グリモワール魔法学園【七属性の魔法使い】   作:ゆっけめがね

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※この作品の主人公は原作アプリの転校生ではありません。
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第42話 バレンタイン(前編)

2月、良介は教室で伸びをしていた。

 

「あ~・・・さて、風紀の手伝いでもしに行くか。」

 

良介が席から立ち上がったところで誠がやってきた。

 

「良介、今日は何の日かわかるか?」

 

「今日?

・・・2月14日・・・ああ、バレンタインか。

それがどうかしたのか?」

 

良介がカレンダーを見て日付を確認し、誠に訪ねた。

 

「おいおい、バレンタインと言えば何か。

わからないなんて言わないよな?」

 

「・・・チョコだな・・・で?」

 

「いい加減わかれよ。

お互いにもらったチョコの数を競おうって言ってんだよ。」

 

「は?

いや、俺はそんな言うほどもらえるわけ・・・」

 

「放課後だ。

絶対に教えに来いよ。

何個もらったのか、絶対にな!」

 

そう言って誠は行ってしまった。

 

「・・・はぁ~、風紀行くかぁ・・・」

 

良介はため息をつきながら風紀委員のところに向かった。

良介は風紀委員と合流し、見回りに向かった。

 

「あっ・・・さすがにあれはまずいと思います!

近すぎます!」

 

紗妃がチョコを渡している男女を見て、声を荒げる。

 

「・・・大丈夫だろ?」

 

良介はその様子を見て、風子に確かめる。

 

「だいじょーぶでしょ。

どう見ても義理チョコですし。」

 

「そうでしょうか・・・とても親しげに見えますが・・・」

 

「お友達なら問題ねーです。

あんまり厳しくしても逆に燃え上がっちゃいますよ。」

 

「委員長。

女同士の場合は・・・」

 

女子同士でチョコを渡しているところを見ながら怜が風子に確かめる。

 

「ちゅーしてたらアウト。」

 

「なるほど。」

 

「基本いつもと一緒で問題ねーです。

人気のないところは注意してくだせー。

チョコをあげるくらいなら、大目にみてあげても・・・」

 

と、すぐ近くの廊下から声が聞こえてきた。

 

「ダイジョブ、ダイジョブ。

ボクのカンは当たるアル。」

 

「駄目ヨ。

そゆコト言ってるヤツほど、結局金巻き上げられて終わりネ。」

 

「ボクは学園長だと思うのだぁ!

ワイロは偉いヒトのところに集まるアル!」

 

「め、明鈴!

めったなコト言うもんじゃないヨ!

ワイロじゃないヨ!」

 

「そお?

ボクはワイロにチョコくれたらひいきしちゃうのだ!」

 

「とにかく駄目ヨ!

賭けなんて不良の始まりネ!」

 

声は明鈴と小蓮のものだった。

 

「・・・風子。」

 

良介は風子の方を向いた。

 

「ええ、氷川、神凪。」

 

「はい。

どうしました?」

 

「・・・ちーとばかし方針変えます。

気になることが出てきましたんで。

不純異性交遊につての取り締まりは、とりあえずそのまま続行するとして・・・

まずは問題児のあぶり出しから始めましょーかね。

はぁ・・・」

 

「苦労が絶えないな。」

 

「まったくですよ・・・ホント。」

 

そこからそれぞれにわかれて見回りをすることになった。

 

   ***

 

良介は風子と見回りに向かうことになった。

 

「すみませんねー、いつも頼らせていただいちゃって。」

 

ここ最近、良介はほぼ風紀委員にしか顔を出していない。

 

「別に構わないけど、俺がいて何か変わることでもあるのか?」

 

「いやいや、りょーすけさんがいると生徒の反応が違いますんで。

【風紀委員】から【友達といるヤツ】に軟化するんですよ。」

 

「なるほどね。」

 

良介は納得した。

 

「もちろん例外もあります。

りょーすけさんに気を寄せてる子なんかはね。」

 

「俺に気を寄せてるなんて・・・そんな奴がいんのかね?」

 

良介はため息をつく。

 

「・・・謙遜なんていーんですよ?

