グリモワール魔法学園【七属性の魔法使い】   作:ゆっけめがね

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※この作品の主人公は原作アプリの転校生ではありません。
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 それでもOKという方は、よろしくお願いします。



第41話 人と人

阿川奈砦跡。

先に進んだ梓が魔物に囲まれていた。

 

「・・・あちゃー・・・なんかクリスマスから、あんまり運がないッスねぇ・・・

ひいふうみぃ・・・なんで自分の周り、こんな魔物が集まるんでしょ。」

 

すると、ミナの声が聞こえてきた。

 

「梓ーっ!

どこにいるんだーっ!」

 

「あっ、まず!

ぶちょーっ!

こっちは魔物ばっかッス!

来ちゃダメっす!

自分、逃げますから、ちょっと戻って合流しましょっ!」

 

だが、ミナは梓のところにやってきた。

 

「できるか愚か者がっ!

お前は円卓の騎士の一員だ!

我は疾風の魔法使い!

最強にして騎士団のリーダーだ!」

 

「ぶ、ぶちょー、なんで来ちゃったんスか!

気持ちはありがたいッスけど・・・

(あちゃー・・・もっと言い方考えないとなぁ・・・)」

 

と、他のメンバーもミナを追ってやってきた。

 

「待たんかミナ!

梓の指示にちゃんと・・・!」

 

「ひ、ひぃぃ・・・こんな魔物がいっぱいいるところに・・・!」

 

「・・・・・やるわ。」

 

「こりゃあ凄い数だな。

この人数とはいえ時間がかかりそうだな。」

 

「む、むぅ・・・全員来ちゃったッスか。

仕方ないなぁ・・・

(さっきの悲鳴・・・みんなに聞こえてなかったみたいッスけど、夏海先輩・・・

アレのせいで魔物呼んじゃったみたいッスね。

何があったんだろ・・・?)」

 

「行くぞ!

聖戦の後に残るのは我らの勝利だけだ!」

 

「(さっき、誰かの悲鳴が聞こえたな・・・無事だといいが・・・)」

 

良介はかすかに聞こえた悲鳴を気にしながら魔物に向かった。

数分後・・・

 

「うぅ・・・動けない・・・痛い痛い痛いぃ・・・」

 

ミナは傷を押さえて痛がっていた。

 

「なんじゃ、ただのかすり傷じゃ。

そもそも良介に任せっきりじゃったろ。

あれだけ大見得きったんじゃからしゃんとせんか。」

 

「最強の魔法使いでも痛いのは痛いのだぁ・・・」

 

と、突然ミナは壁に寄りかかって座り込んだ。

 

「・・・・・すぅ・・・すぅ・・・」

 

ミナはそのまま眠ってしまった。

 

「・・・寝たか・・・それだけ疲れてたんだな。」

 

良介は呆れたようにため息をついた。

 

「・・・あ、あのっ・・・こ、こんなクズぅなわ、わわわたしを守っていただいて・・・!」

 

「別に気にするなよ。」

 

良介は心に対して笑みを見せた。

今度は卯衣が良介に話しかけてきた。

 

「・・・良介君、魔力をもらってもいいかしら。」

 

「ああ、いいぞ。」

 

良介は卯衣に魔力を渡した。

 

「羽を出すのに魔力消費が多くなるわ。

これ以上比率的にするのは難しいかしら・・・」

 

と、梓が良介のところにやってきた。

 

「にんにん、ただいま戻ったッス。」

 

「戦闘の後ですまないな。

それで、どうだった?」

 

「結構、この辺に集まってたみたいッスね。

近くに魔物はいませんでした。」

 

「それはよかった。

一息つけるな。」

 

「ええ、そーしましょ。

後から来る人たちと合流した方がいいかもしれません。

量が多かったとはいえ、オニの強さはちょっと想定以上ッス。

良介先輩がいたから切り抜けはできたでしょうが・・・

これ以上先行するのは、得策じゃないッスね。」

 

恋が話に混ざってきた。

 

「うむ・・・さすがんいミナも懲りたじゃろ。

最近はクエストも安全じゃないからのう。」

 

「なんかみょーに想定外のことが多いんですよね・・・ま、仕方ないか。

自分、もう一度回ってくるッス。

少数のパーティがいたら、集まるよう助言しておきます。」

 

梓は行ってしまった。

 

「おい、お前は休まなくてもいいのかって、行ったか・・・」

 

良介は呆れていると、恋が話しかけてきた。

 

「・・・のう良介。

お主、梓のことはどのくらい知っとる。」

 

