グリモワール魔法学園【七属性の魔法使い】   作:ゆっけめがね

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※この作品の主人公は原作アプリの転校生ではありません。
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 それでもOKという方は、よろしくお願いします。



第57話 ネクストステージ

報道部部室の近くの廊下。

誠が一人で歩いていた。

 

「(さて、どうしたものか。

良介とは2人で原因を探すって言ったが、正直なんの手がかりもない状態だ。

こういう場合はあの人に頼るしか・・・でもなんて言えばいいんだろう・・・)」

 

誠は部室のドアの前で立ち止まり考え始めた。

と、部室内から話し声が聞こえてきた。

 

「ん?

誰と誰が話してるんだ?」

 

誠は聞き耳をたてた。

 

「神凪君。

風紀委員がここに来るとは珍しい。

特に君が来るなんて、よほどのことが・・・あったみたいだね?」

 

「調査の仕方に相談させてほしい。

私の友人が狼少年にならないよう。」

 

「狼少年?」

 

中では怜と鳴子が話をしていた。

 

「(怜と鳴子さんが話してるって珍しいな。

一体なんの話をしてるんだ?)」

 

誠はそのまま話に聞き耳をたてた。

 

「彼女の言葉をウソと断じるのは簡単だが、それでは・・・あまりにも薄情で。」

 

「なるほど。

その子が言っていることが嘘なのか、本当なのか調べたいのか。

調べる必要はあるのかい?」

 

「どういうことだ?」

 

「調べれば真実が姿を現す。

その結果、その子が嘘を言っていた・・・

もしくは勘違いだった・・・となると、その子に恥をかかせて終わる。

盲目的に信じてやるのも親切だと思うよ。」

 

怜は黙って鳴子の方を見た。

 

「それでも調べるというなら、力になれるかもしれない。」

 

「助言をもらえればいい。

気を悪くしないでほしいが・・・報道部と風紀委員だ。」

 

「協力するのも・・・難しいものだね。

じゃあベストじゃないけど、なんにでも使える調査方法だ。

関わってる人を調べるんだよ。」

 

「関わっている・・・人間?」

 

「ああ。

およそどんなことであれ、最低1人は人間が関与している。

その関係者を1人1人調べて行けば、いずれ何らかの事実にたどり着く。

それを正しく解釈すれば、答えが出る。

単純だろ?」

 

「人か・・・」

 

「まあ、その正しく解釈っていうのが意外と難しいんだけどね。

カエサル曰く、多くの人は見たい現実しか見ない。

気をつけてくれ。」

 

「ありがとう。

いくつか指針はできた。

1つだけ質問をしていいだろうか。」

 

「なんでもどうぞ。

僕に不都合がない範囲でなんでも答えるよ。」

 

怜は真剣な顔で鳴子の方を見た。

 

「遊佐 鳴子。」

 

怜が次の言葉を出そうとした瞬間、ドアが開き誠が出てきて言った。

 

「あんたは3月で卒業したはずじゃないのか?」

 

「ま、誠!?

何故それを・・・!」

 

怜は驚きながら誠の方を見た。

鳴子は真顔で誠と怜の方を見た。

 

「それは・・・とても興味深い質問だね・・・君たちの言う友人とは誰のことだい?」

 

鳴子は笑みを浮かべた。

 

   ***

 

洞窟内、良介と初音がいた。

 

「うーん・・・なんか、期待はずれな威力。

これならアタシが魔法使った方がまだマシだぜ?

つっても、たいてい魔法の方が兵器より強いからなぁ。」

 

「そうだとしてもあれだけの威力が出たんだから充分じゃないのか?」

 

「そうだな。

一発であれだけひるんだんだから上出来かな。」

 

良介はそれを聞いて進もうとすると初音は進みながら話しかけてきた。

 

「魔法使いってさ、強いんだよ。

実感あるか知らないけど。

覚醒した瞬間から筋力が強化されるし、兵器を携行する必要がないし・・・

しかも、銃弾とかと違って、攻撃リソースが回復するだろ?

オマケに魔物に対して一番効率がいい武器が魔法だ。

な、できすぎだろ?」

 

「確かに出来過ぎだな。」

 

「入学したときにエロウサギが言ってたこと、よーく覚えてるよ。

魔法使いが魔物と戦うのは運命だってさ。

一番それを実感してんの、たぶんアタシだぜ?

ウチの兵器って質が結構高いんだけどさ・・・

それが魔物に対しては、たったこれっぽっちなんだもんなぁ。」

 

「確かにな・・・さて。」

 

良介は正面を向いた。

その先には魔物がいた。

 

「またそのジンライってやつで威力試すのか?」

 

良介は初音に聞いてみた。

 

「いや、今度はあんたの魔法の威力を見てみようと思ってさ。」

 

「俺の魔法か。

わかった、そこで見ていてくれ。」

 

「おう、わかった!」

 

初音は少し下がった。

良介は前に出ると、手を正面に出した。

すると、青い魔法陣が出てきた。

 

「水魔法・・・行け!」

 

魔法陣から大量の水弾が放たれ、魔物は撃ち抜かれ、消滅した。

 

「おー、凄え!