ちゃーんと把握させてもらってます。」

 

「そんなバカな。

俺にいるわけないだろ?」

 

良介は鼻で笑った。

 

「照れない照れない。

ま、学生らしいおつきあいであれば問題ねーんで。

と言われてもピンときませんかね。

今も一緒に見回りしてますが・・・

取り締まりの対象として、不純異性交遊。

学園内でのイチャつきはNGです。」

 

「主にどんなものだ?」

 

「いわゆる過度なスキンシップ。

ちゅーしてたらアウト。

風紀を乱す卑猥な格好。

飲酒、喫煙、ケンカ、サボリ。」

 

「あと魔法の無断使用だな。」

 

「見つけたら厳罰処分です。

即引っ立ててくだせー。」

 

「了解、んじゃ行こうか。」

 

良介が先に行こうとすると、風子に呼び止められる。

 

「あ、そうそう。

荒事になるかもしれませんから、気をつけてくだせー。」

 

「・・・なんで?」

 

「・・・バレンタイン程度で、そんな物騒なことにはならねーと思いますか?」

 

「ならないと思うが・・・どうかしたのか?」

 

「いえね、ちょっと気になることがありまして・・・チョコなんですが。

異様に数をあげてるとか、もらってるような生徒には注意してください。」

 

「異様にもらってる奴・・・ねぇ。」

 

良介はふと誠を思い出す。

 

「ま、ゆーたらりょーすけさんも怪しいですが、それはこーして隣で監視してるんで。」

 

「・・・ところで異様にあげてる、もらってる奴を注意する理由は?」

 

「・・・バレンタインにかこつけて、賭博やってる輩がいるかもしれねーんですよ。

グリモアの生徒は報酬余らせてますから、その場合額もでけーでしょ。」

 

「・・・なるほどね。

確かにやってそうではあるな。」

 

「まだ確信はもてねーです。

主導でやってる奴もわかりませんし。

けど、念には念をね。

注意しすぎるってことはないです。

ウチの取り越し苦労で済めば、それはそれでいーんですから。」

 

「ま、確かにそうだな。

んじゃ、行くか。」

 

「ええ、行きましょー。」

 

良介は風子と共に見回りに向かった。

 

   ***

 

良介と風子は見回りをしていると、一組の男女を良介は見つけた。

 

「風子、あれいいのか?」

 

異様に距離が近い気がした。

 

「・・・ん?

どれどれ・・・ああ、あれくらいなら大丈夫です。

チョコを渡してるだけですから、取り締まる必要はねーです。」

 

「・・・そうか、ならいいか。」

 

「ウチらの守ってるのは、学園とそこにいる人たちです。

その守るべき対象を、むやみに縛るよーなまねはしませんよ。

だって、生徒をいじめたくてやってるわけじゃねーですもん。

せっかくのせーしゅん時代、楽しく過ごしてほしーですし。」

 

「ま、確かにそうだな。」

 

「・・・ただね、一線を超えると守れなくなるもんもあるんで。

その線引きはウチらがきっかりやらせてもらう、ってだけです。

アンタさんの場合は・・・フフフ、信用してねーわけじゃねーんですよ。

けど、間違いってのは、片方が心がけたところで防げねーんで・・・」

 

「・・・もしかしてだが・・・・」

 

良介は嫌な予感がしていた。

 

「・・・わかってもらえました?

アンタさんの身体が狙われてること。」

 

「・・・マジか。

今の言葉でもしやと思ったが・・・」

 

良介はため息をついた。

 

「とゆーわけで、今回のよーに各所が荒ぶるよーなイベント時は・・・

ウチと一緒にいてもらってるほうが都合がいーんです。

・・・・りょーすけさんといる時間が増やせますし。」

 

「・・・最後なんか言ったか?」

 

「いや、なんでもねーです。

あ、もちろんお嫌でしたら言ってくだせー。

アンタさんの意思は尊重します。」

 

「まさか、そんなわけないだろ。

自分の意思でここにいるだから。」

 

「ふふ、アンタさんならそう言ってくださると思ってました。

恋愛するのは、誰でもじゆーですからね。

どーしても好きになったら、止めてもムダってもんです。

中にはヒマだからという理由で男女交際に意欲的なのもいますが・・・」

 

「暇だからって・・・いいのかそれ?」

 

「いーんじゃないですか?

ヒマってことは平和ってことです。

このご時世にらぶあんどぴーす、なんて素敵じゃねーですか。」

 

「確かにそうだな。」

 

すると、風子はさっきよりも良介に近づいて歩き始めた。

 

「・・・風子、これ勘違いされたりしないか?」

 

手をつないでないだけで、ほぼ密着している状態と言ってもおかしくない距離だった。

 

「大丈夫です。

さ、行きましょー。」

 

2人はそのまま見回りに向かった。

 

「この時期はがっつり見回りしてますから、思ったより平和ですね。」

 

「そんなに見回ってるのか?」

 

「ふっふっふ、そりゃーもー。

毎年脅して回ってますよ。

規律は恐怖によって守られる。

原始的ですがね。

真面目な生徒を無差別に叱ったりはしませんので、ご安心くだせー。」

 

「そうか。

ならいいけど。」

 

「違反するとこーなる、ってのは見せしめとしてやりますが・・・

要所要所でだけです。

こっちも疲れちゃいますからね。」

 

「見せしめっていいのかよそれ・・・ん?」

 

一人の女子が風子のところにやってきた。

 

「おっと、少々お待ちを・・・どーしました。

ん?

