グリモワール魔法学園【七属性の魔法使い】   作:ゆっけめがね

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※この作品の主人公は原作アプリの転校生ではありません。
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 それでもOKという方は、よろしくお願いします。



第62話 世界の仕組み

生徒会室、聖奈とチトセがいた。

 

「裏世界が私の管轄に?

私でいいの?」

 

「やることが多くなって手が回らん。

お前にも働いてもらわないとな。

労働には対価を。

逆に言えば、義務を果たしてこそ報酬だ。

働かない人間を私は認めん。

任せるからには誠実な対応を望むぞ。」

 

「私に裏世界を任せると決めたのは誰?

会長さん?」

 

チトセは質問した。

 

「それがなにか関係あるのか。」

 

「いいえ・・・わかったわ。

私が裏世界に関して知っていることを報告する。」

 

「知っていること?」

 

聖奈は首を傾げた。

 

「ええ。

もうすでに・・・1人ではどうしようもない状態なのがわかったから。」

 

聖奈はチトセの言っていることが理解できなかった。

 

「JGJとの協力体制を取ることはもう聞いてるけど、人選は?」

 

「初音の姉、神宮寺 茉理だ。」

 

「そう・・・じゃあ彼女に伝えてちょうだい。」

 

チトセは笑みを見せた。

 

「なにをだ?」

 

「裏世界が滅びた原因の1つは、人類側の不調和。

霧の護り手が邪魔をしたから、人類が一丸となって魔物に対抗できなかった。

そして・・・発端は、JGJが霧の護り手に与したこと。」

 

「JGJと霧の護り手が?

まさか・・・JGJは対魔物路線じゃないか。」

 

「科研と同じように、JGJにも裏切り者がいる。

その裏切り者によって・・・今のJGJの中核をなす8人兄妹。

彼らが全員死ぬわ。

その後、JGJは規模を縮小。

護り手の息がかかった幹部により・・・

テロ組織のフロント企業になる。」

 

「受け入れるには突飛な話だな。

だいたい、貴様はなぜそれを知っている。

それと・・・誰が裏切り者かはわかっているのか?」

 

「ずっと調べていたけど、JGJは1人を探すには大きすぎる。

でも彼らが死んだ状況を考えると、かなりの上役のはずよ。」

 

「生徒会では私がJGJを担当する。

その前に貴様の言動に証拠が必要だ。」

 

「霧の嵐でのびちゃったけど、来月にはJGJの人間を連れて裏世界に行くのよね?

地下のゲートから行ける裏世界なら、JGJはまだ残っている。

遊佐さんの協力者・・・事情に精通してると思うわ。」

 

「わかった。

真偽はどうあれ、それまでこの件は私が預かる。

神宮寺 茉理についても、充分に注意しておくように伝えておく。

引き続き裏世界についての情報を精査しておいてくれ。

それと・・・貴様がなぜ裏世界の事情に詳しいのかも話してもらう。」

 

聖奈は生徒会室から出て行った。

 

「裏と表は違う。

魔導科学の技術自体が大きく躍進した。

デクの技術も進化し、JGJの立ち位置自体が多少異なっている・・・

裏世界の通りに進むとは限らないけれど、でも・・・

なにもなければ、と思うけどね。」

 

チトセは不安そうな顔をした。

 

   ***

 

良介と心は廃墟の奥へと進んでいた。

 

「あ、ああ、死んでない、死んでない・・・!

生き残ってしまいました・・・またあの恐怖と戦わないといけません・・・!

ど、どうしましょう!

