グリモワール魔法学園【七属性の魔法使い】   作:ゆっけめがね

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※この作品の主人公は原作アプリの転校生ではありません。
 閲覧者様のイメージを壊す可能性があります。
 それでもOKという方は、よろしくお願いします。


第59話 相違点

鳴子は他にも飛ばされた者がいたことを思い出した。

 

「いたいた。

僕としたことが・・・他に飛ばされた人がいてもおかしくなかったのに。」

 

「ちょっと・・・て、俺も言われるまで忘れてたから人のこと言えないな。」

 

良介は頭を掻いて苦笑いをした。

 

「もっと注意力と観察眼を磨かないとね!」

 

過去の鳴子は鳴子の方を向いて言ってきた。

 

「言うね。

さすが僕だ。」

 

鳴子は感心した。

つかさは過去のつかさと話をしていた。

 

「兄は心配するな。

お前が1人でいることの方が危険だ。」

 

「知らない人についていっちゃダメって・・・

でも、お姉ちゃんといると、なんだかなつかしい気持ちです。」

 

「錯覚だ。

すぐにお前も忘れるだろう。」

 

その後、良介たちは他の生徒のいる場所に向かった。

 

「おっ、ゆかりさん、来たぞ。」

 

誠がゆかりに伝えるとゆかりはやってきた良介たちに気付いた。

 

「あっ!

り、良介君!

遊佐さん、生天目さん!」

 

「椎名君。

怪我はなさそうだけど・・・大丈夫かい?」

 

「え、あ、うん・・・」

 

ゆかりは困ったような表情で返事した。

 

「わぁ、他にも仲間がいたんだね!」

 

そう言ってきた過去の鳴子の方をゆかりは向いた。

 

「あの・・・この子、もしかして・・・」

 

「察してくれ。

まあ、あまり影響はないと思う。」

 

すると、鳴子はゆかりの後ろにいる子供に気付いた。

 

「その子は・・・?」

 

「ええと・・・その・・・」

 

「おいおい・・・まさか・・・」

 

良介は呆れたような表情をした。

と、後ろからエレンが子供を連れてやってきた。

 

「椎名。

どうやらここは風飛のようだ。

信じがたいが・・・私たちはどうやら過去にいるぞ。」

 

   ***

 

子供になっている卯衣が過去のエレンを見ていた。

過去のエレンは卯衣に気づくと話しかけた。

 

「こんにちは。」

 

「エレン・アメディックさん?」

 

「はい、なぜ私のことを?」

 

「既存の情報から推測しただけよ・・・」

 

卯衣はエレンの方を向き、話しかけた。

 

「アメディックさん。

あなたは風飛にすんでいたの?」

 

「いや・・・軍に入るまでは日本に来たことは・・・

いや、ある。

風飛かどうかは覚えていないが・・・

1度だけ、両親に連れられて日本に来たことがあった。

今の今まで忘れていた・・・では、今はそのときか?」

 

卯衣はそれを聞くと、過去のエレンの方を向いた。

 

「アメディックさん。

あなたは外国人のようだけど、旅行で来ているの?」

 

「はい。

両親と。

ですが詳しいことはいえません。

あの方がお母様に似ていたので間違えてついてきてしまいましたが・・・」

 

「いいえ、大丈夫よ。

それだけ確認できれば。」

 

「(ふーん、エレンは母親似なのか・・・)」

 

誠は話を横から聞いていた。

卯衣は再びエレンの方を向いた。

 

「興味深い偶然ね。

風飛出身の遊佐さん、椎名さんはともかく・・・

生天目さん、そして国外にいるはずのあなたが風飛にいた【今】。

そこにちょうど、あなたたちが移動してきた。」

 

「なにかあるというのか?」

 

エレンは質問した。

 

「なにかなかった?」

 

卯衣は聞き返した。

 

「しかしここは裏世界だ。

私の記憶など・・・」

 

「だから確かめるの。

グリモアがあって、魔物がいて、魔法使いがいる。

裏世界は表とどこが同じで、どこが違うのか。

それを確かめる必要がある。」

 

「待ってくれ。

もう12年も昔のことだ。

思い出すのに時間がかかる。

なにか違和感があるのは確かだが・・・」

 

エレンは顎に手をやり思い出そうとした。

 

   ***

 

過去のゆかりはゆかりと話していた。

 

「お姉ちゃん、お姉ちゃん!」

 

「はいはい、なにかな~。

(自分にお姉ちゃんって言われるの、思ったより複雑ね・・・)」

 

「あっちの方だよ!

