グリモワール魔法学園【七属性の魔法使い】   作:ゆっけめがね

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※この作品の主人公は原作アプリの転校生ではありません。
 閲覧者様のイメージを壊す可能性があります。
 それでもOKという方は、よろしくお願いします。



第61話 2人の心

良介はいつも通りに学園に登校すると、校門前に心がいた。

 

「おはようございます、良介さん。」

 

「おはよう心。

どうしたんだ?」

 

「突然ですが、クエストを請けました。

まだ私ひとりです。

それで、あなたにご一緒していただきたいと思いまして。

ここでお待ちしていました。

天文部のメンバーはいません。

私と、あなたの、2人です。」

 

「・・・なにか理由があったりするのか?」

 

「もちろん、裏はありますよ。

他の人を交えず、お話したいことがあります。

ようやく、デバイスが圏外になる場所のクエストが発令されました。

この機会を逃すと、しばらくチャンスがありません。

ぜひ、とも。

あなたの進退にかかわることです。」

 

「わかった。

俺の事情で、心の事情じゃないんだな?」

 

「ええ。

私の事情ではなく【あなたの事情】・・・いいですね。

無理にでも来てもらいます・・・あなたには部長がお世話になってますし・・・

【心ちゃん】もお世話になっていますから。

・・・よろしくお願いしますね。」

 

「わかった。

行こうか。」

 

良介はクエストを請けることにした。

 

   ***

 

場所は変わって研究室。

結希と鳴子がいた。

 

「あなたが協力するなんて、どういう風の吹き回しかしら。」

 

「ここは風飛だよ。

風はなにもかもを流転させる。

刻一刻と移りゆく。

まぁ・・・情緒的な言い回しは性に合わないから・・・

端的に、君につまづかれたら困ると言っておこうか。」

 

「つまづいてる、とはどういうこと?」

 

結希は質問した。

 

「君が対処しなければいけない案件は、実はそんなにない、ってことさ。」

 

結希は黙って鳴子の方を見ていた。

 

「科研、霧の護り手、裏世界、巻き戻り、そして裏世界のエレン・・・

これらを繋げて考えるのはある種正解だが、同時に迷宮への入り口だ。

ご存知の通り、魔法は条件さえそろえば無限の力を持つことができる。

だから全ての事態は【そういう魔法がある】、可能性がある。

逆に言えば・・・今、君は、解決のための糸口をなにもつかめていない状態だ。

この中のどれかが【魔法が関係しなければ】楽になると思わないか?」

 

「それをあなたが与えてくれるというの?」

 

「僕はそう考えている。

だが・・・その情報は君をさらなる迷宮に誘う・・・

かもしれない。

君が僕の想像より賢いことを願うよ。」

 

鳴子は不敵な笑みを見せた。

 

「回りくどい言い方はいらないわ。

有益な情報があるのなら教えて。

あなたが巻き戻りのことを、どの程度のとして認識しているか・・・

それも教えて。」

 

「いいとも。

でも少し待ってくれ。」

 

「生徒会長とエレンを待つの?」

 

「その通り。

それと少し、この部屋を調べさせてほしい。

余人には聞かれたくない話でね。」

 

「この部屋になにかあるとでも?」

 

「ああ、思っているよ。

君のいいつけで僕のサーバーに侵入したのは双美君だろ?」

 

結希は黙っていた。

 

「電子戦で彼女の方が1枚上手なのは承知済みだ。

僕はアナログで対策させてもらう・・・ああ、そうだ。

みんながそろう前に1つ。

僕が入手した情報によると・・・

未来から来た生徒がいる。

そうだね?」

 

「ええ。

真偽は別にして、そういう発言した生徒はいるわ。」

 

「それは事実だよ。

だけどその手段は未知の魔法なんかじゃない。

彼女は裏世界から来た。

現在、地球上に7つあるゲートのどれかを通ってね。

そのゲートは今から【50年後】に繋がっているんだ。」

 

「彼女は、裏世界の住人?」

 

「【未来から来た】はそれと同義だ、ということを認識しておいてくれ。

これがこんがらがった事態を紐解くカギになる。」

 

そう言うと鳴子は、部屋を調べ始めた。

 

   ***

 

良介と心は廃墟に来ていた。

 

「それでは、よろしくお願いします。

クエストへ向かいましょう。」

 

「ああ、わかった。」

 

良介が進もうとすると、心はすぐに立ち止まった。

 

「何度かお会いしていますが、もう一度自己紹介した方がいいでしょうね。

双美 心です。

わかりやすく表現するなら【もう一人の】双美 心です。」

 

「もう一人・・・二重人格、か?」

 

良介は首を傾げた。

 

「やはり、混乱しているように見えます。

未だに信じられませんか?

【心ちゃん】の演技だと思いますか?