つ、次に会ったら、絶対にクチャッと・・・プチッと・・・

そうだ、今のうちに遺書を書いていかないと・・・ちょっとPC触りますね・・・」

 

「おい、あのさぁ・・・」

 

良介が話しかけようとした瞬間、心の雰囲気が変わった。

 

「あいかわらず、心ちゃんは後ろ向きですね。

進歩しません。

ですが、私の大切な主人格です。

【本物】ではない私にとっては・・・

彼女はとても羨ましい。

そして神々しいんです。」

 

「そうか・・・で、心。

今、ちょうどなんだが・・・」

 

良介は周りを見渡した。

 

「すいません、お話ししなければいけないのはあなたのことでしたね。

ですが、今はやめておきましょう。

デバイスに魔物の反応があります。

これを倒して・・・おそらく一度、心ちゃんが出ますが、そのあとということで。

この魔物は私が倒します。

フォローをお願いします。」

 

「わかった。

心に任せるよ。」

 

魔物が2人の目の前に現れると、良介は次々と光弾を放つ。

魔物が足止めされている間に心は魔力を溜めて、強力な一撃を放つと、魔物に直撃し消滅した。

 

「よし、次だな。」

 

「はい、次に行きましょう。」

 

良介と心は次の魔物のところに向かった。

 

   ***

 

学園の噴水前、智花のところに松島 みちる(まつしま みちる)がやってきた。

 

「智ちゃん、おはよー。」

 

「みちるちゃん、おはよう。

もう学園には慣れた?」

 

みちるはまだ学園に転校してきたばかりだった。

 

「まーね。

魔法学についていくのは大変だけど、それ以外はもうやってるから。

ところで良介君、見てない?」

 

「良介さん?

ううん、今日は見てないかな・・・」

 

「そっかー、なんだ、残念。」

 

みちるは肩を落とした。

 

「なにか用事?」

 

「いや、ほら、前に話したこと。

体質の相性がいいって。」

 

「あっ・・・う、うん。

魔力量と放出ができる量がちょうどいいことだよね?」

 

「そーそー、あたし、ちょっとスタートダッシュ遅れたから・・・

ばんばんクエスト請けて、取り戻そうと思っててね。

だから良介君誘いに来たんだけど、いないんならしょうがないや。

もあっと送ってみる。

あ、今日の練習、顧問の先生遅れるって。」

 

みちるは智花の様子を見て不思議そうな顔をした。

 

「どしたの?」

 

「えっ!?

あ、ううん、なんでもない!」

 

「体調悪いなら保健室行く?

付き添うよ?」

 

「ちょっと考えごとしちゃっただけだから。

大丈夫。」

 

「そう?

ならいいけど・・・あたし、智ちゃんにはお世話になってるからね。

恩返しするから、なにかあったら言ってね。」

 

少し離れたところから夏海がその様子を見ていた。

後ろから怜がやってきた。

 

「おい、夏海、さっきから通行の邪魔になってるぞ。」

 

「ほらー、智花、ボケッとしてるからー。」

 

「智花がどうかしたのか?」

 

怜は夏海に質問した。

 

「怜はいいのいいの。

でもこれは・・・あたしがどうにかしないと・・・!

グフフ、楽しい記事になりそう・・・」

 

夏海は不気味に笑った。

 

「お、おい、この前のこと忘れるなよ。

悪質な取材は取り締まるからな!」

 

「だいじょびだいじょび。

ちょっと用があるから行ってくるねーん。」

 

夏海は走り去ってしまった。

 

「あ、おい・・・しまった。

話を切り出せなかった。

風槍に関わっているものとなると天文部だが・・・

大人しく南条に聞いた方がいいのかな。

どうすべきか。」

 

怜は1人で悩んだ。

その頃、夏海は教室にいる香ノ葉のところにいた。

 

「なっ!

なんやて!」

 

「ほらー。

あんたって良介のことは見てるけど周りがダメなのよねー。」

 

「1回クエストに行っただけで彼女ヅラして・・・

フ、フフフ・・・ここはウチがズバッと思い知らせんとあかんなぁ。」

 

「別に彼女ヅラはしてないけど。」

 

すると、すぐ近くになぜかももがいた。

 

「あ、あの、わたしはどうしてここに・・・」

 

「いーや、ようやったで夏海ちゃん。

ここはいったん手を組も!

ダーリンに想いを寄せる乙女の会や!」

 

ももはそれを聞くと少し引いた。

 

「あたしは面白ければなんでもいいんだけど。

ふんふん、ももはアタリ、と。」

 

「ななな、なんですか!?」

 

「やだなー、なんでもないわよ。

あと何人か聞いていい?」

 

「いや、これ以上は増やさんほうがええな。」

 

「え?

