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ある日の教室。
良介と誠はクエストの話をしていた。
「古い洋館?」
良介は首を傾げた。
「ああ、汐浜の丘の上に建っているらしい。
昔、有名な人形収集家が住んでたとか。」
「へえ・・・それで、その収集家どうしたんだ?」
「ある日、突然気が狂って死んだらしい。
不思議なことに死体から人形の手足が出てきたらしい。」
「それが今回のクエストの場所か。
ちなみに、その話本当か?」
「さあ、わからん。
千佳の奴から聞いただけだから。
案外、ただの都市伝説なのかもな。」
「まぁ、クエストが出てる時点で魔物の仕業だと考えた方がいいな。」
良介はため息をついた。
「それで、誠。
クエスト請けるのか?」
「もちろん、良介も行くだろ?」
「当たり前だ。
それじゃ、申請しに行くか。」
良介と誠はクエストを請けることにした。
***
洋館の中、ゆかりと聖奈がいた。
「もー、どこ行っちゃったのよう音無さん・・・」
「フン、普段威勢がいい割には逃げ足は速いのだな。
戦場では常に冷静でいられるようにしてほしいものだが・・・」
ゆかりが何かに気付いた。
「あっ、あれ良介くんじゃない?
なんだあっち側にいたのね。」
ゆかりが良介のところに向かう。
「おーいっ!
良介くーん!
神凪さん、ありすちゃんも!」
「ん?
ゆかりさんと聖奈か。」
良介は2人に気付いた。
「2人とも、会えてよかった。」
怜は2人を見て安心した。
「すまん。
音無が先行してしまったから、追おうとしたのだが・・・」
「すごい悲鳴あげて奥へ走ってちゃったのよ。
怖いの苦手だったのね。
シャルロットさんと誠くんが追っかけてくれたんだけど、見失っちゃって。」
「この洋館、結構入り組んでいるみたいだな。」
良介が辺りを見渡した。
「まあ広いと言っても洋館の中だ。
すぐ会えるさ。
音無はともかく、あのシスターと誠がいれば心配はいらないだろう。」
「そうなの?
シャルロットさん、いつも優しくて、おっとりした感じだけど・・・」
「ヴィアンネ教司会は魔物退治の先駆け。
そこから派遣された【使徒】だ。
彼女らは魔物を神の敵であるとしてえ、絶対に容赦はしない。
性格がどうあれ使徒である以上、あのシスターも例外ではないだろう。」
「へえ・・・すごいのねえ。
歓談部でおせんべ食べて勧誘してるイメージしか・・・」
すると、ゆかりがあることに気付いた。
「あれ?
良介くんは?」
「奴ならたった今、私の後ろを歩いていたはずだが。」
「そこのドアに入ったりしたのかな?」
「いや、なにも物音は・・・椎名?
神凪と楠木はどうした。」
聖奈は怜とありすもいなくなっていることに気付いた。
「え?
あれ・・・いない、なんで・・・?」
「これは・・・単独行動にならんよう気をつけろ。
私の側から離れるなよ。」
聖奈とゆかりはできるだけ引っ付きながら奥へと進んだ。
***
良介と怜とありすの3人は周りを気にしながら歩いていた。
「ありす、足元に気をつけろよ。
もしもだったら手貸そうか?」
ありすは不安そうな顔をしていた。
「・・・ゆかりさんと聖奈のことが心配なのか?」
「気にすんなぃ。
あいつらだって強いんだ。
大丈夫さね。」
「そうだな。
2人ともしっかりしている。
わかっているじゃないか楠木。」
怜は人形に話しかける。
「いやオレっちはありすじゃねーよ?」
「ああ、なんだったか、名前があるのだったな。」
「おうさ!
【狂った姫様】と書いて、クレイジープリンセスと読む!
