グリモワール魔法学園【七属性の魔法使い】   作:ゆっけめがね

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※この作品の主人公は原作アプリの転校生ではありません。
 閲覧者様のイメージを壊す可能性があります。
 それでもOKという方は、よろしくお願いします。


第48話 アナザーワールド

つかさと合流した良介たちは地下に来ていた。

 

「ふむ・・・地下か。

こんなところがあるとはな。」

 

チトセはつかさを見ていた。

 

「本当に強いわね。

この子・・・見くびってたわ・・・

ブルイヤールを肉体強化だけで倒すなんて意味わかんない。

まぁ、それよりも・・・」

 

チトセは良介たちの方を見た。

 

「ふーん・・・言うほど強くないな。

まだ第1封印解いてないんだけどな。」

 

「良介・・・お前また強くなってないか?」

 

「さぁ、どうだかね。

てか、お前もなんやかんやで魔神化せずにいるじゃねぇか。」

 

「ほとんどお前が倒すからな。」

 

チトセはため息をついた。

 

「剣も使わず、肉体強化も使わずに素手で倒すなんて・・・

一体どうなっているのかしら、彼。」

 

チトセは再びつかさの方を向き、話しかけた。

 

「それで、この地下になにかあると思うの?」

 

「なにかではなく魔物だ。

いる・・・息をひそめた強者が。

殺気までは隠せんようだな。

天敵がいないと油断しているな。」

 

それを聞いて誠は良介に聞いた。

 

「て言ってるけど、わかったか?

いることに。」

 

「なんとなくだが、気配みたいなものは感じるな。」

 

「よくわかるな。

俺はまったくわからんぞ。」

 

チトセは地下の先の方を見た。

 

「野生のカン、というべきかしらね?

まぁ、いいわ。

確かにいるわ。

それもこれまでに比べて遥かに強い魔物が・・・」

 

誠はそれを聞いて唖然とした。

 

「・・・あれ?

わからないの俺だけ?」

 

「しっかりしろよ誠・・・」

 

良介はため息をついた。

 

「まず間違いなくタイコンデロガね。

さすがにこれ以上は危険よ。

一度戻って、報告しましょう。」

 

チトセは帰ろうしたが、つかさは構わず進もうとした。

 

「勝手に行け。

私はこのまま進む。

貴様の命令に従う理由はない。」

 

つかさは止めようとするチトセを睨んだ。

だが、チトセは微笑んでいた。

 

「会長さんから無理をさせるなと言われてるの。

あくまで進むというなら力ずくでも止めるわよ。」

 

「ん?

やる気になったのか。

ならば・・・始めるか?」

 

黙って聞いていた良介が口を開いた。

 

「・・・ここで始めるつもりなら2人とも俺が止めなきゃならんな。」

 

「なんだ、貴様もやる気になったか?」

 

つかさが嬉しそうに笑った。

 

「良介君は下がってて。

ここは私が・・・」

 

「いや、俺がやる。

ここまでわからず屋なら徹底的にやらなきゃダメだからな。」

 

「うわ~、良介の奴、久々にイラついてやがる。

まぁ、ここまで我儘だったら当たり前か。」

 

誠は呆れた。

良介はつかさの前に立ち、つかさを見上げ睨みつけた。

 

「・・・いい殺気だ。

お前は中々楽しめそうだ。」

 

「・・・今に笑えなくしてやるよ。」

 

と、良介が何かに気付いた。

 

「ん?」

 

チトセが2人を止めに入った。

 

「待って・・・遅かったわね。」

 

「ククク、地下の深くから魔物がやってくる・・・

邪魔するなよ。」

 

つかさは笑みを浮かべた。

 

「1体じゃないわ。

さすがにそれは聞けないわね。

地上に出すわけにはいかない。

私も戦うわ。」

 

誠も前に出てきた。

 

「ここまで来て俺にもようやくわかったぜ!」

 

「かなりの数だな。

4人でも骨が折れそうだな。」

 

良介は剣を抜いた。

 

「不要だ!