なんで?」

 

夏海は首を傾げた。

 

「あんまり多くなってもダーリンに堂々とアプローチする子が増えるだけやん?

自分から競争率あげてってもしょうがないんやよ!」

 

「えー・・・それが目的だったのに・・・」

 

夏海は肩を落とした。

 

「ここは少数精鋭でな!

あ、もちろんももちゃんは同士やえ!

でもライバルでもあるんよ!

手加減はせえへんからね!」

 

「あ、あの、その・・・ええと・・・」

 

ももは困っていた。

 

「ダーリンは・・・まだ心ちゃんとクエストやな・・・

あの子がダーリンにどうするとも思えんし、今は安全やな。

作戦練るで!

ダーリン渡してなるものか!」

 

夏海はそんな香ノ葉に聞いてみた。

 

「智花はどうする?」

 

「うぐっ・・・」

 

「うぐ・・・」

 

「あ、あの子なぁ・・・ええ子なんやけど・・・

ダーリンのこととなると・・・最大のアレやから・・・」

 

「ふーん。

そんな風には見えないけどなー・・・」

 

「智ちゃんは親友やけどな!

ダーリンのこととなったら話は別やで!

女の戦争にルールはないんよ・・・フフフ・・・」

 

「まいっか。

面白くなりそうだし。」

 

その教室の近くの廊下に誠がいた。

 

「なんか・・・嫌な予感がすごいするな・・・」

 

誠は苦笑いしながらその場を離れた。

 

   ***

 

結希の研究室、虎千代、鳴子、エレンが結希のところに来ていた。

 

「始めましょう。

この後、神宮寺 茉理がここに来る。

それまでに終わらせておきたいわ。」

 

「遊佐。

この前の子供の私との違い・・・本当に答えがあるんだろうな?」

 

虎千代がエレンの言葉を聞いた後、口を開いた。

 

「報告は受けているが、正直さっぱりわからん。

手間でなければ、整理からやってくれないか。」

 

「いいとも。

複雑に絡み合っている・・・ように見える話だ。

まずは年度末にかけて、僕たちは異常な世界を2つ経験している。

地下の魔導書から繋がる【裏世界】と1年を繰り返していると思われる・・・

そうだな、ループ世界とでも言おうか。」

 

「ループ?」

 

エレンは首を傾げた。

 

「会長。

あなたは風槍君の不思議な言動を見たはずだ。」

 

「アタシが卒業したはず、だろ?

あれに冗談以上のなにかがあるのか?」

 

「ある。

それが根拠の1つでもあるけど、僕なりに彼女のことを調べてみた。

彼女はみんなが思うよりも常識人でね。

普段のホラは、南条君に怒られたら引っ込むんだよ。」

 

「ああ・・・確かにな。」

 

「そもそも南条君が風槍君を叱らない時点で、この件は決着している。

風槍 ミナの言っている事は、少なくともただの冗談ではない、ということだ。

言っていることの中身と、彼女の力を考えれば答えは1つ。

僕たちの卒業は、なんらかの魔法により【なかったことになった】。

ここまでは君もわかっているね、宍戸君。」

 

鳴子は結希の方を見た。

 

「正しくは、私たちの記憶や体験を保持したまま、時間が巻き戻っている。

いえ、もっと奇妙な状態よ。

第7次侵攻や裏世界を見つけたこと・・・

それらの事実もそのまま、ただ時間だけが巻き戻っている。」

 

「もし1年戻ったのなら、私は南アメリカにいるはずだ。」

 

「私もこの時期は科研にいた。

だから単純に時間が巻き戻ったとは言えない。」

 

「まぁ、今は詳細はいいだろう。

2人とも、認識してくれればいい。

僕たちは来年度に進めなかった。

これがまず1つ起きていることだ。

で、もう1つ・・・

ここからが本題でね。

裏世界のことだ。

アメディック君。

君は僕と同じで、今のところ一番多くの裏世界を見ている。

裏世界の風飛市を訪れて、なにか感じたことは?」

 

「私たちのいる世界と、裏世界は違う。

裏世界の私は・・・日本語を話した。

何度も日本に来ていて、父が霧の護り手の幹部と交流している。」

 

「それは、本当ならば・・・大問題になるぞ。」

 

「違う!