姫様でもクレプリでも好きなように呼・・・んぁっ!?」
突然ありすは走り出した。
「ありす、その人形は・・・」
良介も後を追いかけた。
「心配ないさね。
もうこのマリオネットは動かねえ。」
「ぅ・・・」
ありすは悲しそうな顔をした。
「だが相手は魔物だ。
動かないからといって不用意に近寄るな。」
怜がありすに注意した。
「神凪よう、あんまりありすを叱らねえでやってくれ。
ただでさえ人形達が無残な姿になってハートが傷ついてるんさ。」
クレプリが怜に話しかけた。
「む・・・楠木は人形が好きなのだったな。
しかしこの館のは・・・愛らしいとはいいがたいが・・・」
怜は人形を見つめた。
「ありすにとっちゃみんな可愛いお友達さね。
なあありす。
こいつらは霧で操られてるだけなんだよな?」
「ぅん・・・かわ・・・ぃ、そ・・・」
ありすは悲しそうな目で人形を見つめる。
「けど手を抜けばこっちがやられる。」
良介は人形に背を向けた。
「でも・・・ぁ・・・!!」
ありすが何かに気付き、走り始めた。
「あっ!
おいっ、そっちは強そうなのが・・・
ダメ!
ダメだってありす!
良介、ありすを止めてくれぇ!」
ありすはクレプリを振り切って走っていってしまった。
「はぐれたらまずい!
行くぞ、怜!」
「ああ!」
良介と怜もその後を追いかけた。
***
ありすは敵の人形に魔法をかけ、動かし始めた。
「ぅご・・・ぃ・・・た・・・
いぃ、子。」
ありすは人形を見て安心した。
「凄いな、敵の人形も操れるのか?」
良介がありすに質問する。
「正確には物を動かす魔法さね。
ありすは特に人形を操るのが得意ってわけさ。」
質問にクレプリが答えた。
「ぅ。
で、でも・・・た、くさん・・・は・・・」
「10体ぐらいいけるよな?
良介が手伝ってくれれば多分もっといける。」
「もしかして館中の人形を全て操るつもりか?」
今度は怜が聞いてきた。
「全部はさすがに無理さね。
バラバラに壊れているやつらもいるし。
物を動かす魔法に加えて、霧の魔物からイニシアチブを奪うわけだからな。
霧だけドバーッと払えりゃいいんだがね・・・うまい方法がないもんか。」
「なるほど・・・ありす、無理はするなよ。
怪我したら元も子もないからな。
今はなるべく霧を払うことを優先するんだ。」
良介の言葉を聞いてありすは哀しそうな表情になった。
「良介のいう通りさね、ありす。
あいつらを救いたいのはわかる。
オレっちだってそうさ。
だが1人でどうにかしようとすんな。
霧の魔物はエグいぞ。
油断したらすぐ殺されちまう。」
「でも・・・ほ・・・っとけ、な・・・」
「だーっもう、わからず屋さね!
良介、なんとか言ってやってくれよ!
「なんとかと言われてもな・・・」
良介が考え始めると怜がありすに話しかけた。
「楠木、私からの提案だ。
襲ってくるマリオネット以外は極力壊さないようにする。」
ありすは怜の言葉に驚いた。
「だが、お前の身に危険が及ぶようなら倒す。
その上でお前が救えそうな奴がいたら一緒に助けよう。
良介もそれでいいか?」
「まぁ、ありすがOKなら俺はそれでいいけど。」
「は・・・ぃ!」
ありすは嬉しそうに返事をした。
「よし、では約束だ。」
すると、怜は良介の方を向いた。
「良介、少しいいか?」
「ん?
どうした怜。」
怜と良介は少しありすから離れた。
「くれいじー・・・なんだったか。
楠木の人形だが。」
「ああ、クレイジープリンセスね。
それがどうかしたか?」
「あれは腹話術で動かしているのではないのか?
自分を制したり、文句を言ったり、とてもそうは思えないのだが・・・
あの人形は一体なんなんだ?
お前は知っているのか?」
良介は少し沈黙した後、口を開いた。
「わからん。
少なくとも腹話術らしきものでしゃべっているとは思えない。
人形自体に人格があるとしか・・・」
「そうか・・・」
少ししたあと、怜はありすのところに向かい始めた。
「これ以上話していると変な疑いをかけられそうだ。
戻ろう。」
「ああ、そうだな。」
良介と怜はありすのところも向かった。