やるなぁ!」

 

「そうか?

とりあえず、次の魔物のところに行くか。」

 

良介と初音は次の魔物のところに向かった。

 

   ***

 

良介と初音は進みながら話をしていた。

 

「デクっていう、いわゆるパワードスーツなんだけどさ。

最近になってやっとマシになったんだけど、最初はそりゃヒデーものでさ。

【歩く棺桶】とか言われてたんだぜ?

乗り込むヤツは遺書とか書いてて。」

 

「そんなに酷かったのか?」

 

「関節部の故障頻度がヤバかったんだ。

魔物を前に一歩も動けなくなる・・・

そんな欠陥品を売りつけてたんだから、鬼畜だよなー。」

 

「確かに、そりゃ酷い話だな。」

 

「それでも、ないよりマシだったから売れたんだけどな。

フツーの人間がさ、あんま効かない武器を持って魔物と戦ってんだぜ?

魔法使いが頑張らなきゃいけねーよなぁ。

だからさ・・・アタシ、魔法使いだろ?」

 

「ああ・・・それがどうかしたのか?」

 

「わかるんだ。

きっと学園を卒業して、軍に就職して、前線で死ぬほど戦って・・・

んで、五年くらいもてば御の字だって。

アタシ、才能ねーからさー。

そんなに長く生きられねーんだから、将来のこと考えてもしょうがないだろ?」

 

「俺は・・・そうとも限らないとも思うがな。」

 

良介は目の前に現れた魔物の方を見た。

 

「良介、もう一度、こいつの威力確かめたいから、いいか?」

 

「わかった。

それじゃ、行くぞ。」

 

良介は風の肉体強化をかけ、魔物の背後を取ると、重力魔法で身動きをできなくした。

 

「初音、やれ。」

 

良介が呼びかけると、初音は何度も魔物目掛けてジンライで撃った。

魔物が消滅すると同時にジンライは壊れてしまった。

 

「あーあー、壊れちった。

まだ信頼性に難アリだなぁ。」

 

すると、初音は良介の方を見ると、ジンライを良介の方に向けた。

 

「な?

アタシもこの銃と同じだよ。

信頼性に難アリの、兵器。

先がないからさ、今を楽しく生きたいワケ。

いたずらとかしてさ。

ホント、みんななんであんなに能天気なんだろーな。

前線のこと、まったく知らないってワケでもないだろーに。

アタシは会社の資料とか盗み見てるから、いろんな数字、知ってんだ。」

 

「おいおい、いいのかよそんなことして・・・」

 

「みんなに見せてやろーかな。

そしたら、アタシと同じになるかな・・・」

 

「まさかと思うが、本気でやろうとか思ってないだろうな。」

 

良介は初音の方を睨みつける。

 

「やだな、そんな悪趣味なことやんねーよ。

恨まれるのはイヤだもん。」

 

「・・・なら、いいが。」

 

「さて!

魔物も倒したことだし、帰ろーぜ!

アンタも、武器とか興味あったらアタシに言ってよ。

使わせてやるから。

どんだけ頼りないか、よーくわかるぜぇ?」

 

「機会があったらな。」

 

良介と初音は洞窟の出口へと向かった。

 

   ***

 

研究室、結希とアイラが話をしていた。

 

「はぁ?

妾たちが幻惑されとる?

バカを言うな。

そんなことされとったら妾が気づく。

なんせ誰よりも生きて、誰よりも魔法の知識を持つんじゃぞ。」

 

「なら、風槍 ミナの目については知ってるはずだけれど。」

 

「もちろんじゃ!

ヤツの瞳は全ての魔法による幻惑を見通す!

ようするにヤツに魔法によるまやかしは通用せん、ということじゃな。

で、それが・・・いっ・・・たい・・・」

 

アイラの顔色が悪くなり始めた。

 

「じゃあ、もし風槍 ミナが・・・会長たちが【卒業したはず】と言ったら?」

 

「その目は魔法の影響を受けず、世界を認識する。

我らの記憶が改竄されたということじゃな。」

 

「そう単純な話じゃないわ。

これがこの1週間、とりつづけた星図のデータ。」

 

結希は星図のデータはアイラに手渡した。

 

「見てもわからん。

じゃがお主は、確かに今年が【同じ】じゃと言いたいのだな。」

 

「ええ。

私たちは【会長が卒業する前のグリモア】に戻っているわ。」

 

「バカな!

そんなことができる魔法があったとして、宇宙規模ではないか!

そんなありえん範囲に影響を及ぼすにはいったいどれだけの魔力量が・・・」

 

アイラは悔しそうな顔をした。

 

「魔力量が・・・くそ、用意できるではないか・・・」

 

「良介君にも話は聞くつもりよ。

まさか彼が・・・とは考えにくいけど。」

 

「良介の魔力を他人が使う場合、ヤツの承諾が必要になるはずじゃ。

つまり・・・良介自身か、良介に魔力を貸せと頼んだヤツの仕業か。」

 

「問題は目的。

なぜ1年巻き戻したの?」

 

「待て、巻き戻したという表現はおかしい。

1年前、妾もお主も学園にはおらんかったではないか。

それに巻き戻ったのなら、第7次侵攻はなかったことになる・・・

じゃが妾には第7次侵攻の記憶がある。

お主もそうじゃろう?」

 

「ええ・・・単純に巻き戻ったわけではないのね。」

 

すると、突然チトセが入ってきた。

 

「話を聞かせてもらったけど・・・理由なら1つ、思い当たるわよ。」

 

「なんじゃ急に・・・いや、聞かせてみろ。

今は巻き戻しでよかろう。

1年巻き戻すことで・・・どんなメリットがある?」

 

「誰も死ななくなる。」

 

「ほう?