私から離れないのなら見ているだけにしろ!」

 

つかさは1人で進もうとした。

が、チトセに止められた。

 

「そうはいかないわよ。

いくらなんでもあなた・・・

私たちを止めながら、この強さの魔物と戦うことができて?」

 

その頃、地上。

姫たちがいた。

姫が何かに気付いた。

続いて隣にいた刀子も何かに気付いた。

 

「む・・・今の音は・・・」

 

と、突然地面が崩落し、姫が下に落ちた。

 

「きゃあっ!?」

 

「な、なんだとっ!?」

 

その様子を自由が少し離れたところから見ていた。

 

「あ、お嬢が落ちた・・・

えっ!?

な、なんで!?」

 

自由はその場に走って向かった。

刀子が穴に向かって名前を呼んでいた。

 

「ひ、姫殿っ!」

 

「刀子先輩!

今のいったい・・・ゲッ。

なんすかこの穴。」

 

「なんということだ、崩落してしまった・・・姫殿が・・・

ぬ、ぬおおっ!

自由、人を呼んで来い!

拙者は行くぞっ!」

 

「ちょタンマ!

魔法使わずに飛び降りちゃダメでしょ!

自分、国軍の人と立華氏呼んで来るっすから!

ちゃんと肉体強化してから飛び降りるんですよ!」

 

自由は人を呼びに向かった。

 

   ***

 

少し前、地下。

良介たちが魔物と戦っていた。

 

「邪魔だぁっ!」

 

良介がゼロ距離から魔物に魔法を放ち、魔物は魔法の爆発に巻き込まれて消滅した。

と、その衝撃で天井の一部分が崩れ落ちた。

 

「む、崩落が起きたか。」

 

つかさが崩れ落ちたところを見た。

 

「気をつけて戦っていたつもりだけど、予想以上に地盤が脆いみたいね。」

 

「危ねー、崩れ落ちたか。」

 

崩落部分の近くにいた良介のところにチトセがやってきた。

 

「良介君、大丈夫?

怪我しなかった?」

 

「ああ、俺は大丈夫だ。

・・・ん?」

 

良介が何かに気付き、上を見上げた。

刀子が降ってきた。

 

「姫殿ーっ!」

 

「あら・・・あの子・・・」

 

刀子は着地すると、良介たちに聞いてきた。

 

「ハァ、ハァ・・・お、お主ら姫殿見なんだか!?」

 

「姫・・・野薔薇さんのこと?」

 

「姫がどうかしたのか?」

 

良介の表情が少し険しくなった。

 

「左様!

崩落に巻き込まれて落ちてしまわれた!」

 

つかさが崩落部分の方を見た。

 

「この先が岩と土砂でふさがった。

このあたりにいないなら向こう側だな。」

 

「なんだと!

い、今すぐっ!」

 

急いで向かおうとする刀子をつかさが止めた。

 

「待て、小娘・・・ククク、朱鷺坂といったか。

これでも止めるか?」

 

「私も行くわ。

野薔薇さん1人では、長くはもたないでしょう。

気絶してる可能性が高いわね。

瓦礫を魔法で吹き飛ばすのは得策じゃない。」

 

「なら、別の道から行くしかないか。

行くぞ!」

 

良介は脇道から回っていくことにした。

その頃、地上。

自由が卯衣を呼びに向かっていた。

 

「立華氏ーっ!

あ、あれ?

立華氏はどこっすか?」

 

卯衣はおらず、結希と天しかいなかった。

 

「調査に出してるわ・・・どうしたの?

急いでいるようだけど。」

 

「あ、あああのですねっ!

地面が突然崩れてお嬢が落ちて・・・」

 

「さっきの地響き、それ?」

 

天はため息をついた。

 

「たぶんそれっす!

刀子先輩が飛び降りて、引き上げるために立華氏が・・・

空飛べるじゃないっすか!」

 

結希は手元の時計を見た。

 

「崩落から5分も経ってないわね。

落ちた場所は見えた?」

 

「え?

い、いや、自分たちからは・・・」

 

「卯衣を呼び戻すには時間がかかるわ。

結構遠くに行かせてるから。

ここは南条さんにお願いしましょう。」

 

結希はデバイスを取り出した。

 

「な、南条?