「伊賀の忍者・・・てことぐらいしか知らないな。」

 

「フフフ、わっちもな、伊賀忍者というのが本当らしい・・・

それぐらいしか知らん。

それだけじゃない。

心も卯衣も、同じ天文部でも驚くほどなにも知らん。」

 

恋はミナの方を向いた。

 

「・・・のうミナ。

お主もなにか、人に言えん秘密があるんじゃないか?」

 

「・・・すぅ・・・すぅ・・・恋・・・・・」

 

ミナは完全に眠っていた。

 

「・・・寝てるな。」

 

「・・・ま、よい。

わっちにとって、天文部ほど楽しい所はない。

それでよかろ。」

 

「・・・そうだな。」

 

良介たちは梓が戻ってくるのを待った。

 

   ***

 

その頃、誠たち。

 

「う、うぅ・・・気持ち悪い・・・イヤなもの見ちゃった・・・」

 

「大丈夫か?」

 

気分を悪くしている夏海に誠と紗妃が話しかける。

 

「あ、あんたたち、あんなの見てよく平気でいられるわね・・・」

 

「まぁ・・・な。」

 

「平気なはずがありません・・・とはいえ、私たちの仕事ですから。

相馬さん、魔物は近づいていませんね?」

 

紗妃はレナに確認をとる。

 

「ない!

まものない!

まもの、ちがう!」

 

「・・・よし、夏海、カメラ貸せ。

写真撮るから。」

 

誠は夏海からカメラを借りようとした。

 

「え!?

ま、マジで!?」

 

「逃げ遅れて、隠れたが見つかったってところか。

身元を確認して報告しないといけないからな。」

 

「私たちが送った写真は今回の資料にもなります。」

 

それを聞いて夏海は、少し黙った後、口を開いた。

 

「・・・・・わかった。

あたしが撮るわ。」

 

「は?

お前が?」

 

「で、ですがあの死体をまた見るのは・・・」

 

「ジャーナリストが自分のカメラ他人に預けてどうすんのよ!

カメラを持ってる以上、あたしは写真を撮る責任があるの。

やるわ。」

 

誠はそれを聞いて少し黙ったが、すぐに口を開いた。

 

「・・・わかった、任せた。」

 

それを聞いて誠たちは、死体のところに向かった。

 

「う・・・やっぱグロい・・・」

 

「すんすん・・・にんげん・・・」

 

「見りゃわかるわよ。

ほら、ちゃんと手を合わせて。」

 

「て?

あわせ?」

 

「まだわからないだろうから、とりあえず真似してくれ。」

 

そう言うと、誠たちは手を合わせた。

レナも真似して手を合わせる。

 

「・・・・・なに?」

 

「今は真似だけでいいんだ。

そのうちわかるだろうからな。」

 

「じゃ、撮るわ。」

 

そう言うと、夏海は写真を撮り始める。

 

「(しかし・・・ほとんどわからんがこの顔、どこかで見たような・・・)」

 

誠が死体に近づいて見て考え込んでいると、梓がやってきた。

 

「うおっ。

こりゃまたヒサンな・・・おっと、自分は知らない、知らない・・・」

 

「服部さんではないですか。

天文部の皆さんはどうしました?」

 

紗妃が梓に話しかける。

 

「あ、お疲れ様です・・・ちょっと魔物との戦いが激しくて休憩中ッス。

かくかくしかじかで、他のパーティを回ってる最中ッスね。」

 

「・・・わかりました。

私たちも天文部に合流しましょう。」

 

「助かります。

それでそこの・・・逃げ遅れた人ですか?」

 

「おそらく。

魔物とはいえ、無残な殺され方です・・・」

 

「・・・ちょいといいですか?」

 

梓は死体の近くで屈んで見ている誠の隣にやってきた。

 

「ふぅむ・・・これが魔物に?

現場は見ました?」

 

梓は誠に聞いた。

 

「いや、俺らが到着してから悲鳴は聞いてないが・・・」

 

「早朝ッスな・・・」

 

「・・・だよな、それに・・・」

 

「まものない!

まもの、ちがう!

にんげん、にんげん!」

 

いきなりレナが騒ぎ出した。

 

「相馬さん。

もう魔物がいないかはいいのですよ。」

 

「・・・・・そッスな。

相馬先輩が正しいッス。」

 

「は?」

 

いきなりのことに紗妃は変な声を出した。

 

「やっぱり服部も気づいたか。」

 

屈んでいた誠が立ち上がった。

 

「ズタズタになってるんでわかりづらいですけど、よく見ると弾痕があります。

魔物じゃねーッスね。

人間ッス。

知ってる限り学園から銃を使う人は来てない。」

 

「そ、それはつまり・・・?」

 

「もういないとは思うが、注意しろ。

あと身元確認も急ごう。」

 

「執行部に送るとき、一緒に遊佐先輩にも送ってください。」

 

「そ・・・それはダメです!

