グリモワール魔法学園【七属性の魔法使い】   作:ゆっけめがね

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※この作品の主人公は原作アプリの転校生ではありません。
 閲覧者様のイメージを壊す可能性があります。
 それでもOKという方は、よろしくお願いします。


第60話 イメージアップガールズ

ある日、競技場のある運動公園。

葵が走ってやってきた。

 

「はあぁ~、いいお天気!

す~、は~・・・いい気持ちです!

新緑が鮮やかで、ウキウキしてしまいますね!

今日は頑張りましょうね♪」

 

葵を追いかけて萌木と誠がやってきた。

 

「ハァ、ハァ・・・冷泉さん、待っ・・・あ、足はや、い・・・!」

 

「まったく、元気だなぁ・・・」

 

「霧塚さん、疲れるのはまだ早いですよ。

これから運動場なのですから!」

 

遅れて風子と良介がやってきた。

 

「ずいぶん楽しそーですね。

ウチらが運動するわけじゃねーですからねー?

けど忙しーんで覚悟しといてくださいよ。

お客さん多いみたいですから。

救護室にも人員振り分けますからね。

そんなにないとは思いますが・・・

もし大きなケガの場合は桃世に回復魔法の許可を出してますんで。

そん時は良介さん、おねげーしますよ。」

 

「わかった。

その時は任せてくれ。

で、今日は大きな試合があるんだっけ?」

 

「そそ、名門大学のね。

テレビやマスコミもちょこちょこいますよ。

とゆーわけで、わかっていますね?

我々魔法使いがすること。」

 

「ああ、社会貢献として施設の警備や案内をし、自らの立場を学ぶ。

そういったことで、魔法使いのイメージ向上をはかる・・・だな?」

 

「さすがですねりょーすけさん。

で、取材頼まれたらちゃんと対応すんですよ?」

 

すると、萌木は暗い表情になった。

 

「うっ・・・やっぱりあるんですかねぇ・・・断っちゃだめですかねぇ・・・

わたし、知らない人とお話するの苦手で・・・」

 

「だからやるんですよ。

苦手だからは言い訳になりません。

コミュニケーション能力は鍛えるもんです。

霧塚、頑張りましょ。」

 

「あ、あうぅ・・・でもわたし、ただでさえ声も小さくて・・・あがり症で・・・

人前で・・・あんなこと、できるんでしょうか・・・」

 

「いっぺんやっちゃえばどーってことねーですって。

女は度胸です。」

 

「もう今から心臓が破裂しそうです・・・」

 

と、葵も風子に話しかけてきた。

 

「あの、わたくしもなにかおかしなことを言うかもしれないので!

霧塚さんが一緒にいて下さると心強いです。

がんばりましょう!」

 

「そですね。

なるべくおかしなことは言わないよーに。

間宮 千佳と桃世 ももが先に着いてるはずです。

合流したら仕事内容を訊くこと。

やるからには徹底的にイメージアップしよーじゃないですか。

グリモアが問題児収容施設でないこと、世に知らしめてやります。」

 

「そんな風に思われてんのか、学園は・・・」

 

良介は呆れた。

 

「水無月さん、いつも眠そうでいらっしゃるのに、気合いが入っていますね!

わたくしも尽力いたします!

皆で一緒に知らしめましょう♪」

 

「ほ、ほんとにだいじょぶかな・・・?」

 

萌木は不安そうな顔をした。

 

「もう不安しかねえわ、俺・・・」

 

誠は苦笑いをしていた。

 

   ***

 

競技場内、千佳と葵がいた。

 

「あっちー・・・もう夏じゃん、この暑さ。」

 

「間宮さん!

脱水症状をおこしてはいけません。

すぽーつどりんくを!」

 

葵はスポーツドリンクを渡そうとした。

 

「千佳でいいって。

てか、うちより競技場のお客さん見てないと。」

 

「あっ、す、すみません間宮さん!

わたくしったら・・・」

 

「だから千佳でいいって・・・

で、あのさ。

あそこでテニスしてるイケメン見える?」

 

「イケメン・・・イケてるメンズですね?

どちらのメンズでしょう?」

 

「手前側のコートの、今こっちむいてる人いんじゃん。

あれ完全にバテてない?

助けてあげたら恋のチャンスだと思うんだけど。」

 

「あのメンズがバテていらっしゃるのですね!

早速行ってまいります!」

 

「ちょ、ちょっと待ってよっ!

うちが声かけようと思ってんだから!」

 

「はっ・・・申し訳ありません、わたくしったら出すぎた真似を!

では、あのイケてるメンズを間宮さんが介抱している間・・・

わたくしはさらに、間宮さんにすぽーつどりんくを・・・?」

 

「だーから、うちのことはいいんだってば!