あのお子様っすか?」

 

自由は唖然とした。

その頃、恋は智花と一緒に行動していた。

デバイスが鳴ったので取り出した。

 

「む、またミナ・・・ではない。

智花。

宍戸からじゃ。

ちと待っとってくれ。」

 

「うん、いいよ。」

 

恋はデバイスに出た。

 

「もしもし・・・ふむ。

ああ、さっきの・・・わかった。

わっちの魔法が役に立つのう。

ではすぐに行こう。」

 

恋はデバイスを消した。

 

「智花、さっきの崩落場所に行こうぞ。

野薔薇が巻き込まれた。」

 

「え、ええっ!?

野薔薇さんが!?」

 

2人は崩落場所に向かった。

 

   ***

 

崩落場所。

梓がいた。

 

「これはまた、とっても深いッスな・・・

しかしこんなとこに地下洞窟があったとは。

生天目先輩も野生のカンっすなぁ・・・

見たとこ良介先輩に誠先輩、生天目先輩と朱鷺坂先輩、支倉先輩・・・

自分が率先していかなくてもだいじょーぶだとは思いますが・・・」

 

梓のところに恋がやってきた。

 

「おおい、梓ーっ!」

 

「おや、ふくぶちょー。

この辺危ないッスよ。

避難した方が・・・」

 

「宍戸からのお達しでな。

わっちがここに階段を作る。」

 

「おおっ。

なるほど。

ナイスアイデア!」

 

遅れてやってきた智花がその会話聞いて首を傾げた。

 

「恋ちゃんの魔法?

階段を作る?」

 

「フフフ、まぁ下の者が戻ってきたら見ておれ。

わっちの魔法は特別製よ。」

 

その頃、地下。

良介たちは姫を探していた。

 

「姫殿ーっ!

どこにおられるかーっ!」

 

「おい、刀子!

あまり声出すな!

魔物が寄ってくるだろうが!」

 

良介が寄ってくる魔物を殴りながら刀子に注意した。

 

「はぁ、これだけ大声で騒がれると魔物がどんどん寄ってくるわね。

その分、彼女の元に向かう魔物が減るのはいいことだけれど・・・」

 

チトセはため息をついた。

 

「構わん。

もっと騒げ。

私も腕の振るいがいがある。」

 

つかさは嬉しそうに笑った。

 

「はぁ・・・結局こうなるのね。」

 

チトセは再びをため息をついた。

今度は良介の方を向いた。

 

「良介君、あなたは気をつけてね。

明かりをともしてるけど、影が多いから。

死角から突然、魔物が飛び出してくるかもしれないわよ。」

 

「ああ、わかってる。

まぁ、死角から来ても、誠が倒してくれるよ。

そうだろ、誠。」

 

良介は誠の方を向いた。

 

「ああ、良介が対応できない部分は俺が補う。

そのためについて来てるんだからな。」

 

「フフ、いいコンビね。」

 

チトセは静かに笑った。

その頃、地上。

梓が何かに気付いた。

 

「ん?

ちょっとここ、お願いしていいッスか?」

 

「あ、うん・・・どうしたの?」

 

「怪しいもの・・・あ、いやいや、お花摘みに。」

 

その場を智花に任せると気になったところに向かった。

 

「よいしょっ。」

 

梓は何かを拾った。

 

「えーと・・・えーと・・・なんじゃこりゃ。

と、とりあえず報告しなきゃ。

ええと、だ、誰にだっけ。

総領、じゃなかった、長官、でもない。

ぶちょーは来てない。

あっ、かいちょーッスわ!

いかんいかん、取り乱したッス。」

 

梓は恋たちの方を見た。

 

「ふくぶちょーたちは・・・ま、だいじょぶッスかね。

しからば、にんにん。」

 

梓は静かにその場から離れた。

その頃、地下。

良介たちは姫のところにたどり着いた。

 

「ひ、姫殿っ!