もし父に間ヶ岾と親交があったのなら・・・

私がここにいられるはずがない。

絶対に露呈し、父は軍法会議だ。

裏切り者の娘と言われ、軍隊に入れたかどうかも・・・」

 

「そもそも君の渡航歴が改竄された様子はない。

日本語能力を偽ったというようなこともない。

君と裏世界のエレン・アメディックは明確に違う。

すなわち、裏世界と僕たちの世界の歴史が異なるということ。

なぜ異なると思う?

そもそもなぜ、2つも世界があると思う?」

 

「SFの世界では、多世界解釈が存在する。

分岐した世界が。」

 

「そう。

そしたら僕たちは・・・【分岐した世界の住人】だ。

僕たちの世界はより良い選択肢を選ぶよう、操作された。」

 

「な、なにを言っているのかわからんぞ・・・」

 

エレンは困惑していた。

 

「ゲートでアクセスできるのは、オリジナルの歴史。

そこでの失敗を繰り返さないよう、誰かがこちらの世界に干渉している。

誰かが、人類の敗北という歴史を辿った世界を作りかえようとしている。

その誰かによって、アメディック君の父親は霧の魔物と【無関係】になり・・・

デクの技術がブレイクスルーを迎え、武田 虎千代の遭難情報をリークした。」

 

結希は黙って聞いていた。

 

「その結果、エレン・アメディックと言う優秀な兵士が誕生し・・・

軍の奥深くまで霧の護り手が入り込むこともなく・・・

第7次侵攻で半減するはずだった人類はほぼ無傷と言ってもよく・・・

武田 虎千代の体内に【霧が入り込まなかった】。

早めに話をつけることだね。

彼女にこれ以上好き勝手させるつもりかい?」

 

鳴子は不敵な笑みを見せた。

 

「それよりも、あなたの言いたいことを確認させて。

【裏世界】と【ループ】は無関係・・・別個の事象だということでいいのね?」

 

「ああ、時間を操ることと【未来からやってくること】は全く違う理屈だ。

だからループが彼女のせいだとか。裏世界が関係しているのかとか・・・

そういうことに思い悩む必要はない。

単独の事象として考えてくれ。」

 

そう言うと、鳴子はデバイスを取り出した。

 

「根拠がないと思うなら、これを。

裏世界の人間に聞いてみるといい。」

 

「繋がっているの?」

 

「ああ。

今日は運がよかった。

【僕の協力者】だよ。」

 

鳴子は結希のデバイスを手渡した。

 

   ***

 

良介と心は廃墟の奥へと進んでいた。

 

「心、ここまで来れば大丈夫だろ。」

 

「わかりました、話しましょう。

先日、学園のデータバンクに侵入しました。

調べ物をしていたためです。

あなたに伝えなければいけないのはただ一点。

あなたの命が脅かされていること。

それも、遠い先の話ではない。」

 

「俺の・・・?」

 

「すいません。

大雑把な言い方ではわかりませんよね。

ではこう表現しましょう。

【霧の護り手】、【ライ魔法師団】、【キネティッカ】等々・・・

これら複数のテロ組織に、あなたの情報が洩れています。

第七次侵攻の時の活躍のため・・・というのも理由の一つではあります。

けれど、私が伝えなければならないのはそういうことではありません。

よく聞いてください。」

 

「ああ・・・」

 

「あなたの情報を、テロ組織にリークした人物がいます。」

 

「・・・何?」

 

良介は眉間に皺を寄せた。

 

「誰かはわかりません。

もしかしたら、と思う人物はいますが・・・

まともに教えてくれないでしょうが、遊佐 鳴子に尋ねるのも手です。

今回、このことに気付いたのは偶然です。

そもそも私が調べているのは・・・

【私たち】のことなのですから。

この件について追跡調査をするつもりはない。

ですがあなたには、心ちゃんも私もお世話になっている。

ですから、そのお礼として、手に入れた情報をお伝えしました。」

 

