グリモワール魔法学園【七属性の魔法使い】   作:ゆっけめがね

41 / 117
※この作品の主人公は原作アプリの転校生ではありません。
 閲覧者様のイメージを壊す可能性があります。
 それでもOKという方は、よろしくお願いします。


第40話 阿川奈鬼譚

鳴子とクエストに行ってから数日後。

別の場所にクエストが発令された。

 

「阿川奈城砦跡・・・こんなところに魔物が・・・」

 

良介は呆れたように阿川奈城を見上げる。

近くには天文部がいた。

 

「・・・つまり我々の目的は!

この愚かな戦いに終止符を打つことだ!」

 

いつも通り、ミナがかっこよく決めようとセリフを言っている。

 

「長い!

他のものは行ってしもうたぞ!」

 

恋が呆れたように言った。

 

「今回は我がサーヴァントを召喚している!

聖戦を始めるぞ!」

 

「・・・そろそろ俺のこと名前で呼んでくれ。」

 

良介は頭を掻きながら言っていると、卯衣がやってきた。

 

「・・・良介君、魔力が少なくなったら、お願いね。」

 

「ああ、わかった。」

 

「すまんのう。

急に連れて来てしもうて・・・

じゃが、来てもらったからには頼りにしとるぞ。」

 

「おう、任せてくれ。」

 

良介は指をパキパキと鳴らしながら、ミナたちと進み始めた。

その後ろから梓がやってきた。

 

「うーん、ぶちょーの思いつきもたまにはいいもんスねぇ。

自分が良介先輩誘うと怪しいもんなぁ・・・ん?」

 

突然、梓のデバイスが鳴りだしたので、梓はデバイスを取り出す。

 

「・・・ほうほう。

夏海先輩たちが・・・了解、と。」

 

梓は返信をすると、デバイスを直した。

 

「ま、いーでしょ。

これまでのに比べると簡単ッスから。

・・・簡単ッスよね・・・?」

 

   ***

 

「あっち!

あっち!

まもの!」

 

相馬 レナ(そうま れな)はそう言うと阿川奈城の方へ向かった。

 

「あっちって・・・ここ阿川奈じゃん・・・え?

ここの魔物が人を食うの?

執行部からの情報にはそんなこと書かれてないけど・・・」

 

すると、紗妃が夏海のところにやってきた。

 

「げっ!

ふ、風紀委員がなんでこんなところに!?」

 

「また後ろ暗いことをしているのですか?」

 

「またってなによ!

ちゃんとクエスト請けてきてんだからね!」

 

「でしたら驚く必要はないでしょう。

私は生徒の監督のために来ています。」

 

「監督?

どういうことよそれ。」

 

夏海は首を傾げる。

 

「阿川奈城砦跡は観光地です。

安土桃山時代の城砦を再現しています。

落書きなどしないように注意してくださいね。」

 

「落書きって・・・修学旅行じゃないんだからさ・・・

ま、そういうことならオッケー。

今日の目的は取材だからね。」

 

「取材ではないでしょう。

クエストを請けたなら、魔物と戦うのが目的です。」

 

「ああいえばこういう!」

 

「グリモアの学園生として当然のことです!」

 

と、レナが戻ってきた。

 

「な、な、なつ、み!

いく!

はよ、いく!」

 

「あ、レナ、あんた戻ってきたんだ。」

 

「そ、相馬さんですか?

見たところ里中さんも白藤さんもいないようですが・・・」

 

「(おっ?

もしかしたら・・・)」

 

夏海は紗妃に話しかける。

 

「・・・そーよ、レナも学園に来て結構経つし、いつまでもあの2人のお世話じゃね。

他の生徒ともっと交流できるように、あたしから始めるってワケ。」

 

レナは2人のところに近づく。

 

「・・・・・ん?

なに?」

 

「なるほど・・・そういうことでしたか。」

 

「そういうことなのよ。」

 

紗妃が納得しているところを見て夏海は安心した・・・が。

 

「では私も行きましょう。」

 

「えっ!?

なな、なんで!?」

 

「心配だからです。

岸田さんも、相馬さんも。

危なっかしいですからね。」

 

「だ、大丈夫だって!

ねぇ、レナ!」

 

「なに?

なに?」

 

レナは全く理解できてない様子。

 

「・・・怪しい・・・」

 

「ひぇっ!?」

 

「やけに慌ててますね。

これは是が非でもついてゆかなければ・・・」

 

「(ぼ、墓穴掘ったかしら・・・)」

 

「諦めろよ、どうせ氷川が行かなかったら俺が行くことになってるだろうし。」

 

誠が3人のところにやってきた。

 

「あれ、誠?

なんであんたがここに?」

 

「私が連れてきました。」

 

「なんで?」

 

夏海は紗妃に聞く。

 

「一昨日の午前中の授業をサボったからです。」

 

「だって仕方がねぇだろ。

疲れてたんだから。」

 

誠はそう言うと肩をバキバキと鳴らす。

 

「言い訳は聞きません!