刀子が参りましたぞ!」

 

「う・・・・・うぅ・・・・・」

 

姫の足が岩に挟まっていた。

 

「いかん、足が岩に・・・くっ!」

 

岩をどけようとする刀子のところにチトセがやってきた。

 

「どいて・・・土砂に巻き込まれてこれなら運がいいわ。

死んじゃったらさすがに治せないものね。

生天目さん、岩、動かせる?」

 

「よかろう。

貴様が手当する間、私が魔物を近づけさせん。」

 

つかさは魔物と戦う気マンマンだった。

 

「っていって、戦えればそれでいいのよね・・・しかたないわ。

さすがにこれが終わったら戻るから。

あなたもいっしょよ。」

 

「ふん、好きにしろ。」

 

「それじゃ、岩をどけるか。

離れててくれるか?」

 

良介は肉体強化をかけると岩を軽々と持ち上げ、放り投げた。

 

「よし、これでいいな。」

 

「さあ、良介君。

野薔薇さんの足はすぐに治療しないと危ない。

支倉さん、あなたは見ない方がいいわ。

無いとは思うけど・・・

魔物が生天目さんと誠くんを抜けてこないか、見張っててちょうだい。」

 

「し、しかし姫殿をこのままにしては・・・!」

 

「あなた、回復魔法使える?」

 

「・・・むぐ・・・」

 

「治療中は戦う余裕もない。

あなたが頼りなの。

それに彼女のケガを見て、卒倒でもされたら運ぶ荷物が増えるから。」

 

「あ、あいわかった・・・助けて下され・・・」

 

「大丈夫よ。

命に別状はないし、ケガも治るわ。

彼の魔力があるからね。」

 

チトセは良介の方を見た。

 

「そういうことだ。

刀子、自分のすることに集中してろ。」

 

良介たちは治療を始めた。

その頃、つかさと誠は魔物と戦っていた。

 

「ぐはっ!

つ、強ぇ・・・!」

 

「足手まといだ!

失せろ!」

 

魔物の攻撃を受け、膝をつく誠に魔物と戦うつかさ。

 

「ふざけんな!

この数、お前1人で倒せるわけないだろ!」

 

2人の前には尋常ではない数の魔物が押し寄せてきていた。

 

「ふん、私にとってはちょうどいいぐらいだ。

そこで見ていろ!」

 

「ぐっ・・・くそっ!」

 

誠は弓を直し、双剣を取り出し魔神化を使おうとした。

が、以前裏世界で起きた自分の異変を思い出し、そのまま止まってしまった。

 

「うっ・・・!」

 

「何をしている!

前を見ろ!」

 

誠は気がつくと目の前に魔物が来ていた。

誠は攻撃を受け、吹き飛ばされた。

 

「がはっ!」

 

「バカが!

敵を目の前にして立ち尽くす者がいるか!」

 

つかさは魔物と戦っていたが少しずつ押され始めていた。

 

「(マズイ、このままじゃつかさの奴が鯨沈を・・・!)」

 

誠は意を決して立ち上がり魔神化を使うことにした。

 

「おおおおおおっ!」

 

と、突然誠の紫のオーラに混じり、紫の電撃が迸り始めた。

 

「ぐっ、ぐうううっ!?」

 

誠は胸の辺りを抑え、膝をついた。

明らかに苦しそうにしていた。

 

「何をしている!」

 

つかさが戦いながら声をかけてきた。

誠はつかさの方を見ながら立ち上がる。

 

「ぐ、クソっ・・・はぁ、はぁ・・・」

 

誠は苦しそうにしながら魔物に斬りかかった。

 

「おおおっ!」

 

一撃で魔物を倒したが、後方の壁が崩壊するほどの斬撃が飛び出た。

 

「ほう、中々やるではないか。」

 

つかさは笑みを浮かべたが、誠が苦しんでいるのに気付いた。

 

「・・・力が制御できてないのか?」

 

「ぐぅ・・・いい・・・加減にしろよ・・・この野郎・・・!」

 

誠は歯ぎしりしながら双剣を強く握った。

 

「俺の・・・言うことを・・・聞きやがれっ!」

 

誠は飛びかかって来た魔物を双剣の柄で殴り飛ばすと、強く目を瞑った。

 

「はぁあああっ!」

 

誠の体から無数の紫の電撃が迸り、突然誠のオーラの色が変わった。

 

「はぁ・・・はぁ・・・ようやく・・・俺のものになったか。」

 

誠は自分の手を見て笑みを浮かべた。

オーラの色は紫から赤紫に変わっていた。

同時に誠の目も赤紫に光っていた。

 

「・・・よし、行くぞ!」

 

誠は魔物に向かっていった。

つかさはその姿を見て笑った。

 

「クハハハ、また強くなったか、新海 誠!