「そうか・・・ありがとう。」

 

「テロ組織は、おそらく動き始めるでしょう。

あなたを攫いにくるはずです。

これから、身辺に気をつけてください。

使えるコネは全て使ってください。

あなたの体質は、100万の宝石に勝る・・・いつ刺客が現れてもおかしくない。

忘れないでください。

あなたは魔法使いにとって希望であり・・・

そして、悪しき者にとっての希望でもあるということを。」

 

「ああ、わかった。

(俺を攫いにか・・・上等だ・・・!

その時は俺はそんな簡単に攫える奴じゃないってことを知らしめるだけだ!)」

 

良介は笑みを浮かべると右目だけが金色に光った。

 

   ***

 

良介と心は街中まで戻ってきた。

心の雰囲気が変わっていた。

 

「はっ!?

ここは・・・ま、街ですか!?

い、生きて戻ってこれたんですね・・・やったー!

いつの間に倒したのか知りませんが、よかったですぅ~っ!」

 

心は喜んでいた。

 

「で、でもどうやってここまで?

もしかしてわたし、意識を失ってたんでしょうか。

そして良介さんにここまで・・・あああ、なんと申し開きをすればよいか・・・

ここは、もう腹を斬って詫びるしか・・・」

 

また心の雰囲気が変わった。

 

「あまり時間が経つと、さすがの心ちゃんも怪しみますからね。

これでクエストが終わったとあの子も認識したでしょうから、大丈夫です。

さあ、戻りましょう。」

 

「あ、ああ、わかった・・・

(本当にそれでいいのか?)」

 

良介と心は教室まで戻ってきた。

 

「お疲れ様でした。

あとは心ちゃんと話を合わせてくれれば大丈夫です・・・」

 

「わかった。」

 

「あなたにお伝えしたことは、決して作り話ではありません。

科研、執行部、国、テロ組織・・・あなたが現れてから一年ほど経ちますが・・・

その間、あなたへの関心は高まっています。

ご自身では覚えがなくとも、期待とはそういうもの。

こちらに、私が手に入れたテロ組織の情報が入っているUSBがあります。

誰にも奪われない、という自信があるなら、受け取ってください。

閲覧するときは絶対にネットに繋がっていない端末で。

それえとも、知らないまま過ごしますか?」

 

「いや、ありがたく頂く。

言われた通りにしとくよ。」

 

良介はUSBをポケットに入れた。

と、心がパソコンを見ていた。

 

「どうした?」

 

「少々お待ちを・・・

学園長が亡くなったそうです。

どうやら、ギリギリ間に合ったようですね。」

 

「な、学園長が・・・?」

 

良介は驚愕した。

 

「学園長にお会いしたことはありますか?」

 

「何回か会ったことがある。」

 

「私も顔を見たのは数回ですが、元気そうにふるまっていました。

誰も、死ぬとは思っていなかったと思います。

つまり・・・

ご老人は、自分が末期ガンだということを最後まで隠し通したということです。

そして彼が亡くなったということは・・・グリモアを守る壁の1つが、消えた。

グリモアには物理的な障壁、電子的な障壁の他に、政治的な障壁があります。

執行部と学園長は対立していましたが、外敵に対しては協力しました。

その片方がなくなる・・・学園長にはちょうどいい年齢の跡継ぎがいません。

しばらくグリモアの政治的な壁には混乱が起きるでしょう。

そうなれば、テロ組織はそこを突いてきます。

私は心ちゃんを守ることで精一杯です。

どうかあなたは・・・

自分を守る力を、手に入れてください。」

 

「ああ・・・肝に銘じておくよ。」

 

良介は教室を後にした。




人物紹介

松島 みちる(まつしま みちる)15歳

入学時の適性試験で低評価を受けたためクサっていたが、良介との相性が抜群だったことで一躍目立つようになる。
気分屋で調子に乗りやすいが、それがいい方に作用した時の実力は計り知れない。

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