あんたは観客案内っ!」

 

2人の会話を良介と風子が見ていた。

 

「なにをじゃれあっているんですか、あそこは・・・」

 

「知らん。

で、千佳は放っておいていいのか?」

 

「間宮はほっといても失敗するんで大丈夫でしょ。

良介さんはナンパしちゃだめですよ。

健全におねげーしますね。」

 

「それは嫌でもわかって・・・おい、風子。」

 

良介は風子の後ろを指差した。

 

「こっちはこっちで・・・あ、はいどーぞ、臨時救護テントはあちらです。」

 

「うん?

足を痛めた?

よかったら俺の肩を使ってください。

風子、そっち支えてくれ。」

 

「りょーかいです・・・うっし。」

 

「歩けますか?

ゆっくりでいいですからね。」

 

良介と風子は救護テントの方へ向かった。

 

「おいおい、ずいぶん列があるな。」

 

テントの前の行列を見て驚いた。

 

「今日は暑いですからねぇ。

熱中症が朝から何人も・・・」

 

「だとしても、こんなにいるか?」

 

「確かに。

テントから人が溢れてるじゃねーですか。」

 

「仕方ねえ、すいません。

とりあえず冷やす物持ってきますね。」

 

良介と風子は救護テント中に入った。

 

   ***

 

テント内、ももは困惑していた。

 

「うわ!

また熱中症?

手が足りなすぎるよ~!

回復魔法とかそんなに使わないってきいたんだけど・・・

あたしじゃ役不足かも・・・椎名先輩いたほうがよかったかな・・・」

 

もものところに良介と風子がやってきた。

 

「桃世。

なんか急病人多くねーですか?」

 

「あっ、良介先輩に水無月さん。

やっぱ多いよね?

暑いからかなぁ。

怪我人も多いんだよー。

頭がクラクラしちゃうのかな。」

 

「だとしてもいくらなんでも・・・」

 

今度は千佳と葵がやってきた。

 

「桃世さん!

この方がグッタリしていらっしゃって。」

 

「あああ、ごめんなさい、ちょっと待ってて・・・みんな並んでるから順番に!」

 

「もぉ~はやく助けてあげてよっ!

苦しそうじゃん!」

 

「無茶言うな。

見たところ脱水症状みたいだが・・・」

 

さらに萌木までやってきた。

 

「熱中症には経口補水液が効きますよ!

作り方は水1リットルにお塩を・・・」

 

「霧塚。

アンタさん案内係でしょ、なにやってんですか。

早く持ち場に戻る。」

 

「ふぁ、ひゃい・・・」

 

「あの、あのっ!

けーこーほすいえきとはなんでしょう!?」

 

「冷泉も競技場に戻る。」

 

「は・・・はい・・・」

 

「吸収しやすいお水のことです。

自分でも作れますよ。」

 

「まあ!

本当ですか?

わたくし世間知らずなもので、教えてくださいまし!

それをみなさんに飲ませればよろしいのでしょうかっ!」

 

黙って聞いていた良介が口を開いた。

 

「あのよ、こっちのことはこっちがなんとかするから・・・持ち場に戻れぇっ!!」

 

良介の怒号が響いた。

 

「ははは、はいぃっ!」

 

「なんとっ!

そのお水はお薬なのですか!?」

 

「冷泉さん!」

 

萌木は葵の腕を引っ張っていった。

 

「千佳、お前も競技場に戻れ。」

 

「やだ。

ここにいる。

イケメンの目が覚めて【君が助けてくれたのか】ってなるかもだし・・・」

 

「てめぇ・・・いいかげんにしろや、ゴルァ・・・!」

 

良介は指をバキバキ鳴らしながら千佳を睨みつけた。

 

「りょーすけさん、どーどー、落ち着いてくだせー。」

 

「わ、わかったよぉ・・・行きゃいいんでしょ・・・」

 

千佳は早々にテントから離れた。

 

   ***

 

少し経って、葵は犬を追いかけていた。

 

「お待ちください!

犬さん、盗んだものをお返しください!」

 

「もーいいじゃん、ほっときなって!

どうせペットボトルでしょ!?」

 

千佳が呼び止めた。

 

「でも、こんなに暑い中、飲み物がないと倒れてしまいますっ!」

 

「あの犬、足速すぎるよ・・・捕まえるのムリくない?」

 

「むーっ・・・これで何度目でしょうか。

次来たらとっちめます!」

 

「とっちめ・・・」

 

「ひ、ひいぃぃぃ~!

助けてください~!」

 

萌木が悲鳴をあげながらやってきた。

 

「あぁ、だめだめっ、や、ぶけ、あぁっ・・・!」

 

萌木は盛大にこけた。

 

「あっちも犬にやられてる・・・」

 

「霧塚さん、大丈夫ですか!?