さっきも言ったでしょ!」

 

過去のゆかりは向こうを指差しながら言った。

 

「あ・・・そうだった。

忘れてたわ。」

 

「椎名さん。」

 

卯衣がゆかりに話しかけてきた。

 

「あ、卯衣ちゃ・・・え?

う、卯衣ちゃん?」

 

ゆかりは小さくなった卯衣を見て困惑していた。

 

「事情は後で説明するわ。

デバイスで言っていたことの詳細を教えて。」

 

「ええと・・・」

 

ゆかりが話そうとすると、過去のゆかりが話を遮った。

 

「急いで、急いでったら!

はやくしないと・・・」

 

ゆかりはそっちの方を向いた後、再び卯衣の方を向いた。

 

「すっかり忘れてたんだけど・・・今日って、街中に魔物が出る日なのよ・・・」

 

「今日というのは、ここの今日のことかしら。」

 

「そう。

当時、街のはずれにボロ屋敷があってね。

そこが急に崩れて、子供たちが巻き込まれそうになったの。

後の痕跡から、魔物が出現したのは間違いなさそうなんだけど・・・

なんでか、その屋敷以外は被害が出ないまま消えちゃったのよね・・・」

 

「知っていたわけではないのよね。」

 

すると、卯衣は過去のゆかりに話しかけた。

 

「椎名さん。」

 

「あなた、だあれ?」

 

「お友達はもう町はずれの屋敷に行ってるの?」

 

「そうだよ!

先生が危ないって言ってるのに・・・」

 

「あなたはお友達を止めに行こうとしてるの?」

 

「うん。

だってゆかり、みんなのお姉さんだもん!」

 

と、過去のつかさがやってきて、過去のゆかりに話しかけてきた。

 

「あ、あの・・・お兄ちゃん、知りませんか?」

 

「お兄ちゃん?」

 

卯衣はゆかりの方を向いた。

 

「その事件で、誰か死者は出た?」

 

「いいえ、子供たちは魔法学園の学園生に止められて、無事。

おそらく魔物もその学園生が倒したんだろうけど、学園外の魔法使用・・・

校則違反で処罰されるはずが、その学園生が誰なのかわからなかったのよね。」

 

少しゆかりは沈黙したあと、何かに気付いた。

 

「ま、まさか・・・」

 

「そうかもしれないわ。

行ってみましょう。」

 

卯衣は屋敷の方へ歩き始めた。

 

   ***

 

卯衣はつかさと話していた。

 

「そうか、【今日】はあの日か・・・魔物がいるなら私が行く。

よもや行くなと言うまいな。

話を聞いていたが・・・

その【謎の学園生】が誰かを確認するのだろう。」

 

「相変わらずだなぁ・・・」

 

良介はため息をついた。

 

「ええ、椎名さんとあなたの様子を見る限り・・・

表と裏で、同じ日に同じ事件が起きている。

なにか違う点がないか思い出して。」

 

つかさの隣にいたゆかりが困っていた。

 

「そ、そんなこと言ったって・・・すごく昔のことだし・・・

とにかく行きましょう!

 

良介たちは屋敷の方へ向かった。

屋敷の近くに着くと、良介は子供たちがついて来ているのに気付いた。

 

「おいおい、お前ら・・・」

 

良介が注意しようとすると、つかさが先に子供たちに注意した。

 

「お前たちは来るな。

魔物が出る。

闘争の邪魔だ。」

 

「大丈夫だよ、見てるだけ!」

 

「後学のために、魔法使いの戦いを見せてください。」

 

「先に行っちゃったみんなを連れ戻さないと・・・!」

 

「つ、つかさ、お姉ちゃんの側がいいです・・・」

 

つかさは呆れたような表情をすると、良介の方を向いた。

 

「良介。

任せるぞ。」

 

「え?」

 

良介は驚いていた。

 

「子供たちを邪魔にならないようにしていろ。」

 

「・・・マジかよ。」

 

良介はため息をついた。

その頃、エレンと鳴子は話をしていた。

 

「ああ、だんだんと思い出してきた。」

 

「僕もだよ。

確かに赤毛の女の子とあった気がする。

僕はさっきからびっくりしっぱなしだよ。」

 

「お前が驚くとはよほどのことだろうな。」

 

「いやいや、君、なにも感じないのか?」

 

エレンは不思議そうな顔をしていた。

 

「まあ、最近の激務で疲れているんだと解釈しておくよ。」

 

すると、鳴子は誠の方を向いた。

 

「誠君、君は気づいているだろ?」

 

「ああ、すぐに気づいた。」

 

「じゃあ、説明してあげてくれ。」

 

「俺がするんですか・・・」

 

誠は面倒くさそうに説明し始めた。

 

「エレン、あんたはドイツ生まれの軍人。

生粋のゲルマン民族だよな?」

 

「それがどうした?」

 

「あんた、魔法使いに覚醒した後に日本語を覚えたんじゃないのか?」

 

エレンは少し考えた後、驚いた。

 

「な、なんだと・・・!