なかなか面白そうな意見じゃのう。」

 

「私の知っている歴史では、第7次侵攻の翌年・・・つまり今年・・・

第8次侵攻が起きて、風飛とグリモアは壊滅する。

けれど今の話が本当で【今年が去年】なら、第8次侵攻は起きない。」

 

「いい加減言うつもりはないか。

お主、何ものじゃ。

これ以上混乱させると、マジでのけ者にするぞ。」

 

「いいわ。

裏世界も確認できたし、私の正体を隠す必要もなくなった。

私は未来から来たの。

50年程度、未来からね。」

 

「なにゆえに?」

 

「人類が滅ぶという歴史を変えるために。」

 

その頃、良介と初音は街中を歩いていた。

 

「ちぇーっ。

やっぱ沙那が見張ってたんだってさ。」

 

「やっぱりそうだったのか。」

 

良介は苦笑いした。

 

「なんか魔物が少ないし弱いと思ったんだよなー。

お節介焼きめ。」

 

すると、沙那がやってきた。

 

「お帰りなさいませ、初音様。」

 

「よく言うよ。

せっかく内緒にしてたのにさ。

疲れたから部屋に戻ろーぜ。

ケーキ食べたい。」

 

「申し訳ありませんが、先に生徒会室へ行かれますように。」

 

「生徒会室~?

なんでだよ。

薫子お姉さまがいるなら行く。」

 

「いらっしゃいますし、生徒会への協力要請ですよ。」

 

「マジで!?

アタシもついに生徒会入りか!?

やった~!」

 

「生徒会に勧誘されるかはわかりませんが・・・」

 

初音たちは生徒会室に向かった。

 

「おねーさま!

なんのご用ですかっ!」

 

初音が入ると虎千代と薫子がいた。

 

「どうも。」

 

「悪いな、神宮寺。

話し相手はアタシだ。」

 

「追い出されないだけでもじゅーぶん。

で、なに?

JGJの、なんか使いたいんだろ?

別にいいけど、あんま高いのは無理だぞ。」

 

「いや、兵器の話じゃない。

人材だ。」

 

虎千代は詳しく初音に説明した。

 

「ふーん。

執行部とウチが提携ねぇ。

今まで通りじゃダメなのか?」

 

「これまでの契約だと、JGJの人間は裏世界に行けないからな。」

 

「それで、派遣されてくる人材を信用できるヤツにしたい。

テロリストの危険ねぇ・・・だからアタシが知ってる技術者がいいってことか。」

 

「そうだ。

ただそれなりの腕を持ったものでないと意味がない。

誰か心当たりのある者がいたら、それをJGJに伝えようと思う。」

 

「ふーん。

じゃちょっと待って。

聞いてみる。」

 

初音はデバイスで連絡をし始めた。

 

「い、いけません!

執行部を通さずに打診するのは・・・」

 

「だいじょーぶだいじょーぶ。

漏えいとかしない立場の人だから。」

 

と、デバイスから返事が返ってきた。

 

「あ、返事来た。

速っ!」

 

初音はデバイスを直した。

 

「いいってさ。」

 

「待て待て。

下手な人間じゃダメなんだぞ。

だれなんだ?」

 

「姉さま。」

 

「に、肉親か?」

 

「うん、まつり姉さま。」

 

「字はどのような?」

 

「茉理って書くんです・・・神宮寺の人間なら信用できるだろ?

たぶん。」

 

「い、一族なら他よりは・・・だが、研究者としての実力派どうなんだ?」

 

「そりゃ茉理姉さまデク開発研究局の技術者だったから。

今は局長。

てゆーか兄さま姉さまはみんなその辺できるから、誰でもいいんだけどさ。

一番ノリがいいのが茉理姉さまだから。」

 

「そ・・・そうか・・・」

 

「だけどJGJの社員だからさ。

JGJの利益を一番に考えるぜ?」

 

「それはいい。

目的がはっきりしてくれた方が対処もしやすい。

ま、裏世界の調査は長くなるだろう。

アタシは1年で学園からいなくなる。

問題は後任に投げるさ。」

 

すると、初音は虎千代の顔を見つめた。

 

「アタシはどう?」

 

「考えておく。」

 

「ひゃっほー!

いい知らせ待ってるぜー!」

 

初音は走り去っていった。

 

「神宮寺 茉理について調べましょう。」

 

「ああ、頼む・・・神宮寺 初音か・・・

アイツが生徒会長になったら、どんな学園になるかな・・・フフ・・・」

 

虎千代は笑みを浮かべた。


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