遊佐さんに送ると悪用されかねません!」

 

「するわけがないだろう。

そんな小さい人間じゃないし。

それに、執行部よりも速く身元確認してくれるからな。」

 

「どうしてもだめなら、ふたみんでもわかると思いますよ。」

 

「・・・・・あんたたち、部長のことよく知ってるの?」

 

夏海が2人に聞いた。

 

「いや、俺はあんまり。」

 

「夏海先輩以上には知らないッスよ・・・じゃ、ここはお任せします。」

 

そう言うと梓は行ってしまった。

 

   ***

 

良介たちは梓が帰ってくるのを待っていた。

 

「・・・梓はまだか。

あやつに限ってケガで動けないということはないじゃろうが・・・」

 

「う・・・うーん・・・やみのこくいん・・・」

 

ミナは寝言を言っている。

 

「そろそろ起きるかな。

心、卯衣、休めたか?」

 

良介は2人に話しかけた。

 

「は、はい・・・お役に立てないならせめて見張りを・・・!」

 

「私がしているから問題ないわ。」

 

「うぅ・・・い、いつもいつもわたし・・・」

 

落ち込む心を、恋が励ます。

 

「心、お主にはじゅうぶん助けられとる。

人には得意分野がある。

卯衣はれーだーみたいな魔法を使えるでな。

・・・れーだーであってたかのう?」

 

「さあ、たぶんそうじゃないのか?」

 

恋が良介に確かめようとすると、卯衣が答えた。

 

「科学技術でいえばレーダーで間違いないわ。」

 

「ようするに苦手なことはそれが得意なものに任せておけ、ということじゃ。

わっちはこの中の誰にも勝っとるものがない。

じゃが平気じゃぞ。」

 

「そ、そんなことありません!

・・・そ、その・・・」

 

と、ミナが目を覚ました。

 

「・・・なんのはなし・・・?」

 

「起きたか。

クエスト中に寝るとは図太い奴だ。

魔物を片付けたから、他のパーティを待つために休憩してたんだよ。」

 

「ん・・・そう・・・れん、どっかいっちゃいや・・・」

 

「まぁだ寝ぼけとるんか。

ホレ、起きろ。」

 

恋がミナの頬を叩いた。

しばらくすると、誠たちがやってきた。

 

「服部さんが言ってた場所はこの先・・・」

 

「なんか迷路みたいね。

砦って全部こんなんなの?」

 

「ここは防御に特化した城砦だからな・・・お、見えたぞ。」

 

誠たちが良介たちと合流した。

 

「おお?

氷川。

お主、外におったのではないのか?」

 

「はぁ、事情が変わりまして・・・それより、お話しなければならないことが・・・」

 

紗妃は事情を話した。

 

「・・・殺人?

それだと、最初と話が違うぞ。」

 

「レナは人を食う魔物がいるって言ってたのよね・・・でも、実際は・・・」

 

「心が見つけた動画や噂とも違う。

話が合わないな・・・」

 

良介は少し考え込む。

 

「我々が考えることではありません。

合流した今、まずは魔物の殲滅を第一に。」

 

「・・・じゃのう。

わっちらが考えても答えが出るとは思えんのう・・・」

 

「それと・・・双美さん・・・」

 

紗妃は心に話しかけた。

 

「ひ、ひぃ!

な、なにか不始末をしましたでしょうか!

ど、土下座を・・・」

 

「やめてください。

服が汚れます・・・お願いがあるんです。

その・・・直視しにくいものですが、この写真の人物を調べてほしくて・・・」

 

紗妃は写真を心に手渡した。

 

「・・・あ、あの、こちらは・・・」

 

「お話した、殺されていた人物です。

身元照会をかけましたが・・・

受理されただけで、こちらは知る必要のないものだと。」

 

「・・・わ、わかりました。

調べてみます・・・さ、幸い顔ははっきりしているので・・・

なぜでしょう・・・誰かが殺しても魔物のせいに見せかけたいなら・・・顔も・・・」

 

「・・・双美さん?」

 

「あっ!

す、すいませんすいません!