ここにもいけない犬さんが!

こら、犬さん!

めっ、ですよー!」

 

葵は犬を追いかけていった。

 

「うぅ。

足を噛まれました・・・犬も追い払えないなんて警備員失格です・・・」

 

「犬ってすぐ本気出してくるよねー。

なんなのって感じ。

うわー、ストッキングうしろビリビリじゃん。

ムカつくねー。

血とか出てない?

へーき?」

 

「はい、少し痕ができただけで・・・びっくりしましたけど・・・」

 

「てか、あれホントに犬?

なんかキモイよ?」

 

「それなんですけど・・・わたしもなんかおかしいなって。」

 

「間宮さん!

間宮さ~ん!」

 

葵が帰ってきた。

 

「あれ?

犬はどしたの?」

 

「あちらに倒れてらっしゃる方が・・・お助けしないと!」

 

「え、また?

もおぉ~、忙しすぎない!?」

 

そこに良介と風子がやってきた。

 

「こらっ!

アンタらなにやってるんです!

売店の列が伸びてますんで整備してください!」

 

「ぜんっぜんイケメンアスリートと話す暇ないんだけど~!」

 

千佳は列の方へ向かっていった。

 

「犬ねえ。

デバイスが反応するってことは、そういうことなんでしょーけど・・・」

 

「人も多いから、騒ぎにならないように対処しないとな。」

 

   ***

 

千佳は怒っていた。

 

「やっぱ魔物だったんじゃん!

おかしいと思ったんだよー!」

 

「あわわわ・・・すみません、わたしがもっと早く気付いていれば・・・」

 

「アレは見分けるの難しーんで、しゃーないですね・・・」

 

「気づくのが遅れたのは俺たちも反省点だ。

気をつけなきゃな。」

 

「いきなり向かってきたから何かなと思ったよ。」

 

誠はため息をついた。

ちなみに倒したのは誠である。

 

「しかしおかしいですね。

魔物があれだけはっきりと犬の姿取るには・・・

タイコンデロガ級の強さが必要なはずなんですけどねー。」

 

「だよな。

やっぱり気になるな。」

 

良介は顎に手をやった。

 

「弱い魔物は出来損ない。

強くなるに連れ完成に近づいてゆく・・・それが原則。

なのにあの魔物、子犬っぽさはかなりのレベルでしたよ。

弱かったのに。」

 

「まるで他の力を犠牲にして、犬の姿を取ろうとしたように見えるな。」

 

「魔物にそんな知性があると仮定してもおかしい話ですよ。

弱い子犬の姿をとって、アスリートたちをケガさせる・・・

それって、魔物にとってどんなメリットがあるんですかねー?」

 

「ねえねえ、うち、そろそろ、行っていい?

あの人むっちゃカッコいいから、ちょっと声かけてくる。」

 

「千佳は当事者意識を持てよ・・・」

 

良介は呆れた。

 

「ま、データは持ち帰って分析してもらいましょ。

今はそれより・・・」

 

「みなさーん、もうすぐパフォーマンスの時間ですよー!」

 

「ポンポン、ばっちり用意してきましたからね!」

 

葵とももがやってきた。

 

「おっ、いいじゃん、かわいー!」

 

「ありがとーごぜーます。

さすが購買部、備品の手配も確実。」

 

「うぅぅ・・・ほんとにやるんですか・・・?

チアガール・・・」

 

「やりますよ。

ここで魔法少女の魅力をアピールしないと。

社会奉仕、魔物退治、チアガール・・・好印象間違いなしです。」

 

「そ、そうかもですけど・・・なんだか手足震えてきましたぁ・・・」

 

「大丈夫!

毎日練習したんだし、自信持って踊っちゃいましょー♪」

 

「霧塚さん、お気持ちはとてもよくわかります。

わたくしも短すぎるとは・・・

いざとなったらポンポンで隠しますので、どうぞ思いっきり!」

 

「や、スカートの長さとかじゃなくて・・・あの・・・!」

 

「よーし、そんじゃ着替え終わったら準備運動しましょー。

これも社会奉仕のうちです。

やるからにゃー、全力でいきますよ!」

 

「それじゃ、俺たちは違うところで見てるから。

頑張れよ。」

 

「ええ、わかりました。

見ててくださいね、りょーすけさん。」

 

風子は良介に笑みを見せた。

 

「(相変わらずイチャイチャして・・・)」

 

誠は呆れ笑いをした。

 

「(風紀委員長と良介、結構仲良いみたいだけど・・・もしかして・・・まさか、ね。)」

 

千佳は2人の関係を疑いながら更衣室に向かった。


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