12年前の私が、に、日本語を話している・・・?」

 

「よかった。

僕の持っている情報が不正確だったら自信喪失するところだった。」

 

鳴子は安堵した。

 

「表とは違うみたいだな。」

 

誠は険しい表情をしていた。

 

   ***

 

エレンは過去のエレンと話していた。

 

「雨が降りそうですね。

傘、どうしよう。」

 

「1つ聞いていいか。

嫌なら答えなくてもいいが・・・日本語はいつ覚えた?」

 

「父が日本の方と知り合いでしたので、その方に。

日本に来るたびに教えていただいて、すっかり上達しました。

なにか?」

 

過去のエレンは不思議そうな顔をした。

そうしていると、屋敷に着いた。

 

「あれか・・・街のはずれで人通りが少ないな。

国軍も警察もすぐには来ないだろう。

私が始末してくる。」

 

「気をつけてくれよ。

犠牲者を出すと後味が悪い。

あの辺りにいる子供は椎名君と僕が保護する。

それまで全力は出さないでくれ。」

 

「私はそれほど器用にできていない。

急げ。」

 

「よし。

小さい僕たちは良介君と誠君と立華君にまかせよう。

立華君が半分だから、念のためアメディック君に守ってもらう。

いいね?」

 

「闘争の邪魔をしなければなんでもいい。」

 

つかさは屋敷に入ろうとした瞬間、立ち止まった。

 

「ああ、いたな。」

 

「なにがだい?」

 

鳴子は不思議そうな顔をした。

 

「乱暴そうな女が、魔物を倒したのを・・・見たことを思い出した。

あの女は私か。」

 

「フフフ、どうかな。

今起きていることが、君の過去にあったとは限らない。

なにせここは裏世界だ。

表とは違う。」

 

鳴子は楽しそうに笑った。

 

「本当に違うのか?

ここは【過去】ではないのか?

ならば私が見た【乱暴そうな女】は誰だ?

どうでもいいことか。

魔物がいるなら、私が潰すだけだ。

屋敷への配慮はせん。

怪我をしたくなければ、迅速に動け。」

 

つかさは屋敷へと入っていった。

 

「やれやれ・・・扱いに苦労するね。」

 

鳴子は苦笑した。

子供たちは不安そうにしていた。

 

「みんな大丈夫かな・・・ねえ、あの人たち、強い?」

 

「あそこに魔物がいるのですか?」

 

「まだわからないな。

でも本当に出るなら・・・本当の未来人だ。」

 

「お姉ちゃん・・・大丈夫かな・・・」

 

「お兄ちゃん、みんな死んじゃったりしないよね?

ケガもしないよね?」

 

過去のゆかりは良介に話しかけてきた。

 

「大丈夫だよ。」

 

良介は優しく笑みを見せた。

と、突然爆発音が鳴った。

 

「ひっ!」

 

「・・・っ!」

 

「ま、魔法だっ・・・!」

 

「あ、あ・・・あっ!

みんないた!」

 

過去のゆかりが屋敷の方へと走り出した。

 

「あっ!

い、いけません!

止めてください!」

 

「チッ!

誠、子供たち頼んだぞ!」

 

「おうよ、任せとけ。」

 

良介は過去のゆかりを追いかけた。

 

   ***

 

子供たちは魔法を見て驚いていた。

 

「ほ、本物の魔法使い・・・」

 

「すっごい!

僕、魔法を生で見たの初めてだよ!

でもお姉さんの魔法、どっかんって出るんじゃないんだね。」

 

つかさが子供たちのところにやってきた。

 

「私たちは帰る。

お前たちも戻るがいい。

そろそろ兄や両親が現れるころだ。

面倒になる前に消える。」

 

「お姉さん、お兄ちゃんが来ることを知ってるんですか?」

 

過去のつかさは不思議そうな顔をした。

 

「ああ。

理由は聞くな。」

 

「ありがとうございました。」

 

「じゃあね、お姉さん!」

 

その頃、良介は過去のゆかりを抱えていた。

 

「あ、危ねぇ・・・危機一髪だった・・・」

 

過去のゆかりを下ろすと、ゆかりがやってきた。

 

「り、良介君。

私、ケガなかったよね?

もし大けがしちゃってたら、私消えちゃうかも・・・?

