ!

あ、あわわ、霧が・・・もういいからぶっ飛ばしてーっ!」

 

良介と聖奈は魔法を撃つ準備をしていた。

 

「言われずとも・・・!

良介、全力でやるぞ。

霧を跡形もなく散らすぞ!」

 

「ああ、わかった!

俺の火属性最強魔法を使ってやる!」

 

良介の両手から大量の赤い炎が出てきた。

 

「ファイヤァァァブラスタァァァッ!!」

 

聖奈もそれに合わせて魔法を撃った。

2人の魔法が霧を吹き飛ばす。

 

「お、おお~。

魔法ってスゴ・・・あれ?」

 

ヤヨイは何かに気づいた。

 

「霧が集まってくるスピードが速くなってる・・・ヤバいかも。」

 

その頃、誠たち。

 

「えーと、こっち?

それともあっち?」

 

「そっちは遠ざかるだろ?」

 

誠は千佳の発言に呆れていた。

誠たちは未だに春乃と合流できずにいた。

 

「だって近づこうとしても、道が続いてるかどうかわからないんだもん。

すっごい勢いで移動してるしさ。

ほっといても1人で脱出すんじゃない?」

 

「会長でも1日洞窟に閉じ込められたとき、動けなくなったんだ。

あれは霧の影響だったらしいし、いくら春乃でも危ないだろ。

・・・ん?」

 

誠は何かに気づいた。

 

「どした?」

 

律が不思議そうに見てきた。

 

「近づいてきてる・・・もうすぐそこだ。」

 

誠がそう言うと、春乃がやってきた。

 

「秋穂・・・どこ・・・」

 

「うしっ!

これで外に出られるわね!」

 

千佳は喜んだ。

 

「つってもなぁ、多分来た道も変わってるだろうし・・・」

 

律は不安そうな顔をした。

 

「秋穂は・・・秋穂はどこ!?」

 

春乃は誠に迫ってきた。

誠は冷静に春乃の質問に答えた。

 

「大丈夫だ。

さっき良介たちが見つけたって連絡が来たから。

魔物が出てるが・・・」

 

「場所は!?」

 

春乃は誠に掴みかかった。

誠はそれでも冷静に返した。

 

「場所はここだ。

そんなに遠くない。」

 

誠は春乃にデバイスを見せた。

 

「ここから10分・・・ずいぶん近づいてたのか・・・」

 

「疲れてるんだ。

無茶はするな。」

 

「礼は後でする。

今は妹のところに・・・!

時間が・・・っ!」

 

春乃は秋穂のところへ行こうとした。

 

「お、おい、どーする、マジだぜ・・・」

 

律が誠に聞いてきた。

 

「そうは言ってもな・・・」

 

「でも血とか結構出てっからさ、さすがにあぶねーって・・・」

 

「でもうちら、回復魔法なんかできないし!」

 

そう言い合いをしている間に春乃は1人で向かおうとし始めた。

誠が春乃を呼び止めた。

 

「待て。

それで戦いに行くのはダメだ。」

 

「そ、そーよ!

もうヘトヘトじゃんか!」

 

千佳も春乃に呼びかけた。

 

「あたしのことなんかどうでもいい。」

 

そう言うと、1人で走って行った。

 

「チッ、面倒な奴・・・待てっ!」

 

誠が走って追いかけていった。

 

「え!?

うちらも行くの!?

帰っちゃダメ?」

 

律と千佳もその後を追いかけた。

 

   ***

 

その頃、良介たちは霧から逃れようとしていた。

 

「う、うひーっ・・・次から次に・・・」

 

「クソッ、キリがねえな。」

 

「私たちの中に障壁の魔法を使えるものがいない。

呼び寄せた別働隊が間に合うかどうか・・・!

良介、もっと魔力をよこせ!

私と貴様で死守するぞ!」

 

「ああ、わかってる!」

 

すると、秋穂が小さく声を出した。

 

「ぅ・・・・・」

 

「お?

こん睡状態のはずだったのに・・・

大丈夫だよ、アタシは南で何度も死にかけたけど、なんとかなった。

ロカ家には幸運の女神さまがついてるんだ。

だからあなたもダイジョブ!