どういう理由であれ、授業に出ることは学園生どころか、学生としての義務なんですから!」

 

「あー、わかったわかった。

どうせこのクエストは受けるつもりだったからちょうどいいや。

それに・・・」

 

誠はレナの方を向く。

 

「まこ!

まこ!」

 

レナは嬉しそうに誠のところにやってきた。

 

「よう、レナ。

元気にしてたか?」

 

誠はレナにあいさつする。

 

「花梨からレナのこと頼まれてるからな。」

 

「どういうことですか?」

 

紗妃は誠に質問する。

 

「あー、花梨からレナはまだ他人に慣れてないから一緒にいてやってくれって。」

 

誠は咄嗟に嘘をついた。

 

「(ナイス、誠!)」

 

夏海は心の中でそうつぶやいた。

だが、

 

「そうですか。

ですが、私も一緒に行きますからね。」

 

紗妃がそう言うと、誠は夏海の方を向く。

 

「・・・な?」

 

「そ、そんなぁ・・・」

 

夏海はがっくりとうなだれた。

 

   ***

 

ミナたちが奥に進んでいると、ミナが何かに反応した。

 

「・・・そこかっ!?」

 

「ひぃっ!」

 

心が驚いて悲鳴をあげる。

 

「こりゃ、ミナ!

無暗に驚かせるな!」

 

「い、いる気がしたのだ!

我が邪眼が捉えられぬものなどない!」

 

「そもそもお主、今回の魔物がなんなのか、ちゃんと資料を読んでないじゃろ!」

 

「フハハハハ!

疾風の魔法使いは全ての識る!」

 

「じゃ、言ってみろよ。」

 

良介は呆れながら言った。

 

「魔物だ!

組織の陰謀によりバイオ生成された危険な生物兵器だ!

弱点は疾風、こいつらを全滅させないとヤツラの【計画】が第2段階に・・・」

 

と、良介はミナの頭を叩いた。

 

「痛いっ!?」

 

「俺が一から説明してやる。

黙って聞いてろ。」

 

「や、やめろ!

執行部は組織に騙されているんだ!

そんな情報は信用できない!」

 

良介はまたミナの頭を叩いた。

 

「あだっ!?」

 

「黙って聞け。

今度はグーで行くぞ。」

 

その状況を梓と卯衣が見ていた。

 

「立華先輩。」

 

梓が卯衣に話しかけてきた。

 

「・・・なに?」

 

「オニは普通の魔物に比べてムキムキでして。

とにかく怖いんッスよ。

だからぶちょーもふくぶちょーもビックリするかも。

そんときはいちお、自分が前で盾になるんで攻撃お願いしますね。」

 

「・・・・・わかったわ。」

 

「出来ればソッコーで片付けてもらえると、みんな自信がつくかと・・・」

 

「どんな相手でも羽を使うわ。

良介君が来てくれているから。」

 

「いや、ありがたいッス。

ちょっと先を見てくるッスね。」

 

梓は先に進んでいった。

良介の説明はまだ続いていた。

 

「・・・で、弱点が疾風なわけが・・・」

 

「・・・ぶーっ。

わかったよ。」

 

ミナは拗ねてしまった。

 

「やれやれ。

いつもこんな調子じゃ。

出発前に見ておればすむものを・・・」

 

恋がため息をつきながら言った。

と、心が話しかけてきた。

 

「・・・あ、あの。

すいません、ちょっと気になったことがあって・・・」

 

「どうかしたのか?」

 

良介が心に話しかけた。

 

「こ、ここ、観光地だったじゃないですか・・・魔物出現時、人がいっぱい・・・」

 

「ああ、避難はすんでるが、逃げ遅れた奴がいるかどうか・・・

それも俺たちの仕事だな。」

 

「そ、それでですね、今ネット上で・・・」

 

「ねっと上?」

 

恋は首を傾げた。

 

「・・・あ、や、やっぱりいいです・・・ただの噂ですし・・・す、すいません。」

 

「そこまで話しておいてやめるとは・・・のう、バカにしたりせんから言うてみ。」

 

「・・・え、ええと・・・あくまで噂なんですけど・・・」

 

「ふむ。」

 

「出現時にここにいた人たちの呟きで【人が食べられた】と・・・」

 

「・・・何?」

 

良介は眉間に皺をよせる。

 

「そ、それが一人じゃなくて、何人も・・・今は削除されてますけど、動画や画像も・・・

ちょっといじってDLしましたけど・・・見ます?」

 

「作り物じゃないのか?

最近、色々できるだろ?」

 

「か、加工されているものは多いですが、この時間で動画となると・・・」

 

「ふうむ・・・魔物が人を食うとはにわかに信じがたいが・・・」

 

恋が考え込んでいると、ミナが食いついてきた。

 

「人を食う魔物だと!?