それでこそ私の獲物の1人だ!」

 

つかさも魔物に向かっていった。

 

   ***

 

その頃、地上。

梓が虎千代のところに来ていた。

 

「それで・・・見つけたものはなんだ?」

 

「えーと、イタズラでもなんでもないってことをですね・・・」

 

「そんときは蜂の巣にしてやっから心配すんな。」

 

虎千代の隣にいたメアリーが笑みを浮かべながら話してきた。

 

「えぇ・・・ま、まぁ、とりあえず状況から報告しますと・・・

生天目先輩たちが地下の洞窟で派手にやらかしたじゃないッスか。」

 

「あれはやはりつかさたちだったのか・・・」

 

虎千代は呆れた。

 

「それで瓦礫が崩れたんで、試しに見に行ってみたら・・・これが・・・」

 

梓は拾ったものを虎千代に渡した。

 

「な、なんだこれは・・・!」

 

虎千代は驚愕した。

メアリーも隣からそれを見た。

 

「私立グリモワール魔法学園・・・

おい、どーゆーことだよこれは。」

 

それには魔法学園の名前が刻まれていた。

 

「ええと・・・その、自分でもよくわからなくて・・・」

 

「バカな・・・ここが風飛市だというのか?」

 

「その、そうッスね。

そういうことになります。

・・・なにが起きてるんでしょ?」

 

「・・・くそ、遊佐のところに行くぞ。」

 

虎千代は鳴子のところに向かった。

その頃、結希と天。

こちらも驚愕していた。

 

「なによこれ、ここ・・・地球じゃない・・・」

 

「冬の大三角形が見えるわ。

それを構成するオリオン座、おおいぬ座、こいぬ座・・・

気候、大気の成分、植物、そして・・・これが空中から撮影した写真。」

 

結希は写真を取り出す。

 

「風飛・・・随分変わってるけど、山や川の位置が同じ・・・ね・・・」

 

「詳しく調べないとわからないけど・・・

ここは正しく、裏側だったのよ。」

 

「未知の世界でもなんでもない。

ここは地球で、日本で、風飛・・・

けれどグリモアも風飛も、魔物に滅ぼされている・・・この一帯は全て・・・

どういうことなのよ!」

 

その頃、鳴子は地上に出てきたつかさのところにやってきた。

 

「お疲れ様、生天目君。

君が満足できるような相手はいたかな?」

 

「多少は体がほぐれた程度だ。

あの男に獲物をほとんど奪われた。」

 

つかさは親指で誠を指差した。

 

「ああ、そうみたいだね・・・でも君たちが派手に暴れてくれたおかげで・・・

ホラ、生徒会長と宍戸君がこっちに来ているよ。」

 

虎千代と結希が鳴子のところにやってきた。

 

「遊佐!

なぜ何も言わなかった!」

 

「ゲートの先にもう1つ風飛があるって言ったところで、信じたかい?

いや、君が信じたとしても取り巻きはどうだい?

国軍は?