聞こえてるといいけど・・・」

 

ヤヨイは秋穂に話しかけた。

 

「ぉ・・・ぉね・・・ちゃん・・・」

 

「お姉ちゃん?」

 

ヤヨイは不思議そうな顔をした。

 

「秋穂ーっ!!」

 

すると、春乃がやってきた。

春乃は魔法を撃つと魔物は消えた。

 

「ま・・・魔物が・・・消えた・・・

今のは・・・る、瑠璃川 春乃っ!」

 

春乃は秋穂のところに駆け寄ってきた。

 

「秋穂・・・秋穂っ!」

 

「落ち着いて、まだ大丈夫だよ。

でも汚染は確実に進んでる。

影響が出る前に障壁を。

あなたが張ってたんだよね。」

 

春乃は障壁を張ろうとした。

 

「魔力が・・・

良介・・・お願いだ・・・

妹のために、魔力を・・・」

 

「わかってる、渡すぞ。」

 

「全員みつけた。

近くにいる別働隊と合流して、帰還するぞ。」

 

聖奈は他の部隊に連絡した。

少し経って、学園の保健室。

春乃はゆかりに見てもらっていた。

 

「あなたも治療が必要なのよ?」

 

「いい。

あたしよりベッドが必要な生徒はいるだろ。」

 

「あの子たちは仮病だから・・・まあ、どうしてもっていうならしょうがないけど。

そういえば、入学してきた時もそんな感じだったわね。」

 

ゆかりがそう言うと、春乃は黙ってゆかりを見た。

 

「じゃじゃーん!

わらわ、登場!」

 

突然、アイラが入ってきた。

 

「し、東雲さん?」

 

ゆかりは驚いていた。

 

「椎名よ、ちょっと席を外してくれんか。

ちょっとじゃちょっと。」

 

「ええ・・・容態が変化したら教えてね。」

 

ゆかりは保健室から出た。

 

「聞いたぞ。

瑠璃川の。

お主の妹、霧が体に入り込んどるとな。」

 

「誰から聞いた!」

 

「情報源は明かせぬぞえ。

ったく、こんな重大なことを隠しおってからに・・・

以前、妾に時間停止の魔法のことを聞いたことに合点がいったわ。」

 

春乃はアイラを睨んでいた。

 

「よいよい。

時間停止の魔法をかけることはできんがな。

霧が入って間もないのであれば、やりようはある。」

 

「どうすれば?」

 

「そーじゃ、ババアの知恵は素直に聞くがよい。

つっても完治するわけではない。

房総半島の時に入り込んだ霧は・・・

おそらく取り除けんじゃろう。」

 

「血を入れ替えるのか?」

 

「フフ、やはりお主は賢いのう。

霧は血液を通って体に染み込む。

その前にさっさと瀉血してしまうわけじゃ。」

 

「あたしの血を使え。

全部でもいい。」

 

「血縁者からの輸血はせんほうがいい。

大人しく科学に頼れ。

じゃが霧が体内に入っとると、科研が出張ってくる可能性が高い。

秋穂はほぼ確実に収容される。

どうする?

隠匿することもできるが。」

 

「収容なんてさせるものか!

あたしが守るんだ!」

 

「秋穂の命にとっては、そちらの方がマシかもしれんぞ?」

 

「母さんと約束した。

秋穂を守るのはあたしだ。」

 

「よかろ。

結城、聞いたな。」

 

そう言うと、聖奈が入ってきた。

 

「ああ。

正式な報告はしないでおこう。

私は・・・生徒会失格だろうな。」

 

「なぁに、虎千代なら許すじゃろ。

とはいえ・・・数人の学園生が知った。

春乃。

秋穂は根治が望めんのが現状じゃ。

ここまで隠し通したのは見事じゃが、これから先、同様のことが起きうるぞ。」

 

「あたしが、もっと強くなればいいだけの話だ。」

 

「お主がどれほど強くても、人の力には限界がある。

ま、すぐ決めんでもよい。

覚悟ができたら妾に言え。

ちょっとした裏技を教えてやるからの。」

 

「お前は、どうしてそんなに秋穂のことを気にかける。」

 

「お主、妹の体に霧が入っとるから、時間停止の魔法を望んだんじゃろ?」

 

「まさか・・・」

 

「そーゆーことじゃわ。

妾の方が先輩じゃからの。

面倒見たくなってもおかしくはなかろ?」

 

「わかった。

悪かったな。」

 

「ホホホ、お主らしくもない・・・ま、しばらく養生せい。」

 

アイラは笑いながら保健室から出て行った。

春乃は秋穂が寝ているベッドの方を向いた。

 

「秋穂・・・・・

ごめんな・・・」

 

春乃は秋穂に向かって、一言囁いた。


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