見せろ見せろ!」

 

「なんでお主はいつも大声なんじゃ・・・」

 

「・・・あ、あの、本当に見ます・・・?

スナッフムービーというか・・・」

 

「構わん!

これから戦う相手だ!」

 

「で、では・・・このファイルを・・・」

 

心はその動画を再生させ始めた。

 

「・・・・これは・・・」

 

「う・・・うぅ・・・ひっく・・・」

 

「お、おい、そこまでじゃそこまで!」

 

「こ、怖くないもん!

怖くなんかないもん!」

 

ミナは良介に後ろから抱きついていた。

 

「わかった、わかったから。

心、お前はそれが本物だと思うんだな?」

 

「は、はい・・・すいません・・・!

ぶ、部長がそんなに怖がるとは・・・」

 

「別に構わん。

それより学園に連絡だ。

いつもと違うなら、このまま進むわけにはいかないぞ。」

 

良介は一度学園に連絡することにした。

 

   ***

 

その頃、誠たち。

紗妃が魔物について説明していた。

 

「・・・・・なに?」

 

レナは首を傾げた。

 

「なに、ではなくオニ。

日本古来の【鬼】と区別するためにカタカナ表記です。」

 

「要するに鬼に似てるんでしょ?」

 

「ええ、そうですね。

どちらかというと鬼瓦ですが。

オニは日本にしか出現しない特殊な型の魔物です。」

 

「あたし、ちゃんと調べてるわよ。

世界各地に、そこにしかでない・・・

言ってみればご当地魔物みたいなのがいるのよね。」

 

「ごとーち・・・ごとーち?」

 

レナはまた首を傾げた。

 

「そんなに能天気なものではありませんが・・・まぁ、近いですね。

オニは第3次侵攻以来の出現です。

とはいえ、その頃の強さではないでしょう。

場所が阿川奈城砦跡というのも不気味です。」

 

「どういうこと?」

 

と、誠が突然説明し始めた。

 

「阿川奈城砦は【鬼】との戦いが伝説として残ってるんだ。」

 

「孟山はご存知ですか?」

 

「か・・・かし・・・ら・・・やま?」

 

レナは首を傾げながら言った。

 

「そうだ。

阿川奈の南にある孟山は鬼の伝説が残っててな。

そこから攻めてくる鬼の軍勢と、中上氏が戦いを繰り広げ・・・

最期には城内の人々が全て鬼に食われ、残る者なしという話さ。」

 

「・・・ぞーっ・・・そ、そんなものがあるなんて知らなかったわ・・・」

 

「鬼というのはその時攻めてきた敵方。

それを怪奇譚として仕立てたのが【阿川奈奇譚】さ。」

 

「あがーなきた!」

 

紗妃が話し始める。

 

「歴史上、どこの勢力に滅ぼされたかはなぜかわかっていませんが・・・

位置関係上、松谷氏というのが有力ですね。

あまりにも小さい勢力だったのが原因でしょうか。」

 

「ふーん・・・つまり怪談なのね。

でもそんな話があるって言われたら・・・

・・・ちょっと怖いじゃない。」

 

「・・・放棄するか?」

 

誠がにやけながら言った。

 

「ば、バカ言わないでよね!

あたしだってジャーナリストのはしくれよ!

人を食う魔物、じょーとーじゃない!

あたしがその全貌を全世界に公表してみせるわ!」

 

「言っておきますが・・・」

 

「もちろん、ちゃんとクエストをこなしたうえでね!」

 

「結構です。

では・・・あら?

相馬さんはどちらに・・・?」

 

「え?

レナならそこに・・・」

 

誠が指差した方向にはレナはいなかった。

 

「あれ?

今の今までそこにいたのに・・・レナー?」

 

夏海がレナを呼ぶと、レナがやってきた。

 

「なつみ!

ここ、ここ!」

 

レナはある場所を差し始める。

 

「ここ?

そこになにがあんのよー!」

 

「にんげん!

にんげん!」

 

「・・・人間?

もしかして・・・」

 

「要救助者・・・行きましょう!」

 

夏海と紗妃はレナの指差した方向に進み始めた。

 

「・・・ん?

人の気配とか感じないが・・・まさか!」

 

先に進んだ夏海たちを誠は追いかけた。

 

「待て!

救助者じゃない!

恐らく・・・!」

 

と、奥から、

 

「きゃーっ!!」

 

夏海と紗妃の悲鳴が聞こえてきた。




人物紹介

相馬 レナ(そうま れな)17歳(推定)
狼に育てられた狼少女。
かなり眉唾な生い立ちだが、実際に喋るのにも苦労している様と驚異の運動神経を見れば信じざるを得ない。
人間の常識と野生の常識の狭間で苦しんでいるが、【ニンゲンになる】という目標を掲げて今日も社会勉強に励む。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。