まあ、どちらでもよいのですが。

いずれ私は消えますし。」

 

「消える・・・?」

 

良介は少し驚いた。

心は気にせず話を続けた。

 

「それより、私のクエストに付き合っていただいて、ありがとうございます。

あの子には内緒で受注しました。

気になることがあるので。

あなたにも関係することです。

お伝えしなければ、と思いまして。

まずは先に進みましょう。

普段通りに振る舞う必要があります。

そして、どこかで国軍の監視を避け、お話します。」

 

「わかった。

視線を感じなくなったら伝える。」

 

「ありがとうございます。

途中、交代するかもしれないので、その時はうまくはぐらかして・・・」

 

すると、突然心の雰囲気が変わった。

 

「あれ?

なな、なんでわたし、こんなところに・・・」

 

「・・・突然すぎるだろ。」

 

良介はため息をついた。

 

   ***

 

場所は変わって天の研究室。

天となぜかアイラがいた。

 

「ヒマじゃヒマじゃヒマじゃー!

なぜ妾がのけ者にされるんじゃーっ!

ちっくしょう、遊佐 鳴子め。

妾のことをいつまでも疑いおって。」

 

アイラは1人で騒いでいた。

 

「だからって私の研究室に来ることないじゃないの!

邪魔!」

 

「だってー、この前シャルロットと会ってから歓談部行きにくいんじゃもん。」

 

「吸血鬼じゃないんなら、怖がる必要ないんじゃない。

体に霧が入るなんて珍しいもんじゃないわ・・・それで生きてるのは珍しいけど。」

 

天はあるプリントを見た。

 

「ホント、霧が血液に混じってるわね・・・症状が進行しないのは魔法?」

 

天はプリントを机に置いた。

 

「時間停止の魔法じゃ。

1年に1回、効果が弱まるからその間は結界じゃがの。」

 

「ふうん。

結界・・・それは大垣峰に張られているものと同じ?」

 

「似とるよ。

じゃが魔法で進行が抑えられているっつーだけじゃな・・・

問題はヤツらの教義よ。

魔物は悉く殲滅すべし、例外はナシ。

体内に霧を抱える妾は、ヴィアンネ教司会にとっては討伐対象になりかねん。」

 

「まさか・・・人間を討伐対象にするわけないでしょう?」

 

「妾と、他に体内に霧が入って魔物になってしもうたヤツはどう区別する?

妾が魔物になる前に殺した方がいいとは思わんか。」

 

天は黙っていた。

 

「ま、むざむざ殺されるつもりはないがの。

いざ本気を出せば、何人来ようと返り討ちじゃ。

じゃがのう・・・

歓談部の雰囲気が壊れるのは・・・嫌じゃな・・・」

 

「話は変わるけど、アンタなんで例のメンツに呼ばれてないの?」

 

「むきっ!

そーじゃそーじゃ!

遊佐のぶぁかものめが~っ!

妾がおった方が話が進むのじゃ!

絶対!

ふん、簡単じゃ。

遊佐は妾のことを信用しておらん。」

 

「どうして?」

 

「妾が何者か知らんからよ。

吸血鬼が嘘と言うのはさすがに知っとるじゃろうが・・・

300年前のどこの誰なのか、さすがにヤツでも調べられんからな。」

 

「どこの誰かわかったら、アンタを信用できるの?

地位のある人とか?」

 

「ちゃうちゃう。

遊佐にとっては相手をどれだけ把握しているか、じゃ。

要するにあいつは人見知りでな。

知らん相手とは話したくないんじゃ。」

 

「じゃあ、自己紹介したら混ぜてくれるんじゃない。」

 

「自己申告で晴れるような不信なら苦労せんわ。

とはいえ・・・話の内容は予想できんこともない。

教えてやろか?」

 

「いらない。

もうすぐ神宮寺が来るから帰ってくれない?」

 

「ええ・・・お主冷たい・・・構って・・・」

 

少し経つと、ドアからノックが聞こえてきた。

 

「来たわね。

アンタ、どうするの?」

 

「悪名高い神宮寺一族の1人じゃろ?

ちぃと見てみたいわ。」

 

「変わり者だっていう話だけど、フォローしないからね。」

 

「貴様にフォローされるなんて世も末じゃわ・・・」

 

「鍵は開いてるわ。

入って。」

 

すると、誠が1人の女性と入ってきた。

 

「はぁ・・・なんで俺が案内役しなきゃならないのやら・・・」

 

女性は誠の前に出ると自己紹介しようとした。

 

「どうもー、JGJインダストリー私立グリモワール魔法学園たい・・・」

 

女性は天の方を見た。

 

「ぎゃああああーーーっ!」

 

女性は悲鳴をあげた。

天とアイラと誠は驚いた。

女性は天のところに駆け寄った。

 

「さ、作業用マニュピレータを背負ってる・・・

やばっ、なにこれっ・・・か、かわいいいっ・・・!」

 

「はぁっ!?

ちょ、ちょっと、いきなりなによ!