お話、途中から、あの!」

 

「いいえ、大丈夫です・・・よろしくお願いしますよ。」

 

その頃、梓。

 

「・・・にんにん。

これでクエスト中の生徒は全員ッスな。

不審者の影もなし・・・すると、やっぱあの誰かが殺されたのは早朝・・・

今回、妙にネット上に流れてる魔物の動画に噂・・・ふぅむ・・・」

 

梓は少し考え込む。

 

「相馬先輩のカンが外れた・・・?

でも本人は疑問に思ってない・・・

・・・うーん・・・まーためんどくさいことッスかねぇ。

霧の護り手もテスタメントも解決してないのに・・・

しかたないッスね。

頭のいい人に任せて、自分は体をうごかしましょ。

戻って合流。

氷川先輩の言うように、まずはここの魔物の殲滅ッスな。」

 

梓は合流しに向かった

 

   ***

 

「はぁっ!」

 

良介は剣に火の魔法をかけて切り裂いた。

 

「よし、残りは?」

 

良介は紗妃に何体かを聞いた。

 

「先ほどの魔物で最後ですね。

残存ゼロ、です。」

 

「終わりか。

少し疲れたな。」

 

良介は剣を鞘に収め、ため息をついた。

 

「霧を払ったぞ。

帰ってゆっくりしようでないか。」

 

「眠い・・・学園、まだ?」

 

ミナが目を擦りながら聞いてきた。

 

「あと少しガンバレ。

まったく、威勢がいいのは最初だけじゃ。」

 

「もう危険はありませんし、よいでしょう。

執行部のヘリが待っていますよ。」

 

「来るときもそうじゃったが、わっちはヘリは苦手じゃ・・・」

 

恋はため息をついた。

 

「・・・・・なに?

まもの、にんげん、くう、なに?」

 

「ふたみん、例の写真、なにかわかったッスか?」

 

レナのところにいた梓が心に問いかけた。

 

「す、すいません。

もう少々お待ちを・・・で、出ました!」

 

「ん?

・・・おっと、これは・・・」

 

梓がパソコンを見つめていると誠がやってきた。

 

「わかったみたいだな。

どれどれ・・・」

 

誠もパソコンを覗き込む。

 

「まがやま・・・間ヶ岾 昭三。

霧の護り手の幹部・・・か。」

 

誠が顎に手をやりながら言った。

 

「・・・おやぁ?

ふたみん、もーちょっとわかったりしません?」

 

「え、ええと・・・どんなことでしょう。」

 

「例えばッスよ。

例えば・・・この間ヶ岾ちゅーおっさんが・・・

旧魔導科学研究所で魔物を操る研究をしてた、とか。」

 

「・・・ええと・・・うぅ・・・ど、どうでしょう。

やってはみますが・・・」

 

心は実行を試みようとする。

 

「あ、難しいようなら大丈夫ッスよ?

(危なそうだし、遊佐先輩に聞くのがいいかもしれねッスな)」

 

「・・・にんじゃ。」

 

レナが後ろから梓に話しかけてきた。

 

「おおっ!?

そ、相馬先輩、まさか忍者とゆー言葉を・・・!」

 

「にんじゃ、まもの、ころす。」

 

「あ・・・う、うーん。

ホントは違うんスけどね、忍者は。

まあいいや。」

 

「レナ、魔物が人を食うって本当か?」

 

誠がレナに聞いてみた。

 

「まもの、にんげん、くう。

くう、くう。」

 

「さっきのおっさんは魔物じゃなくて人に殺されてましたが。」

 

「まものない、まもの、ちがう!」

 

「(やっぱちゃんと区別してるな・・・だとすると・・・

あの遺体が霧の護り手だったことを踏まえて、魔物を使役できるようになった。

もしかしたら生み出すことも可能に?

そうすれば絶えたはずのオニが出たことにも説明がつく・・・

通常の魔物も人間を襲う。

それとの違いをはっきりさせるため、人間を食わせた。

それがネットに上がっている動画・・・

食われた死体がないのは霧の護り手が掃除したからか?

霧の護り手が騒ぎの元凶だとすると、あの遺体の人間を撃ったのは・・・

国軍はオニを掻い潜って暗殺できるとは思えない。

すると・・・)」

 

誠が考え込んでいるとレナが声をかけてきた。

 

「まこ!

はよ!

がっこ!」

 

「ん、ああ。

わかったよレナ。」

 

誠はレナのところに向かう。

 

「(・・・撃ったのは、オニに襲われず近づける・・・霧の護り手の誰か?

うーん・・・わからんな。)」

 

誠は考えながらレナと共にヘリに向かった。


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