ウチじゃなかったんですか・・・あぁ、アンタさんに用事だそーですよ。」

 

「俺に?

一体なんだ?」

 

良介は女子の方を向いた。

 

「どーぞ。

やりづらかったら後ろ向いててあげますんで。」

 

「(その方がよけい気まずいんだよなぁ・・・)」

 

良介は女子からチョコを受け取った。

 

「風子、終わったぞ。」

 

「もういーんですか?

じゃ、見回り続けましょうか。」

 

「てっきり取り締まられるかと思ったんだが・・・」

 

「いえいえ、チョコを受け取っただけで取り締まったりはしませんよ。

・・・なんか後ろめたいことでもあるんですか?」

 

「いや・・・別に。」

 

「義理でも本命でも、お好きなよーに受け取ってもらって・・・・・あ。」

 

風子が何かに気付いた。

 

「・・・ちょっとお聞きしてーんですが・・・アンタさん、いくつもらったんですか?」

 

「え"。」

 

良介は変な声をあげてしまった。

 

「あのー・・・何をかな?」

 

「チョコですよチョコ。

大丈夫ですよ、参考までにお聞きするだけで。」

 

「えーと・・・今で・・・30はいったか?」

 

「ははぁ。

それはそれは・・・

そんなことはないと思いますけど、万が一。

万が一ですよ。」

 

「ああ・・・」

 

「八百長に加担してるとか・・・そーゆーことはないですよね?

もしそんなことがあったら・・・懲罰房ではすまねーかもしれねーですよ?」

 

「懲罰房ですまないって・・・一体どうなるんだ?」

 

良介は後ずさりしながら聞いた。

 

「ぷっ!

くひひひ!」

 

「・・・どうした?」

 

風子は突然笑いだした。

 

「アンタさんは顔に出ますね!

わかりやすい人は嫌いじゃねーですよ。」

 

「・・・わかりやすいか、俺。」

 

「ま、せっかくのバレンタインに、イジワルはやめましょーか。

見回りの続きしましょ。

終わったら渡したいものもあるんで、サクッとね。」

 

「渡したいものねぇ・・・期待していいか?」

 

「それはお好きにしてくだせー。」

それじゃ、行きましょ。」

 

2人は見回りを再開した。

 

   ***

 

良介と風子はギャンブルに加担していた律を校門前で捕まえた。

 

「ちがうって、あたしはそんなダメとか知らなくて・・・!」

 

「知らねーで済んだら風紀委員はいらねーです。

ギャンブルは不良のはじまりですからねー。

観念してくだせー。」

 

「助けて!

良介はあたしの味方だよな!?

ソウルメイトだよな!?

なあ、一緒にバンドやろうって誓った仲だよなっ!?」

 

律は良介に助けを求めた。

 

「ソウルメイトなのかはともかく、バンドは誓ってはいないな。

あくまで、【考えておく】って言っただけだからな。」

 

それは割とここ最近の話。

律にバンドをやらないかと誘われ、考えておくと返事した時のことだった。

 

「そ、そんなぁ~!」

 

「はいはい。

バンドの編成は反省が終わってからにしてくだせー。」

 

「ま、待って!

待っ・・・・・あ、いい詩が浮かびそう・・・」

 

と、律の背後から紗妃がやってきた。

 

「行きますよ。

じっくり反省してもらいますからね。」

 

「うわーん!

見てないで助けろよぉ、良介ー!」

 

律は連行されていった。

 

「・・・はー、完全にあっちこっち飛び火してますね。

結構な規模じゃねーですか。

煽ってんのは・・・まあ大体見当つきますけど。

親や先生にギャンブルやっちゃいけねーって教わらなかったんですかね?」

 

「教わってても手を出したくなるものってあるもんだ。

仕方ないだろ。」

 

「まあ、魔法使いってのは特殊な環境下で育つことも多いですが・・・

道徳の時間でも、増やすよーにお願いしましょーか。」

 

「・・・あんま効果ないと思うがな。」

 

良介と風子は同時にため息をついた。

 

「とりあえず見回りを続けます。

アンタさんも、シャンとしてくだせーよ。」

 

風子は良介の背中をポンと叩いた。

 

「ん・・・そうだな。

見回り、続けるか。」

 

「ええ、まだまだバレンタインは終わってねーんですから。」

 

2人は校舎に向かった。


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