失礼じゃない!」

 

「あああ~、見た目よりずいぶん軽いのね、デザインもそれっぽいわぁ。

ここの曲線が美しい・・・対数螺旋をモチーフにしてるのね・・・フフフ・・・」

 

「わ、私のデウス・エクスに触らないで!」

 

「やだ、デウス・エクスなんて野暮ったい名前・・・ん?

デウス・エクス?」

 

女性は天から離れた。

 

「あなた・・・

あなたが如月 天ね?

人工的に魔法を使う方法を発見したって子・・・

元デク開発局の神宮寺 茉理。

あなたの研究にも協力するように言われてるわ。」

 

「な、なんのことよ。」

 

「フフフ、あなたは理論より行動派って聞いてる。

それも偶然なんでしょう?

私がそれに理論を与えてあげる。

人を選ばず魔法が使える夢の発明・・・

グリモアの中なら科研とJGJに境界はないわ。」

 

天は黙って茉理を見ていた。

 

「おいーっ!

妾をのけ者にするでないーっ!

つまらんじゃろが!」

 

「ん?

あなた、誰?」

 

「妾は真祖の吸血鬼、東雲 アイラなるぞ!

ちぃとでも機嫌を損ねてみぃ!

お主の血を根こそぎ吸い尽くしてやる・・・フフフ・・・!」

 

「悪いけど、私、そいうの興味なくて・・・」

 

「ふぎっ!

な、なんじゃと・・・!」

 

「まぁ、そうなるだろうな・・・」

 

誠はため息をついた。

 

「科学的素養のない人はお呼びじゃないの。

ねぇ天ちゃん・・・」

 

「ちゃん!?」

 

「ちょっとだけ、ちょっとだけだから中見せてくれない?

その機械・・・

ハァ、ハァ・・・い、いけない、我慢できないわ・・・」

 

「あ、あの・・・」

 

アイラは呆れていた。

 

「ちぇーっ。

こやつも変人ではないか・・・ん?

1729?

なんじゃお主、そのアクセ・・・ラマヌジャンが好きなのか?」

 

「ラマヌジャン様を呼び捨てにしないでっ!

えっ?

な、なんだ。

この数が何か分かったの?」

 

「ちょっとした雑学のようなもんじゃろ、それ。」

 

「ふうん・・・でもラマヌジャン様のことも知ってるのよね?」

 

「おうよ。

妾は数学は専門じゃないがな。

長い生のなかで様々な科学者と面識があるぞい。

そやつらと短い場合は数か月、長い場合は数年、共同研究を行っとるから・・・

科学的素養はあると思ってもらってよいぞ。

骨頂品の知識じゃがのう。」

 

「ラマヌジャン様は好き?」

 

「ん?」

 

「ラマヌジャン様は好き?」

 

「え?

あ、うーん・・・そ、そうじゃな。

嫌いじゃない。」

 

茉理はその言葉を聞くと笑みを見せた。

 

「ラマヌジャン様が好きな人に悪い人間はいないわ。

ヨロシクね!」

 

「し、知り合わん方がよかったかも・・・こいつなんかおかしい・・・」

 

「・・・疲れた、帰ろ。」

 

誠は研究室を後にした。

 

   ***

 

良介と心は進んでいたが、心は動揺していた。

 

「あ、あの・・・ほほ、本当にわたし、クエストを請けたんですよね・・・」

 

「ああ、そうだ。

どうかしたのか?」

 

「い、いえ!

心あたりがないというか・・・

うう・・・ほ、ほんとに請けてる・・・いつの間に・・・」

 

「俺がパートナーとして心を選んだからだよ。」

 

良介は咄嗟に嘘をついた。

 

「そ、そうですよね!

パートナーに選ばれたんですよね!

な、なんでこんな大事なことを忘れちゃうんでしょうね。

あはは・・・」

 

「なんでそんなに自信なさげなんだ?」

 

「だ、だってわたし、クエストで活躍したことなんかないし、魔物は怖いし・・・

落第にならない最低限のものだけ請けてるはずなのに・・・や、やっぱり無理・・・

それなのに無意識に・・・はっ!」

 

「どうした?」

 

「まま、まさかあなたと2人になりたいなんて思ってません!

そんな恐れ多い・・・」

 

「でも、仕方ないだろ?」

 

「は、はい。

請けてしまったからには仕方ありませんね。

ここ、こうなれば玉砕も辞さず、わたしがあなたを守ります!

もしもの時、骨は拾ってくださいね・・・と、突撃ぃ!」

 

「あ、おい!」

 

心は魔物に突撃していった。

 

「まったく・・・しょうがねえな!」

 

良介は風の肉体強化で心と魔物の間に入ると、魔物を蹴り飛ばした。

そして、すぐに剣に水の魔法をかけると、水の斬撃を連続で放った。

魔物に全ての斬撃が当たると消滅した。

 

「怪我はないか。」

 

「あ、ありがとうございます~・・・わたしなんかのために・・・」

 

「当然のことをしたまでだ。

次に行こう。」

 

良介と心は先に進んでいった。


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