あ、でも裏と表は違う歴史なんだよね・・・で、でもよかった・・・

自分になんともないとしても、自分がケガするのは嫌だもんね。」

 

「みんなのお手当しなきゃ!」

 

「あ、あらあら・・・私って全然変わってないのね・・・複雑・・・

もう少し、時間はあるわよね?」

 

「ええ、もう少しだけあると思いますよ。」

 

良介はため息をつきながら答えた。

その頃、鳴子は安堵していた。

 

「ふぅ・・・やれやれ、僕たちのことをなにも喋らなければいいけど。

いくら制服のデザインが違うとはいえ、こちらの魔法学園生が迷惑するよ。」

 

「大丈夫だと思う。

あなたたちは歴史の通りに動いただけ。

裏世界はある程度・・・というより、ほとんど表と同じ歴史をたどっている。

それが確認できればいい・・・でも、論理的でない点がある。」

 

「ん?」

 

鳴子は卯衣の発言に不思議そうな顔をした。

 

「ここは裏世界。

表からあなたたちが来て、彼女たちを助けた。

では表世界の当時、あなたたちを助けたのは誰?

あなたたちが18歳の時、裏世界は・・・すでに崩壊しているというのに。」

 

「宍戸君たちは、なかなか苦労しているようだね。」

 

「あなたは裏世界の人間と連絡を取っているという。

なにもかも知っているのではない?」

 

「いいや。

期待されるほど知ってるわけじゃない。

でも・・・そうだな。

戻ったら宍戸君に情報を共有しようか。

週明け位に研究所に行く、と伝えておいてくれ。」

 

「わかったわ。」

 

「ただし1つ条件がある。

僕と、宍戸君と、会長の3人だけだ。

他の人間には絶対に聞かせない。」

 

「東雲さんや朱鷺坂さんも?」

 

「ああ、もちろん。

僕は東雲君や朱鷺坂君も信用してないんだ。」

 

鳴子は不敵な笑みを浮かべた。

 

「わかったわ。

けれど1つ、質問していいかしら。

なぜ情報共有する気になったの?

これまで隠してきたのでしょう?」

 

「事情が変わった。

これ以上、事態がややこしくなると面倒だ。

裏世界について、確証が得られるまでは誰にも話すつもりはなかったけど・・・

宍戸君には【まき戻り】の件に集中してもらいたい。」

 

過去のエレンはエレンと話していた。

 

「申し訳ありません。

エレンのせいで・・・

あの、お詫びと言ってはなんですが、両親に会っていただけませんか?」

 

「いや、もう時間がない。

次の機会にしよう。」

 

「また会えますか?

親戚の方にお礼をしないままなのは辛いです。」

 

「縁があればな。

そのときは、私ももっと落ち着いているだろう。」

 

「よろしくお願いしますね。」

 

「ああ。」

 

卯衣はエレンのところにやってきた。

 

「あなた以外は、ほとんど記憶との相違点は見られなかったわ。

私の中にあるあなたのデータとも違っている。

これをもとに、先を進むかもしれない。」

 

「ああ・・・」

 

「もうすぐ時間よ。

移動しましょう。」

 

卯衣がその場を離れると、今度は鳴子がやってきた。

 

「アメディック君。」

 

「遊佐・・・お前は、このことに関して答えを持っているか?」

 

「いいや。

確たる根拠は持っていない。

いくつか予想していることはあるけどね。」

 

「予想でもいい。

なにか示唆してくれ。

私にはわからん。」

 

鳴子は少し黙った後、口を開いた。

 

「ここは、僕たちの歴史とは違う。

あのエレン・アメディックが成長しても君になるわけじゃない。

ここと僕たちの世界は【繋がっていない】。

それだけは確かなことだ。」

 

エレンは黙って聞いていた。

 

「君が当事者だとわかった今、招待しないわけにはいかないな。

今度宍戸君の研究室に来るといい。

僕の知っている【世界の仕組み】を話そう。」

 

良介は誠と話していた。

 

「さて、ここは別世界の過去・・・てことでいいんだな?」

 

「鳴子さんが言うにはそうらしい。」

 

誠は頭を掻きながら話した。

 

「けど、どうやってそんな確証が・・・?」

 

「エレンの過去が一致しなかったからだ。」

 

「エレンの過去が・・・?」

 

「ああ、エレンは覚醒してから日本語を覚えた。

だが、こっちのエレンは既に日本語を覚えている。」

 

「そういえば・・・そうだな。」

 

「だから、ここは俺たちの世界の過去じゃないってわかったんだ。」

 

良介は顎に手をやり考え始めた。

 

「じゃあこの世界は・・・あの裏世界に繋がっているのか?」

 

「さあ、それはわからん。

ともかくだ、もうすぐ時間だ。」

 

「・・・わかった。

行こうか。」

 

良介たちは卯衣が指定した場所へ向かった。


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