説得に時間をかけるほど暇じゃないんでね。

どうせ・・・いつかわかることだ。

自分で気づけた分、感動もひとしおだろ?」

 

鳴子は笑みを浮かべた。

 

「少なくとも、お前をこんなに自由に動かしはしなかった。

なにか探すと言っていたな。

そのために黙っていたのか?」

 

「予想通り、見つからなかったけどね。

運が悪かった。」

 

「今はそれはいい。

お前がかつて訪れた裏世界とは、ここのことか?」

 

「【もう一つの地球】。

その通りだ。

僕は事故でここに来た。

霧の嵐に呑みこまれたショックで魔法使いに覚醒・・・

ここである人に拾われて、しばらく魔法使いとしての訓練を受けた。

なにせ、もう表に帰れる保証はなかったからね。」

 

「それは人間なんだな?」

 

「もちろん。

こちらには【僕たちと同じ】人間がいる。

ただし、魔物の侵攻を防げず、表よりもずっと数を減らし・・・

細々と生きるしかない、哀れな敗北者たちだ。」

 

その頃、恋は魔法で階段を作っていた。

 

「す、すごい・・・階段ができちゃった・・・」

 

智花は唖然としていた。

 

「ふぅ・・・いまじねーしょんを形にできるのがわっちの魔法じゃよ。

絵さえ描けば、たいていのものは召喚できる。

といっても原理は他の魔法と同じでな。

魔力を物質に変換しとるだけじゃ。

じゃから穴の底とつなぐ大きさの怪談はそれ相応の魔力を使うし・・・

他の魔法と同じく、短期間で霧散してしまう・・・むぅ・・・」

 

恋はその場に倒れてしまった。

 

「あっ!

れ、恋ちゃん!」

 

ちょうど階段から良介たちが出てきた。

 

「はぁ・・・しんどかった。

ん、あれ、恋?」

 

「ふぅ・・・あら、良介君、出番よ。

魔力切れなら回復してあげればすぐ治るわ。

ついでに私が運ぼうかしら?」

 

「いや、俺が運ぶよ。」

 

良介は恋に魔力を送った。

続いて刀子と姫が出てきた。

 

「姫殿、あと少しでござる・・・」

 

すると、自由がやってきた。

 

「刀子先輩!

うわっ!

お、お嬢大丈夫っすか!?」

 

「ああ、朱鷺坂殿と良介・・・あと生天目殿と誠のおかげで助かった。」

 

「な、生天目先輩?

なんでまたそんな・・・あ、椎名先輩待機してるっすよ!」

 

「ありがたい。

では行こう。」

 

刀子は姫を担いでゆかりのところに向かった。

 

「はぁ・・・死ぬかと思った・・・」

 

自由は大きく息を吐いた。

その頃、鳴子と虎千代が話をしていた。

 

「その、お前が世話になった相手と連絡は取れるか?」

 

「残念ながらデバイスが通じなかったね。

【運が悪かった】よ。」

 

「では少なくとも、その人間はまだ生きているわけだな。」

 

「ああ、生きていると思う・・・僕も会いたかった。」

 

「クソッ!

わかった、撤収の時間だ!

帰ったら詳しく聞かせてもらうぞ。」

 

「いいよ。

僕に不都合でない範囲ならなんでも話そう。」

 

「撤収だ!

魔物に気をつけて、順次ゲートをくぐれ!」

 

虎千代は他の生徒に呼びかけた。

 

「アタシたちは来月で卒業だ。

どうするんだ?」

 

「さぁ・・・留年でもしようかな。」

 

鳴子は笑みを浮かべた。

良介と誠は話をしながらゲートに向かっていた。

 

「で、誠。

新しい力に目覚めたって?」

 

「ああ、名付けて、【魔神化第2形態】ってところだな。

なにが原因で強くなったか不明だが。」

 

「以前、裏世界に来てから魔神化がおかしくなり、そして今回暴走しかけた力を制御し、パワーアップか。」

 

「ああ、一体なぜ暴走しかけたのか、未だに不明だけどな。」

 

「・・・霧が関係してんじゃねえのか?」

 

「霧が?

なんでだ?」

 

「結構霧が濃かったじゃないか、さっきの地下。

それにこの世界自体も自分たちの世界に比べたら少し濃く感じる。」

 

誠は少し考えた。

 

「そういや、魔神化が使えるようになったのも第7次侵攻で霧がかなり濃い場所にいてからだったな。

霧が深く関係してるかもな。」

 

「まぁ、帰ってからゆっくり考えよう。

それじゃ、帰るぞ。」

 

良介はゲートをくぐった。

誠もそれに続いた。


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